2011年3月25日金曜日

「原発ジプシー」と被曝

「原発ジプシー」と被曝

7/10
⇒「あなたの命を「使い捨て」から守るために 被ばく労働自己防衛マニュアル

◆制作福島原発事故緊急会議(E-mail: contact@2011shinsai.info)
・代表連絡先:ピープルズ・プラン研究所
東京都文京区関口1-44-3 信生堂ビル2F (Tel: 03-6424-5748 Fax: 03-6424-5749)
◇この冊子に関するお問い合わせ
・福島原発事故緊急会議 被曝労働問題プロジェクト
・担当:なすび(山谷労働者福祉会館) (e-mail: nasubi@jca.apc.org)
【送付依頼先】contact@2011shinsai.info ないし nasubi@jca.apc.org
【価格・代金】労働者に広く配布することを考え、定価はありません。可能な方・団体は、1部200円を目安にカンパをお願いします。広範に配布し労働相談活動での利用を考えている方は、ご相談ください。カンパ代・送料は同封する郵便振替用紙をご利用ください。
※今後、被曝労働者への相談活動を通じ、バージョンアップしていく予定です。

<制作主旨>~この冊子を手にされた労働者の皆さんへ~
 原発はハイテク&クリーンなイメージをPRされていましたが、防護服を着て雑巾がけの除染作業に象徴されるように、実際には危険で人海戦術的な被ばく労働なしには稼働しないのが実態です。しかし、国策である原子力事業は、膨大な宣伝広告費を用いてこの事実を隠蔽してきました。
 日本で商業原子炉が稼働を始めて45年が経過し、被ばく労働者ののべ人数は45万人とも言われています。被ばく労働によると思われる白血病やがんで苦しむ労働者は多数いますが、被ばく労災の認定は2011年5月段階でわずか10件しかありません。重層的下請構造による雇用責任の曖昧さと、使い捨てを前提とした差別的雇用関係が、原子力事業の隠蔽体質を補完しています。原子力での労働はとりわけ警戒を要する仕事です。
 今、福島第一原発のメルトダウンと水素爆発、それに伴う深刻な放射能放出は、近隣地域のみならず東日本全体を深刻な危機に陥れています。これまで、労働者を被ばく労働から守り、全ての被ばく労働を拒否すれば、この危険な原発を停止させることができる可能性がありました。しかしこの事故では、誰かが被ばく労働をしなければ、さらに深刻な壊滅状況を止められない事態になってしまいました。しかしそれでも、そのために捨てられて良い命はありません。

 極めて高い放射線量下にある現在の福島第一原発での作業は、通常以上に、多くの労働者による人海戦術が不可避です。既に多くの求人が、職安で、避難所で、日雇寄せ場や野宿者の集まる場で、公式・非公式なルートで行われています。これまでも原発関連の仕事で生計を立てていた方、原発の安定と地元の復興に使命感を持つ方々が、求めに応じて作業に入っていることが伝えられています。
 また、不況の中で他に仕事がない失業者、非正規・派遣労働者が、原発での労働に就かざるを得ないケースもあると思われます。労働者保護の観点からは、きっぱり就業を拒否すべきケースも少なくないでしょう。しかしやむを得ず被ばく労働につく場合でも、それは命を売るものであってはなりません。
 この冊子は、より被ばく環境に入りやすい下請労働者を想定して作成されましたが、現地採用され現場の最前線にいる東電社員や系列社員も同様です。これ以上原発で苦しみ、殺される労働者と悲しむその家族・友人が出ないよう、この冊子が最大限活用されることを願います。

なすび  山谷労働者福祉会館 活動委員会  
〒111 東京都台東区日本堤 1-25-11 電話・FAX:03-3876-7073
山谷労働者福祉会館 
「持たざる者」の国際連帯行動

⇒「福島第1原発:東芝協力企業の作業員死亡 労災申請へ」(毎日 7/12)
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 今日(5/14)、福島第一原発の現場労働者が、死んだ。

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福島第一原発作業員が体調不良、病院で死亡
 東京電力の福島第一原子力発電所で14日午前6時50分頃、機材の搬送をしていた東電の協力企業の60歳代の男性作業員が意識不明となり、福島県いわき市内の病院に運ばれたが、午前9時33分に死亡した。 同原発の復旧作業中に作業員が死亡したのは初めて。東電で死因などを確認している。
 東電によると、男性は午前6時頃から、高濃度汚染水が移送されている集中廃棄物処理施設内の4つある建物の一つで、同僚男性と電動ノコギリを2階から1階に搬送している最中に体調不良を訴えた。同原発内の医務室に運ばれ、作業員の活動拠点「Jヴィレッジ」で医師の診察を受けた後、午前8時35分頃、病院に搬送された。男性のいた建物地下2階に汚染水が貯蔵されていたが、男性は防護服を着ており、被曝線量は0・17ミリ・シーベルトで、身体に放射性物質の付着はなかったという。男性は、前日の13日から同原発に入り、午前6時~9時の作業時間で働いていたという。(読売)

過酷作業 防護服にマスク「サウナ状態」
 東京電力福島第1原発事故の復旧作業で、作業員らの安全確保のルールや手順がなし崩し的に緩和されていることが分かり、作業員の間に不安や戸惑いが広がっている。こうした規制の緩和に加え、過酷な作業環境やそれらに伴う人的ミス、専門外の慣れない作業内容など、作業員を取り巻く状況は複合的な危険にさらされているとの懸念も指摘されている。【毎日・町田徳丈、市川明代、日下部聡】
 福島県に住むベテランの下請け作業員は先月、福島第1原発のタービン建屋の汚染水を排水するため、現場でホースを取り付ける作業に従事した。原発から約20キロ南の福島県楢葉町にあるナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」で防護服や全面マスクなどの装備をもらい、所属する会社の車で第1原発の構内拠点の免震重要棟へ。作業直前に線量計をつけ、現場に向かった。 暖かい季節となり、マスクなどのフル装備は「サウナスーツを着ているようなもの」。しばらくするとマスクには数センチの汗がたまり「熱中症で倒れている人がたくさんいる」という。「途中で苦しくなったら『しゃがんで落ち着いて深呼吸をしろ』と言われた。(作業は)正直2、3時間が限度。これから夏になったらさらにきつさが増す」と懸念する。

 作業にあたったのは約10人。タービン建屋の中は湿度が高く、さらに暑く感じたという。敷設したホースは太さ約10センチ、長さ20メートルほどの蛇腹。それを金具でつなぎ合わせて構内の集中環境施設のタンクまで延長する。 現場のタービン建屋の床面はぬれていた。津波の水か放水かは不明だが「間違いなく放射性物質で汚染されている」と感じた。ホースは2人1組で運ぶが、重いため転がした。ホースもぬれ、「これ、やばいんじゃないの」と思わずつぶやいた。敷設の際には再び肩にかつぎ、首筋から後頭部にかけホースが当たった。防護服は耐水性のものではなく、水がしみ込んだ。「元請けの放射線管理担当者の事前サーベイ(調査)がちゃんとなっていなかった。原発の仕事で『水に触るな』は原則なのに」
 作業後、放射性物質が体に付着する「身体汚染」が判明した。一緒に作業していた約10人も同じだった。そもそもホースの敷設は専門外だった。「簡単に誰でもできる作業。だから『応援してもらいたい』(と元請けから依頼された)ということだったと思う。一緒にいた約10人は全員、ホースの作業は初めてだった。元請けの現場責任者から指示を受けてやった」
 身体汚染した作業員のうち3人は、放射性物質を洗い流す「除染」を完全にできなかった。暑さで毛穴が開き、そこに放射性物質が入り込んだ後、毛穴が閉じた疑いがあるという。だが、汚染部位などを記録した「確認証」を東電から発行され、作業に復帰した。 「今は何でもあり。『まずは(原発の)いまの状態を止めろ』と。多少のことは目をつぶるという感じ」。作業員はそう指摘する一方、「怖いっすよ。この先、どのくらいの放射線量を浴びるのか」と漏らした。
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 共同通信によると、東電は、福島第一原発の現場作業員の被曝線量を記録せず、「聞き取り」によって「推計」していたことが先月(4/28)判明したという。 
東電、被ばく線量を推計 記録せず聞き取り
 福島第1原発事故の対策拠点で作業員が寝泊まりもしている「免震重要棟」という建物に滞在中に浴びた放射線量について、東京電力は個人の線量を毎日は記録せず、後から行動を聞き取って推計していたことが28日、分かった。 3月11日の地震後、緊急的作業が一段落してから被ばく線量を評価し、第1原発にいた女性19人は3月23日までに全員退避させた。この中には、主に免震重要棟で作業していた放射線業務従事者ではない4人が含まれ、一般人の限度である年間1ミリシーベルトを超える被ばくをした恐れが強い。東電のずさんな被ばく管理に批判が強まりそうだ。
 東電によると、免震重要棟内では、時間当たりの放射線量を記録していただけ。3月23日以降、男性も含め、棟内に滞在していた時間を聞き取り、滞在中の被ばく線量を計算した。 棟内では事故後、高い線量が続き、水素爆発などが起きた直後には、毎時100マイクロシーベルト(0・1ミリシーベルト)を超えたこともあったという。4月26日現在の線量は毎時1・5~3マイクロシーベルト。 屋外の現場作業などをする場合は線量計を持参し、被ばく線量を毎日、台帳などに記録して管理しているが、棟内にいる人は線量計を身につけていなかったという。
 第1原発では、放射線業務従事者の女性社員が、女性の限度の3倍以上の17・55ミリシーベルトを被ばくした。主に放射性物質の吸い込みによる内部被ばくの管理が不十分だったことが要因と判明。この女性の免震重要棟滞在中の外部被ばく線量は1・89ミリシーベルトとされている。(共同)
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 また、厚生労働省は4月27日、原発作業員の年間被曝量の「上限撤廃」を打ち出した。

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原発作業員の年間被曝量、上限撤廃へ 厚労省が特例措置 全国の原発保守を懸念
 厚生労働省は27日、通常時は年間50ミリシーベルトと定めている原発作業員の被曝(ひばく)線量の上限を当面の間、撤廃する方針を固めた。5年間で100ミリシーベルトの基準は維持する。原発作業に従事できるのは全国で7万人余りしかいない。各地から福島第1原発への派遣が相次ぐ中、規定の被曝線量を超えると、ほかの原発の保守や定期点検に支障が出かねないとして、経済産業省が厚労省に特例的な措置を要請していた。しかし、この措置は、過酷な環境下で働く作業員の安全を軽視しているとの批判も出そうだ。
 厚労省は3月15日に省令で、福島の事故の応急対策に限定して緊急時の被曝線量を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げていたが、通常時の基準は変えていなかった。米国も、緊急時の線量上限を民間人で100ミリシーベルト、通常時は年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトとしている。
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 以下、3月11日の原発事故発生以降の現場作業員の被曝問題について論じているが、東電がこの間発表してきた作業員の被曝線量について、いっさい信用できないことが明らかとなった。さらに、作業員(「ジプシー」であれ、「社員」であれ)に対する、「軽視」という言葉で片付けることのできない過酷な労働が国の「被曝規制緩和」によって強いられることになった。これらの事実を踏まえながら読んでいただきたい。
⇒「福島第一原発での作業員、全国のハローワークで求人が続く」(5/03 東洋経済)
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3号機地下の水、放射性物質濃度は通常の1万倍
 東京電力福島原子力発電所3号機の電源復旧作業中に作業員3人が被曝した問題で、東電は(3月)25日未明、タービン建屋地下1階の水に含まれる放射性物質の濃度通常運転時の原子炉内の水の約1万倍に達したと発表した。
 通常はほとんど検出されない放射性物質も高い濃度で検出され、同社は3号機の原子炉か使用済み核燃料一時貯蔵プール内の核燃料が破損した後、現場周辺に漏れ出した可能性が高いという。(読売)
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 読売の記者は、①3号機の「プール」からなぜ、どのようにして放射能汚染水が「現場周辺に漏れ出した」のか、それを突き止めるべきだ。「核燃料破損」というそれ自体絶句する事態と、「プール」からの「現場周辺」への放射能汚染水の「漏出」という絶句する事態、このE=mc2的絶句の二乗の因果関係である。そして②「プール」自体に損傷があるのかないのか、その究明。しかし、まずは昨日の事故の現場の犠牲者たちのことが肝腎だ。
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「原発ジプシー」と被曝

 福島第一原発の「現場」で、名前も顔も知れず、匿名のまま、被曝し、病院に担ぎ込まれてゆく人たちがいる。自衛隊や機動隊、消防隊のように、マスコミに讃えられることもない。脚光を浴びることもない。「原発ジプシー」と呼ばれている人たちのことだ。
 正規の社員、作業員ではない。原発列島を、仕事を求めて「漂泊」し続ける人々のことである。原発「日雇い労働者」。
 昨日被曝した作業員たちが「ジプシー」なのかどうかはわからない。しかし、丸2週間になる第一原発修復の死闘の最前線で戦う現場の作業員の中にも、必ず何人か/ほとんど?「ジプシー」たちがいるはずだ。
 昨夜ネットで配信された、事故を報じる読売新聞。

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15センチの汚染水につかり、作業40~50分
 被曝した3人は(3月)24日午前10時ごろ、3号機の原子炉建屋に隣接するタービン建屋などの放射線管理区域に入り、電気ケーブルを敷設する作業を行っていた。 真っ暗な中を進む3人は、この40~50分の作業の中で、深さ約15センチの水に踏み込んでしまった。3人はそこにつかって、作業を続けたらしい。 前日の点検では、水はほとんどなかった。前日は、3号機への放水は行っていない。
 いずれも防護服の上にカッパを着用。ヘルメットと全面マスク、ゴム手袋もつけ、同じ会社の2人は作業用の短靴を、別会社の1人は長靴をはいていた。作業を終えた3人が午後1時過ぎに胸に装着していた線量計を調べると、高い放射線量が確認された。 胸の線量計は、20ミリ・シーベルト以上を超えると、9分間にわたり断続的にアラームが鳴り続ける。この作業中にアラームが鳴ったかどうかは確認されていない。
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 この記事を読んで不思議に思ったことがある。「前日の点検では、水はほとんどなかった。前日は、3号機への放水は行っていない」のに、なぜ「深さ約15センチの水に踏み込んでしまった」のか。夜、何らかの理由によって放射能汚染水が、深さ15センチも貯まるようなことがあったか、もともとの点検が十分でなかったか、いずれかの理由によるのだろう、と普通は読んでしまう。
 「ほとんどなかった」はずの汚染水が、約15センチの深さになっていた責任は誰にあるのだろうか?
 もう一つ。かれらが着用する「防護服」。ナノテクや最新鋭の先端技術を駆使した被曝恐怖知らずの防護服が「会社」によって支給されているに違いない。なぜなら、3月15日の産経新聞にはこんな記事があったからだ。

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 菅首相 冷却水投下を指示 自衛隊は困難視 菅直人首相は15日、福島第1原発4号機で放射性物質(放射能)が漏れ出したことを受け、北沢俊美防衛相に原子炉を冷却するため上空からの冷却水投下を検討するよう指示・・・。しかし、防衛省関係者によると空中からの投下は・・・被爆の危険性があるという・・・・。
 一方、陸自は15日に予定していた原子炉を冷却するための地上での注水支援作業を取りやめた。陸自「中央特殊武器防護隊」の隊員が着用している化学防護衣では、高レベル放射線を防げないと判断した・・・・。同隊の約180人は14日深夜に現地からいったん退避し、第1原発からほぼ西方に約60キロ離れた陸自郡山駐屯地に移動。第2原発への注水ポンプ用の燃料輸送は実施・・・。
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 上の記事からすると、作業員たちが着ている「防護服」は、陸自「中央特殊武器防護隊」の隊員が着用している化学防護衣よりも高性能、ということになるのだろうか。そうでなければ、われらが自衛隊が「注水支援」さえ取りやめ、「退避」し、燃料「輸送」業務に切り替えるなんて、想像することも難しい。現に自衛隊員だって被曝しているのである。 しかしもしも、作業員の「防護服」が自衛隊の特殊部隊の化学防護衣より被曝予防性能が低いのだとしたら、いったいどんな思いでかれらは「作業」を行っているのだろう。
 同じ産経の記事に、こんなのがあった。
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 「放射線量、限界に近い」 4号機元作業員が証言 「現場は相当の覚悟」 使用済み燃料貯蔵プールの水温が上昇、2度にわたる火災を起こした4号機で、かつて定期検査の作業員として携わった元プラント工事会社社員の男性(66)は「きっと作業員たちが受けている放射線量は限界に近いだろう」と、危険な任務に就く後輩たちを思いやる。
 第1原発では16日現在、約70人の作業員たちが1~3号機への注水を管理。敷地内の放射線レベルは上昇しており、作業をより困難にしている。放射線量の高いエリアでの作業は、短時間で退避する。男性は「こんなことが起こるとは想像もできなかった」と話す。 作業員たちは防護服に身を包み、線量計を携帯。線量が許容限度に近づくと警告音が鳴る。男性もかつて鳴ったことがあるといい「恐怖心に包まれた」と振り返る。
 国内では、平成11年(1999年)に茨城県東海村で起きたJOCの臨界事故以来の大事故だが「JOCで最初に作業していた作業員は突然、放射線を浴びた。今回は浴びるのを覚悟して作業をしなければならない。相当覚悟のいる状況だ」と、沈痛な面持ちで語った。
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 読売新聞の記事では、「線量計は、20ミリ・シーベルト以上を超えると、9分間にわたり断続的にアラームが鳴り続ける。この作業中にアラームが鳴ったかどうかは確認されていない」。この記事から、20ミリ・シーベルトが現場作業員たちの被曝危険域の境界線になっている、そのように読める。断続的にアラームがなり続ける9分間は、どれだけ恐怖をかきたてる9分間になることだろう。この記事を読んで、そのように私たちは想像する。もしもアラームが鳴らなかったとしたら、それは何が理由だったのだろう、と。
 昨日、作業員たちが被曝したのは173~180ミリシーベルトだった。


 「100ミリシーベルト超えても重大な影響なし」?
 20ミリ・シーベルトを超えると、9分間にわたり断続的にアラームが鳴り続ける。だから、原発現場で働く労働者の安全基準は、本来、20ミリ・シーベルトなんだな、と思ってしまう。そうでないと「20」という数字の意味がわからない。
 ところが、「そうじゃない」と言う人たちがいる。昨日の事故後の産経新聞の記事、「原発従事者被曝線量上限 100ミリシーベルト 超えても重大な影響なし」の登場人物たちだ。向学のため、抜粋しておこう。

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 被曝線量の上限は一般が自然被曝以外に年間ミリシーベルトなのに対し、原子力関連施設での緊急作業従事者は100ミリシーベルトと定められている。震災での原発事故後には、厚生労働省が福島第1原発での作業者に限って基準を250ミリシーベルトに引き上げた。なぜ、基準に開きがあるのか。万が一基準を超えた場合、人体にどう影響するのか。
 被曝が人体に悪影響を与えるのは、放射線がDNAや細胞を傷つけるからだ。詳しい仕組みは不明だが、がんになる可能性などが増えるため、被曝線量の上限が定められている。 放射線影響研究所や文部科学省のホームページなどによると、250ミリシーベルトの被曝は成人にあまり影響はないが、胎児に影響が出る。

 1000ミリシーベルトほどの被曝では30歳の人が40年後にがんを発症するリスクは1.5倍になり、死亡率は低いが吐き気などを催す「放射線病」を発症する。2000ミリシーベルトを超えると男性が不妊となり、4000ミリシーベルトになると半数が死亡する。
 難しいのは、それより少ない線量の被曝だ。日本原子力研究開発機構の原子力緊急時支援・研修センターは、基準を超えても「大丈夫とはいえないが、直ちに重大な影響があるわけではない」と説明する。放射線影響協会によると、200ミリシーベルト以下では、人体への影響が臨床例でほとんど報告されていない。がんになる確率はほとんど増えないとされる。
 原子力緊急時支援・研修センターは「国内基準の基になっている国際放射線防護委員会(ICRP)の基準は、人が耐えられる最高値というわけではない」と指摘。「基準は、一般人や原子力関連施設の従事者の立場を考慮し、それぞれ活動に支障がない程度で守れる最小の目標値のようなもの」と冷静な対応(?)を呼びかけている。
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 この記事の記者に、では「線量計は、なぜ20ミリ・シーベルトを超えると、9分間にわたり断続的にアラームが鳴り続けるのか?」と「専門家」たちに尋ねてほしかった。記者自身、疑問に思わなかったのだろうか。
 で、この記事は誰に対して何を言わんとしているのか。「1000ミリシーベルトほどの被曝では」「死亡率は低い」「吐き気などを催す」程度だから、さして心配することはない? 昨日被曝し、ベータ線熱傷の可能性があると言われている作業員たちも「重大な影響なし」で、「250」の新基準は「最小の目標値」?

 政府やマスコミ、「専門家」たちの放射能汚染の「数値」をめぐる言説は、これから記録を更新するごとにグロテスクさの度合いを深めてゆくのだろうか。そういうとき、人間は〈恥〉というものを失ってゆくのだろうか。それを読み、聞く私たちの感覚も日を追うごとに麻痺してゆくのだろうか。
 どこまで踏ん張れるか。それが私にも問われている。

4/2
〈「ジプシー」であれ、「社員」であれ〉
 「「原発ジプシー」と被曝」。ここ最近、最もよく読まれている文章だ。
 しかし、私は自分の知識の浅薄さを恥じた。毎日新聞の「「ガスマスクずれ吸った」作業の東電社員」【中川聡子、日下部聡】」の記事を読んだからである。
・「3月中旬、上司から福島出張を打診され、「行きます」と応じた。その夜、本社に集合。幹部から「とりあえず行け。何とかしてこい」と言われ、着の身着のまま他の20~30代の作業員数人とワンボックスカーに乗った」
・「家族には心配をかけるだけだから福島行きは報告できなかった」。一方、友人には「2週間たって帰ってこなかったら両親に連絡してくれ」と頼み、出発した」
・「顔全体を覆うマスク、ゴム手袋、長靴のほか、普通の作業服の上にガーゼのような白い布製の上下を着た。「きちんとした防護服は恐らく早い段階で切らして足りない状態になっていた」。さらに「長靴の上にもビニール製の防護をつけるべきだが、自分たちはコンビニでも買えるような簡単なゴミ袋のようなものを長靴の上にはいて、ガムテープで巻き付けただけだった」」
・「ガスマスクをしているため、大声を張り上げないと意思疎通がままならない。本部との連絡手段は携帯電話1台だけ。とはいえ本部も混乱しているため、指示を受けたり報告したりしている余裕はない。「現場で判断しろ、ということだった」。ところが作業中、本部から突然、終了時間変更の指示が飛び、混乱に拍車がかかった」

・「本来なら3~4時間で終わる作業にのべ2日かかった。「ガスマスクとかで非常に動きづらいし、作業の際にマスクがずれる場面は何度もあった。多分、かなり(放射性物質を含む空気を)吸ってるだろうなと思う」。線量計はリーダー格の1台だけで、他の作業員は持っていなかった」
・「敷地内は地震の影響であちこち陥没して穴があり、水がしみ出していた。ガスマスクが邪魔で足元を確認できず、同僚が何人も穴に落ちた
・「アラームが鳴っても作業を続けた(2人の)気持ちもよく分かる。『他にやる人間がいないんだから、とにかくやらないといけない。やるまで帰れない』という焦りは現場では強い」
・「ガスマスクの『シュー、シュー』『パコパコ』という音が響き、白装束の自分たちが作業している。全く現実感のない世界だった
・「最終日に被ばくの検査をしたが、人数が多く丸1日かかった。異常はないとされ、帰社すると「よくやった」と上司がねぎらってくれた。それでも「長期的な影響については不安だ」

 『シュー、シュー』『パコパコ』。「異常はない」。「全く現実感のない世界」・・・。
 「他の20~40代の作業員数人」とは、誰のことだろう? 
 この人たちは、どこから来て、どこに帰ってゆくのだろう?

1999年9月30日、JCO臨界事故で被爆した篠原理人さん(当時40歳)の治療経過
(篠原さんは顔や両腕に10シーベルトの中性子を浴びて被爆。私たちは被曝の現実を直視---広島・長崎でそうしてきたはずなのだが---すると同時に、原発が正規・「ジプシー」問わず現場作業員に強制している「労働環境」について再検証する必要がある、と私は思う。人間としての〈恥〉を失わないためにも)
「英雄」ではない「被害者」である原発事故作業員に、生涯にわたって医療補償を

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5月
福島3号機建屋、最大170ミリシーベルト 作業員立ち入り
 東京電力は19日、福島第1原発3号機の原子炉建屋内に18日夕に作業員2人が入り、10分間調査したと発表した。2号機にも同日に作業員4人が入っており、これで、事故後、1~3号機の原子炉建屋に作業員が入ったことになる。3号機の放射線量は毎時50~170ミリシーベルトで、最も高かったのは、水素爆発を防ぐために窒素を注入する予定にしていた配管の周辺だった。
 2号機の原子炉建屋内は、毎時10~50ミリシーベルトだった。調査は東電の作業員4人が原子炉格納容器の周囲を回って放射線量などを調べた。建屋1階の南西部の大物搬入口付近でたまり水が確認され、放射線量も50ミリシーベルトを観測。上部から小雨のように水が落ちていた。 4月19日にロボットが入ったときと同じく温度、湿度とも非常に高く、内部にいるのは体力面から15分が限界だったという。 東電は、2号機の建屋内部で原子炉の水位を示す計器の調整や、原子炉の冷却に必要な作業を予定している。内部の放射線量が分かってきたことで、数値が高い部分を鉛を含んだマットなどで遮蔽(しゃへい)する作業に着手する。(中日新聞

原発で内部被曝検査、作業員の1割…不安広がる
 東京電力福島第一原子力発電所で、放射性物質の吸引などで起きる「内部被曝(ひばく)」の検査を受けた作業員が、全体の1割にとどまっていることが分かった。 周囲の放射線が高い福島第一原発の検査装置が使えないためで、作業員の間には、「被曝線量の上限を超えても、知らずに働き続けることになりかねない」との不安が広がっている。政府は、17日に公表した同原発事故の収束に向けた「工程表」で、作業員の被曝線量について、東電に定期的に報告させるなどの監視強化を打ち出した。
 「通常値より2桁も多い。こんなのは初めてだ」。同原発の原子炉建屋近くで3月末から約1か月間、電源ケーブルの設置作業に携わった協力企業の20代の男性作業員は5月上旬、福島県外で受けた内部被曝の検査結果にショックを受けた。内部被曝は「ホールボディーカウンター」と呼ばれる検査装置で測定する。普段の放射線量は数百~1000cpm(カウント毎分)だが、男性が告げられた数値は3万cpmを超えていた。
 作業現場では当時、散乱したがれきから高い放射線量が計測されていた。通常、3時間ごとに交換するマスクは、管理会社から「汚染がなければ使っていい」と言われ、5、6時間使い続けた。食事は作業員らが寝泊まりしている免震重要棟でとったが、4月末には、「ここも汚染されている」と知らされた。男性は、「食事しているうちに内部被曝しているだろう」と不安を抱く。(読売)

4月
最前線に迫る被曝上限…原発作業員確保が課題
 東京電力福島第一原子力発電所の事故は27日、東電が収束に向けた「工程表」を公表してから10日たった。原発敷地内の放射線量は高い状態が続き、通常時に浴びてもよいとされる年間50ミリ・シーベルトの2倍を超えた作業員はすでに30人に達する。被曝線量が累積する中、今後は交代要員の確保が課題となりそうで、東電では、OBも含めた人員の確保に乗り出した。 東電によると、福島第一原発では連日1000~1200人が放射能で汚染されたがれき撤去や高濃度汚染水の移送、ロボットの操作などに当たっている。累積線量が100ミリ・シーベルトを超えた東電と協力企業の作業員は25日現在で30人、50~100未満が119人、50未満が5628人。東電では、累積100ミリ・シーベルトを超えた社員について、敷地内でも比較的線量の低い免震重要棟内での事務作業などに配置換えしているという。
◆OBにも声かけ◆
 東電では、今後の作業員確保について「できるだけ被曝線量を少なくし、長時間作業できるよう考えたい」とするが、政府と東電でつくる事故対策統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官は、26日の記者会見で「今、現地で働いておられる人数は十分ではない。(東電の)OBら色々な方に協力していただくべきだ」と危機感をあらわにした。東電の松本純一・原子力立地本部長代理も、27日の記者会見で「現在、当社OBにも(作業の応援を)声かけしているところ」と明かした。 国は3月15日、緊急時の被曝線量の上限を福島第一原発事故での作業に限り、100ミリ・シーベルトから250ミリ・シーベルトに引き上げた。しかし、関係企業の多くは、作業員の健康への配慮から、より厳しい制限を設けている。このため、各企業からは、東電が6~9か月で収束を目指すとした工程表の完了前に、作業員の累積線量が社内規定を超える事態を懸念する声が聞かれる。(読売)

東電の女性社員、基準3倍超す被曝 原発屋外で作業
 東京電力は27日、東日本大震災発生時に福島第一原発にいた50代の女性社員が、原子炉等規制法などの基準の3倍を超える17.55ミリシーベルトを被曝したと発表した。法の定める限度を超えたのは男女を通じ初めて。女性は屋外で、原子炉への海水注入や放水に当たった消防の案内などをしていた。医師の診断では、健康への影響は見られないという。経済産業省原子力安全・保安院は27日、東電に対し口頭で注意した。
 東電によると、女性は水素爆発直後、マスクを外す際などに放射能を含んだほこりを吸ったとみられる。現場を離れた3月22日までに、個人線量計の数値は2.06ミリシーベルト、免震重要棟での滞在で1.89ミリシーベルトを浴びていた。 その後、今後50年間で13.6ミリシーベルトに相当する内部被曝がわかった。内部被曝は、体内に吸い込んだ放射性物質による被曝のことで、50年分を、事故発生時に浴びたとして換算する。

 原子炉等規制法や労働安全衛生法は、作業員の被曝量について、緊急時でなければ5年間で100ミリシーベルト以内に抑えるよう求めている。ただし、妊娠する可能性がある女性は男性より細やかな管理がされており、3カ月でこの20分の1にあたる5ミリシーベルト以内に抑える必要がある。 今回の事故を受け、男性作業員の線量限度は「5年間で100ミリシーベルト」が「5年間で250ミリシーベルト」に引き上げられたが、妊娠する可能性のある女性の基準は据え置かれていた。
 第一原発には当時、ほかに10~50代の18人の女性職員がいた。16人は限度を下回っていたが、残る2人は被曝量が高く、確認を急いでいる。東電福島事務所は「女性はもっと早く撤退させるべきだった。判断ミスで、反省している」とした。保安院は今後、東電に原因究明と再発防止策の策定を求めるという。(朝日・東山正宜、小宮山亮磨)

被曝100ミリシーベルト超30人に 熟練作業者の累積量が増大 収束へ課題
 東京電力福島第1原子力発電所の事故で、同社は23日、累計の被曝線量が100ミリシーベルトを超えた作業員が1人増えて30人に達したことを明らかにした。緊急時の作業員の年間被曝限度は、今回の事故に限り本来の100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げられている。東電は「200ミリシーベルトに近づいた場合、放射線量が高い作業から外す」としており、最大の198ミリシーベルトを浴びた作業員1人がすでに同原発から離れた。 事故収束に向けた工程表では今後、原子炉建屋内など放射線量の高い場所での作業が必要になるが、長期化に伴い熟練作業員らの累積被曝線量が増大しており、人材の確保が大きな課題となる。
 また、2号機タービン建屋地下や外部の配管トンネル「トレンチ」にたまった高濃度の放射性物質(放射能)を含む汚染水を集中廃棄物処理施設に移送する作業を継続。19日の作業開始から計約930トンを移したが、5月下旬までに計画する1万トンの10分の1にとどまっている。 一方、これまで東電と経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会が別々に開いていた記者会見を25日から一本化すると発表した。毎日午後5時に東電本店で開き、事故対策統合本部の事務局長を務める細野豪志首相補佐官も出席する。それぞれの会見で説明内容が食い違うケースがあったためで、一本化で正確な情報発信を目指す。

「ババ引くのは作業員」嘆く下請け社員
 福島第1原発の復旧作業を担う作業員の被ばく線量を定めた特例措置があいまいに運用され、作業員の放射線管理手帳に記載されていないケースがあることが明らかになった。現場の作業員はあいまいな運用に不安を漏らすとともに「結局、ババを引くのは作業員」と嘆く声も聞かれた。関係者からは「線量管理がいいかげんだと、訴訟になった時に証拠が得られない可能性もあり、問題」との指摘も上がる。【毎日・4/21 袴田貴行、森禎行、日下部聡】

◇訴訟時、証拠ない恐れ 「今回食った(受けた)分の放射線量は手帳に載らないから。安心していいから」。3月末に福島第1原発の復旧に従事した2次下請け会社の男性(30)は、作業開始直前、1次下請け会社の社員にそう告げられた。 男性は3月下旬、所属するポンプ点検会社の社長から「上の会社から3日だけ人を出すよう頼まれた。(現場の状況が)ひどかったら途中で帰ってきていいから、とりあえず3日間だけ行ってくれないか」と言われ、同原発へ。作業内容は不明のまま駆り出されたが、現地に着くと、使用済み核燃料共用プールの電源復旧のためにケーブルをつなぐ専門外の作業を指示された。「とにかく人をかき集めて電源復旧をやっている感じだった」 現場で経験者から指導を受けながら作業を進めたが、「初めてなので手間取って時間もかかったし、余計な線量を食った」。当時は線量計が足りず、6人のグループに1台だけ渡されたという。
 作業は放水の合間だったため、午前2時までかかったり、朝6時から始めたことも。待機場所の免震重要棟は「すし詰め状態で大人1人が寝っころがるのがやっと。仮眠も取れないのがきつかった。まともにやったら2日で限界」と振り返る。 結局、3日間で計約12時間働き、線量計の数値は国が特例として引き上げた上限の5分の1、以前の上限の半分に当たる約50ミリシーベルトに達していた。「普段そんなにいくことはまずない」。日当は通常なら1日1万5000円程度だが、今回は事前に決まっていない。ただし「同じような仕事の募集が日当17万円だったらしい」。3日で50万円になる計算だ。

 男性の放射線管理手帳は、この作業時とは別の、震災前に登録していた元請け会社が管理しており、手元にはない。「ずっと自分の手元に帰ってきてないから(今回の線量が)載っているかどうかは分からない」。確認しようにも震災前の元請けは震災後、事務所が機能していない。「自分の手帳を戻すのは困難」と、今後に不安を募らせる。
 3次下請けで原発の補修に当たる建設会社社員の男性(28)は線量管理があいまいになっていることについて「そうでもしないと原発を止められない感覚があるのではないか」と指摘する。その上で「手帳の管理は下請けによって違う。将来の仕事を受注するため(社員の線量を低くしようと)下請け会社が手帳に今回の数値を載せないことも考えられる。会社は仕事をもらえるかもしれないが、結局ババを引くのは作業員だ」と訴えた。
 元原発作業員が東電に損害賠償を求めた訴訟で原告代理人を務めた鈴木篤弁護士の話 原告は4年3カ月の累積70ミリシーベルトで多発性骨髄腫を発症したとして労災を認められた。250ミリシーベルトの上限自体が高すぎる。それを別枠にするなどむちゃくちゃだ。被ばく線量を証明できても裁判所はなかなか発症との因果関係を認めない。きちんと線量管理がされなければ、作業員が損害賠償を請求しようとしても基礎的な事実さえ証明できなくなる恐れがある。

「原子力発電所の清掃」などの求人に申し込み殺到 勤務3時間、時給1万円
 緊張状態が続く福島第1原発が、意外な形で注目を集めている。愛知県の人材派遣会社が、3月末から募集した現地作業員の募集が、締め切りを待たずして早々に定員(10人)に達したのだ。(夕刊フジ)
 この会社の募集要項によると、勤務地は「福島県」とあり、仕事内容は「原子力発電所の清掃、修復工事の補助」、「防護服や保護具などを身につけて一日3時間ほどの作業」とある。 採用担当者のうたい文句は《東北地方のかたのお手伝いをしに行こう!! 福島の原子力発電所での仕事です。この言葉を聞いてイメージするものはいろいろあると思います。ですので今回は、~のためと割り切れる方の募集をお待ちしております》。「~」の部分は応募者の想像に任せるのだろうが現場が原発なのは間違いない。
 勤務時間は午前8時から午後5時のうち3時間程度で、不定休ながら時給は1万円と高額。応募条件は「普通免許がある方大歓迎」。基本的に学歴、経験、資格は一切不問という。 実はこの募集、3月28日に公開され、翌々日の締め切りだったが、今月に入り4月末まで延期された。ただ、10日から11日にかけて、高額報酬を求める人が集まるサイトで話題になった途端、人材派遣会社のアツい呼びかけ(?)と、採用のハードルの低さが相まって応募が急増したようだ。
 この急募を短期で稼げる仕事とみるか、未曾有の国難に立ち向かう機会ととらえるか。呼びかけに応じた10人は、全世界が注目する「フクシマ」へ乗り込むことになる。

4/12
原発関連の死者3人、負傷29人
 枝野官房長官は12日の閣議後会見で、東日本大震災に関連した原子力発電所関連の死傷者が、10日現在で32人にのぼると発表した。 死者は3人で、うち2人は福島第一原発で震災直後に行方不明になり、4号機タービン建屋の地下で遺体で見つかった。残る1人は福島第二原発で地震によって倒れたクレーンの下敷きになって死亡した。一方、負傷者は東京電力社員14人や協力企業が11人。事故対応にあたった自衛隊員4人も負傷した。
 また、放射線の被曝線量が100ミリシーベルトを超えた作業員は21人で、政府が定めた事故復旧時の被曝線量の上限である250ミリシーベルトを超えた作業員はいないという。
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「250ミリシーベルトを超えた作業員はいない」は、まったく根拠がない。今後、厳しい調査が必要だ。

原発作業員、体内被曝量「わからない」 検査求める声
 高濃度の放射能に汚染された福島第一原発の復旧作業にあたる作業員の間で、放射能への不安から早期に体内の被曝量を検査するよう求める声が高まっている。第一原発の被災後、その検査が十分にできない状態が続いているという。
 体の表面についた放射性物質はシャワーで洗い流せるが、呼吸で体に入った放射性物質の一部は体内に蓄積される。東京電力などによると、体内の被曝量を測る機械「ホールボディカウンタ」は、第一原発内に4台設置されているが、被災後は使えない状態。機械を積んだ車両を他の原子力関係機関から借り、いわき市内で検査している。

 だが、復旧のため短期に作業員を大量動員した非常事態の中で、初めて原発内に入る作業員の入所時の検査は行われていない。成人男性の平均的な被曝量を見積もって、その後の被曝量の上積みを測るやり方にしているという。
 また、以前から原発の放射線管理区域内で働いていた作業員は、被曝前歴などを記した「放射線管理手帳」を持っているが、避難指示が出ている第一原発周辺に事務所がある企業が多く、手帳を取りにいけないまま作業に入っている人もいるという。  こうした状況に加え、3月中は放射線量を測る携帯線量計が不足し、グループで1台だけ持たせる状態だった。このため、作業員から「体内の被曝量もどれだけになっているか、わからないのではないか」と不安を訴える声が出ていた。

 原発に入所後のホールボディカウンタによる検査は3カ月ごとと定められているが、作業員を派遣している協力企業幹部は「危険な環境にいる全作業員対象で、早期に検査を受けさせるべきだ」と強調。他の電力会社関係者も「現場に詰めっぱなしの東電やメーカー幹部の体も心配で、調べる必要がある」と話した。
 安斎育郎・立命館大学名誉教授(放射線防護学)は「呼吸や食事などで放射性物質を体内に取り込む内部被曝は、放射線を体の中から長時間浴びることになるので極めて危険。専用のマスクなどでしっかりと予防することが重要だ。内部被曝は検査をしなければわからない。作業員の不安を和らげるためにも、ホールボディカウンタなどで検査しながら作業することが望ましい」と指摘した。
 東京電力広報部は「必要に応じて、定期的な検査も検討していく」としている。(朝日・小島寛明、奥山俊宏、佐々木学、中村信義)
〈ホールボディカウンタ〉身体を透過してきた放射線を検出するなど精密な検査をする機械。各電力会社は、放射線管理区域内の業務従事者について、入所時、3カ月ごと(女性は1カ月ごと)、退所時などに体内の放射線量を測定している。

4/10
福島第一原発、作業員が体調不良で病院搬送
 東電は10日午後4時半過ぎに記者会見し、福島第一原子力発電所で作業中だった協力会社の作業員1人体調不良を訴え、病院に搬送されたと発表した。 東電は、作業員に放射性物質の付着はなく、被曝線量も計画線量以内だったとしている。 東電によると、10日朝から2号機の排水ホースを設置する作業をしていた30代の男性作業員1人が午前11時10分に体調不良を訴えた。 医療関係者を伴い、点滴を受け、午後2時半過ぎ、病院へ搬送された。意識はあり、自力歩行も可能という。(読売)
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 また一人、「福島第一原発の「現場」で、名前も顔も知れず、匿名のまま、被曝し」、「自衛隊や機動隊、消防隊のように、マスコミに讃えられること」も「脚光を浴びること」もなく、「病院に担ぎ込まれた」人が出た。
 東電は、この「協力会社の作業員」の被曝線量と「計画線量」がどの値をさしているかも明らかにすべきだ。読売の記者はそれを東電に要求し、追跡取材をすべきである。

「作業員の安全」と「原発収束」と…復旧作業対応に苦慮
 「作業員の安全」か、「原発事故の収束」か――。高濃度の放射能に汚染された福島第一原発で、復旧作業員に危険を強いることへの懸念が高まっている。放射線被曝(ひばく)への補償・手当の見直しなど、課題は山積みだ。「仕事に『命がけ』があっていいわけがない。でも、今回、原発を抑え込むことの重要性は、労働政策の域をこえた問題だ。労働者の安全とどちらが優先されるべきか、自信が持てない」。未曽有の事態を前に、厚生労働省幹部は揺れる心情(???)を打ち明けた。
 作業環境は日に日に悪化しつつある。同省は、東電が作業員に放射線量を測る携帯線量計を持たせずに作業していたため、調査を開始。現場への立ち入りが難しい中、「問題点には厳しく対処していく」という。それでも、厚労省職員の胸中は複雑だ。「『原発の危機を早く収束させてほしい』という国民の期待が大きい。労働者の安全確保に影響するのでは」と今後を懸念する見方も出ている。
 3月22~27日に第一原発に入っていた経済産業省原子力安全・保安院の横田一磨・福島第一原子力保安検査官事務所長によると、現在、第一原発の敷地内で、防護服を着ずに過ごせるのは、外気が入らない特殊な構造になっている「免震重要棟」(2階建て)だけ。ケーブル敷設や水の除去などを終えた作業員たちは入り口で防護服やマスクを脱ぎ、下着1枚になって放射線量の検査を受けたうえでこの棟内に入る。発電所に泊まり込んで作業している人が多く、防護服や替えの下着も不足しがち。作業は山積みだが、原発内にとどまる時間が長くなれば、浴びる放射線量は多くなる。

 東電労働組合は震災発生後、経営側に「徹底した安全管理を」と申し入れ、現場の放射線量や作業員の健康状況などの情報提供を受けてきた。電力総連関係者は「放射線量が規制値を超えないよう人海戦術の作業が必要になっている。労働組合が作業員の環境を細かく把握し、安全に作業できるように支援する必要がある」と話す。
 作業環境を心配する声が高まる一方、作業員らが危険を覚悟で臨んでいることも事実だ。 ある東電関係者は「作業員たちは『とにかく自分たちで何とかするしかない』という思いを話している」と言う。作業員を出している協力会社も、派遣される可能性がある社員対象にアンケートを実施。「派遣を拒否できる」ことや、拒否しても査定にも影響しないということを明示したが、全員が「行きたい」と答えたという。 別の東電幹部によると、1~4号機で深刻なトラブルが連鎖的に起こり、本社、現場ともその対応だけに追われ、作業員の安全管理まで配慮できなかったのが実情だという。「平時と比較すると、安全管理は機能マヒと言えた」。作業のローテーション制が復活するなど、再び態勢を整えつつあるが、東電幹部は自省を込めて語った。「いまだにトラブルがやまない状況で、会社が作業員の心意気に頼っている面は否めない。安全管理と原発事故の収束を両立させないと、最終的に東電は厳しい批判を免れない」

■補償・手当増額の動き
 危険な作業への当面の対応策として、作業員らの補償や手当を引き上げる動きが出ている。ある厚労省職員は「それが出ればいいというものではない」としつつ、「作業員に対する何らかの手当の上積みが必要だ」と指摘した。
 即応したのは官側だ。防衛省は3月24日、原子力災害に対処する自衛隊員が任務で死亡したり、障害が残ったりした場合に支払われる「賞恤(しょうじゅつ)金」を通常の1.5倍に引き上げた。死亡時の最高額は9千万円、障害が残った場合は7560万円。イラク派遣や、ソマリア沖の海賊対処と並ぶ基準で、同省担当者は「任務の危険度、困難さを考慮すれば、イラクやソマリアと同じレベルと判断した」。
 これに対し、東電側の動きは鈍そうだ。3月31日の会見で、「危険手当を増額する予定はないのか」と聞かれた同社の武藤栄副社長は「まずはしっかり安全を確保する。それと、できるだけいい環境を作れるように努めている」と述べ、「現時点ではそこまでは考えていない」と否定した。  ところが、武藤氏は8分後、この問題について再び発言。「大変厳しい環境の中でみんな仕事をしてくれていますので、それに対してしっかり報いていくことは当然に考えなければいけない」と軌道修正をした。  原発内は放射線被曝の危険性によって、低い「A」から高い「C」まで3段階に分かれており、それに応じた金額の作業手当が支給される。だが、東電は、今回のような高濃度の放射線量下での作業を想定していなかったことを認めた。
 作業員派遣会社の中には放射線管理区域での作業が初めてで、通常の危険手当しかない社もあった。原子炉建屋周辺での作業に数十人を派遣している建設会社社長は「そういう手当を設けている社にならって新たに支給することになる」と話した。
 また、東電の協力企業は「危険な作業に従事した社員に、一定の手当を出すことを検討中」とするが、万が一事故が起きた場合については、通常の労災事故と同様の対応をする方針。別の協力企業では、増額などの予定はないが、「法改正や国からの指示があれば、検討することはあり得る(???)」としている。(朝日)
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 上の記事には、いろいろ言いたいことがある。まず、朝日の記者は「原発事故の収束」と「安全管理」が「両立」しえないことをこそ論じ、報じるべきなのではないか。この記者の目線は、あまりに「厚生労働省幹部」・「経済産業省原子力安全・保安院」・「東電関係者」の側に偏向し過ぎている。
 私には「厚生労働省幹部」が「作業員の安全」=被曝を心配し、「揺れる心情」をもっているとはとても思えない。国=厚生労働省幹部は、事故後すぐに作業員の被曝限度量を250ミリ・シーベルトに上げたのだから。「労働者の安全確保」を犠牲にしてでも『原発の危機を早く収束させてほしい』と「期待」しているのは誰よりも国であり、東電本部であるはずだ。私たちにしても、「揺れる心情」など持つ余裕などなかったし、今でもない。

 裏返して言えば、現場作業員の「安全管理」を国と東電が徹底して無視し続けてきたからこそ、事故の被害は「この程度」で済んでいるのである。そうであるからこそ、原発事故は「狂気の沙汰」であり、人間に「常軌を逸したこと」を強いるのだと言える。このことを明確にしない、いっさいの「事故報道」は偽善であり、欺瞞である。
 今後の修復作業の進展、それを伝える報道に一喜一憂するときにも、このことだけは忘れてはならないだろう。

線量計不携行で東電に注意 安全・保安院
 東京電力福島第1原発で作業員が線量計を持たずに事故処理している問題で、経済産業省原子力安全・保安院は1日、安全管理上の問題があるとして東電を口頭で注意(???)?したことを明らかにした。通常は「1人1台」だが、地震と津波で線量計の多くが壊れ、チーム代表者だけに携行させた。東電は「現在は必要な数は確保した」としている。
 一方、同原発の2号機タービン建屋外の「トレンチ」と呼ばれる立て坑内と建屋脇の地下水から高濃度の放射性物質の汚染水が見つかった問題で、保安院は1日、分析に誤りがあるとして、東電に再評価するよう指示した。対象の放射性物質は「テルル129」など。ヨウ素131など主要核種に変更はないとみられ、保安院は「全体の影響評価が根本的に変わる可能性は低い」としている。 ただし、東電は2号機タービン建屋内の汚染水でも誤った分析結果を公表しており、保安院は「再発防止を徹底してほしい」としている。【毎日・江口一】

東電、1号機の高放射線量を事前把握 作業員らに伝えず
 3号機タービン建屋内で起きた作業員3人の被曝で、3人が作業に入る6日前の18日、水がたまっていた1号機のタービン建屋地下で高い放射線量を確認しながら、東電は作業員らに注意喚起をしていなかったことがわかった。東電は「情報共有が早ければ(???)被曝を防げた可能性があった」と認め、謝罪した。  東電福島事務所によると、6日前の18日、1号機のタービン建屋地下1階で作業した際に放射線量を測定、作業員の被曝線量の上限(250ミリシーベルト)に迫る毎時200ミリシーベルトと高いことを確認していた。 一方、3人の作業員が3号機で作業を始めたのは、24日午前10時半ごろ。作業員には1号機の情報は伝わっていなかった。
 3号機では前日にはなかった水が深さ15センチになっていたが、3人は前日の作業では線量が低かったこと、「タービン建屋は通常、線量が高い場所でない」と思っていたことなどから、水につかって作業をして、被曝した。18日のデータが事前に伝わっていれば、作業員らの思い込みを防げた可能性がある。  東電福島事務所の小山広太副所長は「1号機の現場の状況の情報をしっかり各現場で作業している人たちに注意喚起していれば、今回の被曝は防げたと思っており、反省している(???)」と謝罪した。(朝日新聞より抜粋)

保安院「作業のやり方十分ではなかった」 作業員被曝
 東京電力福島第一原子力発電所で24日、復旧作業中の作業員3人が被曝し、うち2人が病院に運ばれた。東電は、くるぶしまで水に漬かったために足の皮膚に放射線を浴び、やけどを負った可能性も否定できないとしている。 2人は救急車で福島県立医大病院(福島市)に搬送された。自衛隊のテントや病院内で体の外側の放射性物質を取り除く「除染」を受け、専門医らの診察を受けた。  吐き気など、全身に大量被曝した際に起きる急性放射線障害の症状はないが、水に漬かった部分には、局所的に高線量の放射線を浴びる「局所被曝」が起きた可能性がある。これは放射性物質に直接触れた場合などに起こる。
 東電は、水に浮いた汚染物質が足の皮膚に付着し、被曝による「ベータ線熱傷」が起きた可能性もあるとみる。ベータ線は放射線の一種。 島崎修次・日本スキンバンクネットワーク理事長(救急医学)は「表皮よりも深い部分まで傷つく熱傷で、場合によっては皮膚移植などの治療が必要になる可能性もある」と指摘する。
 東電によると、23日には同じ場所の放射線量は毎時数ミリシーベルトで、床の水も少なかったため、24日は線量を測らずに作業を始めた。被曝線量が毎時20ミリシーベルトを超えると警報音が鳴るアラームを着けていた。警報音が鳴ったかどうかは不明。一緒に作業していたもう1人は長靴をはいていて汚染がなかったが、2人はくるぶしくらいまでの短靴だった。 経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は24日の会見で、作業員が高線量の被曝をしたことを踏まえ、「作業のやり方は十分ではなかった」と述べ、特に施設内の水に注意が必要だと指摘した。
 東電によると、福島第一原発の事故で被曝線量が100ミリシーベルトを超えた作業員は累計17人になった。 (朝日新聞)(⇒「十分ではなかった」「作業のやり方」の法的責任の所在がどこ/誰にあるのか、この事態の「収束」後(いつ?)、問題になるだろう)

福島第1原発:長靴はかず足ぬれ 安全管理に問題か
 第1原発3号機で24日、復旧作業にあたっていた男性作業員3人が、高い放射線量の被ばくをしていた可能性があることが判明した。ベータ線による熱傷の疑いがあるという。
 場所は、原子炉建屋の隣に建つ発電用のタービン建屋。通常は原子炉建屋に比べて、放射線量の低い場所だ。3号機では原子炉建屋の水素爆発など、トラブルが相次いでいる。作業の手順に問題はなかったか。なぜタービン建屋で高い放射線による被ばくが起きたのか。復旧はさらに難航しそうだ。
 原発では、原子炉内で熱した湯から発生する蒸気を使い、隣のタービン建屋に設置された大きな羽根車を回転させて発電する。タービン建屋には、放射性物質を含む蒸気や、蒸気が冷えてできた水が入る復水器があるが、通常は厳重に密閉され、高い放射線量は検出されることはない。一方、福島第1原発では2号機のタービン建屋でも、毎時500ミリシーベルトに該当する強い放射線が確認されるなど、タービン建屋の汚染が問題になっていた。
 東京電力によると、作業員は丈の短い靴で水に入り、足がぬれたという。住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)は「放射線を含む可能性がある水の近くで作業をするなら、防水の長靴をはくなど、防護対策をとるのが常識だ。作業の管理に問題がなかったのか疑問が残る」と指摘する。
 福島第1原発では、水素爆発などが相次ぎ、作業現場の放射線量が高くなっている。従来、原発で働く作業員の被ばく線量の限度は年間50ミリシーベルトで、緊急作業時は100ミリシーベルトだった。厚生労働省は、この事故に対応する特例として、限度を250ミリシーベルトに引き上げた。被ばくした作業員は、放射線を遮蔽する防護服を着ていたというが、高い放射線量を浴びた。 一度に100ミリシーベルト以上被ばくすると、がんになる確率がやや高くなるとされている。

 中川恵一・東京大付属病院准教授(放射線医学)は「発がんの危険性が上がるレベルの被ばくだ。作業員の安全管理を見直すべきだ」と話し、防護服の着用や、被ばく量を計測する線量計の使用法の徹底を求めた。 3号機は、13日に燃料棒が溶ける炉心溶融が起きて大量の水素が発生、翌14日に原子炉建屋が爆発した。その後、屋根が吹き飛んで野ざらしになった使用済み核燃料プールの水の温度が上昇し、大量の水蒸気が立ち上った。 このため、17日からプールを冷やす放水作業を開始。自衛隊のヘリコプター、自衛隊や東京消防庁などのポンプ車による放水が続いている。
 タービン建屋で起きた作業員の被ばくについて、沢田哲生・東京工業大助教(原子核工学)は「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管がある。そこに何らかの損傷があったとすれば重大なトラブルで信じがたい」と話す。 一方、小出裕章・京都大原子炉実験所助教は「今回の被ばくは、敷地全体が汚染されていることの表れだ。電源が回復し、一つ一つの機器を動かしていく段階だが、多くの作業員が大量の被ばくを覚悟しなければいけない。被ばく限度を引き上げても、すぐに限界に達する状態だ。次々と人が必要になるが、特殊技能を持った人員は確保できるのか。先行きが心配だ」と話す。【毎日・下桐実雅子、八田浩輔、永山悦子、河内敏康】

 沢田助教が言う、「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管」に「何らかの損傷」があったとすれば「重大なトラブル」で「信じがたい」という解説に、今回の福島第一原発事故の今後を占う「重大」なカギが隠されている。

 「主蒸気管」。この言葉、しっかり記憶に留めておこう。