2011年4月28日木曜日

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を

 脱原発の「理想論」から「現実論」への一歩は、原発による電力供給地域と需要地域をつなぐ、行政レベルと市民レベル両方の「フォーラム」をつくり、せめて「2050年くらいまでには「原発のない日本」を実現するために何が必要か」を議論することにある。
 もちろん、2050年よりは2040年、2040年よりは2030年の方が望ましいのに決まっている。しかし、現状では2030年までに日本から原発をなくすことは不可能であり、2040年でもかなり困難である。だから、「せめて2050年までには」と現実的なラインで構想する以外にない。いずれにせよ、その「フォーラム」において、

①首都圏や京阪神など原発の電力供給に依存する大都市圏の電力需要・消費のあり方と、
②原発の利益誘導にがんじがらめ状態となり、原発なくして地域経済も公共事業も成り立たなくさせられてきた「地元」の活性化をいかにしてはかるか、この二つを一体のものとして議論し、
③「原発のない日本」へ向けた具体的・現実的指針や諸政策をまとめる、という構想になる。

 名称を何にするのであれ、こうした「フォーラム」=政治的・行政的枠組みを作ること抜きに、政財官一体で国策として推進され、産官学連携の「原子力複合体」が構築してきたこの国の原発政策を抜本的に転換することは、とてもじゃないができないだろう。とりわけ重要なことは、「原発推進と一体化した自然/再生エネルギー強化」論を論破しうる政策内容を脱原発派がしっかり打ち出すことである。
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橋下知事「脱原発」構想、関西広域連合で提案へ
 東日本大震災による福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故を受け、大阪府の橋下徹知事は27日の記者会見で、関西に電力を供給する原発の新設や運転期間の延長をストップさせるとした「脱原発」構想を明らかにした。28日に大阪市内で開かれる関西広域連合の会合で、原発に頼らないための代替エネルギー開発や節電対策を検討するよう、各知事に提案する。
 橋下知事は「まず原発1基を止めるためには何をするべきかを示したい。節電は住民の相当な負担となるが、関西の府県民の総力を挙げて今こそ真剣に考える時期だ」と述べた。自動販売機やパソコンの節電などを業者や府民に求めていく考え。既存の原発の即時廃止は求めず、ライトアップなどの観光施策や産業に支障を及ぼさない案を考えるという。また橋下知事は、関西電力なども交えて、代替エネルギーなどについて協議していく意向も示した。
 関電は福井県内に11基の原発を持ち、自社発電量に占める原発の割合が54%に上るほか、同県の日本原子力発電敦賀原発1、2号機からも供給を受けている。(読売)
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 私は、この間の「橋本路線」に対しては異論も多々あるが、大阪出身の人間の一人として上の「脱原発」構想には賛同する。
 しかし、少なくとも新聞報道を読む限り、橋本脱原発構想には、原発漬けにされてきた「地元」の「原発からの解放と自立」が論点に含まれていない。つまり、関電の原発による電力供給の最大の「恩恵」を受けてきた大阪、神戸、京都など関西の大都市圏が福井県など「地元」のために何をするのか/できるのか、そういう視点が欠落しているのである。これでは「地元」の反発を招くだけだ。その意味においても、関西広域における行政主導の「脱原発」構想に対する、市民サイドの関与と批判を含めた対案の提示が関西の脱原発運動には求められている。

 脱原発をお題目、スローガン一般に終わらせずに、説得力のある議論を積極的に打ち出すことができるかどうか。脱原発派の「絶好のチャンス」と受け止めたい。

〈首都圏における脱原発の具体的・現実的議論を〉
 関西圏もさることながら、問題は首都圏だ。というより、東京である。東京都政と都民の原発依存体質をどうするか。「脱原発なんてできっこない」と断言してはばからない、再選された石原都政に関して言えば、状況はきわめて絶望的だ。

①〈脱原発の政治的受け皿の不在〉をどうするか? 


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浜岡原発3号機:7月に再開…中部電力計画、実現は不透明
 中部電力は28日、定期検査中の浜岡原発3号機(静岡県御前崎市)を7月に運転再開することを前提にした12年3月期の業績予想を発表した。地元自治体などからは、福島第1原発事故の深刻化を受けて浜岡原発の津波対策などを不安視する声も高まっており、実現できるかどうかは不透明だ。
 浜岡3号機は昨年11月下旬に定期検査に入り、当初は4月中の運転再開を目指していた。しかし、東日本大震災による福島第1原発事故後、国は全国の原発に緊急安全対策の実施などを要求。同社は高さ15メートル以上の防波壁設置や非常用電源の確保など総額300億円規模の緊急対策をまとめ、5月上旬の国による評価後の運転再開を目指していた。
 水野明久社長は会見で「企業として業績見通しを示すことも責務」と述べ、浜岡3号機を再稼働せず既存の火力発電所に偏った電力供給を続けた場合は、1カ月当たり約60億円の負担増になるとの試算を公表。その一方で、水野社長は「スケジュールありきではない」とも語った。 運転再開時期を7月に設定したのは、夏場の電力需要が高まることに加え、電力不足に陥る東京電力への火力発電所用液化天然ガス(LNG)の融通などを考慮したため。中電がまとめた緊急安全対策への国の承認が得られれば、3号機の運転再開に地元自治体の同意などは法的に必要ない。ただ、同社が今後新たな建設を目指す浜岡6号機などの着工には静岡県などの同意が必要で、地元の意向を無視して3号機を再開させるのは事実上不可能。【毎日・工藤昭久】

停止原発の再起動、国指針ないと困難 立地9知事
 川勝平太知事は26日、全国知事会に先立って開かれた原発立地9道県知事の非公開会合で、定期点検中の浜岡原発3号機など停止中の原発の取り扱いがテーマになったことを明かし、「国の指針が出ないと再起動もできないというのが共通認識だった」と述べた。原発立地自治体で独自の検査機関を設立する必要性でも一致したとし、「中立的な立場から今回の原発事故の検証をしっかり行わなければならない」と強調した。
 このほか、川勝知事は全国知事会の席上、東日本大震災発生後に知事会から県に支援派遣の指示があるまで6日間を要したと指摘し、経緯の説明を求めるとともに、「指揮系統が明確でないと、支援したくてもかえって混乱を増幅することになりかねない」と体制の見直しを要望した。知事会の山田啓二新会長は「指揮系統と割り振りがあやふやだった。検証して来るべき災害に備えたい」と応じた。(静岡新聞)

原発津波対策「堤防だけでは済まぬ」 御前崎市長
 東日本大震災で被災した原発立地町村の首長らを訪問している御前崎市の石原茂雄市長は26日、女川原発のある宮城県女川町を視察した。甚大な津波被害を受けた町の姿を目の当たりにし、「すさまじい被害。(今後は御前崎市も)防災を最優先に考える」と強調。津波対策として中部電力が浜岡原発(同市佐倉)に建設を計画している高さ12メートル以上の防波壁については「12メートルでいいというわけにはいかない。堤防だけでは済まない」と、さらなる対策の必要性を指摘した。
 石原市長は女川町内を訪れ、安住宣孝町長と面会した。「(津波が来た時は)庁舎の屋上にいたが、流された家や船が庁舎にぶつかってきた」などと安住町長から震災当時の状況や現在の町の様子を聞いた。
 面会後は、同行する市の防災関係者とともに辺り一面の建物が倒壊した町内を視察した。海岸近くに市街地のある御前崎市を踏まえ、「高台への住宅の建て替えの推進など、津波対策を早急に進める」と力を込めた。
 石原市長は同日、福島県会津若松市に避難している大熊町の渡辺利綱町長も訪ねて、東京電力福島第1原発を抱える同町の避難状況などについて意見を交わした。面会後、原発の安全対策について「国がもう少し力を発揮して進めるべき」と話し、全国の原発立地市町村でつくる「全国原子力発電所所在市長村協議会(全原協)」で国に要望していく方針を示した。(静岡新聞)

原発新設凍結など山内氏公約発表
 5月19日告示の知事選に出馬予定の民主党県連幹事長・山内崇氏が27日、選挙公約を発表した。「県政刷新」をスローガンに、基本政策4分野13項目と緊急アピール5項目を示した。原発新設凍結のほか、県病が念頭の「がんセンター」設置や小中学生の医療費無料化など、社会保障分野に重点を置いた。
 青森市の後援会事務所で記者会見した山内氏は「8年間の現県政で青森県は停滞してきた。この閉塞(へいそく)感を打ち破っていく」と強調。基本政策として農林水産業再生、短命県の返上、全国最高水準の子育て支援、地元中小企業対策を掲げた。 社会保障分野では、ドクターヘリ2機体制実現のほか、小中学生の就学援助や保育料軽減に県費を投入する-と明言。農林水産業では「原発事故に伴う風評被害防止対策と補償措置の明確化」、中小企業対策として「信用保証枠の大幅拡大」などを挙げた。
 このほか緊急アピールとして、地域医療総合特区の推進、青森港の物流拠点港化、八戸市への屋内スケート場建設を打ち出した。屋内スケート場については「復興のシンボルとして10年スパンで整備することが大きな目標」と述べた。 2011年度予算の全面組み替えや事業仕分けで事業の財源を捻出するほか、電源3法交付金や核燃料物質等取扱税(核燃税)を震災、雇用、社会保障分野に重点活用する-とした。(東奥日報)
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 この記事からも民主党が「脱原発」政党ではないことがはっきりと理解できる。

韓国、原発5自治体の首長が初会議 安全対策徹底を要求
 韓国で原発がある5自治体の首長が26日、南部の慶州(キョンジュ)市に初めて集まり、原発事故に備えた安全対策の徹底や情報公開を政府に求める意見書を採択した。韓国初の原発で、故障で運転停止している古里(コリ)1号機を抱える釜山市機張(キジャン)郡の郡守(首長)が呼びかけた。 意見書では、設計寿命の30年を超えて古里1号機の運転を延長した際の判断材料となった評価報告書の公開などを政府に求めた。機張郡の呉奎錫(オ・ギュソク)・郡守は「国内の技術者だけでなく、国際機関の点検も受けることで国民は安心できる」と述べた。
 ソウルでは同日、今月半ばに福島で調査した市民団体が現地の様子を報告。福島の経験をもとに、原発事故に備えた新たな安全対策づくりを国会に求めていく方針を示した。自宅から約27キロの場所に原発がある慶州環境運動連合の李相洪(イ・サンホン)さん(36)は「福島で目に見えず、においもしない放射能の怖さを感じた。韓国でも事故時の避難対応策をつくり、周辺住民に知らせるべきだ」と話した。(朝日・ソウル=中野晃)
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 「安全対策徹底」がはかられない中、浜岡原発をはじめ停止中原発の再稼働化が画策されている日本にあっても、経産省・保安院、原子力安全委による「評価報告書」の全面的情報公開は絶対に欠かせない課題になっている。

東電事故、電力各社の決算に影響 原発再稼働見通せず
 東京電力の原発事故が、ほかの電力会社の経営に影響を与えている。原発への不安の高まりから、定期検査で止まっている原発の再稼働時期を見通せないためだ。27日から始まった電力会社の決算発表では、3社のうち2社が、2012年3月期の業績予想を明確には公表できなかった。 九州電力は、12年3月期の業績予想の公表を断念した。業績予想の公表を始めた89年以来、初めてのことだ。記者会見で真部利応社長は「玄海原発の再開見通しが立たないことが一番大きい」と説明した。
 玄海原発2、3号機は震災前から定期検査中で、3月下旬~4月上旬に順次運転を再開する計画だった。そこに東京電力の原発事故が発生。「地元の理解を得るのが難しい」ため、運転再開の見通しが立たない。 原発の停止中は火力発電の量を増やすため、1日6億円のコスト増になる見込み。中東情勢の悪化で原油価格は上昇しており、影響額が拡大する恐れもある。電力需要が増える夏場には供給力が不足する恐れもあり、真部社長は「非常に厳しい状況」と話す。
 北陸電力は、11年3月期決算は販売電力量が過去最高で、増益増収だった。しかし、志賀原発の再稼働が見込めず、12年3月期の業績予想を出せなかった。
 関西電力は、12年3月期の業績予想を発表した。「猛暑で過去最高だった販売電力量が落ち込む」(広報)として、営業利益は前期比30.6%減と予想したが、原発の稼働率は震災前の想定より2%しか下げていない。 八木誠社長は記者会見で「信頼回復、安全対策をしっかりやって、原発を立ち上げることに専念している」と強調した。ただ、関電内部には「定期検査中の原発は、一応どこかで立ち上がるとみて決めた。計画どおりとは限らない」(幹部)という声もある。(朝日)
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〈で、東電をどうするか?〉問題
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・東電役員報酬 経産相「50%カットでは足りない」
 海江田万里経済産業相は28日の閣議後会見で、福島第1原子力発電所の事故を受け、東京電力が打ち出した役員報酬の最大50%カットについて、「まだカットの仕方が足りないと思っている」と述べた。 海江田経産相は会見で、役員の中で報酬額に大きな差があることを指摘し、「かなり高額の報酬をもらっている方々が、さらにカットすることは当然」とした。一部で役員報酬はゼロにすべきとの声があることについては、「今の世論、国民感情も考えていただきたい」と述べるにとどめた。
 東電は25日、勝俣恒久会長や清水正孝社長ら常務以上の役員報酬を50%カットし、執行役員は40%カットしたうえ、一般職員の年収も約20%カットする人件費削減策を発表した。(産経)
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 私も、「まだカットの仕方が足りないと思っている」。
 しかし、それを政府の立場で言う場合には、政府としての具体案を提示しなければ、無責任の謗りを避けることはできないだろう。東電社員の報酬に関し、私は以前、このように書いた
 「国と東電には、「全執行役員の無給化・資産凍結→差し押さえ、全管理職以上の大幅減給・一切の賞与無し、全社員の最低でも給与据え置き→減給、ボーナス無し」を同時に決定してもらわねばならないだろう。これを「超法規的措置」で断行する必要がある。
 これは非常に、非常に重要な問題だ。「東電ショック」は「リーマン・ショック」どころの話ではない。いずれ近いうちに、東電の破産宣言→日航に続く「公的資金投入」問題→国有化問題(東電をどうするか)が浮上するだろう」。

 なぜ「超法規的措置」が必要になるのか。①「全執行役員の無給化・資産凍結→差し押さえ」は、現行法によってはできないからである。また、②「全管理職以上の大幅減給・一切の賞与無し」が当然のことだとしても、一般労働者の「最低でも給与据え置き→減給、ボーナス無し」を実行するためには、労働組合との関係がでてくるからだ。
 もちろん、国が具体案を提示し、組合との交渉を通じて解決するのが基本である。しかし組合が、とくに「減給」の割合、「ボーナス無し」(もちろん期限付き措置)に対して抵抗を続けることが十分に予想され、それに対する「措置」が必要になるからである。

 数兆円、もしかしたら五兆円を越えるかもしれないと言われている大事故を起こした一般企業が、数十年という歳月をかけて災害被害者に補償・賠償をしなければならないときに、その企業の経営陣が、無給で事故の収拾にあたり、同時に自らの資産を投げ打ってまでも最後まで社会的責任をまっとうするのは、当たり前のことだ。
 また、管理職クラスが「大幅減給・ボーナス無し」となるのも、本人の家族以外に反対する人は誰もいないだろう。これまでの報酬額、その累積を考慮すれば、「月給五割以上カット、ボーナス無し」がごくごく妥当なラインではないか。
 問題は一般社員の処遇である。「年収二割カット」が妥当かどうか。私は、東電の労働組合は「認識が甘い」と言う。読者はどのように考えるだろう?

〈国と自治体の責任〉はどこに消えたのか?
 東電を一企業体として残すかどうか、「発電と供給の分離」問題など、議論しなければならないことは多い。
 しかしその前に、はっきりさせておかねばならないことがある。福島第一原発災害に関する国と自治体の責任問題だ。これはいったいどこに消えたのか?

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枝野氏、賠償支払い上限設定「あり得ない」 東電負担には議論
 枝野幸男官房長官は28日午前の閣議後記者会見で、福島原発事故に関する賠償金支払いに上限を設けることは「被害者との関係ではあり得ない」と述べ、賠償は東京電力と国が責任を持って行う考えをあらためて強調した。金融機関や東電が求めている東電の負担の上限設定に関しては明言しなかった。
 枝野氏は27日の会見で、賠償金について「東電と国の間の負担割合がどうあるべきかは議論がある」と述べ、政府内で調整が難航していることを示唆した。
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 いわゆる「原子力ムラ」=「原子力複合体」とは何か
 産官学連携の「原子力複合体」の基本的組織構造とは、次のような仕組みになっている。
①内閣府
A 原子力委員会
B 原子力安全委員会

②経済産業省
A 資源エネルギー庁
B 原子力安全・保安院→原子力安全基盤機構
C 総合資源エネルギー調査会→原子力部会、原子力安全・保安部会
  
③文部科学省
A 日本原子力研究開発機構
B 日本原子力研究所
C 核燃料サイクル開発機構

④民間原子力業界組織
A 電気事業連合会  
B 日本原子力産業協会
C 日本原子力技術協会
D 日本原燃
E 国際原子力開発

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(つづく)

2011年4月25日月曜日

脱原発への道筋:  「理想論」から「現実論」への転換を

脱原発への道筋: 「理想論」から「現実論」への転換を

 昨日、統一地方選(後半戦)の投票と重なりながら、東京、静岡、広島、松山をはじめ各地で反/脱原発の集会・デモが行われた。いろいろ思うところ、考えるところがある。
 とり急ぎ、とても重要だと思える記事や情報をランダムに紹介しておきたい。みなさんも考えてほしい。

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ドキュメンタリー作品『100,000年後の安全』GWに緊急トーク付き上映会を開催!広河隆一さん、須永昌博さん、舘野淳さん、飯田哲也さん出演

「期待背かないように」 脱原発訴えた元原告団長
 石川県志賀町議選(定数16)で脱原発を訴えトップ当選を果たした志賀原発訴訟の元原告団長、堂下健一さん(56)。落選した前回の約2倍の1128票を獲得し「町民の期待に背かないよう行動する」と語った。 町内の事務所にトップ当選の報告が入ったのは24日午後11時ごろ。集まった支持者からはどよめきが起き、堂下さんもやや驚いた表情に。全員で万歳三唱して当選を祝った。

鹿児島・いちき串木野市長、川内3号凍結申し入れへ
 福島第1原発の事故を受け、鹿児島県いちき串木野市の田畑誠一市長は25日、隣接する同県薩摩川内市で九州電力が進めている川内原発3号機の増設計画を当面凍結するよう、近く同社に申し入れる方針を明らかにした。 田畑市長は昨年6月、市議会が増設計画に賛成する陳情を採択したことを受け「市民の意見やエネルギー確保の観点から、安全確保を前提に増設を容認できると判断した」と表明していた。(産経)

敦賀市長に河瀬氏5選 原発の安全・防災対策急務
 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故に伴い、立地自治体として原子力政策をどう進めるかが注目された敦賀市長選は、接戦の末、現職の河瀬一治氏が5選を果たした。 緊急時の安全対策など原子力政策では4候補に大きな違いはなく、市政の安定、継続を求める市民の意思が多選批判を上回った。河瀬氏には選挙戦で公約した暮らしやすいまちづくり、これまで以上に分かりやすい安心安全対策の実行を望みたい。
 河瀬氏は、16年前に4人による激戦を勝ち抜き初当選して以来、無投票を含め信任投票に等しく、今回が実質的に初の防衛戦。厳しい守りの選挙を強いられたが、「経験と実績」で新人候補の追い上げをかわした。 河瀬氏の得票率は半数に遠く及ばず、多選批判をクリアしたとは言い難い。告示後に同市の有権者を対象に実施した本紙世論調査でも、首長任期は「3期まで」とする回答が約73%を占めた。4期16年の実績が一定の信任を得たとはいえ、多選の弊害に対する声は根強い。市政運営では組織の硬直化に陥らぬよう、市民の目に見える形で変革を示すことが必要だ。

 福島原発事故を受け、原子力行政のあり方が最大の注目点となり、市民の意識や各候補の原子力政策がクローズアップされた。だが、現職、3新人候補とも「安全を一から見直す」「安全確保を見極めたい」などニュアンスこそ異なるが、安全対策を確立した原発との共生は同じで、対立軸とはならなかった。 背景には市民の原発依存意識が働いている。敦賀原発1号機の建設開始から45年が経過。その間、2号機、高速増殖炉「もんじゅ」が増設された。電源三法交付金や固定資産税など原発関連収入は市歳入の約15%を占め、財政を潤してきた。 電力関係や建設、定検などに直接かかわる作業員のほか、飲食業など間接的な経済波及を含めれば市民の多くがその恩恵を受け、原発抜きには地域社会を語れない状況がある。
 本紙調査でも原子力対策が28・6%と「力を入れてほしい政策」のトップに挙がった。さらに原発のあり方については、安全神話が崩れた状況の中で「これまで通り運転継続」と「止めずに安全対策を充実」が計73・5%にも達した。事故が起きないことを前提とした回答と思われるが、原発が止まることによる経済、雇用への不安も浮き彫りとなったといえよう。 一方、原発事故で市民が不安を覚えているのも事実だ。避難道路・避難場所の整備など防災計画の見直しを求める声も高まっている。国の新たな指針も策定されようが、隣接自治体を含め住民が安心できるよう、安全対策に早期着手するなど首長の責任がこれまで以上に問われる。その財源確保も課題だ。 3、4号機増設は着工時期が不透明となった。延期となれば地域経済に影を落とし、市財政にも多大な影響が及ぶ。日本海側拠点港を目指す敦賀港、中心市街地活性化、老人福祉や教育問題など喫緊の課題ばかりだ。選挙で把握した生の声の市政反映を望むとともに、公約の進ちょくを注視したい。 (福井新聞)

「原発安全、今こそ肝に」 嶺南住民・新選良への声
 福島第1原発事故の惨状や、避難生活を余儀なくされる人々の苦悩を目の当たりにしてなお、原発とともに歩まなければならない本県の原発立地、準立地の住民。「今こそ住民の代表者という自覚を」「地元で安心して暮らせるという当たり前のことを守って」。原子力政策をめぐる新選良への期待は、過去に例を見ないほど切実で深刻だ。24日誕生した新首長、市町議に求める嶺南住民の声を聞いた。
【対策徹底】
 福島第1原発は地震と津波に耐えきれず、深刻度はチェルノブイリ事故並みとなった。このため「絶対安全と言えなくなった」「敦賀でも同じような状態になる可能性がある」などとし、多くの住民が安全性確保への行動力を求めた。運転開始から40年以上経過した原発を抱える敦賀市民からは、廃炉にまで言及した強い意見があった。自営業男性(64)は「福島第1原発と同じ炉型の日本原電敦賀1号機の津波対策を万全に」と求めた。主婦(67)や会社役員男性(50)も「40年が経過した敦賀1号機はできたら止めてほしい」「廃炉も視野に安全対策を徹底してほしい」などと訴えた。
【市町連携】
 立地と準立地の連携を密にして「万が一」に備えよう、との意見も準立地の小浜市を中心に上がった。 同市の自営業男性(63)は「福島の事故で警戒区域となった20キロ圏内に小浜市はほぼ全域が入る」とし「立地地域と同じような原子力防災を考えなければならない」と訴えた。別の会社員男性(47)も「小浜はほかの市町に比べ、事故が起きたときの対策が十分でない。周辺市町と連携し、地域全体で訓練することが必要」とした。
【地域経済】
 「地域経済のための原発」を認識した上で安全確保や利益還元を訴える住民も。高浜町の団体職員(50)は「将来にわたってリスクを背負っている。地元にしっかり利益を還元できるよう事業者に働き掛けるべきだ」と話した。 おおい町の遊漁船業者(60)は、福島の事故以降、利用客が減少した点に触れ「風評被害がないよう住民の声を行政や事業者に働き掛けてほしい」と訴えた。 「老朽化した原発を止めて」とした敦賀市の主婦や会社役員男性も「市の財政を考えると原発は必要」という認識に立っており、徹底した安全対策を求めた。
【新エネルギー】
 新しいエネルギーへの転換や原発依存から脱却した市政運営を探るよう求める声もあった。高浜町の主婦(43)は「今ある原発を使いながら風力などの自然エネルギーも考えてほしい」。別の主婦(62)は「怖い思いをしてまで原発を推進してほしくない。自然エネルギーに転換して」と述べた。 敦賀市の女性(24)と会社員男性(51)は「原発に頼らない市政運営が必要」「原発依存の財政体質からの脱却を視野に」などと語った。 新選良の実行力に期待する声は大きく、おおい町の公務員男性(27)は「原発への危機意識が高まっている今こそ、町民の代表者という自覚と高い意識を」と訴えた。同町の女性は(50)は「地元で安心して暮らせるという当たり前のことを、住民は今一番求めている」と最後に付け加えた。(福井新聞)

「反原発」3人中2人当選
 山口県平生町議選は新議員12人が決まった。福島第1原発の事故を受け、隣接する上関町で進む原発建設計画の是非も争点化。反原発を掲げた候補3人のうち2人が当選し、住民の一定の支持を得た。 現職3人が引退し、現職9人、元職1人、新人4人が立候補。建設中止を訴えた3人は「原子力行政の誤りを正すべきだ」などと主張した。他の候補は原発事故も想定した防災対策の見直し、経済活性化、議会改革などを唱えた。「原発問題は国策」として触れない候補も目立った。 当選者の内訳は現職8人、新人4人。党派別は共産1人、無所属が11人となった。当日有権者数は1万766人。投票率は66・58%で前回を0・01ポイント上回った。(中国新聞)

玄海原発再開、佐賀知事が先送り「国の判断待つ」
 佐賀県の古川康知事は25日の定例会見で、発電再開を延期している九州電力玄海原発2、3号機について「(九電が国に提出した緊急安全対策の報告書に対する)国の判断結果を待ちたい。独自に判断するのは難しい」と述べ、県としての方針決定を先送りした。 古川知事は原発から半径10キロのEPZ(防災対策の重点地域)について「今までの決まりで十分とはならないだろう。どこまで拡大するか議論すべきだ」として対象範囲の見直しを表明。合わせて、東京電力福島第1原発の事故に関する情報収集や、防災計画の点検などに当たる原子力防災チームを新設すると発表した。

岩内町、泊原発に「段階的廃炉も」
 共同通信が実施した原発立地や隣接する市町村アンケートの自由記述欄には、福島第1原発事故をめぐり東京電力や政府への不信感がぶちまけられた。このうち、原子炉の存続について、泊原発のある後志管内泊村隣接の岩内町は択一式の質問に「条件付き継続」としたが、「自然な流れでは『段階的に廃炉』という気も」とした。  一方、事故原因について、大間原発が建設中の青森県大間町に隣接する風間浦村は「地震や津波に関する各種団体の提言を無視した」と批判している。(北海道新聞 4/24)

泊原発、7町「安全でない」 30キロ圏首長アンケート 地元4町村は「安全」
 東京電力福島第1原発事故を受け、北海道新聞社は18日、北電泊原発(後志管内泊村)から半径30キロ圏内の後志管内13町村の首長を対象に行ったアンケートの結果をまとめた。泊原発の安全性について、約10キロ圏内の地元4町村を含む5町村が「安全」と答えたのに対し、7町が「安全ではない」と回答。泊原発の今後のあり方では、2町が運転を停止した上での点検を求め、2町が3基ある原子炉を老朽化した順に廃炉とするよう主張した。  泊原発事故を想定した道の地域防災計画は事故が起きた際、半径約10キロ圏内の泊、岩内、神恵内、共和の地元4町村を避難対象地域と定め、避難計画や道、北電との連絡態勢を整備。赤井川や余市など、おおむね10~30キロ圏内の9町村は対象外だが、福島第1原発事故では半径30キロ圏内が避難対象区域や屋内退避区域となっている。
 アンケートでは「現在の泊原発は安全か」との質問に対し、地元4町村と仁木町が「はい」と答え、赤井川村は無回答だった。「いいえ」と答えた7町のうち、寿都町の片岡春雄町長はその理由を「(福島の事故は)原発の安全神話を一変させた」とした。

 泊原発の今後のあり方を聞いた質問(選択回答)では、倶知安町と蘭越町が「一度、運転をストップして安全を確認してほしい」との回答を選び、このうち蘭越町の宮谷内留雄町長は「道民が納得する十分な安全確認」を求めた。 寿都町と仁木町は「運転を続けても良いが、老朽化した原子炉から順番に廃炉にしてほしい」を選んだ。  一方、泊村と岩内町は「現在のまま運転を続けてよい」を選択。残る7町村は「その他」で、「地域住民の安全を最優先に運転されるべきだ」(山本栄二・共和町長)「あらゆる安全対策に直ちに着手すべきだ」(松井秀紀・積丹町長)などと答えた。  また、地元4町村だけを対象にした現行の地域防災計画については、無回答だった岩内町を除く地元3町村が「妥当」と回答。9町村はすべて「妥当ではない」と答えた。  地元4町村とそれ以外の9町村で泊原発への考え方が大きく分かれたことについて、岩内原発問題研究会の斉藤武一代表は「4町村は仕事や電源立地地域対策交付金などの関係で泊原発と関係が深く、原発を否定しづらい雰囲気がある」と指摘する。
 北大公共政策大学院の田中洋行教授(危機管理)は「地元4町村は原発について頻繁に説明を受けているが、9町村は説明を受けていないため、不安を感じるのではないか。原発との関係いかんによらず、北電や道は広く情報を公表すべきだ」と話している。(北海道新聞 4/19)

でも原発必要…島大生の86%
 福島第1原発の事故を受け、島根大法文学部の上園昌武教授(環境経済論)が学生を対象に、原発に関する意識調査を実施した。77%が原発の危険性を認識する一方で、86%が原発は「必要である」と答えた。上園教授は「危険だが必要という矛盾を解決する方法を議論してほしい」と学生に求めている。
 8日の環境問題の講義で、1年生に12問の調査を実施。330人から回答を得た。 原発の安全性について、39%が「とても危険」、38%が「やや危険」と回答した。福島原発事故以降、原発への考え方が否定的になった学生は57%だった。 一方、「日本でエネルギー源として原発が必要か」との設問に対しては、「必要」が51%、「ある程度必要」が35%だった。今後の原発建設について聞くと、推進、現状維持、廃止がいずれも3割台となった。

CO225%削減目標見直し 原発事故に乗じていいか
 東京電力福島第1原発の重大事故で、原子力推進政策の見直しを迫られる状況に陥った。菅直人首相が政府のエネルギー基本計画を見直し、新増設計画を白紙化すると表明。だが、その後は国会論議でも「事故の徹底検証」にトーンダウン。政策の混乱ぶりが浮き彫りになっている。 この影響を受けているのが地球温暖化対策だ。「温室効果ガスの排出量を2020年に90年比で25%削減する」目標を再検討すべきとの声が出ている。日本の将来像も描けない段階で「国際公約」を反古(ほご)にしようという。こんな一貫性のない政策でいいのだろうか。
■十分な議論もなく■ 
 エネルギー基本計画は昨年6月に閣議決定したばかり。54基の原発を20年までに9基新増設。現在60%程度の稼働率を85%に引き上げ、30年までには14基に、稼働率も90%にする考えだ。温暖化対策の中核に位置付けた原発計画が事故で頓挫し、当面火力発電に頼らざるを得なくなったことで、見直し論が出てきた。
 十分な議論もなしに国際的な約束を撤回すれば日本の信頼も傷つく。重要なのは原発の位置づけである。事故を教訓に新たな安全基準を確立し、高経年炉を含め、既存の原発すべてに厳格な評価が必要。その上で基本計画を再構築すべきだ。 環境省の試算では、福島原発6基を廃炉にした分を火力で補うと、目標を約8ポイント下回るという。しかし、わが国は原発を推進しながらも二酸化炭素(CO2)排出量が増加している。再生可能エネルギーの可能性をきちんと評価せずに「原発がなければ排出は減らせない」と決め付けることはできないだろう。
■自然エネ着実に力■
 石油、石炭よりCO2排出量が少ない天然ガスを増やすとしても、自前の新エネルギーが必要だ。風力や太陽光、地熱発電などは技術開発が進展、海外での急速な普及で価格が下がり、着実に力を付けている。 「自然エネルギーは第三の産業革命」と位置付けるNPO法人・環境エネルギー政策研究所は、現在の10%程度の太陽光や水力などの割合をドイツ同様、20年までに電力の30%、50年には100%を目指す中長期的戦略が必要と提言する。原子力への重点的な投資が、省エネや再生可能エネルギー政策をここまで遅らせてきたといえないだろうか。
 民主党内には25%削減見直しに異論もあり、普及策を検討する動きも出てきた。産業界には経営を圧迫する環境対策への反発は強い。原発事故に乗じて25%削減の撤回をもくろむ大企業や一部メディアもあり、削減への拘泥が震災復興の足かせになるとの主張まである。 努力を怠り目先の利潤追求に走るなら、温暖化防止と景気浮揚の両立を目指す日本版「グリーンニューディール政策」は望むべくもない。エネルギー政策と環境政策は密接に関連するものだ。縦割りの弊害を猛省し、長期的かつ持続的な環境エネルギー戦略を構築すべきではないか。

■価値観の転換必要■ 
 今回の事故で、閉鎖的電力市場の問題点も浮かび上がった。大規模集中型から、再生可能エネルギー活用による地域分散型へのシフト、さらに多消費型から低エネ型へライフスタイルを転換することも大切だ。省エネ、リサイクル社会の価値創造など課題は多岐にわたる。日本らしい低炭素社会を見据える時だ。 県知事選で3選を果たした西川一誠知事は会見で「非常に大きな方向として、過度の依存を改めるという基本的な方向が望ましい」とし「時間もかかるが、新エネルギーなどの多角化が必要」と述べた。「大きな方向」「時間もかかる」「望ましい」という表現に、全国最多の原発を抱える自治体の懊悩(おうのう)がにじむ。
 関西圏の電力消費の約半分を担う本県原発が万一、大事故を起こせば首都圏に与えたような影響が出る。知事の言葉は、政策がぶれる政府への問いかけとともに、関西への強いメッセージとも受け取れる。あるべき電力のベストミックスは何か。「電力共同体」として、関西に新エネルギーへの開発投資を促す新たな福井戦略を考えたい。(福井新聞・北島 三男)

「東日本大震災」原子力ムラの過誤 保安院分離だけで解決しない
 福島第1原発事故をめぐる専門家たちの決まり文句といえば「想定外」。己の非を棚上げにする魔法の合言葉だ。
 謝罪しても何を反省しているのか分からない東京電力。人ごとのように事務的説明をこなす官僚。いまだ思想的援助を続ける識者。ひたすら原発を擁護する彼らの共通項は素人にも伝わっていよう。 原子力にかかわる専門家集団の閉鎖性、産官学の構造的癒着は、事故や不祥事のたびに指摘される。その「業界」を「原子力ムラ」と名づけたのは、かつて原子力技術者だった環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也さんだ。  飯田さんは日本記者クラブでの講演で、福島原発事故を「きっかけは天災だが、事故そのものは人災だ」と断罪した。官民にまたがる狭い人脈社会が「国策」をつくり、専門家の「業界」の利益を追求した結果、起こるべくして起こった惨事というわけだ。

 国の原子力行政に致命的問題がある。監督する側も監督される側もムラ社会の一員なのだ。原子力安全・保安院と原子力安全委員会によるダブルチェックの建前が機能していないのは、福島の事故対応をみれば歴然である。安全委に至っては、事故後1カ月以上も委員が現地入りせず、当事者能力さえ失っている。  菅直人首相は国会で原子力行政を根本から見直すと表明した。原子力政策推進の旗振り役である経済産業省から保安院を分離する検討を、ようやく始めるという。独立性の高い規制と監督が保証された組織が必要なのは論をまたない。日本も加盟する原子力安全条約の要請であり、民主党の公約でもあったはずだ。  ただ、保安院の分離だけですべては解決しない。人材の供給源が今と同じでは、推進する側にとってはただ一手間増えるにすぎない。政府が決めた官僚OBの電力業界への天下り禁止も小手先だ。
 組織の見直し作業は一刻の猶予も許されない。原発事故は、当事者である専門家に頼らざるをえない難しさがあるため、知識と技術が人質にとられ、政治に借りができてしまう。事故の収束を待っていては、原子力ムラの体質は温存され、福島の教訓の過小評価につながりかねない。  「想定外」と言い訳する専門家がいる一方、津波による重大事故の可能性を指摘していた専門家は在野にいくらでもいた。立地自治体が規制にどうかかわるかも含め、対抗知見が見いだせる人材を無視してはならない。  原子力ムラの過誤とは、都合の悪い指摘や批判を素人扱いし、排除し続けたおごりと無責任である。科学者による政治への異議であったはずの「民主・自主・公開」の原子力三原則を自ら破壊してきた姿勢を悔い改めるべきだ。(愛媛新聞・社説)

原発計画見直し 首相はビジョンあるのか
 菅直人首相の原発新増設見直し発言が波紋を広げている。東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、一度政府が決定したエネルギー基本計画の白紙化である。政府内、関係機関の十分な協議もなく、唐突感は否めない。わが国の原発偏重のエネルギー政策を見直すことは重要だ。しかし、まずは放射能汚染が拡大する現状対応に政府が死力を尽くすときだ。発言の「真意」が分からない。
 東日本大震災による巨大津波の影響で全電源喪失、冷却機能不全に陥り、炉心溶融や放射性物質の拡散、高濃度の汚染水流出が続いている。類例のない深刻な事態は世界の原発政策にも大きな影響を与え、急速な見直し機運が台頭。脱原発に拍車が掛かる様相だ。 今回の深刻な原発事故は「想定外」だったのか、それとも想定を軽視した「人災」なのか、今後詳細な検証が必要だ。
 国は新潟県中越沖地震の教訓から、2006年に耐震設計審査指針を改訂、各電力事業者は対策を強化してきた。東電は、巨大津波発生リスクが存在すること、また電源喪失による原子炉圧力容器破損の危険性を指摘する研究報告がなされていたことを知りながら、十分な対策を講じなかった可能性が指摘されている。同時に国の安全審査基準や評価のあり方も問われる。
 菅首相の発言は原子力の現状に危機感を表したものだ。トップの政治判断として非常に重い。だが、今の段階では性急すぎる。首相は大震災対応で存在感の薄さが指摘されてきただけに、国内外にアピールするスタンドプレーと勘ぐりたくなる。 政府のエネルギー基本計画は現在54基ある原発を20年までに9基、30年までに14基以上新増設するもの。昨年6月に閣議決定したばかりだ。民主党政権は20年までに温室効果ガス排出量の90年比25%削減を国際公約した。原発推進とともに、安全な日本の原発を海外に売り込む戦略を打ち出し、実績を強調していた。基本政策の大転換を図るなら、「脱原発」へのシナリオを明示すべきである。

 今や総電力の約3割を担う原発。新増設の全面見直しはリプレース(置き換え)や高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開などにも波及する。さらに、地球温暖化防止の推進を図るなら、太陽光や風力、地熱発電など自然エネルギー活用をよほど計画的に、強力に推し進める必要がある。これまでの場当たり的な政策では通用しない。 新増設14基のうち、3基が建設中、11基が着工準備中だ。日本原電敦賀3、4号機も含まれる。河瀬一治・福井県敦賀市長は事故対応を最優先に挙げ、「国策はぶれないことが重要」と国の冷静な対応を求めた。 電力事業者は震災、津波対策を急いでいる。新たな知見が得られれば、反映していくのは当然だ。事故対応と検証、既存原発への反映、安全総点検といった順序を踏まえ、原発の安全基準、評価も徹底的に見直し、原子力政策を再構築すべきである。それが事故当事国としての国際責任ではないか。
 事故対策に廃炉措置、五里霧中の高レベル放射性廃棄物最終処分など難問が立ちはだかる。原発立地自治体を立ち往生させず、経済維持し、国民の信頼感醸成をどう進めていくのか。熟慮とビジョンなき「政治主導」に振り回されるのだろうか。 (福井新聞・社説 4/5)

原発増設見直し「時期尚早」 河瀬全原協会長、官邸に要望 
 東京電力福島第1原発の事故を受け、全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長の河瀬一治・福井県敦賀市長らは4日、首相官邸で福山哲郎内閣官房副長官らに会い、菅直人首相宛ての要望書を提出した。まず原発事故の事態の収束に取り組むとともに、緊急時の代替電源確保などを要請。首相が原発増設計画の見直し方針を示している点に関しては、時期尚早との思いを伝えた。
 河瀬市長や山口治太郎美浜町長、福島県双葉町の井戸川克隆町長ら全国3市4町の8人が首相官邸を訪れ、福山副長官、芝博一首相補佐官に7項目を要請。原発災害の早期の収束や緊急安全対策の実施、徹底的な原因究明と対策などを求めた。県原子力発電所所在地市町協議会としても同時に、安全確保など6項目を要請した。

 エネルギー基本計画の見直し方針について河瀬市長は「国としてぶれないエネルギー政策をやってほしい」と要請。福山副長官は「まずは災害の復旧支援、事態の収束に全力を挙げる」と話す一方、エネルギー政策見直し論議には触れなかった。 要請後、河瀬市長は記者団に「あくまで今は事故の収束、原因究明などが最優先課題」と強調。「住民の多くが雇用などで原発に関わる自治体にとって、原発廃止はあり得ない。政府には想定外を想定内に変える安全対策をしてほしい」と述べた。
 経済産業省では松下忠洋副大臣に同様の安全対策を求めた。松下副大臣は「要望を一つ一つ十分受け止め、事故原因を含めしっかり検証したい」と答えた。原発をめぐる今後の対応では「みなさん(原発立地地域)の意見を聞き、相談させてもらいたい」と述べ、今は事態の収束、安全対策などに優先的に取り組む意向を示した。 民主党本部で副幹事長の糸川正晃衆院議員にも要請書を渡した。
 政府は、2030年までに原発を現状より14基以上増やすなど、原子力の積極的な利用拡大を図るとするエネルギー基本計画を閣議決定。今回の事故を受け、菅首相は3月31日、基本計画を白紙にして見直す方針を表明した。日本原電敦賀原発3、4号機増設も影響を受ける可能性がある。 (福井新聞 4/5)
⇒「2009年8月「もんじゅ」原子炉事故(炉内中継装置が原子炉容器内に落下)問題」(福井新聞)
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1号機の格納容器圧力 窒素注入前の水準に
 水素爆発防止のための窒素注入が続く福島第1原発1号機について東京電力は25日、格納容器内の圧力が注入前の水準に戻ったことを明らかにした。東電は格納容器内に水がたまって冷却が進んだ結果と見ているが、窒素が容器外に漏れている可能性もあることから、爆発を防ぐために今後も窒素の注入を続ける方針だ。
 1号機の燃料棒の損傷度合いは70%と推定され、第1原発の原子炉の中で最も激しい。損傷の結果、燃料棒の被覆管が溶け、材料中のジルコニウムが冷却水と反応して大量の水素が発生。原子炉建屋内に充満し、3月12日に水素爆発が起きた。 原子炉内では今も強い放射線で水が分解されるなどして水素が発生しており、再爆発の危険がある。窒素注入は、化学的に安定で燃えない窒素を格納容器内に入れ、水素の濃度を下げる目的で今月6日から始まった。

 当初、格納容器内の圧力を2.5気圧に高めることを目標にしていた。しかし、注入前の1.56気圧が11日の1.95気圧で頭打ちとなり、24日正午には注入前とほぼ同じ1.58気圧に下がった。注入量は予定の6000立方メートルの2倍近い約1万1350立方メートルに達している。 東電は、燃料を冷却するための注水で発生した水蒸気が格納容器に移動して水になり、底にたまると同時に圧力低下を招いたと分析する。圧力が想定通りに上がらないのは、格納容器から窒素が漏れているためとみており「窒素注入をやめれば水素の割合が高まり、爆発のリスクが増える。窒素注入は継続する」と話す。【毎日・4/25 江口一、藤野基文】

福島県 5公園の放射線量、利用制限基準超える
 福島県は24日、県内5カ所の公園の放射線量が、校舎や校庭を利用できるか判断する目安となる国の基準を超えたと発表した。県は、公園管理者に利用制限の対象とするよう要請するという。  国は暫定的な利用基準として、校庭の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上では屋外活動を制限することとしている。県は、小中学校や高校、公園など計46施設を22日に調査。そのうち、福島市、郡山市、二本松市、本宮市の5公園で、3.8~3.9マイクロシーベルトを検出したという。
 県は25日にも5公園に看板を設置し、利用は1日あたり1時間程度とすることや、砂場の利用を控えることなどを求めていくという。  5公園は次の通り。信夫山子供の森公園(福島市)▽新浜公園(同)▽酒蓋公園(郡山市)▽日渉公園(二本松市)▽岩角農村公園(本宮市)。(朝日)

福島第1原発:村の回復求め結束 飯舘村で住民団体発足へ
 福島第1原発事故の影響で、全域が「計画的避難区域」に指定された福島県飯舘村の青年らが、村の環境回復と十分な補償を国や東電に求める住民団体を発足させる。26日午後6時半、村内で「愛する飯舘村を還せ!!村民決起集会」を開く。 村には約6200人の住民がいたが、自主避難が相次ぎ、現在は約5000人に。さらに計画的避難区域の指定を受け、今後約1カ月をめどに全村避難をしなければならない。家や仕事を失うことへの怒りや今後の生活への不安が村民に広がっている。
 「負げねど飯舘」を合言葉に発足する団体の中心メンバーは、ラーメン店を経営する大井利裕さん(37)ら村の青年たち。大井さんが「住民が声を上げないと、小さな村は国の言いなりになる」と仲間を通じて呼び掛けると、すぐに約30人が集まった。 避難先が分散した後も村民のつながりを維持していくことや土壌の汚染除去を国や東電に求めていくことが活動の柱になる。インターネットを通じ、村の窮状も発信していくという。 大井さんは「ふるさとを奪われ、家族も仲間もバラバラにされてたまっか。住民の力を結集してうねりを作り、村を取り戻す」と力を込めた。【毎日・大場弘行】

⇒「原発1・3号機周辺、高汚染 水素爆発で飛散か」(朝日)
⇒「福島第1原発:敷地内の汚染地図公表」(毎日)

2011年4月22日金曜日

脱原発への道筋: 原発の「安全性向上」論に回収されないために

脱原発への道筋: 原発の「安全性向上」論に回収されないために


 静岡県の湖西市長が、昨日(4/21)開かれた「静岡県市長会」で、浜岡原発の即時停止を要請した。中部電力の幹部が、防波壁の設置などの浜岡原発の「安全対策強化」に市長会の「理解」を求めたことに対し、三上市長は「対策を強化するのは現状の安全策が不十分だからではないか。まず原子炉を停止してから対策をすべきだ」と訴えたという。三上市長は、すでに「脱原発市町村長の会(仮)」を発足しており、長野県木曽町長などが賛同している。

 湖西市は浜岡原発から50キロ以上も離れている。それでも三上市長は、「福島の現状を見れば、50キロでも安心できない」として脱原発を主張したという。明後日の統一地方選・第二ラウンド--私は統一地方選などより、原発問題に関する全国的・地域的議論を行うほうが、いま、はるかに重要だと考えているのだが--以後も、三上市長のように、稼働中原発を抱える自治体の首長から原発停止を訴える声がさらに上がることを期待したい。そのための持続的な働きかけを強めることが私たちにも求められている。

 一方、実際に原発を抱える自治体では「脱原発」派がまだまだ圧倒的少数派であることも直視しなければならないだろう。

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「原発運転継続容認」7割超 敦賀市長選世論調査 福井新聞社が行った敦賀市長選の世論調査で、新市長に力を入れてほしい政策(2項目選択)としては「原子力対策」が最も多く、全体の3割近くを占めた。東京電力福島第1原発事故を受け、敦賀の原発をどうすべきかについては「運転は止めずに安全対策を充実させる」が66.8%と最も多く、「これまで通り運転を続ける」を合わせた運転継続の容認意見が7割を超えた。

 力を入れてほしい政策で「原子力対策」と回答したのは28.6%。各年代別、男女別でも最も高く、男女別では女性が16.3%と男性より4ポイントほど高かった。 次いで「高齢化・福祉対策」17.7%。「行財政改革」12.2%、「産業振興」11.7%、「中心市街地活性化や観光対策」11.3%、「少子化対策や教育政策」10.1%が続いた。「北陸新幹線の敦賀までの建設」は3.5%にとどまった。

 深刻な事態に陥った福島第1原発事故を受け、敦賀の原発をどうすべきかとの問いでは「運転は止めずに安全対策を充実させる」66.8%、「これまで通り運転を続ける」が6.7%で、運転継続容認は73.5%に上った。 一方で「一度停止して国の基準、方針を待つ」は17.3%で2番目に多かった。「現在ある原発は廃止」は5.5%だった。

 男女別では「運転は止めずに安全対策を充実」が男性69.4%に比べ女性は5ポイント低く、「一度停止して国の基準、方針を待つ」は女性が19.4%で男性より4.3ポイント高かった。 年代別では「運転は止めずに安全対策を充実」と答えた20、30、40代は7~8割台に上る一方、50、60代、70歳以上は5~6割台。「一度停止して国の基準、方針を待つ」は20代6%、30代11.5%、40代8.3%に対し、50代23.4%、60代21.2%、70歳以上26.8%で年齢が高い方がより慎重な姿勢を示す傾向となった。

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 私が主張したいのは、
①政府と自治体自身が、電力会社任せにするのでなく、最低限度、耐震・津波想定基準を東日本大地震の破壊力を踏まえて策定し直し、
②それに応じた「安全対策」を各電力会社が施すまでは原発を一時停止し、
③停止中に原発の是々非々論を全国的にも地域的にも行い、
④最終的には広域的(半径30キロあるいは50キロ圏内の自治体)な住民投票(国民投票ではない)によって、原発をどうするかを決めよう、ということである。
⑤そのために新しい「原発住民投票」制度の導入も議論すべきだろう。もちろん、住民投票の実施までに、
⑥政府としてのエネルギー政策の基本方針が再度策定されねばならず、それをめぐる「国民的議論」も欠かせない。

 しかしこの間、福島第一原発大災害を前にしても、脱原発に向けた輿論の高まりを、何とか原発の「安全性向上」論へと回収しようとする動きが国際的にも国内的にも強まってきている。

 東電の「工程表」ならぬ、「気休め表」発表以降、福島第一原発問題が何かしら着実に「収束」に向かっているかのような、根拠なき楽観主義が蔓延する/演出される一方で、福島第一原発の1~4号機は廃炉にしても、それ以外の稼働中原発は一時停止もしなければ、廃止などありえない、といった原発推進派のバックラッシュが政界においても、原発を抱える地域においても起こっている。自民党の「原発政策の見直しの見直し」はその典型だ。

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4号機プール高温続く 91度、水位には変化なし
 福島第一原発の事故で、東京電力は22日、4号機の使用済み核燃料プールの水温が九一度だったと発表した。12日の測定とほぼ同じ水温で、高止まり状態が続いている。安定した冷温停止状態は約30度。プールには、原子炉から取り出して冷却期間が短い燃料が多数あり、東電は監視を強めている。 東電はこの日、生コン圧送機のアームに計測機器を取り付けて調査を実施し、水が燃料の上2メートルまであることを確認した。

 水温は12日の測定でも約90度あったため、一日おきに140トンの水を注入し、冷却に努めていた。水注入について、東電は「計算通り蒸発分にほぼ見合う量。プールの水位に大きな変化はなかった」と説明している。 ただ、プール内の燃料棒は損傷が疑われているため、東電は水中カメラを用意したが、この日は高温で断念。注水などで水温が50度を下回った際に、撮影可能か検討する。 4号機のプールには核燃料棒を束ねた燃料集合体が1535体入っている。他号機のプールより千体前後多く、新品や炉から取り出したばかりの使用途中の集合体もある。(東京新聞より抜粋)
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 半世紀以上に及ぶ国の「原子力行政」によって、原発建設を受け入れた自治体では原発なくして地域経済、「公共事業」、人々の生活が成り立ちようがない、それほどまでに原発依存が構造化している/そう仕向けられてきた現実がある。地域社会がこの「構造」から脱却するには何をどうすればよいのか。
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福島影響?原発論議なし 青森・東通村議選
 原発が立地する青森県東通村の村議選(24日投票)が静かに進んでいる。福島第1原発事故で原発の安全性が深刻な問題になっているが、東日本大震災に伴う自粛ムードもあって表立った原発への主張はなく、盛り上がりを欠いたまま終盤戦を迎えている。
 同村は建設中の東京電力の原発1基と、既に立地し現在は定期検査中の東北電力の1基を抱える。村議選は定数14に対し16人が立候補した。うち現職12人は選挙カーを走らせず、街頭での訴えも自粛。現職、新人、元議員の計4陣営は街頭演説などに取り組む。

 村にとって原子力との共存は、1965年に村議会が原発誘致決議を可決して以来の基本政策。運動自粛についてある現職陣営の幹部は「原発との共存をことさらに強調すれば、観光や海産物に対する風評被害を招く」と語る。

 表立った支持拡大を控える各候補も、原発事故の影響を深刻に受け止めている。別の現職は雇用減などの不安が寄せられていることを指摘し、「支持者を集めて説明している」と話す。
 活発化しない原発論議に、ある新人候補者は「原発を取り巻く国の状況が変わりつつあるのに、選挙で原子力政策が語られないのはおかしい」と強調している。(河北新報・菅谷仁
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 脱原発=原発のない社会論が「理想論」一般に終わらないためには、〈実現可能な原発からの自立のためのビジョン〉が必要だ。
①エネルギー政策/発電と需要、
②貿易・経済政策/原発輸出を通じた日本経済繁栄・成長論、
③地域(経済)の活性化。
 この三つの領域において、原発依存・中毒状態からの脱却はどうすれば展望できるのか。

 ①の領域と「放射能汚染・被曝の危機」論に終始しない②と③の領域に踏み込んだ問題提起と提言が反/脱原発派に問われている。
 たしかに、とても一筋縄では行かない、シビアな問題だ。しかし、〈放射能・プルトニウムと人間は共生しえない〉という福島第一原発大災害以後の現実を出発点にするなら、解決策はきっとあるはずだし、なければならないだろう。

 こうした中、今日、福島県庁を訪れた東電社長に対し、佐藤県知事は福島県での「原発再開はあり得ない」と、キッパリ宣言した。今後、原発推進派による知事や福島県に対する恫喝・切り崩し攻勢が予想される。
 福島や東北を見捨てず/見殺しにしない私たちの側の「支援」の質が試されている。

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⇒「エネルギー白書2010」 
⇒「NEDO 再生可能エネルギー技術白書―新たなエネルギー社会の実現に向けて―
⇒「温室効果ガス2050年80%削減のためのビジョン」(環境省)(⇒自公政権時代の環境省の「ビジョン」においては、2050年段階で原発の一次エネルギー供給に占める割合は26%になっている)。
⇒「省エネルギー・低炭素社会へ向けて~東日本大震災を受けて~」(気候ネットワーク)(⇒環境省の「ビジョン」より、かなりラディカルなプランに読める「気候ネットワーク」の「提言」においても、最終的脱原発には半世紀近くを要することがわかるだろう。それだけ日本は電源開発において原発依存を政策的に深めながら、「再生可能エネルギー」「自然エネルギー」への社会的シフトを怠ってきたのである。逆に言えば、いま真剣に政策的転換をはからないと、とてもじゃないが追いつかない、ということである)

⇒「特集ワイド:「国策民営」 日本の原子力、戦後史のツケ」(毎日新聞)
「原子力ロビー「電気事業連合会」の力と実態」(フライデー)
⇒「経産省から電力会社に天下り 東電など6社に在職 塩川議員調査」(しんぶん赤旗)
⇒「敦賀市長選、揺れる有権者の声 原発共生と安全」(福井新聞)
⇒「統一地方選 後半戦告示(その1) 原発の町、どう動く」(毎日新聞)
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美浜原発1号機、後継機計画を一時凍結 関西電力
 関西電力は22日、40年を超えて運転している美浜原子力発電所1号機(福井県美浜町)について、敷地内での置き換え(リプレース)に向けたスケジュールを一時凍結する方針を固めた。福島の原発事故の収束にめどが立たず、地元・福井県の理解にはより時間が必要だと判断した。 八木誠社長が27日に予定している定例社長会見で発表する。
 関電は昨年6月、美浜1号機の将来の廃炉と、後継機を増設する置き換えの方針を発表。今秋に予定していた1号機の運転継続期間の発表も含め、計画やスケジュールを根本から見直す。ただ、置き換えを目指す考えは変えない

 後継機の建設に向けた立地調査は震災後に中断。今年度中としていた高浜4号機(同県高浜町)でのプルサーマル発電や、来年夏に運転開始40年となる美浜2号機についての運転方針の判断も遅れそうだ。  福井県の西川一誠知事も「過度の原発依存を改める方向が望ましい」とするなど地元の態度は硬化。関電は震災を受けて原発の緊急安全対策を実施し、国や福井県の理解を求めている。「(既存原発の)安全対策がまず第一。将来の計画について予定通りの行動は事実上難しい」(関電首脳)としている。(朝日・清井聡)
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⇒「玄海原発プルサーマル問題」(佐賀新聞)

首都圏地盤に力、南関東のM7級誘発も
 東日本大震災で起きた地殻変動の影響で、首都圏の地盤に力が加わり、地震が起きやすい状態になっているとの解析結果を、東京大地震研究所のグループが22日、発表した。 解析結果は、大震災後に発生した地震の分布ともほぼ一致している。同研究所では、国の地震調査委員会が今後30年間に70%の確率で起きると予測しているマグニチュード7級の南関東の地震が誘発される可能性があるとして、注意を呼びかけている。

 同研究所の石辺岳男・特任研究員らは、首都圏で過去24年間に起きた約3万の地震で破壊された領域が、大震災でどのような影響を受けたかを解析。地震が起きやすくなる力が働く領域は約1万7000で、起きにくくなる領域の約7000よりも多いことが分かった。震源が30キロよりも浅い地震は静岡県東部から神奈川県西部で、30キロよりも深い地震は茨城県南西部、東京湾北部で起きやすくなっていることが判明した。(読売)

原発反対が急伸 47カ国・地域 世論調査
 各国の世論調査機関が加盟する「WIN-ギャラップ・インターナショナル」(本部・スイス・チューリヒ)は19日、福島第一原発事故を受けて世界の47カ国・地域で実施した世論調査結果を発表した。 原発反対は事故前の32%から11ポイント上昇して43%となる一方、支持が57%から8ポイント下落して49%となり、賛否の差は25ポイントから6ポイントに縮まった

 調査は3月21日~4月10日、日本やパキスタンを含むアジア各国のほか、北南米、欧州、アフリカなど計3万4千人以上を対象に行われた。 同社専門家は「原子力は過去十年、国際世論の安定した支持を得ていたが、世界の多くの人々が福島の事故を懸念して反対へ立場を変えたことになり、今後は議論が活発化しそうだ」と分析した。 日本やカナダ、サウジアラビアなど8つの国・地域で、事故後に賛否が逆転し反対が上回った。(共同より一部抜粋)

日豪首脳会談、原子力の安全性向上で合意
 菅首相は21日、首相官邸でオーストラリアのギラード首相と会談した。豪州は現在、国際原子力機関(IAEA)理事国で、両首相は東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、原発の国際的安全基準強化などを巡って協力することで一致した。 代替エネルギー開発でも連携を強化することで合意した。
 菅首相は原発事故による風評被害も念頭に「あらゆる情報を豪州はじめ全世界にしっかり伝え、透明性の高い発信をしたい」と強調。ギラード首相は「情報公開が密になされることを歓迎したい」と応じた。また、菅首相は火力発電所への依存度が当面、高まることから、液化天然ガス(LNG)などの安定供給の継続を求め、ギラード首相は要請に応じる考えを表明した。経済連携協定(EPA)交渉は早期妥結へ努力することを確認した。

イタリア:上院、原発凍結法案を可決…野党「わな」と反発 
 イタリア上院は20日、ベルルスコーニ政権が提出した、原発建設再開を無期限で凍結する通称「原発改正法案」を賛成133票、反対104票、棄権14票で可決、下院に付託された。
 反原発派が多い野党は、法案が6月予定の原発再開などを問う国民投票を無効にする「わな」だと主張、反対した。原発再開の余地は残されており、法案には、政治的な思惑と福島第1原発事故で広がった国内の感情論をやり過ごす狙いがありそうだ。 採決前の演説でロマーニ経済発展相は、福島事故の影響とそれに伴う欧州連合の原子力計画が明らかになった時点で「イタリアでの原発の妥当性が初めて明らかになる」と語り、無期限凍結が覆る可能性を示唆した。

 イタリアは稼働していた原子炉を90年に停止させた。だが、現政権が13年の稼働を目標に原発計画を推進。この結果、一部野党の提案で新たな国民投票が6月中旬に行われる。 国民投票は有権者の過半数が投票しなければ無効となるため、野党や有力紙は、投票率を低下させる狙いがあると指摘している。【毎日・ジェノバ 藤原章生】

チェルノブイリ25年、米など処理費660億円
 チェルノブイリ原発事故から25年を迎えるのを機にキエフで19日に開かれた国際会議で、同原発からの放射性物質拡散を防ぐため米露や欧州連合(EU)などが総額5億5000万ユーロ(約660億円)の拠出を表明した。
 ウクライナ政府は爆発事故が起きた4号機を、巨大な鋼鉄の建造物で覆う計画だ。 4号機は事故後、コンクリートで覆われ、核燃料は「石棺」の中に閉じ込められた。しかし石棺は老朽化が進み、現在も放射性物質の放出は止まらない。18日に4号機近くを訪れると、放射線量の値は通常の20~30倍の高さだった。 こうした状況の中、放射能を封じる新たな対策が必要となった。

 ウクライナ政府は石棺を高さ110メートル、幅260メートル、重さ3万トンの鋼鉄ですっぽり囲み、少なくとも今後100年の安全を確保するとしている。2012年春にも着工し15年の完成をめざす。 新たな放射能対策のためウクライナ政府は約7億4000万ユーロ(約888億円)の拠出を国際社会に求めており、資金の手当てが今回の会議の主要議題だった。
 目標額の約75%の獲得に道筋をつけた同国のヤヌコビッチ大統領は「前例のない成功」と述べ、会議を締めくくった。 今回の会議は福島第一原発の事故を受け世界的に原子力の安全に対する関心が高まる中で開かれた。(読売・キエフ=寺口亮一)

核燃料税収、既検査分除きゼロ=原発事故で―福島県
 福島第1原発事故で、同第2原発を含めた原子炉計10基が全て停止したため、福島県が条例で定めた核燃料税(法定外普通税)の2011年度税収が2月定期検査分の約8億円を除いてゼロになる見通しとなっていることが20日分かった。
 県税務課によると、核燃料税は原発の定期検査の際に核燃料が原子炉に挿入されたことを確認した時点で課税する。原子炉設置者の東京電力が納税義務を負うが、現在は事故で燃料が出し入れされていないため、課税できないという。
 県は2011年度当初予算に同税収44億7000万円を計上。震災前の2月に第2原発4号機の定期検査が行われたため、約8億円のみ確保できるとみている。(時事)

警戒区域に設定=住民、数日中に一時帰宅―原発20キロ圏
 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の半径20キロ圏に位置する福島県の9市町村は22日午前0時、同圏内を「警戒区域」に設定した。住民らの立ち入りを禁じ、域内にとどまった場合、各市町村長は退去を命じることができる。また政府は、警戒区域の住民の一時帰宅について、第1原発から3キロ圏を除いて数日中に始める方針だ。 警戒区域の対象は大熊町、双葉町、富岡町の全域と、南相馬市、田村市、浪江町、楢葉町、川内村、葛尾村のそれぞれ一部で、域内の人口は約7万8000人(約2万7000世帯)。従来の避難指示より強制力が強く、違反者は10万円以下の罰金などが科される

 避難生活を送っている住民が自宅に貴重品を取りに戻るケースなどが後を絶たず、防犯上の効果も期待し、県が国に設定を要請。これを受け、菅直人首相が災害対策基本法に基づき、21日に各市町村長に指示した。 また、福島第2原発から10キロ圏の避難区域については8キロ圏に縮小。これにより8キロ圏は第1原発の20キロ圏に重なり、広野町と楢葉町のそれぞれ一部が避難区域から外れた。
 一方、政府は21日、一時帰宅に関する「基本的な考え方」を公表した。それによると、第1原発の3キロ圏と毎時200マイクロシーベルトを超える高い放射線が測定された地域などは対象としない。安全対策についても規定し、
(1)1世帯1人に限り、バスで集団行動する
(2)防護服や雨がっぱなどを着用し、線量計やトランシーバーを携帯する
(3)警戒区域から出る際に被ばく状況調査(スクリーニング)を行う
(4)持ち出しは財布や通帳など必要最小限とし、在宅時間は最大2時間程度―とした。(時事)
「福島が殺される--東京の身代わりなのか」(週刊現代)

「具体的な回答ない」放射線量説明会に不満の声
 文部科学省と福島県は21日、同省の放射線量の安全基準で屋外活動が制限されることになった福島市内の10の小中学校や幼稚園、保育園の保護者と教員を対象に、日常生活の注意事項などについて説明会を開いた。

 会合は、午前と午後の2回に分けて開催された。午前の部には、保護者ら約400人が出席。質疑応答では、「私服はすぐ洗えても、学校の制服の洗濯はどうしたらいいのか」「これから暑い季節になって、教室の窓を開けてもいいのか」などの質問が相次いだ。
 しかし、担当者側から「原子力災害対策本部と協議する」「過度に心配する必要はない」(???)などとあいまいな回答が目立ったため、参加者からは「具体的な回答がない」「何のためにここに来たのか」「子を持つ親の気持ちを全く分かっていない」と不満の声が上がった。

法案名から「地域主権」削除の修正案可決 衆院総務委
 衆院総務委員会は21日、菅政権が進める地域主権改革の関連法案について、「地域主権」の4文字を削除する民主、自民、公明各党による修正案を賛成多数で可決した。「地方分権」という用語を使ってきた自民党が削除を要求し、与党側が削除に応じた。 22日の衆院本会議で可決されたのち参院に送られ、可決される見通し。

 修正後の法案名は「地域の自主性及び自立性を高める改革推進を図るための法案」(略称)で、民主党政権が官邸で開いてきた「地域主権戦略会議」の名称も法案から削除する。憲法上の「国民主権」と「地域主権」との混同も指摘されていたことから、今後の分権改革を「国民主権の理念の下に」進めることも明記した。 同法案は、国が法令で自治体の仕事を縛る「義務付け・枠付け」の見直し、「国と地方の協議の場」の法制化などからなる。(読売)
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 自公民合意による「地域主権」の削除は、間違いなく「地方分権」そのものの百歩後退になる。
 この問題は原発をはじめとした「国策」に対する地域住民の意思や住民投票の法的拘束力を強化する観点から言っても、きわめて重要かつ重大な問題だ。機会がある折に改めて考えてみたい。

天下り規制に二重基準…特定企業不可と容認法案
 国家公務員の天下り規制に対する政府の方針がぐらついている。
 枝野官房長官は18日の記者会見で、東京電力顧問の石田徹・前資源エネルギー庁長官について、「個人の責任で適切な対応をされると期待している」と自発的な退任を求めた。東電の福島第一原子力発電所の事故後、政府と東電の密接な関係に批判が強まっているからだ。枝野氏は「今の法制度に基づくチェックで良いのかも含めて抜本的に考える」とも述べ、省庁と関係の深い特定企業への再就職に関し、法改正も含む規制強化の意向を示した。

 ただ、国家公務員の天下り規制は、2008年施行の改正国家公務員法で従来の人事院による事前承認制が廃止となり、省庁が「あっせん」した再就職に限って禁止する制度に変わった。菅内閣が5日にまとめた公務員制度改革の「全体像」にも、あっせんがない場合の再就職は認める前提で新たな監視機関の設置を盛り込んだばかりだ。石田氏の顧問就任も、枝野氏自らが2月に「あっせんがなかった」とし、問題のない再就職だという「お墨付き」を与えていた

 枝野氏は19日朝、中野公務員改革相と顔を合わせた際、「方針に変更はありません。改革の『全体像』に基づいて進めてください」と伝えた。 政府内では「明らかな二重基準で、法改正で禁止対象を網羅的に規定するのは困難(???)だ」(内閣府幹部)という指摘が出ている。(読売)
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 「法改正で禁止対象を網羅的に規定」などする必要は全くない。官僚主導となった菅内閣・民主党政権による議論のすり替えだ。「天下り」問題をめぐり議論を一からやり直す必要がある。
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★『特集上映 25年目のチェルノブイリ(ポレポレ東中野) 4/23~5/6

2011年4月17日日曜日

脱原発への道筋: 一時停止から段階的廃炉へ-- ドイツに続こう

脱原発への道筋: 一時停止から段階的廃炉へ-- ドイツに続こう

〈あまりに危険すぎる稼働中原発を一時停止しよう〉
 東電の勝俣恒久会長が「福島第一原子力発電所事故の収束に向けた道筋」を発表した。「事故収束」の「目標」として「放射線量が着実に減少傾向となっている」ことを「ステップ1」(3ヶ月程度)、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」ことを「ステップ2」(3~6ヶ月程度)とするものだ。しかし、果たしてこれが「事故収束」の「工程表」と言えるのか。
 ブログ読者が東電の発表をどう受け止めたかはわからない。けれども少なくとも私は、深く、深く失望した。もう少しマシな内容が出てくる、という微かな期待を抱いていたからだ。期待は、見事に裏切られたと言ってよい。

 東電は、「当面の取り組み」として、
①原子炉・使用燃料プールの冷却、
②放射能汚染水(帯留水)の閉じ込め、処理・保管・再利用、
③大気・土壌の放射能汚染の抑制、
④避難指示・計画的避難・緊急時避難準備区域の放射線量の測定・低減・公表、
を「課題」として掲げ、「ステップ1」「ステップ2」と同時並行的に進める、としている。
 しかし、これらはすべて当たり前のことだし、これらを現場作業員がやろうとしていることは誰だって知っている。問題は、原子炉内・格納容器の損傷、様々な計器・機器・電気系統の故障、放射性蒸気の漏出→建屋内の放射線量の増加という非常事態の中で、これらを具体的にどうやって進めるのか、その「工程表」であり、「事態収拾」に向けた最終的「道筋」なのである。

 例えば、14日、3号機の圧力容器の温度が急上昇し、東電は「計器の故障」と発表した。圧力容器本体と「上ぶた」接続部の密閉材料「シール」の温度が12日の170度から250度に、接続部直下の本体部分も144度から165度に上昇したという。しかし、「原因は不明」と説明され、接続部設計温度が約300度というので、例によって「ただちに危険な温度ではない」と報道されただけである。実際、1~3号機の建屋内部、原子炉内部がどういう状態にあるか、相次ぐ余震が各号機にどれだけの打撃を与えたかについて、政府・東電の統合対策本部は、ほとんど実態を把握できておらず、調査結果は何も公表されてはいないのである。
 つまり、現状では「ステップ1」(3ヶ月程度)、「ステップ2」(3~6ヶ月程度)とする「科学的」根拠は何もない、ということだ。「子どもだまし」もはなはだしい。
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1・3号機高い放射線量、「作業員が工事困難」
 経済産業省原子力安全・保安院は18日、東京電力が遠隔操作できる米国製ロボットで17日に調査した福島第一原子力発電所1、3号機の原子炉建屋内の放射線量を公表した。 1号機は毎時10~47ミリ・シーベルト、3号機は同28~57ミリ・シーベルトと高い値で、西山英彦審議官は「作業員が立ち入って工事をするのはこのままでは難しく、何らかの方法で放射線量を下げたり遮蔽したりすることが必要だ」と述べた。(⇒つまり、これまでの報道では「健全」とされてきた1号機の格納容器が破損している「可能性」があるということだ。「作業員が立ち入って工事をするのはこのままでは難しく」ではなく、不可能だ。だから問題は"hOW?"であり、それを示すのが「工程表」なのである)
 保安院によると、1、3号機の原子炉建屋内で放射線量などの環境を調査したのは、東日本大震災後に水素爆発を起こしてから初めて。(⇒今回が「初めて」だということをしっかり念頭に置いて、今後の作業の進展に注目する必要がある)

東電工程表、実施に相当の困難と班目委員長
 内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は18日、東京電力が発表した事故収束への工程表について「相当のバリアがある」と述べ、実施には困難が伴うとの認識を示した。 また「工程表の精査はできていないが、スケジュールありきで安全がおろそかになることは避けてほしい」と語った。 班目委員長は「一番難しいのは2号機対策」とし、理由としてタービン建屋地下に高濃度の放射性物質を含む汚染水があることを挙げた。フランスから導入予定の浄化処理技術についても「本当に(高濃度の汚染水に)使えるのか、安全委員会側として承知していない」と効果に未知数の部分が多いことを挙げた。(読売)
福島第一原発の現状(毎日新聞)
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 だから、基本的に「明るい情報」は何もない。文字通り、何もない。
 では、第一原発周辺住民は「工程表」にどのように反応したのか。
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「信用できるのか」 東電工程表に疑心暗鬼
 「思ったより長い」「発表は単なる目安なのでは」……。東京電力が福島第1原発事故収束までの「道筋」を示した17日の記者会見。既に原発周辺から避難したり、避難を指示される恐れのある「計画的避難区域」に住む住民たちは、事故から1カ月以上たって聞かされた日程に複雑な表情を見せた。不便な生活への怒り、将来の不安、そして東電への疑心暗鬼。さまざまな感情を抱きながら、発表を受け止めた。【毎日・河津啓介、和田武士、荻野公一、町田結子】
■双葉町住民
 役場ごと埼玉県加須市に避難した双葉町の住民たち。両親と妻の4人で旧騎西高校に避難している配電線工事業、舘林孝男さん(56)は放射線量の大幅抑制までの期間について「自分では3カ月程度と思っていた。(6~9カ月は)長い」と憤る。福島県内で電気の復旧工事に携わることもできるが、高齢の両親を避難所に置いて行けない。「とにかく早く双葉に帰って働きたい。9カ月を目標にするのではなく、一日でも早く収束させてほしい」と訴えた。
 父親と同校に避難した養蜂業、小川貴永(たかひさ)さん(40)は「暫定的な発表に過ぎないのでは」と疑う。知りたいのは帰れるめどだ。「人間が住めるまでどのくらいかかるのか、1次産業は復活できるのか。それを教えてほしい」と語気を強めた。 井戸川克隆・双葉町長は「町民のことを考えると、明確に安全な数値が確認されるまで帰宅できないと考える。さらにしっかりした作業をされることを望む」とコメントした。
■郡山市
 福島県内最多の約1700人が避難する郡山市の多目的ホール「ビッグパレットふくしま」。避難指示が出ている半径20キロ圏内の富岡町や屋内退避が指示されている20~30キロ圏内の川内村の住民が中心だ。富岡町の斉藤義男さん(76)は「避難は一時的と思っていたが、そんなにかかるのか」と落胆の様子を見せたが、すぐ思い直したように「収束時期がはっきりすれば先の見通しも立つ。(見通しが)ないよりいい」と付け加えた。夫が原発関連の会社に勤めている富岡町の女性(52)は「政府や東電からいろんな発表があるが、言うことがころころ変わるように見える。今日の発表も信用できるのか」と手厳しい。
■飯舘村
 全域が計画的避難区域になる飯舘村。菅野典雄村長は村役場のテレビで会見を見守った。「初めて先が見えたことは歓迎したい。だが、これで安心できるものではない」と感想を述べた。 事故は、村の基幹である農業、畜産業に大打撃を与えた。放射性物質の漏えいが抑えられたとしても、再建はその先だ。 「土壌の(除染などの)問題などはもっと日数がかかる。私たちにとっては、土地や牛も命の一つだ」とため息をついた。
■川俣町
 一部が計画的避難区域になる川俣町の主婦、高木栄子さん(66)は「本当に6~9カ月で収まるとは信じられない」と疑問視した。事故後の生活上の悩みも訴える。「窓も開けられず、思うように外出もできない。ちょっとした家族の言動にもきつく当たるようになってしまった
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 政府と東電以外に、いったい誰が「工程表」に満足しただろう。

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韓国初の古里原発1号機、地元議会が廃炉求める決議採択
 韓国初の原子力発電所である釜山市の古里(コリ)原発1号機をめぐり、同市中心部に位置する南区議会が18日、1号機の即時の稼働中止と廃炉を求める決議を全会一致で採択した。  決議は「福島原発のような爆発事故が起きれば、半径30キロ以内に住む約100万の釜山市民が放射能の被害にさらされる」と主張。設計寿命の30年を超えて運転を続けている1号機の廃炉と、同原発(計5基)での増設計画の再検討を大統領府や政府に求めている。 同区議会によると、市内の計16区・郡のうち、ほかに二つの区が同日までに同様の決議を採択している。
 古里1号機をめぐっては、周辺住民ら97人が稼働中止を求める仮処分を釜山地裁に申請した12日、電気系統の故障で運転が停止した。韓国教育科学技術省は「詳しい事故原因を調査中」としており、再稼働の見通しは立っていない。(朝日・ソウル=中野晃)

ドイツ、原発早期全廃へ 福島事故で首相方針
 ドイツのメルケル首相は15日、「脱原発」の見直しを進めてきた政策を転換、国内の原子炉全廃を早期に実現する方針を決めた。野党社会民主党(SPD)を含む国内16州の州首相らと協議、連立与党が推進してきた既存原子炉の稼働延長を短縮することで合意。福島第一原子力発電所の事故を受け、原発政策が変更を余儀なくされた形だ。
 メルケル首相は、州首相らとの協議後に記者会見し「可能な限り早く、原子力エネルギーから脱却したいと思う」と述べ、風力などのクリーンエネルギーへの転換を早める考えを表明した。 首相は昨秋、平均12年間の延長を決めた原子炉の稼働期間を短縮するため、6月中旬までに関連法案を改正する意向。だが、連立与党内では、電力供給の20%余りを担う原発廃止による産業活動の停滞やクリーンエネルギー導入による国や各州の多大な経済負担に異論もある。首相は延長期間や財源については明言しなかった。 メルケル首相は会見で、送電網の整備、電気料金の改定、核廃棄物処理場の点検などに関する包括的な法的措置が必要とし、「政策の転換は新しい挑戦だ」と強調した。
 ドイツは第一原発事故を受け、稼働中の原子炉17基の延長を3カ月間凍結。1970年代から稼働する七基は運転を停止した。 根強い「反原発」の世論に、福島原発事故が追い打ちをかけ、連立与党は州議会選挙で環境政党に政権を奪われた。また、連立与党の自由民主党(FDR)が選挙後、脱原発に急転換し、エネルギー政策をめぐって大きく揺れていた。【東京新聞・ベルリン=弓削雅人】
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 私はドイツ政府やメルケル首相に対して何の幻想も持っていない。ドイツ政府の原発政策の急激な方針転換、その政治目的は、福島第一原発大災害を契機とした脱原発の世論の高まり、緑の党の躍進の中で、現政権基盤の安定化を第一にしたものだろう。つまりそれだけ原発事故に対するドイツ民衆の危機意識が高く、政府が迅速に対応しなければ連立政権が崩壊しかねない、ということだろう。とくに自民党が「脱原発に急転換」したことが大きい。
 しかし、政治目的が何であれ、正しい政策転換であることは間違いない。地球の反対側に位置する日本の原発事故によって自国の政策を大胆に転換する。これがごく普通の危機意識の表現だと私は思う。どこかの国の「連立与党」、自民党とは大違いではないか。

「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ(環境エネルギー研究所(ISEP))
原発の被害を食い止め、原発に頼らない社会づくりへ 問われる日本の「市民力」」(FoE Japan)
 しかし、まずはあまりに危険すぎる稼働中原発の一時停止。これなくして「原発に頼らない社会」はつくれない。

〈柏崎原発の一時停止を〉
 17日午前0時56分ごろ、新潟県中越地方を震源とする地震が発生。気象庁によると、新潟県津南町で震度5弱を観測。震源の深さは約30キロ。地震の規模を示すマグニチュードは4.8と推定。東日本大震災によって誘発された地震とみられている。 東電は柏崎刈羽原発の「異常は報告されていない」と言ったが、地震以前に「異常」は報告されていた。
柏崎刈羽原発で発煙 水処理建屋、すぐ収まる
 16日午後7時45分ごろ、新潟県の東京電力柏崎刈羽原発(柏崎市、刈羽村)の水処理建屋で煙が発生し、火災報知機が作動した。東電によると、煙はすぐに収まった。けが人はないという。 煙が出たのは、水道水の不純物をろ過して、原子炉や使用済み核燃料プール用の純水をつくる装置の電源操作盤。複数の作業員が、点検のため分解した操作盤の一部を組み立てて元に戻す際、操作盤から火花が発生し、煙が上がった。分解した部分の操作盤のスイッチは切っていたという。 東電側は119番したが、煙が自然に消えた(???)ことから、柏崎市消防本部は火災と認定しなかった。東電が発煙の原因を調べている。水処理建屋は1号機の近く。柏崎刈羽原発では4基が稼働中。(共同)
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2009年11月19日 AFP】2年前の新潟県中越沖地震で被災し運転停止中の東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市)で19日、煙が出ているのが見つかった。東京電力によるとけが人はなく、放射能漏れもなかった。 同社発表では、煙が出ていたのは3号機タービン建屋1階にある天井クレーンの巻き上げ装置のブレーキ部分からで、すぐに消防署に通報したが、作業員が消し止めた。さらに原因などについて徹底的に調査するという。
・2010年10月5日、柏崎刈羽原電、「屋外で発煙」。

〈浜岡原発の一時停止を〉
・「浜岡原発、若狭の原発群の運転停止とエネルギー政策の転換を求める要望書」
「放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜」(兼松秀代・代表)
浜岡1、2号機 廃炉建屋に使用済み燃料
 中部電力が2009年1月に運転を終了し、新耐震指針の対象にならない浜岡原発(御前崎市佐倉)1、2号機の燃料プールに、現在でも計1165体の使用済み燃料が保管されていることが、14日までに分かった。東日本大震災では東京電力福島第1原発(福島県)4号機の燃料プールの水位が下がって使用済み燃料が損傷し、放射性物質が漏れ出た可能性がある。地震で燃料プール自体が損傷したとの見方もある。浜岡原発1、2号機の耐震安全性の再検証が求められるのは必至だ。
 中電によると、浜岡原発1、2号機の燃料プールにある使用済み燃料は1号機に1体、2号機に1164体。14年度末までに空にする計画という。中電の担当者は「新燃料の受け入れ計画との兼ね合いもあり、すぐに他号機の燃料プールに移すことは難しい」と説明する。冷却水を循環させるポンプの故障や電源の喪失など万が一に備え、代替電源や代替ポンプは確保しているという。
 06年に改定された新耐震指針に基づき中電は、新たな基準地震動を想定東海地震の2倍超に相当する800ガルに設定。3〜5号機の耐震安全性について国の審査を受けると同時に、自主的に千ガルの揺れを想定した耐震補強工事「耐震裕度向上工事」を行っていた。1、2号機は約3千億円という巨費を理由に耐震裕度向上工事が実施されないまま廃炉となった。運転を終了したため、新耐震指針に基づく再評価の対象からも外れている。
 京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)は「福島第1原発4号機の燃料プールは地震で損傷して冷却水が漏れている可能性がある」と指摘する。その上で、「廃炉になった浜岡原発1、2号機も、燃料プールが稼働している限り、新耐震指針に基づく800ガルや自主的な千ガルの揺れに耐えられるようにする必要があるのは当然だ」と指摘する。

廃炉段階の耐震安全性 曖昧さ浮き彫り 2009年1月に運転を終了し、新耐震指針の再評価の対象にならない中部電力浜岡原発1、2号機の燃料プールに使用済み燃料1165体が保管されている問題は、廃止措置(廃炉)段階にある原発の耐震安全性の曖昧さを浮き彫りした。
 1、2号機の耐震裕度向上工事を断念したのは、原子炉建屋の免震化など膨大な工事費が必要になったためだ。現在は、少なくとも千ガルの揺れに対する耐震性の保証がないまま使用済み燃料を千本以上保管している状態。3〜5号機は千ガルの揺れに耐えられる裕度がある。同等の裕度の説明がない1、2号機の燃料プールを稼働させている現状は、内部矛盾のそしりを免れない
 1、2号機の燃料プールの使用済み燃料は01年以前に原子炉から出した燃料で、福島第1原発4号機の燃料よりは冷却が進んでいる。プールの冷却機能が全停止した場合を想定した中電の試験によると、約30度だった水温の上昇は55度で止まった。ただ、使用済み燃料が冷却水から露出することは想定していない。
 中電は、可及的速やかに1、2号機の燃料プールの使用をやめるか、県民に安全性を証明する以外に選択肢はない。今後、日本が直面する本格商用炉の“廃炉ラッシュ”にも大きな課題を提示している。(静岡新聞・社会部・鈴木誠之

東日本大震災、東海地震への影響は 静大教授ら解析
 東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9.0の地震で、東海地震の想定震源域にかかる力が、より滑りやすくなる方向に増えたことが25日までに、静岡大理学部の里村幹夫教授(固体地球物理学)と生田領野助教(地震学)の解析で分かった。里村教授は「単純には言えないが、東海地震の発生がわずかに早まった可能性がある」と話している。
 気象庁気象研究所の地殻変動解析支援ソフトを使って解析した。解析によると、宮城県沖で起きたM9.0の巨大地震の影響で、東海地震の想定震源域を滑らせようとする方向に働く力(地震を起こそうとする力)が最大で0.03メガパスカル増えていることが分かった。
 これは海溝型地震が起こる時に放出される力の1%に相当する。東南海地震についても解析したところ、同じように震源断層を滑らせる方向の力が0.01〜0.03メガパスカル増えていた。里村教授は「0.03メガパスカルは海溝型地震の発生間隔を100年と仮定すれば1年分、200年と仮定すれば2年分に相当する」と説明する。その上で、「常に明日起きても不思議ではないという意識で備えておくことが大切」と訴えている。 同様の解析を行った京都大防災研究所地震予知研究センターの遠田晋次准教授(地震地質学)の結果も、東海地震を起こす方向に働く力が0.01〜0.02メガパスカル増えたことを示していた。 遠田准教授は「発生可能性が若干高まった程度と考えていいが、実際の地震の発生過程は複雑で、さらに早まる可能性もある」と話した。
【パスカル】 圧力の単位。1013ヘクトパスカル(=10万1300パスカル)が1気圧に相当する。1メガパスカルは約10気圧。地殻にかかる応力の大きさを表すために使われることがある。(静岡新聞 3/26)

東海地震に危機感97% 本社県民アンケート
 3月11日に発生した東日本大震災を受けて、東海地震の発生が予想される静岡県の県民の多くが防災意識を新たにしていることが、震災から1カ月に合わせて静岡新聞社が実施したアンケート調査で分かった。東京電力福島第1原発(福島県)の放射能漏れ事故を目の当たりにして、東海地震の想定震源域に立つ中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)の安全性についての懸念も強まっている。大震災後、東海地震に対する危機意識が「高まった」と答えた人は「大いに高まった」「少し高まった」を合わせて97.2%に達した。 アンケートは4月2〜10日、本社、総局、支局の記者が県民320人から直接聞き取ったり、質問用紙に記入してもらったりする方法で行った。
・大震災後、東海地震に対する危機意識が「大いに高まった」と答えた人は75.0%、「少し高まった」と答えた人は22.2%だった。理由に「新聞やテレビで連日被災地の惨状が伝えられ、あらためて地震や津波の怖さを実感した」(県中部、60代女性)などを挙げる人が多かった。
・大震災では、津波によって甚大な被害がもたらされた。静岡県内の沿岸部でも避難勧告(富士市は避難指示)が出され、アンケートでは35.0%の人が自分の住む市町で「避難勧告が出た」と答えた。
・ただ、「(居住地域に)避難勧告が出た」と答えた人にその後の対応を尋ねたところ、実際に避難した人は7.4%で、「テレビやラジオによる情報収集をした」(47.0%)や「家族や親類に連絡した」(26.2%)が多かった。
・大震災後、新たに防災対策を行った人は59.4%に達した。「食料や水の備蓄をした」(33.6%)、「家族同士で非常時の連絡の取り方について話し合った」(30.2%)などが目立った。
・地震と津波によって非常用ディーゼル発電機が機能しなくなったことで福島第1原発の深刻な放射能漏れ事故が引き起こされたことを受けて、「浜岡原発に対する意識が変わった」と答えた人が多かった。
 地元4市(御前崎、菊川、掛川、牧之原)の住民の76.0%、半径30キロ以内の住民のうち85.0%、それ以外の県内住民のうち77.9%の人が「変わった」と答えた。
・一方、地元4市の住民に「身近に浜岡原発に関連する仕事をしている人がいるか」を聞いたところ、「家族がしている」人は15.4%、「親類・近所にいる」人は7.7%、「友人など、その他でしている人がいる」人は19.2%に上り、「自分の市は原発に経済的に依存している」と答えた人は「かなりそう思う」「少し思う」を合わせて61.5%に上った。
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 静岡新聞もとても「苦しい立場」に置かれていることは十分理解するが、もう一歩踏み込んで浜岡原発停止への賛否、原発そのものへの賛否を「アンケート」項目に加えるべきだった。

〈島根原発の一時停止を〉
⇒「島根原発の津波対策を視察 溝口島根県知事」(日本海新聞 4/14)
「全電源喪失に備え配備された高圧発電機車や、緊急用発電機を設置する高さ40メートルの高台も視察。「対策は進展しているが、十分かは分からない」と述べ、1号機の運転再開は国の新しい知見を基に判断する考えを強調した。 また異常時の自治体への連絡、立ち入り調査の実施などを盛り込んだ安全協定の締結拡大を溝口知事から促された山下社長は「真摯に受け止め、よくお話してみたい」と述べた。(⇒第三者機関による立ち入り調査が必要。その結果がでるまでは一時停止を)

〈川内原発の一時停止を〉
川内原発(鹿児島県)増設問題(南日本新聞)
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 九州電力は「中長期対策として、3年程度をめどに非常用ディーゼル発電機の代替電源として移動式大容量発電機の配備や、冷却設備に海水を供給するポンプの防水対策、予備モーター配備などを盛り込んだ」。であるなら、川内原発は「絶対安全」が確保されるまで「3年程度」停止すべきである。

 ところで。上の南日本新聞の川内原発増設関連の記事を下から順に読んでいくと、国策として推進されてきた原発政策と〈産官学原子力複合体〉の政治経済学の実態がよく見えてくる。
 例えば在日米軍基地やダム問題と同じように、霞が関→県・道庁→地元自治体といった官僚専制型国家日本の「公共政策」が、国と地方の行政権力の強化と「公共事業」による地元住民の抱きこみを通じて、原発/基地/ダムなしでは地元経済が成り立たなくなるまで地域経済・住民の自立性を奪ってゆくのである。
・「電源三法」(「電源開発促進税法」「特別会計に関する法律」「発電用施設周辺地域整備法」)基づく地方交付金。
・原発1基あたりの交付金、運転開始までの10年間で約450億円、運転開始後の35年間で総額約1200億円。
・電力会社による地域振興寄付金、毎年数十億円単位。
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 こうした「原発利権」からの地域の解放と自立抜きに、脱原発は絵空事となる。だからまず、地元住民(半径30キロあるいは50キロ圏内)、各都道府県レベルの意識/世論調査をしっかりやる必要がある。
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電力会社に天下り自粛 枝野氏、前エネ庁長官に辞職促す(4/18)
 枝野幸男官房長官は18日午前の記者会見で、経済産業省幹部の電力会社への再就職について「自粛措置(???)を講じる。電力会社にも協力(???)を求める」と語った。経産省が18日付で各電力会社に受け入れ自粛を通知する。  枝野氏は今年1月に東電顧問に再就職した石田徹・前同省資源エネルギー庁長官について「現に東京電力の顧問である方は直接自粛対象になりえないが、政府の対応をみて適切に対応されると期待する」と自発的辞職を促した。自粛の理由については「原子力行政のあり方などを抜本的に見直す必要があるが、その結論を得るまでの間も国民から疑念を招かないよう(にする)」と説明した。
 経産省大臣官房幹部やエネ庁部長以上、原子力安全・保安院の審議官以上を経験した職員は期限なしで自粛。その他の部署での審議官以上経験者は3年間、エネ庁と保安院の課長以上経験者は2年間自粛する。該当者は数百人規模という。(朝日)
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 民主党にも自民党にも、官僚の渡りや天下り廃絶はもちろん、「産官学原子力複合体」を解体する意思もパワーもないことが透けて見える。東電の「監査役」の一人が前東大総長であることを知っている人は、日本にどれだけいるだろう?

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震災後 地震国の原発 政策の大転換を図れ毎日新聞・社説 4/15
 いつ、どこで、どれほど大きな地震や津波が起きても不思議はない。しかも、それを予測するすべを私たちは持たない。
 日本列島の現実を改めて思い知らされる1カ月だった。 予測不能な大地震だけでも日本が抱える大きなリスクである。その海岸沿いに54基の原発が建ち並ぶ。地震と原発の共存がいかにむずかしいか。警告は何度も発せられてきた。 石橋克彦・神戸大名誉教授のように「原発震災」という言葉で惨事を予見してきた科学者もいる。しかし、電力会社も政府も「少数派」として退けてきた。その帰結が今、私たちが直面する東京電力福島第1原発の深刻な事故である。
◇「想定外」許されぬ 大地震がもたらした地殻のゆがみは各地に影響を与えている。今後の地震活動は、予断を許さない。 地震国日本は原発と共存できるのか。真摯(しんし)に検証した上で、早急に打つべき手を打ちながら、原発政策の大転換を図るしかない。 まず、誰もが問題だと思うのは津波対策の不備だ。06年に改定された原発耐震指針に盛り込まれているが、扱いは非常に軽い。新指針に基づく再点検も後回しにされ、東電は点検を終えていない。
 一方で、東海第2原発のように新潟県中越沖地震の後に津波対策を一部強化していたところもある。「想定外の津波」という言葉で事故を総括することは許されない。 事故対応にも疑問は多い。79年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに、設計の想定を超える事態への対応として「過酷事故対策」が日本でも用意された。
 ところが、今回のようにすべての電源が失われ、原子炉が長期間にわたって冷却不能に陥った場合の具体的備えが東電にはなかった。 事故対応には初動が何より大事だ。にもかかわらず、電源車の用意や、原子炉の換気、海水注入などに手間取った。過酷事故対策を運用する準備があったとは思えない。 当面の課題は、全国の原発で電源確保を確実にすることだ。津波対策や耐震強化の見直しも急がねばならない。
 国の規制や監視体制も改革を迫られている。監督官庁である原子力安全・保安院が原発推進の立場にある経済産業省に属する矛盾はこれまでも指摘してきた。今回の対応にもその矛盾を感じる。原子力安全委の存在意義も問われている。完全に独立した規制機関を再構築すべきだ。 ただし、こうした「手当て」を施して良しとするわけにはいかない。
 事故発生後、原子力安全委の班目春樹委員長は「割り切らなければ原発は設計できないが、割り切り方が正しくなかった」と述べた。安全委員長の発言として納得できないが、それに加えて疑問が浮かぶ。 割り切り方を間違えなければ大事故は起きないのか。安全規制を厳しくし、設備や緊急時の対応策を整えれば、事足りるのかという点だ。
 これまで、電力会社も政府も、原発は安全装置を何重にも重ねた「多重防護」に守られ、安全だと強調してきた。しかし、今回の事故で多重防護のもろさがわかった。どこまで安全装置を重ねても絶対の安全はなく、過酷事故対策も事故を収拾できなかったというのが現実だ。

◇依存度下げる決意を リスクがあるのは飛行機や列車も同じだという議論もあるだろう。しかし、原発は大事故の影響があまりに大きく、長期に及ぶ。地震国であるという日本の特性も無視できない。予測不能な地震と原発の掛け算のようなリスクを、このまま許容できるとは思えない。 大震災の影響を考えれば、女川原発など被災した原発の再開も非常に慎重に考えざるをえない。今後の原発の新設は事実上不可能だろう。
 こうした現実を踏まえ、大災害を転機に、長期的な視点で原発からの脱却を進めたい。既存の原発を一度に廃止することは現実的ではないが、危険度に応じて閉鎖の優先順位をつけ、依存度を減らしていきたい
 第一に考えるべきは浜岡原発だ。近い将来、必ず起きると考えられる東海地震の震源域の真上に建っている。今回、複数の震源が連動して巨大地震を起こした。東海・東南海・南海が連動して巨大地震・大津波を起こす恐れは見過ごせない。 老朽化した原発も危険度は高い。原発の安全性の知識も地震の知識も進展している。古い原発にはその知識を反映しにくい。
 日本は電力の3割を原発に依存してきた。安定した電源として擁護論は強い。原発なくして日本の経済が成り立たないのではないかという懸念もある。 しかし、経済と安全をてんびんにかけた結果としての原発震災を直視したい。最終的には国民の判断ではあるが、原子力による電源に頼らなくても、豊かに暮らすための知恵を絞りたい。
 そのためには、温暖化対策で注目された再生可能エネルギーの促進や低エネルギー社会の実現がひとつの鍵となるはずだ。地震国日本に適した電源と、それに基づく暮らし方を、今こそ探っていく時だ。

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〈いんふぉめーしょん〉
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城南信用金庫が脱原発宣言!~理事長インタビュー(4/15)
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 城南信用金庫は8日、自社のホームペーに「原発に頼らない安全な社会へ」> というメッセージを掲載。原子力に頼らない社会づくりのために省エネや節電、グルーンエネルギーへの支援や投資を宣言しました。理事長にお話を伺いました。
OurPlanetTV版】 【YouTube版
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24時間東電に貼り付くチーム岩上~記者会見の舞台裏(4/14)
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 4月13日、ようやく記者会見に臨んだ東京電力の清水正孝社長。しかし記者の間からは「メッセージは何だったのか?」という質問が出るほど内容のない会見だった。脱力しながら会見場を出ると、そこには熱い空間があった。24時間東電会見をUSTREAM中継している、IWJ岩上チャンネルのスタッフたちが集結していたのである。
OurPlanetTV版】 【YouTube版
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福島原発10基廃炉に~署名2万8000筆を提出~(4/15)
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 福島原発の「廃炉」を求める有志の会が14日、東京電力と菅総理宛てに福島第一原発6基と第2原発にある4基の計10基の廃炉を求める署名を提出した。
OurPlanetTV版】【YouTube版

【4000人の参加で大成功!】 原発いらん!御堂筋デモ@大阪
 昨日の大阪での原発いらん!御堂筋デモは4000人の参加で成功しました。集会やデモの最初の方は旧「新左翼」の集まりか?みたいなオールド・スタイルの方が多かったので、大丈夫か?みたいに感じていましたが、デモの後半は「高円寺」状態で若い人も多く、延々とデモが続いていました。
4 16 原発いらん デモ 大阪 御堂筋←デモの後ろの方
2011年4月16日STOP原発!アクションin関西 反原発 大阪デモ 16.April.2011←デモの前の方
2011.4.16 大阪御堂筋 反原発デモ←このパフォーマンスは受けていました

2011年4月15日金曜日

原子力緊急事態: 「復興」と原発

原子力緊急事態: 「復興」と原発

 日本と同じ地震国、南米チリで原発の是非を問う世論調査が行われた。その結果、実に84.1%が原発建設に反対していることが明らかになった。一昨日(4/13)、チリのメディアが報じたという(共同通信)。昨年2月、大地震・大津波が発生し、500人以上が死亡したチリでは、先月、原発建設検討に向け、米国との原子力協定に署名したばかりだった。福島第一原発大災害が、原発に対するチリの人々の危機意識をかきたてたのである。当然のことだろう。
山岸凉子『パエトーン』(1988年)
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独首相、脱原発への政策転換 「6月に法改正」 ドイツのメルケル首相は15日、野党も含む国内16州(特別市含む)の州首相とエネルギー政策の見直しについて会談。福島第1原発の事故を受けて、早期に脱原発へ政策転換を図る方針を説明した。 会談後の記者会見で、メルケル首相は新政策について、6月上旬に閣議決定し、同月中旬までに連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で関連法の改正を目指すことを表明。同時に、風力など再生可能エネルギーへの転換を促進することを強調した。 ドイツ政府は3月中旬、国内原発計17基のうち、旧式の7基など計8基の一時停止を発表。昨秋決めた、既存原発の稼働期間を延長する計画を急転換する方向だが、与党内での調整が残されている。 このためメルケル首相は、脱原発の具体的な時期や、政策転換に必要な巨額の財源などは明らかにしなかった。【ベルリン=共同】

フランス:ストラスブール市議会、市内の原発廃止を要求 フランス東部・ストラスブール市議会は12日、老朽化が著しい市内のフッセンハイム原発の閉鎖を求める決議案をほぼ全会一致で可決した。福島第1原発事故の影響とみられる。決議に拘束力はないが、電力の約8割を原子力に頼るフランスの原子力政策に影響を与える可能性がある。 仏フィガロ紙などによると、77年に運用が始まった同国最古の原発。だが使用限度とされる30年が経過した上、ライン川運河に面しており、福島の事故以来「防災設備が整っていない」などの批判が出ていた。地域住民や環境保護団体も廃止を求めるデモを行っていたという。また、この原発はドイツやスイス国境に近く、ドイツ側からも廃止を求める声が出ていた。 フランスは欧州連合(EU)の決定に従って国内の原発(約60基)の安全性を確認中で、政府は「問題がある原発は閉鎖する」との方針を示している。 【読売・パリ福原直樹】

風力・太陽光エネが原発を逆転 福島事故で差は拡大へ 2010年の世界の発電容量は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが原発を初めて逆転したとする世界の原子力産業に関する報告書を米シンクタンク「ワールドウオッチ研究所」が15日までにまとめた。 原発は、安全規制が厳しくなったことや建設費用の増加で1980年代後半から伸び悩み、2010年の発電容量は3億3500万キロワット。一方、再生可能エネルギーは地球温暖化対策で注目されて急激に増加し、風力と太陽、バイオマス、小規模水力の合計は3億8100万キロワットになり、初めて原発を上回った。 報告書は、福島第1原発事故の影響で廃炉になる原発が多くなり、新設も大幅には増えず、再生可能エネルギーとの差はさらに開くとみている。(共同)

首長9割「安全性揺らいだ」(毎日新聞アンケート)
 東日本大震災で深刻な事態に陥った東京電力福島第1原発事故を受け、原発が立地または建設計画がある自治体首長の約90%が「原発の安全性が揺らいだ」と受け止めていることが、毎日新聞の調査で分かった。津波対策や耐震性の強化なしで「現状のまま運転を認める」とした首長は2首長にとどまった。運転継続や再開には地域の理解が不可欠だが、国や電力各社には、安全性確保や不信感払拭(ふっしょく)への高いハードルが待ち受けている。 調査は3月30日以降、原発を抱える(建設中、計画中含む)道県と市町村の計39自治体の首長に実施。今月14日までに34首長が文書または口頭で答えた。
・福島第1原発の事故について、「トラブル発生は問題」と答えたのは79%、「原発の安全性が揺らいだ」が88%と大半が問題視。課題では「電源確保対策の不足」「津波対策の欠如」「事業者の判断の遅れ」が挙がった。
・現在ある原発を「直ちに止める」と答えた首長はいなかった。しかし、現状の対策のまま今後も運転を継続できると答えたのは、北海道泊村と福井県高浜町のみ。その理由を、高浜町は「電力供給が逼迫(ひっぱく)している現状では難しい」としている。
・一方、定期検査などで停止中の原発がある自治体は、「地元の了承が得られるまで再開を認めない」(静岡県)、「事故原因が解明されなければ再稼働を認めない」(石川県志賀町)と条件を付けた。具体的には、「設備の抜本的強化」「事故に十分対応できる人員・体制確保」などを挙げた。
 現在の原発の耐震基準を示す指針は06年、25年ぶりに改定された。この指針について「見直しが必要」と答えたのは62%。理由では、「津波対策が不十分」「想定を超えた災害への対策が不十分」との指摘が目立った。
・国や電力各社への注文も相次いだ。「想定を超える災害時に、原子力政策にかかわる関係機関の役割が不明瞭」(山口県)、「原発の安全規制体制の全面的な見直し」(新潟県柏崎市)、「風評被害への国の万全の対策」(鹿児島県薩摩川内市)、「エネルギー政策の国民的な議論」(福島県双葉町)などが寄せられた。不安の払拭には、適時適切な情報提供が重要だが、85%が国や東電の姿勢を「不十分」と答えた。【まとめ・永山悦子】
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 私がこの間主張しているのは、
①こういう「世論調査」を原発を抱える自治体で、また日本全体できちんとやろう、そして
②稼働中原発の「絶対安全」が確認されるまで、とりあえず一時停止しよう、ただそれだけのことだ。
 この程度のことが、原発事故が頻発する「原発立国」日本で、なぜ通用しないのか? 少なくとも、福島を始め、宮城・岩手・青森・茨城の五県では「復興構想」の「指針」が固まる前に実施される必要があるだろう。

「復興構想会議」という舞台装置
 昨日の「復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)初会合。その模様をさまざまな新聞メディアが報じている。例えば、毎日新聞の記事は、原発問題を「議論の対象から外す」(???)ように「指示」した菅首相に対し、哲学者の梅原猛特別顧問らから「異論が噴出」したと報じている。 「原発問題を考えずには、この復興会議は意味がない」。そう梅原氏が会議終了後、記者団に語ったという。当然のことではないのか?
 福島県の佐藤雄平知事も「原子力災害も皆さんに共有していただきたい。安全で安心でない原子力発電所はありえない」と提起し、秋田県出身の脚本家、内館牧子氏も「地震、津波、原発事故という3本の柱で考えたい」と述べたという。これも、当然のことではないだろうか。

 「文明論として原発議論 扱いめぐり対立も、復興構想会議」(共同通信)で報じられた各委員の発言。
・議長の五百旗頭真防衛大学校長の会議冒頭発言。「原発事故は危機管理的な状況にあり、任務から外すよう(菅直人首相から)指示されている」。
・赤坂憲雄福島県立博物館長「文明的な問題として、原発の問題を抜きにしては前に進めない」。
・梅原猛氏「原発で生活が豊かになったが、その文明が裁かれている。この裁きに対してどう答えを出すか」。
・五百旗頭氏の会議後記者会見「原発の技術的な問題を議論することはできないが、原発を含む複合災害として国民全体で考える姿勢が大事だ」。

・芥川賞作家であり、禅宗(臨済宗)の僧侶でもある玄侑宗久委員「別に話し合って加える形にしないと福島県民にとって会議が意味のないものになってしまう」(日経「復興会議初会合、原発は任務外との指示に委員ら異論」より)。
⇒「梅原猛・哲学者――原発事故は「文明災」、復興を通じて新文明を築き世界の模範に」(東洋経済)
 「今回の事故は、あらためて近代文明の是非を問い直し、新しい文明を作るきっかけにもなるのではないか。まずは日本が率先して原発のない国を作り、それを世界に広げていくべきだと思う。 そのためにやるべきことは二つ。
 まず、代替のエネルギーとして、太陽光エネルギーの研究をすすめるべきだ。これまで、原発を推進する研究に莫大な研究費を投じてきた。その研究費を、太陽光エネルギーに投入する。日本企業も京セラなどはこれまでも取り組んできたが、それ以外の企業も本気で取り組むべきだろう。
 もう一つは、過剰なエネルギーを浪費するような生活から脱却すること。今原発が賄っている電力は全体の3割程度。太陽エネルギーによる代替とともに、一人ひとりが生活を改めることが重要だ。 スリーマイル島の時も、チェルノブイリの時も、国や東京電力は、日本の原発は絶対に安全だと言い続けてきた。しかし、日本の原発だけが安全などということはあるわけがない。今回の事故で、それが明らかになった。今こそ原発から脱却する新しい国をつくらなければ、必ずまた同じような事故が起こる」。

 「日本が率先して原発のない国を作り、それを世界に広げていくべき」という梅原氏の主張に共感する人は多いだろう。その梅原氏を「復興構想会議」の「特別顧問」に招いておきながら、菅首相は12日の記者会見で「原発停止しない、原発推進する宣言」を発したのである。
 毎日新聞の記事は、「復興構想の中に原発をどう位置づけるかが議論の焦点の一つになりそうだ」と書き、共同通信は、会議後の五百旗頭発言が冒頭発言を「軌道修正」したものだとしている。しかし、「復興構想会議」の問題はそこにあるのではないし、五百旗頭発言を「軌道修正」と受け取ることも間違っているだろう。この国の原発官僚機構、〈産官学原子力複合体〉は、そんなに生易しい代物ではない。

 まずはっきりさせねばならないのは、福島・宮城、青森、もっと言えば茨城県でも「原発をどう位置づけるか」は「復興構想」とは切り離せるはずがないことだ。問題は、にもかかわらず、菅政権がそれを無理やり切り離し、「復興構想」を「有識者」に「提言」させることを、すでに決定してしまったことである。ここを見なければ、〈「復興構想会議」のポリティクス〉は何も見えてこないだろう。
 たしかに今日(4/15)午前の記者会見で、枝野官房長官は「復興構想会議」のテーマについて「今回の震災の1つの大きな要因が福島第1原発事故で、どう位置付けるかは当然議論の対象だ」と述べてはいる。当初政府として原発問題を扱わないとしたことに関し、「若干(原発問題の)位置づけが定義できていなかった」と釈明し、「復興における原発問題」と「事故収束の具体策」を切り離し、後者を構想会議の議論の対象外とすると説明した。

 しかし、議論するも何も特別顧問・梅原氏の結論ははっきりしている。「日本が率先して原発のない国を作り、それを世界に広げていくべき」というものだ。当然、「原発のない福島」「原発のない東北」「原発のない日本」が梅原氏の「復興構想」の根幹にあるだろう。それは「原発の安全性の確保」を最重要課題とする菅民主党政権の「復興構想」とはまったく相容れないものだ。梅原氏が「脱原発・原発停止論者」であることは相当前から知られており、それを承知の上で菅内閣は氏を招聘したのである。 
 いったい菅政権は、何のために梅原氏を「特別顧問」に招いたのか? 人をバカにしているのだろうか?
 マスコミはまず、この問題を政府に質すことが先決ではないのか。

東電・電力会社に「公共企業」としての社会的倫理はあるか?
 一昨日、東電の清水正孝社長が、2007年新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村、全7基)で今も停止中の2~4号機のうち、3号機について「運転再開に向けてできるだけ早く、年内には手続きに入りたい」と発言し、これに対し柏崎市の会田洋市長が昨日、「福島第一原発の状況が収束していない状況で、そうした発言がなされることは理解できないし、驚いている」と反発し、「原発の安全性について国から新しい方針が示されないと、運転再開は難しい」と発言したことが報道された。
 さらに、東電の柏崎刈羽原発所長が昨日、自社の社長発言を否定し(「(社長発言は)会社の希望として言ったことだと考えている。定期検査をいつまでに終えるといった工程ありきの発言ではない」)、「謝罪」するという、一般社会の常識では理解できない、意味不明のことが報道された。横村所長は「本店には一つ一つのプロセスを着実にこなし、国や地元の意向を踏まえて作業を進めると伝えている」と説明したたいうが、東電が「年内運転再開」を撤回したという報道はない。
 けれども、下の文章に目を通すなら、このような東電の姿勢が関電を始めとするその他の電力会社の姿勢と、まったく同じものだということがよくわかる。

 関電が管理する福井県若狭湾に面した美浜(美浜町)、大飯(おおい町)、高浜(高浜町)の3原発。
 先月24日、これらが想定する地震による津波の最大波は、いずれも高さ2メートル未満としていることが判明した。福井県内や島根県の日本海側にある他社の原発の想定と比較しても低い数値だが、関電は「日本海側には海溝型プレートがなく、大型津波は発生しない」と強弁したのである。
 具体的には、関電が各原発で想定している津波の最大波は、1, 美浜1~3号機が1.53~1.57メートル, 2, 高浜1~4号機0.74~1.34メートル, 3, 大飯1~4号機1.66~1.86メートル。(因みに、3原発に近い日本原子力発電の敦賀原発(敦賀市)は2.8メートル、日本原子力研究開発機構のもんじゅ(同)5.2メートル、中国電力島根原発(松江市)5.7メートル)。
 これまで、若狭湾周辺で想定される地震が、最悪でもマグニチュード8レベルの「活断層型」であることが、「海溝型」の太平洋側の原発に比して、津波の想定最大波を異様に低く見積もることの正当化の論理とされてきた。今回の大震災で、その全面的見直しを関電は余儀なくされたのである。

 では、関電はこの間、どのような「対策」を講じ、原発の「絶対安全」を保証しようとしてきたのか。
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関電が原発安全策700億円超、福井県へ提出 防潮堤も
 関電は8日、東京電力の福島第1原子力発電所事故を踏まえた「安全性向上対策の実行計画」を策定、同日、福井県に報告したと発表した。
1, 電源車の増加などすでに発表済みの対策に加え、
2, 消防ポンプの大量導入や既存防潮堤のかさ上げなどを新たな対策として実施、既存対策とあわせて700億円以上の対策費を投入する。
 計画は福井県からの要請で策定。津波発生時に電源や炉心冷却機能などを確保するため、
①今月中をめどに行う「緊急対策」と、
②今年度から来年度にかけて行う「応急対策」で構成されている。
 緊急対策では福井県内の3カ所の原発で計6台が導入されている消防ポンプを、12日までに新たに160台導入する。さらに、ディーゼル発電機建屋への海水侵入を防ぐため、扉の隙間にシール施工を行うとしている。 応急対策では美浜、高浜原発の防潮堤を今年度中にかさ上げをするが、具体的な高さについては「今後、検討する」(担当者)としている。
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 上の「緊急対策」は完了しておらず、「応急対策」はまったく手がつけられていない

原発災害の「社会的コスト」と稼働中原発の一時停止
 日経電子版の4/12付の記事、「東電の悪夢、問われる原発の合理性 吹き飛んだ2兆7000億円弱」(産業部編集委員・安西巧) がとても興味深い。

・東電の「株式時価総額は震災前の3兆4599億円から8035億円に急減。企業価値で2兆6564億円が吹き飛んだ」。
・「同社の有利子負債は7兆6211億円(2010年9月末時点)、このうち社債の発行残高が約5兆円」。
・「東電はもはや政府の後ろ盾なくしては信用を維持できないところに追い込まれている。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は4月1日に東電の長期格付けをAプラスからBBBプラスへと3段階引き下げた」。「少なくとも海外マーケットでは、東電はすでに実質「国有化」された状態とみなされている」。
・「震災前に東電は2011年3月期業績を連結売上高5兆3850億円、連結純利益1100億円と見込んでいた。10年3月期時点の株主資本は2兆4657億円、株主資本比率は18.7%、営業キャッシュフローは9883億円と1兆円近くもあった。内外の主要格付け会社が東電の長期債にそろってダブルA以上の高い評価を与えていた」。

・「今回の事故とその後広範な周辺地域に及んだ数万人規模(半径20キロ圏内だけで約8万人)の住民避難、農産物、海産物への被害、そして「最大10兆~11兆円」(外資系証券会社の試算)ともいわれる補償額を考慮すると、「原発の経済合理性」は説得力を持たなくなる。仮に原子力損害賠償法の下で政府が負担を肩代わりするとしても、その原資は税金であり、「社会のコスト」として果たして国民が受け入れるかどうか疑問符がつく」。
・「これほどやっかいな原発を電力会社の経営者は「国策事業」として背負い続けていくのか。株主は大事故を起こせば株価が暴落するリスクに耐えられるのか。そして危険を覚悟で事故処理に立ち向かう従業員を今後も確保できるのか――。電力会社のステークホルダーだけでなく、国民全体の電力事業への価値観が見直されるべき時期に来ている」。

 まったくその通りだと思う。
 「果たして国民が受け入れるかどうか」? 少なくとも私は、絶対に受け入れない。
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東電社長「合理化、人員削減も視野」 賠償に備え
 東京電力の清水正孝社長は15日、都内で会見し、損害賠償の支払いに備えるために「聖域のない合理化に取り組む必要があり、人員削減を視野にいれている。資金調達にも最大限の努力をする」と述べた。賠償金の総額について「事態が収束しておらず現時点では申し上げられない」と述べた。 金融機関からの約2兆円の借入金については「当面の運転資金や火力発電所の修繕などに充当する」と述べ、損害賠償の支払いに充当しない方針を示した。(日経)

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中部電力、“悲願”の原発推進に高い壁
 東日本大震災による東京電力の福島第1原子力発電所の事故を受け、中部電力唯一の原発「浜岡原発」(静岡県御前崎市)に注目が集まっている。福島と同じ太平洋岸で東海地震の想定震源域という立地条件、首都圏に比較的近いなど類似点が多いからだ。中部電は津波の防波壁建設を急遽決め、大震災の緊急対策訓練も行うなど安全策のPRに躍起だが、風当たりは強くなる一方だ。
次の危険な原発?
 「浜岡原発のように地震域の上に立っている危険な原発を緊急に停止するというお考えはあるか」。震災から約1カ月の12日に行われた菅直人首相の記者会見で、こんな質問が飛び出した。浜岡原発への関心の高まりを表す事例だ。国内外メディアからの取材依頼が増えており、米大手ケーブルテレビのCNNも現地を取材し、「地震で国全体に新たな巨大放射能災害を引き起こしかねない」などとリポートした。

 浜岡原発が立地する御前崎市沿岸は東海地震の想定震源域とされる。想定マグニチュードは8程度。東海地震は30年以上前に危険性を指摘する学説が発表されて以来、「いつ起きてもおかしくない」とされ、静岡県は巨額の地震対策事業費を注ぎ込む。 「安全対策を早急に取っている。理解いただくよう努力したい」。3月下旬の中部電の定例会見で、地元理解を得るための施策を水野明久社長は話した。
 これまで中部電は原発前の砂丘で津波を防げるとしてきた。しかし、東日本大震災後、即座に高さ15メートル、長さ1.5キロにも及ぶ巨大防波壁の建設を決定。また、自治体関係者を招いた安全対策の見学会や緊急時対策訓練を行うなど、安全策の説明に力を入れている。 だが、地元の反応は厳しい。定期点検中で稼働を停止していた3号機は3月末までに再起動の予定だったが、5月以降へと延期。国が再開にあたっての新たな安全ガイドラインを示したことや、当初は早期再開に理解を示していた静岡県の川勝平太知事がさらなる安全対策の説明を求めたことが一因だ。
 また、6号機の新設を平成27年から1年、4号機で24年にも予定していたプルサーマル発電計画も1年遅らせることを余儀なくされた。 「今のまま進めることはできない」(川勝知事)。「県内立地は無理」(10日三重県知事に初当選した鈴木英敬氏)。市民団体も運転停止を求める5万人署名を中部電に提出するなど“包囲網”は強まるばかりだ。

「悲願」達成はいつ 石油ショックや公害を経て、国の施策が火力から原子力に転換していく中で原発増設は中部電の悲願だった。同社管内は人口密集地が多く、建設基準を満たす岩盤強度の土地も少ないなど、立地の適地が限られている。中部電の原子力発電比率は14%と、原発を持つ全国9電力会社のなかで最低で、火力発電への依存度が高い。電力需要が増大する中で厳しい環境規制をひかれた火力の増設は、事実上不可能。火力は石油や天然ガスなど資源価格の変動に左右され、コスト高とされる。実際、原発への依存度が高い関西電力などと比べると、電気料金は割高という。 中部電は管内にトヨタ自動車など自動車関連産業が集積していることから、大口顧客への販売シェア(占有率)が5割近くあり、他電力に比べて高い。大口顧客は電力の自由化で、より安い電気を求める可能性もあり、新規立地は「長年の願い」(首脳)だった。 しかし、立地計画はとん挫の連続だ。三重県南部での建設計画では、地元の反対で平成12年に白紙撤回。13年には近隣の自治体が地域振興として誘致を目指したが、住民投票で否決北陸、関西の両電力と進めた石川県北部の計画も15年に凍結された。
 悲願達成へ同社は2月24日、2030(平成42)年に原発比率を50%に引き上げることを柱とした長期経営計画を発表した。新規立地へ「私の在任中に前へ進める」(水野社長)と満を持しての発表だったが、2週間後に発生した震災で計画もかすみ始めている。 原発が問題視される中、原発依存度が低い中部電は「有利」な立場になるようにもみえるが、首脳は「『火力回帰』で燃料が上がり、手当てが難しくなっている。長期的には厳しい。低炭素社会を目指すために原発は必要」と方針を堅持する考えだ。「今は世論が沸騰しているが、落ち着くのを待ちじっくり説明する」と話す。悲願を待ち受ける壁は、高くなる一方だ。(産経)

市町村が申請窓口とは…東電仮払金に怒る首長
 東京電力が福島第一原発の事故を受けて15日、避難住民らに1世帯100万円、単身世帯には75万円を支払うと正式発表した仮払金。 東電は約5万世帯を対象に周辺市町村と調整し、準備が整い次第、避難所で説明会を開いて手続きを始めるとするが、首長らからは批判の声が上がった。 東電は、申請方法について、郵送や避難所での東電社員への手渡しなどを挙げ、「自治体と協議」とした。しかし、政府の原子力被災者生活支援チームが自治体に配布した資料には、申請について「市町村の窓口で受け付け、東電より直接支払う」と記されている。 二本松市に役場機能を移転させた、浪江町の馬場有町長は「我々は日常業務だけで精いっぱい。とても無理だ」と話し、富岡町の佐藤秀夫総務課長も「東電には、自分たちで誠意を持って対応する姿勢が感じられない」と憤った。(読売)

「賠償は国と東電で 原子力は基軸」 電事連の八木新会長
 関西電力の八木誠社長が15日、電気事業連合会の会長に就任し記者会見した。 東京電力福島第1原子力発電所事故により避難している周辺住民への損害賠償で、電力各社に負担を求める議論があることについて「承っていない。まずは国と東電が原子力損害賠償法(原賠法)の仕組みの中で対応することだ」と述べた。 また、事故を経てもなお「電力の安定供給を支える基軸は原子力だ」とし、安全対策に取り組む姿勢を強調した。
 八木会長は、電力各社が他社の事故対応のために資金負担するには「電力料金を支払っているお客さまの理解を得ることが必要」で、株主の意向を踏まえる必要もあると指摘。今後の原賠法の運用を見守る考えを示した上で、資金負担の要請があった場合は「具体的な内容と趣旨を聴いた上で判断したい」と述べた。 今回の事故については「未曾有の非常事態。原発の信頼回復に向け最大限の努力を傾けたい」とした。電力各社が人材を派遣し、機材提供で東電を支援していることを明らかにし、国の指示に従って各社とも震災、津波対策を進めていると強調した。
 福島以外の原発立地地域でも不安が高まっているが、「日本のエネルギー自給率は4%しかない。電力会社の最大の使命である電力の安定供給を支える上で原発は大切な電源だ」と述べ、「原子力の維持、成長」を図るため、各社で原発の信頼を回復することが不可欠との考えを示した。 また、今後のエネルギー政策に関しては、「事故の収束がみえた段階で、国民的議論が行われるだろう。その際に真摯に対応したい」とした。原発新設計画への影響については明言を避け、「運転中の原発の安全確保に最大限努力する」とだけした。 電事連会長は、東電の清水正孝社長が務めていたが原発事故を受けて14日、会長職を辞任。電事連は15日、代わって関電の八木氏を選任した。(産経)

日本に不満くすぶる=原発安全強化へ情報不可欠―原子力条約会合
 原子力の安全問題を話し合う主要な国際会議としては、福島第1原発の事故後、初めてとなった原子力安全条約再検討会合は14日、事故の教訓を原発の安全対策に生かすことで合意して閉会した。各国は、教訓を生かすには日本からの情報提供が不可欠との認識で一致。日本は応じる姿勢を示したが、各国からは依然として不満の声が上がっている。 日本は再検討会合のほか、国際原子力機関(IAEA)と共催した事故の状況を報告する4日の緊急会合で「透明性」をアピールし、情報の提供を約束。議長声明は「日本は情報をできるだけ迅速に提供すると確約した」「日本は情報を入手次第、全面的に提供すると確認した」として、一定の評価を与えた。
 一方で、議長声明は事故に関し、「多くの締約国がメディアや国民に迅速かつ信頼できる情報を提供するのが困難と報告した」と紹介した。 また、議長団は会合終了後の記者会見で、安全強化策を探る上で、今後はこれまで確定していなかった情報も必要になると指摘。具体例として、「原子炉の中の状態」を挙げたが、これは「ほんの一例にすぎない」と述べ、日本からの情報は足りないとの考えを示唆した。【ウィーン時事】

「大津波にも耐えられる」小中学生の副読本記述見直しへ 文科相
 高木義明文部科学相は15日の閣議後記者会見で、文科省と資源エネルギー庁が平成22年2月に発行した小中学生向けのエネルギー学習用の副読本について、放射性物質(放射能)を「しっかりととじこめています」などとする複数の記述が、東京電力福島第1原発の事故と照らし合わせた際に不適切だとして、内容の見直しを行うことを明らかにした。
 副読本は小学生向けの「わくわく原子力ランド」と中学生向けの「チャレンジ!原子力ワールド」で、合わせて約1500万円で作成し、それぞれ全国の小中学校に配布済み。小学生向けの副読本では「原子力発電所では、放射性物質が外にもれないよう、五重のかべでしっかりととじこめています」などと表記し、中学生向けの副読本でも「大きな地震や津波にも耐えられるよう設計されている」と解説している。 文科省の委託で日本原子力文化振興財団が運営するホームページ(HP)からもダウンロードできるようになっていたが、13日以降はいずれも削除された。 高木大臣は「今回(福島第1原発の事故)の事実を受け止め、事実に反したところは見直していく」と述べた。(産経)

3号機圧力容器の一部で急激な温度上昇 保安院「直ちに問題はない」
 福島第1原子力発電所の復旧作業は一進一退が続く中、14日夜、3号機の原子炉圧力容器の一部で、急激な温度上昇が起きていることがわかった。原子力安全・保安院は「3号機については、炉心で1つ、注意しなきゃいけないことがありまして、少し温度が上がっております」と話した。
 圧力容器のフランジと呼ばれる接続部分が、2日間でおよそ80度、温度が上昇している。原子力安全・保安院は、直ちに問題はない(???)としているものの、その原因や影響については不明(???)としている。 また、東京電力の福島事務所は14日夜、福島第1原発1号機と2号機付近の地下水に含まれる放射性物質の濃度が、1週間でおよそ10倍に上昇したと発表した。震災38日目、「復興」という言葉は、原発周辺ではまだ聞こえてこない。(FNN)

地下水の放射能濃度、1週間で17倍に 2号機周辺
 福島第一原発2号機周辺の地下水に含まれる放射能が、1週間前に比べて17倍の濃さになっていた、と東京電力が14日発表した。2号機では高濃度の汚染水がタービン建屋地下や外の坑道にたまっており、しみ出た可能性もある。経済産業省原子力安全・保安院の指示で今後、週に1回の計測を3回に増やし、警戒を強める。 東電は13日に1~6の各号機の周囲に付設した井戸で水を採取し分析した。
 その結果、2号機ではヨウ素131が1ccあたり610ベクレル検出され、6日の36ベクレルに比べて17倍になっていた。1号機も400ベクレルで6倍とほかに比べ濃かった。2号機では、外の坑道にたまった水から毎時1千ミリシーベルト以上と高い放射線量を計測。この水が取水口付近にある作業用の穴の亀裂から海へ流れ出していた。6日に止水し、一部はポンプでくみ出したが、大部分は残っている。
 東電は「止水で行き場が無くなった水が地下で回り込んでいる可能性もある」と説明している。 他号機の放射能の濃度は横ばいか減少で、十数ベクレル~1ベクレル未満だった。これらは周囲に飛散した放射能が雨などで地下に浸透した可能性がある。 (朝日)

対岸4キロ原発計画 山口・祝島で元稚内市職員が被災児受け入れ
 瀬戸内海に浮かぶ山口県上関(かみのせき)町祝島(いわいしま)で、元稚内市職員の農業氏本長一さん(61)が東日本大震災で被災した子供の受け入れ準備を進めている。島の対岸4キロで中国電力上関原発の建設が予定されるが、島民約500人の8割が反対し、食料やエネルギーの自給自足を目指している。  小学生5、6人と保護者を無償で受け入れ、島内にある児童数5人の小学校に通学させる。島内の空き家に家族で住むか、子供だけの場合は島民の家にホームステイしてもらう。島民の大半が漁業か農業に従事しており、当面の食事や食材も無料で提供する。 氏本さんは祝島で生まれ、1972年に帯畜大を卒業して稚内市役所に入り、市営牧場長などを務めた。2007年に故郷へ戻り、現在は自給飼料で豚40匹を飼育、特産のビワも無農薬で栽培する。祝島の原発反対運動のリーダー的な存在だ。
 上関原発は82年に建設計画が表面化。中国電力は東日本大震災後に準備工事を中断しているが、来年着工、18年稼働の計画は撤回していない。 氏本さんは「原発によって豊かな海や山が失われることが、福島の事故で明らかになった。受け入れる子供たちの未来のためにも計画を阻止したい」と話している。 (北海道新聞

福島原発の廃炉処理、チェルノブイリより困難=独重機メーカー
 福島第1原発事故で放水作業などを行う生コン圧送機を製造する独プツマイスター社の技術部門責任者、ジェラルド・カーチ氏がロイターとのインタビューに応じ、福島第1原発を廃炉にするためにコンクリートで覆う作業は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と比較してはるかに難しいと語った。  プツマイスター社は1986年のチェルノブイリ事故でも圧送機を送り、事故処理に当たった。カーチ氏は、チェルノブイリと福島の原発事故は容易に比較できないとした上で、「チェルノブイリでは原子炉1機をコンクリートで覆うのに、11台の圧送機が何カ月にもわたって作業した。だが、福島では4機の原子炉に対処しなくてはならない」と指摘。
 また、チェルノブイリは1機の爆発によるもので、福島第1原発とは違って原子炉を冷却する必要がなく、爆発後すぐにコンクリートで覆うことができたと説明した。 今後の対処については、日本側でまだ決定されていないとしながらも、冷却が終わり次第、原子炉をコンクリートで覆うのが最も理にかなっていると、カーチ氏は主張。一方で、必要な圧送機を現場に送り込むといった作業を計画・実行することが、福島第1原発を運営する東京電力にとって、まさに大きな課題になるとの考えを示した。 [アイヒタール(ドイツ)/ロイター]

タービン建屋地下水、放射性濃度上昇 福島原発1・2号機
 東京電力は14日、福島第1原発1、2号機のタービン建屋付近の地下水について、放射性物質の濃度が1週間前に比べて10倍ほど上昇していると発表した。タービン建屋地下には高濃度の汚染水があり、しみ出した可能性がある。東電は同日、経済産業省原子力安全・保安院に報告、監視強化の指示を受けた。 1~6号機の地下水について13日に試料を採取して調べた。1号機は放射性ヨウ素131が1立方センチメートル当たり400ベクレル、2号機は同610ベクレルと1週間前の6日に比べて10倍ほど濃度が高まった。原子炉の通常運転時に炉心にある水とほぼ同等の濃度という。
 同原発では一時、2号機の取水口付近から高濃度の汚染水が海に流れ出ていた。土壌固化剤などの投入で6日に流出は止まった。(日経)

インフラ復旧事業、国費負担率99% 大幅引き上げへ
 国土交通省は、東日本大震災で被災したインフラの復旧に関する自治体の公共事業の国庫負担率を大幅に引き上げる方針を固めた。最高で99%程度まで国費負担率を引き上げてほぼ全額を国費で賄い、自治体の負担を減らす。
 国交省によると、県や市町村が管理する道路や堤防、港湾、下水道などの被害は3月末時点で1万3602カ所、被害額は1兆2千億円に上る。復旧工事の費用を賄えない自治体が相次ぐとみられ、同省は最大限の補助率の適用を検討している。
 災害復旧にかかる費用は、通常3分の2が国費で補助され、さらに、大規模な災害だと政府が指定すれば、80~99%までかさ上げできる。これとは別に被災した自治体は、復旧工事のために地方交付税の特別交付を受けることができる。制度を併用すれば、自治体は復旧工事のほぼ全額を国費に頼ることができる。  また、今回の震災では、自治体の機能が低下した市町村も多いため、自治体による被害額の査定手続きも大幅に緩和する。図面や被害写真がなくても、国の航空写真で代替することを認め、現地に行かずに査定できる限度額を300万円から5千万円に引き上げる。(朝日・歌野清一郎)

観光への風評被害も補償対象…枝野官房長官
 枝野幸男官房長官は14日の参院内閣委員会で、福島第1原発事故の風評による観光への被害に関し「因果関係が相当ある範囲(?)は当然補償の対象になる」と述べ、一定の因果関係を条件に補償対象とする考えを示した。ただ、補償の範囲については「どこまでが風評被害で、どこまでが広い意味での自粛の影響かは難しい」と述べ、言及しなかった。 同事故を巡っては、農作物被害や漁業被害は既に補償対象となっているが、周辺の旅館の宿泊キャンセルが相次ぐなど、農業以外にも影響が広がっている。枝野氏は「補償と別次元で、原発の影響を受けているさまざまな産業に、政府としてしっかりと支援を行いたい」とも話した。いずれも岡田広氏(自民)への答弁。【毎日・影山哲也】

2011年4月13日水曜日

原発推進と「クリーンエネルギー」?-- 菅政権の「4・12宣言」を批判する

原発推進と「クリーンエネルギー」?-- 菅政権の「4・12宣言」を批判する

 昨日(4/12)、菅首相は、現在稼働中の原発について「今の段階で停止させることは考えていない」と宣言した。そして、原発の具体的な「安全対策」についても、地震発生時の原発内電源の「確保」という、これまですでに公表されてきた内容を、ただオウムのようにくり返すに終わった。 さらに、今後の「エネルギー政策」では「原発の安全性を求めると同時に、クリーンエネルギーに積極的に取り組んでいく」と、原発推進政策を明確に打ち出した。原子力委員会の近藤駿介委員長も、定例会後、「絶えずリスクを下げる努力をしながら(原発推進の)政策を進めていく」と述べたという。
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4/14
 私は、先週7日宮城県沖で起きたM.7.4の「余震」に触れ、8日に次のように書いた。
 「思い出してほしいのだが、昨夜の地震は、気象庁が6日、「震度5強以上の余震が3日以内に発生する確率」を「10%」と発表した翌日に起こったのだ。気象庁は、9日から3日以内の「確率」も「10%」としていた。しかし、昨夜の地震を前にして、これらの「確率」や今後の「予知」は、もはやほとんど何の意味も持たない。M.7クラス以上の地震は福島県沖でも、宮城・茨城県沖でも、新潟県沖でも、どこでも、いつでも起こりうるのである」。
 日本政府や、稼働中原発の一時停止など必要ないと考えている人々は、下の記事や「専門家」の提言に真摯に耳を傾けるべきである。

女川原発、余震でも想定超す揺れ 耐震指針運用見直しも
 東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)で、7日夜にあった東日本大震災の余震で、2006年の新耐震指針の想定を超す揺れが観測されたことがわかった。同原発では3月11日の本震だけでなく、余震でも揺れが想定を超えたことで、耐震指針の運用見直しが議論になりそうだ。経済産業省原子力安全・保安院は13日、同社に詳細分析を指示した。
 宮城県沖を震源とする地震(マグニチュード7.1)で7日、県内で震度6強が観測された。東北電力が翌日公表した資料によると、女川原発1号機の最下階では、揺れの目安になる地震計で、想定の451ガル(上下方向、ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)を超す476.3ガル(暫定値)を観測した。 この観測点では3月11日の本震で、水平方向の揺れが想定を超えたが、上下方向は439ガルで超えていなかった。  原発で指針の想定を超える揺れが観測されると、機器の損傷の確認や原因の分析が必要になる。東日本大震災では規模の大きい余震が相次いでおり、仮に運転を再開したとしても、揺れで自動停止する可能性もある。 事故を起こした福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)や、日本原電の東海第二原発(茨城県東海村)でも、本震では想定を上回る揺れが観測されている。
 保安院の西山英彦審議官は13日の会見で原発の設計の前提として想定される揺れ(基準地震動)について「基本的に(???)超えることがあってはいけない」としたうえで、「定め方をよく吟味しなくてはいけない」と指針の運用を見直す考えも示した。 女川原発は3月11日の東日本大震災で自動停止。1~3号機の9カ所で想定を上回る揺れが観測された。3号機の最下階では、想定の512ガルの約1.1倍の573ガルだった。(朝日・小堀龍之)

「日本政府は不毛な地震予知を即刻やめよ」 ゲラー東大教授 「日本政府は不毛な地震予知を即刻やめるべき」などとする、ロバート・ゲラー東京大教授(地震学)の論文が14日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。「今こそ(政府は)地震を予知できないことを国民に率直に伝えるとき」とも提言しており、世界的な学術誌への掲載は地震多発国・日本の予知政策に影響を与える可能性もある。
 論文では、予知の根拠とされる地震の前兆現象について「近代的な測定技術では見つかっていない」と指摘し、マグニチュード8クラスの東海・東南海・南海地震を想定した地震予知は方法論に欠陥がある、としている。 福島第1原発事故についても「最大38メートルの津波が東北地方を襲ったとされる明治29年の明治三陸地震は世界的によく知られている」とし、「当然、原発も対策されているべきで、『想定外』は論外だ」とした。

「大地震誘発の可能性ある」東北大が研究成果を報告 東北大は13日、東日本大震災の被害状況や地震、津波に関する研究結果をまとめた報告会を仙台市で開き、研究者がそれぞれのテーマについて発表した。 海野徳仁教授(地震学)は、東北地方の乗った陸のプレート(岩板)が地震で20~30メートル東に移動、陸地は最大約1メートル沈降したとする解析結果を紹介。次々に地震を誘発した平成16年のスマトラ沖地震を例に挙げ「今回も、震源域周辺に大地震を誘発する可能性がある」と警戒を呼び掛けた。
 海底に設置した圧力計を解析した日野亮太准教授は「地震の際に海底が5メートル隆起しており、巨大な津波につながった」と報告。今村文彦教授(津波工学)は「防波堤や防潮林などがどの程度機能したかを丹念に調べ、われわれの防災対策のどこが駄目だったかの知見を今後につなげたい」と話した。(産経)

震源域東側でM8級、早ければ1か月内 東日本大震災の震源域の東側で、マグニチュード(M)8級の巨大地震が発生する可能性が高いとして、複数の研究機関が分析を進めている。 日本海溝の東側で海のプレート(岩板)が引っ張られる力が強くなっているためで、早ければ1か月以内に津波を伴う地震が再来する危険がある。 M9.0の東日本大震災は、押し合っていた海のプレートと陸のプレートの境界面が破壊されて起きた。そのため周辺の地殻にかかる力が変化し、東日本全体で地震が誘発されている。
 京都大防災研究所の遠田晋次准教授(地震地質学)は全地球測位システム(GPS)の測定データから、海のプレート内部で引っ張られる力が強くなっていることを突き止めた。明治三陸地震(1896年)の37年後、昭和三陸地震を起こしたメカニズムと共通しているという。「今、昭和三陸規模の地震が起きると、仙台市で10メートルの津波が押し寄せる計算になる」と言う。(読売)
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 この国には、原発推進の内閣府組織として「原子力委員会」があり、推進を大前提にした「原子力安全委員会」および官僚機構としての「経産省原子力安全・保安院」がある。どんな原発大災害が起ころうと、何人住民・作業員が被曝したり死んだりしようが、あらゆる議論は「原発推進」に向けて収斂(しゅうれん)してゆく政治・行政構造になっている。菅政権の「4.12原発停止しない、原発推進やめない宣言」を理解するにあたっても、とくに若い世代の人々は、この〈政治・行政構造〉に目を向けてほしい。
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「社会的に許されない」=電力会社への経産OB天下り
 枝野幸男官房長官は13日午後の記者会見で、放射能漏れ事故を起こした東京電力に監督官庁の経済産業省OBが天下りしていることについて、「(原発への)チェック態勢が甘くなったのではないかと疑義を持たれるのは当然だ。法律上、天下りに該当するかにかかわらず、社会的に許されるべきではない」と述べた。 枝野長官は「行政権の範囲の中で、こうしたことを今後させないため、ほかの電力会社を含めて許さない姿勢で対応したい」と強調した。(時事)(⇒民主党は今更、そして今頃になって何を言っているのか?) 
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 ともあれ、大災害から1ヵ月を経て、蓋を開けてみると、、
①〈3・11〉に関する政府・東電の責任問題が曖昧化され、
②原子力政策の「抜本的見直し」も行わず、
③原発大災害の補償・賠償責任も不透明なまま、
④〈3・11〉以前の原発推進路線への「軌道修正」がなし崩し的にはかられようとしていることが明らかになった。この国は、「大山鳴動」しても「ネズミ一匹」さえ出てこない国であるらしい。
 「反/脱原発」以前的な問題として、稼働中原発の「不安全」の継続状態をどうするかという問題に、依然として私たちは直面したままだ。こんな無茶苦茶なことは、とうてい受け入れることはできない。

 いま一部の人々が「原発の国民投票」を訴えている。しかし、現状では「原発の国民投票」はただの空論に終わってしまう。そこで1週間前、私は「国民投票」の論議をする以前に地域ごとの「世論調査」の実施の重要性を訴えた。それは、今月5日付の仏紙フランス・ソワールが世論調査を行い、20~30年以内に電力の原発依存を減らすことを望む人が83%に達したとする結果を掲載したという報道に接したからである。電力需要の80%近くを原子力に依存する「原発大国」フランスにおいて、実に73%の人々が実際に原発依存脱却が可能と考えているのである。

 北海道、東北、関東、北陸、中部、関西、中国、四国、九州の何%の人々が、「20~30年以内に電力の原発依存を減らすこと」を望んでいるだろう? 日本人の何%が「実際に原発依存脱却が可能」と考えているだろう? 東京都民・千葉・埼玉「都民」の何%が、柏崎刈羽原発の「段階的停止」を望んでいるだろう? 東北の人々の何%が原発を望んでいるだろう?
 こうした地域ごとの詳細な調査を、NHKは早急にやるべきではないのか? 民放もやるべきではないのか? 読売・朝日・毎日・産経・東京新聞、その他の「地方新聞」もやるべきではないのか? その上で、①「原子力緊急事態」の政治責任・経済責任をどうするのか、②東電をどうするのか、③原発をどうするのか、④夏の電力供給・節電をどうするのか等々、もっと議論を深める必要がある。そういう議論の「メディア」の役割を果たすことが「マスメディア」の本当の責任ではないのだろうか?
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原発:「30年後減らして」7割 新エネルギー増、9割望む 環境系シンクタンク調査
 原発に頼る電力が30年後に減ってほしいと希望している人が7割を超えたとの調査結果を、環境系のシンクタンク「幸せ経済社会研究所」(枝広淳子代表)がまとめた。東京電力福島第1原発事故後、20~70歳の男女を対象にインターネットで実施。居住地の人口比や年齢が現状に合うよう調整し1045人の回答を分析した。 それによると、エネルギーに関する考えや意見が、事故をきっかけに変わった人は74%に達した。変化の内容を記述してもらったところ、最も多かったのは「原発の安全性への信頼が揺らいだ」の47%で、「節電・省エネ意識が高まった」と答えた人が24%いた。
 電気事業連合会によると、08年の日本の電源構成は、原子力が24%を占める。その他は石炭が27%、天然ガスが26%、石油13%、水力7%、太陽光などの新エネルギーが3%となっている。
 30年後の電源のあり方を聞くと、原子力は「ゼロ」22%▽「大きく減少」28%▽「やや減少」22%で、計72%が現状より減っていることを希望した。また、新エネルギーの増加を望む人は93%に上った。一方で、51%が「30年後の消費電力量が減っていることが望ましい」と答えた。 日本の電力量は、30年前と比べて倍増した。同研究所は「右肩上がりの電力需要を原発の増設で賄うという考え方から、節電や新エネルギーの活用など、事故を境に人々の考えに変化が生まれつつある」と分析する。【毎日・元村有希子】
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 問題は、この「願い」を形にし、現実化する〈政策〉と、それを国・自体体・原発電力産業、「産官学連携」の日本の〈原子力複合体〉に要求してゆく〈私たち〉の運動である。そのためには〈私たち〉自身がそのためのビジョンを持つこと、そのビジョンにあった生き方、生活、働き方の社会的「パラダイム・チェンジ」が欠かせない。これまでのような理論一般、解釈や掛け声一般ではなく、実生活・実労働・実人生に即した「チェンジ」である。
 決して「一筋縄」ではいかない。しかし実現可能性はある。これも「長いたたかい」になりそうだ。
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 M.8クラス以上の破壊力を持つ東日本大地震の「余震」が、日本の「保守的」な専門家でさえ今後2、3年、海外では10年も続く可能性もあると言われるなか、稼働中原発の一時停止を検討もせず、付け刃の「安全対策」によって「国民の目」をたぶらかし、ほとぼりが過ぎれば既定の原発推進路線への舞い戻りをはかろうとする民主党・菅政権に対し、「主権者の意思」を知らしめることが第一だ。
 いま、本当に原発の地元住民や地域住民が求めているのは何なのか。それをきちんと菅政権に突きつけるために、NHKや民放連、各新聞メディアに対し、原発を抱える自治体と各電力企業の管轄地域ごとに集計される、このような「世論調査」を行うよう、要求することをみなさんに訴えたい。
What Caused the High Cl-38 Radioactivity in the Fukushima Daiichi Reactor #1(英日対訳)
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福島を放射能で汚した東電はあらゆる損害を補償せよ!
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10859458243.html
福島県農民連事務局長・根本敬(ねもと・さとし)

 農家の動揺が収まりません。私たちは、原発事故の「被災者」のはずです。
 ところが、放射能汚染の土壌調査結果が発表されると農家のあせりと不安をかわすために前のめりとも言える状況が広がり、一部の地域を除いて、行政・農協が農作業の自粛を解除した。
 しっかりとした調査と分析、その後の対処も曖昧のまま作るか、作らないかの判断が農家に任せられてしまった。「危ないとわかっていても、つくらないと損害の対象にならない」こんな馬鹿げた話があるでしょうか。
 まだ原発事故は収束の見通しもたっていないのです。放射性物質の飛散は止まっていません。土壌の汚染は続いていると思います。作物の汚染も続いていると思います。

 政府がいう「直ちに体に影響を与えるものではない」という暫定値だけが一人歩きしています。私たちは、安全が「担保」されていない状況でものを作っていいのだろうかと毎日揺れています。消費者の過剰な反応を「風評被害」だといいます。
 いま現実に起こっていることは、根も葉もない風評ではありません。東電が起こした原発事故による放射能が大地と作物を汚染している実害です。「風評被害」で片付けることは、消費者に責任をなすりつけ東電を免罪することです。心ある方々から「福島の産品」を買い支えたいという申し出がきます。 こういうみなさんに、私はこう応えています。「お気持ちはうれしい。でも、みなさんにお願いしたいのは東電はあらゆる損害をすべて補償せよという世論を消費地で起こしてほしい。私たちが安心して作物を作れるようになるまで運動を継続してほしい」と。
 私たちは、豊かで美しい福島を取り戻すために農民として生き抜く覚悟です。
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 菅首相は今日、首相官邸での松本内閣官房参与との会談の中で、福島第一原発辺の避難対象の区域について「当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのかということになってくる」と語ったという(→後に参与が訂正。しかし「10年住めないのか、20年住めないのかということになってくる」のは事実だろう。そういう事態を招いた国の責任、原状回復、人々の生活保障と補償、そのすべてを国と東電が負わねばならない)。また、読売新聞電子版によれば、今日、東芝と日立が「共同廃炉処理案」を出したという。「すべての作業を終えるまでに約30年かかるとみられる」。「設計・建設から、廃炉・跡地利用まで」の日米の「原発利権」。それが「安保利権」とまったく同じ構造であることを、よく見極めておく必要があるだろう。

 さらに今日、東電の清水正孝社長は、福島第一原発の5、6号機と福島第二原発について「将来は未定」(???)として、廃炉などの判断を保留した。
 原発周辺住民、福島県民のみならず、〈私たち〉は今後、東電と政府がドサクサにまぎれて福島に原発を再建する機をうかがっていることにも十分警戒しなければならないだろう。
 絶対に、だまされないようにしよう。

⇒「福島原発大災害の賠償/補償と政府-自治体・東電の責任-- ①で、私たちは東電をどうするのか?
Buy Fukushima, Buy Ibaraki!
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4号機プール、再び水温上昇
 東日本大震災後の3月15日に原子炉建屋が爆発で大破した東京電力福島第1原発4号機で、使用済み核燃料プールの水温が90度まで上昇していることが13日、東電の調べで分かった。付近の放射線量も毎時84ミリシーベルトと極めて高い。通常は普段着で歩くことができる同0.0001ミリシーベルトという。一方、東電は同日、建屋が爆発で吹き飛んだ1、3、4号機でプールから燃料を取り出す検討に入ったことを明らかにした。
 同原発では、海水で冷やすという通常の循環冷却装置システムが失われ、外部からの注水で冷やしている。 4号機のプールには1331体の燃料集合体がある。このうち548体は炉内工事のため全量が取り出され、通常の使用済みの燃料棒に比べ、高い熱を放出する可能性がある。このため、燃料の余熱でプールが沸騰し、露出した燃料棒が過熱して被覆管が水と反応。水素が発生し爆発したとされる。その後、コンクリート圧送車で水を補給し、事態は落ち着いたとされていた。

 ところが、今月12日に燃料棒の損傷度を調べるためプールの水を遠隔操作で採取した結果、水温が爆発前日の84度を上回る90度と判明。プールの約6メートル上空で通常の10万倍以上の放射線量が計測された。燃料は水に覆われているが、東電は原因を「プール内の燃料の損傷か、圧力容器内の物質が出た可能性が考えられる」と推測。放射性物質の成分を分析している。 プールへの冷却水を増やすと、放射性物質に汚染された水があふれるというジレンマに直面し、注水量は蒸発分の補充にとどまる。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「通常の冷却システムを早く復旧させたいが、建屋内の放射線量が高く作業ができない」と対応に苦慮している。
 燃料の取り出しでは、外に足場を作り、上からクレーンで密閉型の収納容器を入れて燃料を挿入後、引き上げる案が浮上している。しかし、通常でも搬出には数年間の冷却を経ており、今回は事故で燃料棒が損傷している可能性があるため実現性は不透明だ。どのプールから始めるかは未定といい、一時的な搬出先として仮設の燃料プールなどを想定している。【毎日・山田大輔、八田浩輔】
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 東電は13日、4号機の使用済み核燃料プールで採取した水から、1立方センチメートル当たり401ベクレルの放射性物質が検出されたと発表。東電「一部の燃料棒が損傷した可能性は否定できない」。
 12日に大型ポンプ車を使いプールから水を採取。分析の結果、1立方センチメートル当たりの放射性ヨウ素131は220ベクレル、セシウム134は88ベクレル、同137は93ベクレル。平常時のプールではヨウ素131やセシウム134の濃度は検出限界以下。

余震10年続く恐れ指摘 米地質調査所の研究者
 米紙ワシントン・ポストは12日、米地質調査所(USGS)の研究者の話として、東日本大震災を引き起こしたマグニチュード(M)9.0の地震によって、震源付近の断層のひずみが高まっている恐れがあり、余震が終息するまでに10年かかる可能性があると報じた。 問題を指摘しているのはUSGSの地球物理学者、ロス・スタイン氏と京都大のグループ。試算では、地震によって、断層の一部が沈み込むなどして、震源周辺の広い部分にひずみがたまっており、震源の北や南側で大きな余震が起きる可能性があるという。 スタイン氏は、東京では長期間の監視が必要で、余震が数週間や数カ月でなくなると思わない方がよいとしている。(共同)

福島原発の廃炉作業に最長100年…英科学誌
 英科学誌ネイチャー(電子版)の最新版は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業に数十~百年かかるとする記事を掲載した。 同誌は、1986年に国際的な尺度でレベル7の大事故を起こしたチェルノブイリ原発では、放射性物質の汚染除去などの作業が、2065年まで続く見通しだと指摘。東芝などが作った10年計画の廃炉工程表に言及し、実現性に疑問を投げかけている。 57年に火災事故を起こした英セラフィールド核施設では一時、作業を中断したため、放射線量が下がり、計画を練る余裕ができた。同施設の元幹部は同誌に「封印し、百年がかりで」と提言している。
 米スリーマイル島原発の撤去・除染作業にかかわった専門家は、炉ごとにクレーンを備えた建物を作り、炉内作業用ロボットを用意するなどで、準備だけで数か月はかかるとしている。【読売・ワシントン=山田哲朗】

福島県の20小学校で土壌検査、19校から検出
 福島県災害対策本部は13日、福島第一原発の放射能漏れ事故を受け、県内の小学校20校で実施した土壌検査の結果を発表した。 4月5、6日、各校で校庭の表層5センチの土壌を採取し、放射性ヨウ素とセシウムの濃度を測定。19校で土壌1キロ・グラムあたり874~5万9059ベクレルを検出し、最高は川俣町立山木屋小で土壌1キロ・グラムあたり5万9059ベクレル。南会津町立田島小では検出されなかった。 県は国に対し、土壌に含まれる放射性物質量と大気中の放射線量の関係を分析した上で、児童の屋外活動の可否について基準を示すよう求めている。(読売)

福島第1原発:事故賠償補償料足りず 差額、国民負担に
 原発事故の損害賠償制度を定めた原子力損害賠償法(原賠法)に基づき、電力会社が毎年国に納めた補償料が、1962年の制度開始から2010年度まで累計で約150億円しかないことが12日、分かった。東京電力福島第1原発事故で、国は最低でも1200億円を支払う必要があるが、これまで受け取った補償料では足りず、不足分は国民負担で賄うしかない。(⇒これは問題報道だ。「不足分は国民負担で賄うしかない」というのは、ただ単に「現行法に基づけば」という仮定の話であって、東電の「負債」額に上乗せすればよいだけの話である)

 現行制度では大規模事故への備えが十分ではないため、政府は賠償措置額の増額や補償料率の引き上げなど制度を見直す方向で検討する。 原賠法では、原子力施設ごとに、事故時に国が支払う上限額が「賠償措置額」として決められている。同法が初めて適用された99年の東海村臨界事故では、約154億円の賠償金のうち、核燃料加工会社の賠償措置額10億円が国から支払われた。発電所の賠償措置額は1カ所当たり1200億円で、今回の事故で福島第1原発と同第2原発が賠償の対象になれば、国の負担は最大2400億円に膨らむ。
 原発の賠償措置額は当初は50億円だったが、法改正で段階的に引き上げられ、09年の改正(10年1月施行)では、東海村事故を受けて600億円から1200億円に倍増した。ただ、措置額を引き上げると、保険料に相当する電力会社の補償料負担も重くなるため、09年改正では補償料率を「賠償措置額の1万分の5」から「1万分の3」に引き下げ、電力会社の負担を2割増に抑えた。
 福島第1・第2、柏崎刈羽の3発電所を運転する東電の納付額は現在、年間1億数千万円、他の電力会社からの分も含めると、年間の補償料総額は8億~9億円とみられる。補償料は別会計で積み立てられる保険のような仕組みではなく、政府の一般会計に入れられているため、支払いも一般会計から出すことになる。
 これまで補償料率は「今回のような大規模の原発災害を想定せずに設定していた」(文部科学省幹部)。今回の事故で「原発のリスクに比べ、電力会社の負担が低すぎる」との意見が強まっており、賠償措置額や補償料率など、制度の抜本的見直しは不可避だ。ただし、電力会社の負担増は電気料金に跳ね返るため、政府は消費者の負担との兼ね合いもにらみながら議論を進める。【毎日・永井大介】
〈原子力損害賠償法〉--- 原子力事故時の損害賠償の枠組みを定めており、電力会社は国が支払う賠償措置額の一定割合を「補償料」として国に納める。補償料率は損失の発生見込みなどを基に算定し、09年の改正では、民間保険で保険料率が低下傾向にあることを反映して料率を引き下げた。事故で賠償が必要になる可能性は極めて低いとの見方から、補償料は国の一般会計に入れられて使われている。
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 原発事故の補償・賠償が、最も安易で原発産業・国に有利な「受益者負担」と増税によって処理されぬように、「原子力損害賠償法」の抜本的改正が必要だ。これも今後の重要な課題となる。

福島原発「完全解体に30年」 日立が廃炉計画提案
 日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)などと共同で、福島第1原子力発電所の廃炉に向けた長期計画を12日までに東京電力に提出した。溶け出した核燃料の処理から最終的な廃炉措置まで作業手順を5段階に分け、10年単位で取り組む内容。計画実行に向けて、事故処理を担う日米合同専門家チームを同日新設するなど、福島原発の支援体制を強化した。 提出した長期計画は、
(1)冷温停止から核燃料の取り出し
(2)プラント(原子炉)の除染
(3)核廃棄物処理
(4)中期的なプラントの保管
(5)最終的な廃炉措置――の5段階で構成。それぞれに要する期間は明示しなかったものの、「10年単位の作業となる」(日立)。 日立は一般論と断ったうえで、冷温停止と燃料棒の取り出しに成功した場合でも、核廃棄物を処理できるレベルに放射線を低減させるのに10年、プラント内部と建屋の完全解体までには30年程度かかると説明している。 日立は同日、社長直轄組織の「福島原子力発電所プロジェクト推進本部」のほか、GE、米プラント大手ベクテル、米電力最大手エクセロンの技術者を含む「日米合同専門家チーム」をそれぞれ新設した。東芝も、廃炉に向けた計画をすでに東電に提出している。(日経)

玄海原発2・3号機の早期再開容認 地元町長
 佐賀県玄海町の岸本英雄町長は、東京電力福島第1原発事故を受け発電再開が遅れている定期検査中の九州電力玄海原子力発電所(同町)2・3号機を「電力需要が高まる夏まで止めておくのは現実的でない」と述べ、早期の運転再開を容認する考えを示した。条件として、九電に安全対策の徹底した見直しと住民への情報公開を求める方針も明らかにした。12日までに日本経済新聞の取材に応じた。
 九電の真部利応社長は3月30日の記者会見で、同原発2・3号機の運転停止などが続けば夏季の電力需要に対応できないとして、「希望としては5月中に営業運転に入りたい」と表明。地元自治体の了解が前提との見解も示している。
 岸本町長は「原発が動かず九州でも計画停電が実施されれば、市民生活や地域経済への悪影響は深刻だ」と指摘。「夏で電力需要が跳ね上がる前に何とかしたいという九電の思いは痛いほど分かる。できるだけ早く再開した方がいい」と理解を示した。 ただ、福島の事故の深刻化で「玄海町民の不安は十分ぬぐい切れてはいない」とも主張。2・3号機の運転再開の条件として「今後少しでも起こりうる事態については取りこぼしなくシミュレーションをし、対応策を住民に分かりやすく説明してほしい」と述べた。 具体的には、玄海原発の敷地の海抜11メートルをはるかに超える津波が襲った場合の被害想定や対応策など。「徹底した再検証と平時から説明を尽くす姿勢が住民には大きな安心材料になる」とした。
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①〈緻密な節電計画の実施によって、市民生活や地域経済への悪影響を回避しながら、予測不能な大災害の可能性に備え、稼働中の原発を一時停止する〉。首都圏の、東電による無政府的「計画停電」の経験によって、これまで不可能と思えた様々な電力需要軽減策が、実は可能であることが明らかになった。これについては後日、検討してみたい。
②〈広域的な住民投票の実施によって、原発をどうするかを決定する〉。
 こういう議論を全国的に巻き起こすことが大切である。
 
「国は事故を過小評価」専門家から批判の声も
 福島第一原子力発電所の事故の国による評価は、事故発生直後の「4」が3月18日に「5」に、そして20日以上たった4月12日になって最悪の「7」に変わった。専門家からは「国は事故を過小評価しようとしてきたのではないか」との批判の声も上がっている。
 原子力安全委員会が12日に公表したデータによると、外部に放出された放射性物質の大半は、1~3号機で核燃料が全露出し、1、3、4号機で水素爆発や火災が相次いだ3月16日頃までに放出されていた。 2号機で圧力抑制室が損傷した15日には、フランス原子力安全局と米民間機関「科学国際安全保障研究所」が相次いで「レベル6か7」との見解を公表したが、保安院の西山英彦審議官は「外部への放射線量は健康にかかわるものでない」と主張し、見直す姿勢は見せなかった。 しかし、18日には国際世論に押されるように「5」に変更した。西山審議官は「各号機とも圧力や温度などが大きく変動し、評価が難しい状況だった」と弁明。その後は「6にするには早い」と繰り返してきた。 (読売)

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4月24日の集会とデモ
日時:4月24日(日)14:30~集会 デモ出発15:30
場所:東京・港区「芝公園23号地」(地下鉄「御成門駅」5分)
※地図 http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access001.html
内容:パーベル・ヴドヴィチェンコさん(NGOラディミチ国際プログラムマネージャー)のお話
・福島の現状報告(澤井正子さん/原子力資料情報室)/福島現地報告、他
デモ:芝公園→経産省前→中部電力東京支社前→東電本社前→銀座→東京駅前→常盤橋公園 
主催:原発とめよう!東京ネットワーク(TEL03-3357-3800/原子力資料情報室)

●25日の講演会
日時:4月25日(月)18:30~
会場:総評会館 2階大会議室(東京都千代田区神田駿河台3-2-11)
交通:地下鉄「新御茶ノ水駅」「淡路町駅」「小川町駅」、JR「御茶ノ水駅」
(地図)http://www.sohyokaikan.or.jp/access/index.html
内容:福島原発とチェルノブイリ(伴英幸さん/原子力資料情報室共同代表)
   チェルノブイリ原発事故を振り返る
   パーベル・ヴドヴィチェンコさん(NGOラディミチ国際プログラムマネージャー)のお話
資料代:1,000円
主催:原発とめよう!東京ネットワーク(TEL03-3357-3800/原子力資料情報室)

2011年4月11日月曜日

「原子力緊急事態」1ヵ月-- それでも、あくまでも稼働中原発の一時停止を訴えよう

「原子力緊急事態」1ヵ月-- それでも、あくまでも稼働中原発の停止を訴えよう

 たった今、また大きな地震があった。M.7.0だという。福島と茨城両県を中心に震度6弱から5以上を記録した。そして連続的に緊急地震速報が出た。4月7日に次ぐ、M.7以上のこの地震によって、福島第一原発の1~3号機の外部電源が切れ、注水が一時停止状態にあるという。(後に再開との報道)。

 東電は、作業員の退避が解除され次第、電源復旧や消防ポンプへの切り替え作業を進め、「注水が一時的に止まっても、すぐに危険な状態になる訳ではない」と説明したというが、もういい加減にしてほしい。
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原発「安全神話崩れた」 周辺12市町村長アンケート
 チェルノブイリ事故に並ぶ最悪の「レベル7」となった福島第1原発事故を受け、半径30キロ圏の12市町村長のほとんどが、国の原子力エネルギー政策に対し「安全神話が崩れた」などと抜本的な見直しを求めていることが12日、共同通信のアンケートで分かった。 復興ビジョンについては「放射線という見えざる敵が消滅しない限り、夢すら描けない」(冨塚宥けい田村市長)、「早期に原発が安定しなければ、考えられない」(遠藤雄幸川内村長)などの意見が半数を占めた。
 アンケートは今月上旬に実施、12市町村長全員から回答を得た。原発事故は多くの住民の県内外避難を生み、全域や一部が計画的避難区域などに指定される事態を招いており、地方自治の喪失、国や東京電力への不信感が浮き彫りとなった。 アンケートによると、原子力政策について「安全神話が崩れた。再検討すべきだ」(渡辺利綱大熊町長)、「当然見直しが必要」(山田基星広野町長)、「代替エネルギー開発を」(遠藤勝也富岡町長)など抜本的な見直しや再考を求める意見が11市町村に上った。
 第2原発が立つ楢葉町の草野孝町長は「国が安全基準の見直しも含めて指導力を発揮すべきだ」とした。
 第1原発1~4号機の廃炉については、明言を避けた井戸川克隆双葉町長や大熊、楢葉両町長以外は「当然」と答えた。 5、6号機の廃炉も「当然」「検討すべきだ」(渡辺敬夫いわき市長、松本允秀葛尾村長ら)との意見が半数を占めたが「安全性が担保できなければ」(桜井勝延南相馬市長)との条件付きや「現段階では分からない」(楢葉町長)との回答もあった。
 震災後に運転を停止している第2原発の再開には「電力需給の事情で判断されるべきではない」などと大熊町長らから慎重な意見が相次いだ。 事故の教訓としては「安全に絶対はないと分かった」(菅野典雄飯館村長)、「安全、安心の線引きが非常に困難になった」(馬場有浪江町長)などの声が上がった。

釜山の住民ら、原発停止求め仮処分申請 韓国で初
 韓国南部の釜山市にある古里原子力発電所の周辺住民ら97人が12日、同原発1号機の運転停止を求め、釜山地方裁判所に仮処分申請を行った。弁護団によると、原発運転停止に関する仮処分申請は韓国で初めてという。
 1号機は1978年に運転を開始し、2007年に設計寿命を迎えたが、韓国政府は08年1月、10年間の運転延長を決めた。 これに対し、釜山弁護士会が1号機は老朽化によって事故の起きる可能性が高く、運転を停止すべきだとし、同原発の半径30キロ以内に住む住民らを対象に仮処分申請の原告団を募集した。 釜山弁護士会環境特別委員会は「難しい訴えになることが予想されるが、97人もの住民が原告として参加したことは(原発の安全性に関する)関心の大きさを示している」と話している。(共同)
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 気象庁は、今夜の「余震」後の記者会見で、「本震の規模が大きく、まだ一定期間はM7クラスの余震が発生する」(土井恵治・地震予知情報課長)と警戒を呼びかけ、東北から関東、中部地方に至るまで注意が必要だと話している。今日の地震は、東日本大震災が、太平洋プレート(岩板)に押されていた陸側のプレートが跳ね上がって発生したのに対し、「陸のプレート内の浅い場所で、地盤が引っ張られて断層がずれる「正断層型」の直下型地震」だという。大震災以降の3月19日のM6.1、同23日のM6.0の地震もこの「正断層型」の地震だった。
気象庁・地震情報

 もしかしたら、関西以西や海外に住む人々には、「もういい加減にしてほしい」という気持ちは伝わらないかもしれない。 この1ヵ月、毎日数時間置きに、ときには数十分置きに大きな地震/余震に襲われてきた大震災と原発大災害の被災者や〈私たち〉の〈危機意識〉は、わかってもらえないかもしれない。
 仮にそうだたとしても、私は改めて、稼動中の新潟・柏崎刈羽原発の全原子炉の停止、宮城・女川原発を始めとする東北電力が管轄する全原発の即時の安全・防災対策強化と再稼動の無期限中止を訴えたい。青森県の六ヶ所村も忘れてはいけない。そして、稼動中の浜岡原発の原子炉を停止しよう。日本政府・全政党・東電・東北電力・中部電力に対し、そうした要求を突きつけよう。

 全マスコミに、この問題をきちんと取り上げるよう働きかけよう。そして原発の一時停止運動を全国に広げよう。海外--、米国、マレーシア、ドイツ、タイ、イギリス、中国、台湾、韓国、ロシア、モンゴル、カナダ、フランス、スリランカ、メキシコ、ブラジル、オーストラリアにオーストリア、その他その他の国々--からアクセスしている人々も、知人・友人に呼びかけてほしい。

 〈危機意識〉を持つ者、共有する者が行動を起こさなければ、この国の政治も原発産業もマスコミも何も動こうとしない。それは昨日の統一地方選の結果をみても明らかである。

 以下、書きかけていた文章である。
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 東日本大震災と福島大一原発「事故」から丸1ヵ月を迎えた。「統一地方選」の結果も出たわけだが、政府と東電の統合「対策本部」の「事態収拾」に向けた「方針」は、いまだはっきりしない。
 こんなことで、本当によいのだろうか?

〈それでも、あくまでも稼動中原発の停止を訴えよう〉
 報道によると、東電は今日(4/11)、水素爆発を防ぐため窒素を注入している福島第一原発1号機の格納容器で、圧力が1.95気圧から上昇しなくなり、放射性物質を含む蒸気や窒素が外部に相当量漏れていると発表。 東電によれば、7日未明から毎時28立方メートルの窒素を注入しており、容器内の圧力は、7日の1.56気圧から9日の1.9気圧まで徐々に上昇が続いたが、10日頃から圧力が1.95気圧のまま上がらなくなった、という。以下、読売新聞電子版の記事。

 「計算上は1000立方メートル前後の蒸気や窒素が外部に漏れ出したことになる。ただ、今のところ原発周辺の放射線量に大きな変化は見られない。1号機には、6日間で約6000立方メートルの窒素を注入し、1.5気圧を2.5気圧にする予定だった。東電では「格納容器の密閉性が損なわれ、相当量が漏れている」とみている。東電では、水素爆発を回避するため、当面、現在の注入を継続、対応策を検討する」。

 上の記事から、1号機の格納容器の圧力計器が故障していることがわかる。それともう一つ。読売の記事では、「今のところ原発周辺の放射線量に大きな変化は見られない」とあるが、「放射性物質を含む蒸気や窒素が外部に相当量漏れている」のに、なぜ放射線量に「大きな変化が見られない」のか? 政府・東電は具体的な放射線量の数値の変化を公表すべきだ。もしも本当に「原発周辺」の数値に変化がないのであれば、建屋内部の放射線量の数値が上がっているはずである。であるなら、作業はさらに遅延することになる。
(東電は11日夕、午後5時過ぎに発生した震度6弱を記録した地震の影響で、福島第1原発1号機の格納容器の水素爆発を防止するための窒素注入を中断していると発表。「準備が整い次第、注入を再開する」という。)

 原発大災害から日が経つにつれ、政府・東電の統合「対策本部」は現場の放射線量、圧力容器内の気圧などに関し、適当な「情報」を流し始め、それを厳しくチェックし、情報の信憑性を「対策本部」に対して問うべきマスコミの社会的役割意識も弛緩し始めている、とは言えないか。「爆発さえしなければ問題なし」的な意識がもしも生まれているとしたら、きわめて危険である。
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(4/12. 松本純一東電原子力・立地本部長代理「現時点で放射線物質の発生が完全に止まりきっていないことを考慮すると、(チェルノブイリ原発事故を)超える可能性はある」)

〈原発の一時停止を阻むのは何か〉
 各電力会社の発電総量に占める原発依存率は次の通り。北海道電力約40%、東北電力約16%、東京電力約23%(福島原発込みの数値)、中部電力約15%、北陸電力約33%、関西電力約48%、中国電力約8%、四国電力約38%、九州電力約41%、沖縄電力0%(「日本の電力消費」)。

 先週のエントリーでも書いたように、東北大震災・福島原発大災害以後の関東圏(正確には富士川以東の静岡県や山梨県も含む)の電力需要の「実績」と「理論」上から言えば、上のうち東北、中部、中国電力地方の〈脱原発〉は、明日にでも可能になるはずだ。
 では、何が〈脱原発〉を阻んでいるのか。たとえば、下のような強烈なる原発圧力団体の存在である。
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東電国有化「必要ない」=国は全面支援を―経団連会長
 日本経団連の米倉弘昌会長は11日記者会見し、福島第1原発の事故を受けて東京電力の国有化が取り沙汰されていることについて「(国有化は)必要ない」との見解を示した。巨額の補償負担を背景にした国有化論議の浮上をきっかけに東電の株価が急落し、同社に関連する企業や投資家に影響が及んだことを指摘した上で「日本の経済・産業が駄目になる」と強調した。
 米倉会長は、国有化が必要ないとする根拠として「原子力損害賠償法では、大規模な天災の際は国が補償することになっている。今回の場合は、国が全面的に支援しなければならない」と述べた。さらに「国の支援があって初めて、原子力産業の発展と被災者救済がバランスよく保たれる」と語った。(時事)
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 東電が潰れようがどうしようが、「日本の経済・産業」は「駄目」にならない。電力から原子力を段階的に切り離し、原子力産業に対する「国の支援」をどうするか、そして原子力産業そのものをどうするか、その「全国的議論」が必要だ。しかし、まず東電から原発を切り離し、柏崎をストップすることが先決だ。
 いま、それさえできなければ、そのための議論を興さなければ、全国に散在するどの原発さえ止めることはできないだろう。反原発/脱原発は、すべてがお題目、掛け声倒れになってしまうだろう。 

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4/12
三陸―房総沖の地震予測、見直しへ 政府の地震調査委
 政府の地震調査委員会が11日開かれ、東日本大震災を起こした地震の震源域が三陸沖から茨城県沖まで及び、従来の予測を超えていたと判断。委員長の阿部勝征東京大名誉教授は、房総沖も含めて将来どんな地震が起きるかの予測を見直す方針を明らかにした。
 地震調査委はこれまで、巨大地震が起きる海溝型地震について、将来起こる確率や規模を予測してきた。三陸沖から房総沖にかけては八つの震源域に区切って検討。それぞれ別々に地震を起こすと予測。複数が連動すると想定したのは「宮城県沖」と、その沖の「三陸沖南部海溝寄り」だけで、連動してもM8前後との予測にとどまっていた。

 今回は六つの震源域がいっぺんに動いた。地震調査委は、869年に大津波を起こした貞観の地震を踏まえ、見直しが必要か検討を始めていたが間に合わなかった。阿部委員長は「世界でM9が起きても、日本では起きないと考えてきた。学問的なパラダイムに縛られていた点は大きな反省だ」と話した。 今後は、三陸沖から房総沖の地震について見直しを進める。過去に起きた地震が再び繰り返されるかを中心としてきた予測手法についても議論するという。
 東海や東南海、南海地震など、南海トラフで起きる地震の予測を見直すかについて、阿部委員長は「時間をください」として、即答を避けた。 現在の評価では、東南海地震の規模はM8.1前後、南海地震はM8.4前後。両者が連動した場合の規模はM8.5前後と予測している。調査委は、今後もM7を超える余震が起きる可能性を指摘。今回の震源域の周辺でM7~8の地震が誘発される可能性もあるとして、注意を呼びかけた。(朝日・鈴木彩子)
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 全ての原発の「安全基準」と「安全対策」が上の「予測」以下の水準。さらに津波の問題もある。だから、〈まず停止〉が必要なのだ。
 こうした「予測」をしながら、「地震調査委」が国に対して稼動中原発の一時停止を提言しないのは犯罪的だ。また、こうした報告を受けながら早急な停止プランを打ち出さない政府は、もっと犯罪的である。

容赦ない余震 「もう嫌だ、もう嫌だ」
 東日本大震災からちょうど1カ月たった11日夕、また被災地を強い地震が襲った。震度6弱を観測した福島県いわき市では土砂崩れが発生。倒壊した家屋から住民を救い出そうと、消防隊員らが必死に作業を続けた。茨城県沿岸部では、高台の避難所に逃げ込んだ市民から「もう嫌だ」とため息が漏れた。
■福島県
 「下から突き上げるような縦揺れがいきなり来た。自宅を飛び出して山の方向を見上げると、中腹付近の木がユサユサ揺れ、ドーンという音がした。土砂が崩れてきたと思い、東側の尾根方向に向かって一目散に逃げた」  地震による土砂崩れで家屋3棟が倒壊した、福島県いわき市田人町石住の現場。すぐそばに住む大工の鈴木良一さん(47)が、その瞬間を振り返った。
 消防のレスキュー隊は市中心部からの道路を土砂崩れで塞がれ、迂回(うかい)路を探して現場にたどり着いた。小雨が降り、ときどき余震が来る中、消防隊員と警察官約50人が重機3台を使って土砂の除去作業を続けた。
 現場は山あいの集落。土砂崩れが起きた斜面はすり鉢状になっており、3年ほど前に杉の木が伐採されてからは、地面が見える状態だった。伐採前から付近一帯は危険区域に指定されていたという。 3月11日の地震の際には大きな横揺れに襲われたが異常はなかった、という。
 福島県警いわき南署によると、倒壊した1軒の世帯主は高橋貞夫さん(71)で、亡くなった女子高生は孫の愛さん(16)という。  近くに住む中山京子さん(56)は「激しい縦揺れが繰り返される状態が、もう2時間以上続いている。どうしていいかわからない。生きた心地がしません」と震えた声で話した。
 大きな揺れがあった後に停電になり、周囲は真っ暗という。台所の食器が激しい揺れで落ちて割れ、足の踏み場がない。「すぐに逃げ出せるよう、玄関先に布団を敷いて寝たきりの父を寝かせています」と中山さんは話した。
 福島県内の消防によると、川俣町では避難しようとした女性(87)が転倒。股関節を骨折した疑いがあるとして、福島市内の病院に運ばれた。郡山地方広域消防組合消防本部によると、郡山市の民家では、30代の女性が倒れたサイドボードのガラスで左腕を切り救急搬送された。
■茨城県
 県南東部の鉾田市で震度6弱を記録した茨城県。  福島県と隣接する北茨城市では地震直後、激しい雨と雷のなか、高台にある市役所近くの市道に渋滞の車列ができた。同県沿岸に津波警報が出たため、多くの市民が避難してきたという。
 避難所になっている市役所近くの市民体育館には、続々と人が詰めかけ、多くの人がテレビを心配そうに見つめた。地震のとき自宅にいたという斉藤絹代さん(75)は「3月11日と同じくらいの横揺れだ」と感じたという。断続的に余震が続く中、「余震だけでなく雷も来る。もう嫌だ、もう嫌だという思いです」。  同県大洗町役場は地震直後、海沿いの町民らに対し、津波の恐れがあるとして避難命令を出し、高台に至急避難するよう呼びかけた。四つの小中学校に避難所を設置。二つの小中学校に250人ほどが避難したという。 (朝日)

4/11
政府、レベル7検討…最も深刻
 内閣府の原子力安全委員会は11日、福島第1原発事故について、発生当初から数時間、1時間当たり最大1万テラベクレル(ベクレルは放射能の強さ。1テラベクレルは1兆ベクレル)の放射性物質を放出していたとの見解を示した。現在は1時間当たり1テラベクレルほどまで落ちているとみている。
 数万テラベクレルは原発事故の深刻度を示す国際原子力事象評価尺度(INES)の最も深刻なレベル7にあたる。今回の事故は数時間の放出でレベル7に相当するため、現在レベル5としている政府は、引き上げの検討に入った。過去に発生したレベル7の事故には86年のチェルノブイリ原発事故がある。
 INESは、程度の低い方から、レベル0~7の8段階に分類している。スリーマイル島原発事故(79年、米国)はレベル5、茨城県東海村で起きたJOD臨界事故(99年)はレベル4とされている。(毎日)

川内原発の増設計画、凍結 鹿児島県が手続き保留を要請
 九州電力が建設を計画している川内原子力発電所3号機(鹿児島県薩摩川内市)について、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は11日、九電側に建設に必要な手続きを保留するよう求めた。  九電はこれを了承し、県に申請予定だった周辺の海の埋め立てや保安林解除の手続きを延期する。東京電力福島第一原発の事故を受けた国の安全基準が見直されるまで増設計画は事実上凍結される見込みだ。
 川内3号機は159万キロワットで世界最大級。2014年に着工し、19年に運転開始予定だ。昨年、伊藤知事が増設の計画に同意し、国が重要電源開発地点に指定した。  伊藤知事は「同意撤回はありえないが、安全性が担保されていないことが明らかになった。福島の事故が落ち着かないと、手続きは進められない」と話した。(朝日)
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 九州地方はこれ以上原発依存率を増やすべきではないだろう。「同意撤回」を「アリ」に転換することが肝腎だ。鹿児島県民と九州の人々の〈危機意識〉の持ち方にかかっている。

原発30キロ圏 警戒区域に
 政府は10日、福島第一原発事故を受け、半径30キロ圏内の地域について、地元市町村と調整した上で、住民の立ち入りを禁じることができる「警戒区域」に設定する方針を固めた。 警戒区域は、市町村長が災害対策基本法に基づき設定するが、原子力災害対策特別措置法により国が指示できる。 災害対策に従事する者以外に対し、設定区域からの退去を命じたり、立ち入りを禁止したりできる。従わない場合の罰則規定もある。
 同原発周辺では現在、20キロ圏内に避難指示が出ているが、強制力がないため一部住民が残っている。屋内退避指示が出ている20~30キロ圏内とあわせて、警戒区域に指定されても、ただちに避難が求められるわけではないが、住民は市町村などの指示に基づいて行動する義務を負う。これに関連し、福山哲郎官房副長官「(一時帰宅の)前段階として、警戒区域に設定する必要がある」。20~30キロ圏内の警戒区域設定については、放射線濃度の高い地域から順次、設定していく可能性も。

20キロ圏外に「計画的避難区域」設定
 枝野官房長官は11日午後、福島第一原発から20キロ圏外のうち、気象や地理条件によって放射性物質の年間積算量が20ミリシーベルトを超える地域を「計画的避難区域」に設定することを明らかにした。福島県葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部。「おおむね1か月をめどに実行されるのが望ましい」「地域事情や自治体との相談に基づき、具体的に住民に指示する」。

「国に裏切られた」 計画避難に住民ら怒り
 「何で今さら」。福島第1原発事故で11日、政府が新たに「計画的避難区域」の対象にすると発表した福島県の飯舘村や葛尾村、浪江町の全域と川俣町と南相馬市の一部。住民らはこれまで高い放射線量の中で不安な生活を続けていた。 避難の指示もなく「安全」と言い続けた政府が、事故から1カ月もたって出した、あいまいな指示。「国に裏切られた気分だ」。怒りと悲痛な声が上がった。
 1カ月をめどに避難するように求める計画的避難区域に指定された飯舘村。11日午後、村役場で開かれた説明会では住民から強い訴えが飛んだ。「補償はどうなるのか」「いつ戻ってこられるのか」 経営者の一人は「地域に密着してやってきた。退去すれば信頼を失い、廃業になってしまう。逃げることはできない」と涙を浮かべた。自治会長の細山利文さん(62)は「自主避難とは違い、長期的になる可能性が高い。何百頭も牛を飼っている人もいる。生活の基盤をどうするのか、住民には村からちゃんと説明してほしい」と訴えた。 菅野典雄村長は「大変残念な状況だ。国などと交渉し、できるだけ村に基盤を残していけるように努力したい」と説明した。
 妻と2人でプラスチック製品の製造業をしている坂本徳さん(60)は「これから工場を見つけて再開したとしても何千万円もかかる。避難するつもりはない」ときっぱり。一方、自動車関係製造業の庄司正良さん(68)は「風評被害で取引先から『大丈夫か』といわれていた。(放射線量の)数値が高くなっているのを見て、避難した方がいいのか考えていたところだった」と頭を抱えた。 村内で働く女性(52)は「『大丈夫、大丈夫』と言いながら結局避難させるのか。これだけの地域が避難対象になったら、福島県はなくなってしまうのではないか」と政府の対応への不満を口にした。
 「計画的避難区域」と、屋内退避や自主的避難を求める「緊急時避難準備区域」の両方に一部が指定された福島県南相馬市は「情報を収集しているところ」と対応に追われた。 南相馬市で避難生活を送る男性(60)は疲れた様子で、「計画避難とか緊急避難とかいわれても内容がよく分からない。避難所生活にも慣れてきたのに、またドタバタするのは勘弁してほしい」と話した。(産経)

震災後のエネ庁広報誌に「原発なくては困る」
 経済産業省資源エネルギー庁が3月末に発行した広報誌に、東京電力福島第一原子力発電所の地元住民の「原発がなくては困る」という声を紹介する記事を掲載していたことがわかった。 東日本大震災と同原発の事故が発生する前に企画・取材された記事で、同庁は「原発被災地への配慮が欠けていた」と認めている。
 広報誌は季刊の「Enelogy(エネロジー)」。「“信頼の上”に高齢化を迎える原子力発電」の題で、同原発の地元住民が参加した座談会の記事を掲載し、「町民の多くは、原子力がなくなってしまっては働く場もなくなるので困る」という住民の発言が紹介されている。印刷は震災後で、表紙に被災者へのお見舞いの言葉を入れた。 同庁は約2000部を関係自治体などに郵送した。同庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の森本英雄課長は「一般の人には直接届かないので問題はないと判断した。今考えると、郵送すべきではなかった」と話している。(読売)

県外避難者 6人に1人「もう限界」(東京新聞)

2011年4月9日土曜日

「放射能難民」と「放射能差別」

「放射能難民」と「放射能差別」


 放射能によってふるさとを追われた人々が、放射能によって差別される。いわゆる「原発難民」と呼ばれている人々に対する、放射能「感染」の「恐怖」に基づく社会的・個人的差別のことだ。
 地震・津波・放射能汚染の被害を受け、それから逃れようとする人々が、「福島出身」という、ただそれだけで差別され、排除される。被害者が、まるで放射能汚染の加害者であるかのように。

 原発災害のいっさいの責任と汚名を、福島の人々にきせてはならない。
 しかし問題は、福島県民や「放射能難民」に対する「放射能差別」を、「風評被害」という一言で片付けようとする動きが、福島第一原発「事故」の直後からずっとあることだ。「事態収束」が「長期化」するにつれ、この問題は法的・政治的概念が曖昧な「風評被害」という、一般的表現では捉えきれない/捉えてはならない様相を示すようになっている。

 ほとんど全て、と言って差し支えないと思うが、「風評被害」に関する報道は、「風評加害」を与える側/組織と人間の問題を論じない。 原発「事故」と放射能汚染に何の責任も負わない、負いようがない犠牲者に対する「放射能差別」(「風評被害」?)は、それ自体が人権侵害である。その自覚を、福島の「外側」に生きる〈私たち〉がしっかり持ち、それを身の回りで広めることが「放射能差別」を考え、なくす出発点になるだろう。

 「被害」と「差別」は、「加害」と「差別する主体」、組織と人間の存在抜きには語れない。 
 では、「放射能汚染」の「風評被害」の元凶はどこにあり、その責任主体は誰なのか? 「放射能差別」が人権侵害であることをしっかり認識した上で、次に問わねばならないのがこの問題である。


 私が県内外で生活する福島の人々に言えることは、「泣き寝入り」をしてはいけない/すべきではない、ということだ。 たとえば、下の新聞記事にある「他県のガソリンスタンドに『福島県民お断り』との貼り紙があった」「レストランで入店を断られた」「ホテルに宿泊できなかった」といったケースは、一般企業による深刻な社会的差別の事例である。
 これらの「ガソリンスタンド」「レストラン」「ホテル」は、明らかに国と各県から、福島県民を差別・排除しないよう、まず正式な「行政指導」を受けねばならない企業である。全国チェーンや地域チェーンの企業体である場合、その社会的責任と影響力はきわめて大きい。実名さえ公表すべきである

 その意味で、福島県の「災害対策本部会議」は、本来県が果たすべき役割、行政責任を弁えていない、と言わざるをえない。福島県庁は、県が果たすべき責任を国に押し付けたり/国に転嫁すべきでない。国に対して「正確な情報発信」を「要請」するにとどまっていることは、福島県民を「放射能差別」から守るべき県としての責任を認識していないことの現れである。県は自らの行政責任を果たしながら、国に対してもそうするよう公式に申し入れるべきなのだ。

 誰もが自然に持つ放射能汚染に対する「一般的恐怖」と、放射能汚染および感染に関する「犯罪的無知」は区別しなければならない。また公的機関や企業体、そこで働く公務員・労働者の犯罪的無知と、個人のそれも区別しなければならないだろう。そしてそのいずれに対しても差別を受けた者は、自らと家族、他者が同じ目に合わないように行動を起こすしかない/起こすべきなのである。
日弁連・被災者法的支援


 誰もが当然に持つ放射能汚染に対する「一般的恐怖」が、福島第一原発以外の原発に対しても向けられるようになってしまった。これが全国各地の原発を抱える地域への「風評被害」を拡大している。
 たとえば、西の「原発銀座」敦賀市がある福井県、また石川・富山・新潟三県などへの急激な観光の落ち込みがその一例だ。そしてこのことが、今回の原発「事故」の社会的被害をきわめて深刻なものにしている要素の一つになっている。ここでは、次の三つのことだけを指摘するにとどめておきたい。

 第一に、福島原発「事故」の「事態収束」の「長期化」と余震・地震の継続的発生という現実に照らして言えば、他原発に対する「一般的恐怖」は決して根拠のないものではないこと。
 第二に、だからこそ、稼動中の原発の一時停止が必要であること。
 第三に、その責任は、各原発を抱える市町村・道県、および国にあると同時に、各原発からの電力供給を受けている、たとえば首都圏や京阪神で生活する〈私たち〉の側にあること。

 なぜ福島県民や新潟県民は、国と東電が勝手に決めた首都圏への電力供給をまかなうために、原発災害の最大の犠牲者にならねばならないのか? それではただの「原発植民地主義」ではないか?
 これまでの原発建設をめぐるいっさいの地方・地域への「利益誘導」と地元の原発受け入れは、原発が〈絶対に事故を起こさない〉という〈ありえない神話〉によって成り立ってきた。しかし、この〈ありえない神話〉が完全に崩壊した今、首都圏、京阪神、名古屋・中京地域などの大都市圏の電力需要のあり方そのものが、「地元」サイドから厳しく問われるようになっているのである。
 〈私たち〉は、そこから目を逸らしてはならないだろう。放射能汚染の「一般的恐怖」によって、原発を抱える地方を切り捨て/見殺しにすること、「原発植民地主義」に沈黙を決め込むことは許されないのである。

 稼動中の原発の段階的一時停止を求めることは、原発大災害の再来予防上絶対に必要であるばかりでなく、この間の首都圏の経験と電力需要の実態から言っても、決して実現不可能なことではない。また、段階的一時停止さえ実現/要請せずに、「自然エネルギーへの転換」などはかれるはずもない

 大震災と福島原発大災害一ヶ月。これを機会に、放射能汚染の「一般的恐怖」に脅えてきた/いる〈私たち〉の責任とは何かを、もう一度見直すようにしたいものである。

・・・・・・・
7月
福島ナンバーの車に理不尽な風評被害
 東京電力福島第1原発事故の影響で「福島ナンバーの車は放射性物質で汚染されている」という理不尽な風評が広がっている。福島県内の中古車販売業者の団体は、風評被害で売り上げが落ち込んでいるとして東電に金銭的な補償を求める方針を固めた一方、県外に逃れたユーザーからは「周囲から冷たい目で見られる」との悲鳴が上がる。専門家は放射線への理解不足による偏見の増幅を懸念している。【毎日・西嶋正法】
◇震災後売り上げ、前年比で4割減…東電に補償請求へ
 「放射能は大丈夫なのか」。原発建屋の爆発から間もない3月半ば、福島市成川の中古車販売「福島自動車流通センター」の根本義光社長(57)は、インターネットで中古車を購入する予定だった男性から問い合わせを受けた。「問題はないと思います」と答えたが、数日後にキャンセルされた。 震災後の売り上げは前年比4割減。特にネット販売が大きなダメージを受けた。震災前は毎月ネットで3台前後売れていたが、震災後は1台も売れていない。関東や関西からの問い合わせも今は皆無。根本社長は「震災で地元の客足は鈍い。県外客も失えば、この先どうすればいいのか」と頭を抱える。
 郡山市安積町の中古車販売店でも売り上げの3割を占めてきた県外客へのネット販売が震災後はゼロに。社員は「福島ナンバーというだけで見向きもされない」と肩を落とす。
 中古車販売約100社で作る「福島県中古自動車販売商工組合」(川村秀夫理事長)の宗形義孝専務理事は「東電に金銭面での補償を求めていく。金額など詳細は詰めている最中だ」と説明。「原発事故が収束しない限り改善は望めない」と怒りをあらわにした。宗形専務理事によると、震災前は県内全体で月に推定で2000台前後売買された。しかし原発事故後は「福島」「いわき」「会津」ナンバーの中古車は同業者向けのオークションに出しても応札がなく、宮城や新潟、北関東など近隣からの引き合いもないという。

◇周りから「冷たい視線」…県外避難者「ナンバー変更したい」
 風評被害にユーザーも苦しむ。自動車の登録を行う国土交通省福島運輸支局(福島市)には、原発事故で県外へ逃れた避難者から、偏見などを理由にナンバーを変更したいという相談がこれまで20件前後寄せられている。 同支局によると、埼玉県に避難した女性は4月上旬、電話越しに「幼稚園に子供を送り迎えする時、周りの母親から冷たい目で見られた。子供がかわいそうなので早く埼玉のナンバーに変えたい」と涙声で訴えた。 東京都に避難した男性会社員は「都内を走っているとジロジロ見られ、つらい」、やはり都内に避難した事業所経営の男性は「福島ナンバーだと商売にならない」と、それぞれ変更を希望する理由を訴えた。 避難者は、避難先で車庫証明を取れば、ナンバーを変えられるが、多くは変更しないまま車の使用を続けているとみられる。
 同支局の小泉正彦・首席運輸企画専門官は「避難先の運輸支局でナンバープレートを変えられるのにうちに電話をしてきたのは、相談先が分からなかったのだろう」と話し、ユーザーが困惑していることをうかがわせる。小泉専門官は「それにしても原発の風評被害がここまで広がっていると思うといたたまれない」と嘆いた。
◇「全くナンセンス」
 放射線医学総合研究所(放医研、千葉県稲毛区)の笠井清美・放射線防護研究センター研究推進・運営室長は「爆発時に原発近くにあった車でも、きちんと除染(洗車)すれば問題ない。福島のナンバーを嫌悪するのは過剰な反応で、全くナンセンスだ」と指摘。「風評被害や偏見をなくすためにも放射線の正しい知識を広め、一人一人が理解を深める必要がある」と話す。
 放医研は、放射線の健康への影響などについての電話相談窓口を3月14日に開設。これまでに約1万1000件の相談が寄せられているという。放医研の相談電話は043・290・4003。

6月
献血拒否:放射線被ばく理由に いわき市の男性が抗議
 東京都赤十字血液センター(江東区)が、都内で献血をしようとした福島県いわき市の男性の家族から「原発事故による放射線被ばくを理由に献血を断られた」などと抗議を受けていたことが分かった。日本赤十字社側は「検診医が献血による心身への負担など健康に配慮し実施を見送ったようだ(???)。福島県民の献血を断る規定などはないが、検診医の放射能への理解が十分でなかった可能性もあり、現場教育を再度徹底する」と話している。
 日赤本社や同センターによると、男性は5月26日、東京・お台場のイベント施設の移動献血会場を訪れた。男性が「原発の近くにあるいわき市から来たので、放射線を浴びているかもしれない」と話したため、検診医は「心配ならば控えた方がいい」などと答え、採血しなかったという。 しかし、翌27日、男性の妻から同センターに「放射線で遺伝子が傷ついているかもしれないなどと言われ、献血を断られた」と抗議があったという。
 日赤は4月1日、全国の血液センターに対し、国が定める原発作業員の累積被ばく限度量などを参考に、福島第1、第2原発で累積被ばく量が100ミリシーベルトを超えた作業員については「本人の健康状態への配慮」を理由に半年間、献血を制限する方針を通知した。しかし、一般の福島県民については「通常、100ミリシーベルトを超える被ばくは考えられない」と制限していないという。 日赤側は「遺伝子が傷つくという話は一般論として説明したようだが、誤解されたのかもしれない。検診医の配慮(???)?は過剰だった可能性もあり、通知の趣旨を改めて徹底する」としている。【毎日・佐々木洋】

3月
避難区域から引っ越せない…業者の拒否相次ぐ
 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、1か月後までをめどに避難を求められている福島県の計画的避難区域で、住民が引っ越しの依頼を業者に断られるケースが相次いでいる。 引っ越し業者側は「社員の安全を考えると作業させられない」などとしており、現在、6000人以上とされる5市町村の計画的避難区域にいる住民の移動に支障が出る恐れもある。 「『避難しろ』と言われて避難できないなんて。見殺しにするんでしょうか
 村全域が計画的避難区域となった飯舘村の女性(50)が23日、大手業者の電話受付で住所を告げると、担当者に「現在、作業不可地域とされております」と言われた。食い下がっても、「やはり原発等の影響があるかと思われます」「社内的に決まっていますので」と断られた。別の大手業者にも同様に拒まれた。(読売)

福島の避難児童にいじめ 新潟の小学校 蹴られ入院
 東日本大震災で、福島県から新潟県長岡市に避難している小学6年の男子児童(11)が転入先の小学校で同級生に蹴られ、入院していることが23日、同市教育委員会への取材で分かった。学校側はいじめがあったことを認め、保護者に謝罪した。 市教委によると、男子児童は父親の実家がある長岡市に避難し、今月7日の始業式から新しい学校に通学。19日午前の休み時間、同級生の女子児童に腹を蹴られた。20日に腹部打撲と診断され、様子を見るために入院しているという。
 男子児童は15日にも「女子から悪口を言われている」と担任教諭に相談。学校側は21日、PTA総会で事実関係を説明し、同級生の児童からも話を聞いている。市教委の山田修管理指導主事は「福島県への差別的な発言はなかった。つらい思いをさせて申し訳ない」と話している。(産経)

放射線の教授「感染しない。県民差別するな」 原爆団体「政府が風評助長」4.22
 東京電力福島第1原子力発電所事故で、福島県から茨城県つくば市への転入者がスクリーニング検査受診の証明書を求められるなど、福島県外へ避難した住民が根拠のない差別的な扱いを受けるケースが続発している問題で、放射線の影響を研究している広島大原爆放射線医科学研究所(広島市)の星正治教授は「避難住民から放射能がうつる心配はありません」として、差別的扱いは許されないことだと断じた。
 放射性物質が大量に飛散した場合、被曝した人の衣服などに付着した放射性物質を周囲の人が吸い込む可能性はある。 だが、星教授は今回のケースでは「原発周囲の放射線量は下がってきている。除染作業も行われており、現時点で心配する必要はまったくない」と話す。 その上で「検査希望者にスクリーニングなどを実施する仕組み作りは、不安解消のためにも必要。ただ、それを義務づけることはやりすぎだ」と指摘する。
 また、広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長(85)は「風評の恐ろしさはわれわれが一番よく分かっている。同じことを繰り返してはならない。風評を助長しかねない政府の断片的な情報の出し方には疑問を感じる」と話す。 昭和20年8月の広島、長崎への原爆投下直後、放射線の知識は一般にはほとんど知られておらず、就職や結婚などの場面で、被爆者に対するさまざまな差別が起きていた。

福島ナンバー拒否、教室で陰口…風評被害に苦悩
 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故で、福島県から県外へ避難してきた住民らが、心ない仕打ちを受けるケースが相次いでいる。 長期にわたる避難生活を強いられている被災者が「人への風評被害」にも苦しめられる事態に、識者は「科学的に全く根拠のない風評被害だ」と冷静な対応を求めている。 「福島県から来たことを隠しますか」。福島県南相馬市の男子児童は千葉県内の小学校への転入手続きで、教師からこう聞かれた。母親は意味がよく分からずに「隠さなくていい」と答えた。男児の席は教卓の前で左右は空席になっていた。
 日本弁護士連合会によると、母親は弁護士に相談し、「原発事故による一時転入なので学校に改善を求めると子供が居づらくなる」と話したという。 南相馬市から群馬県へ避難した小学生の女子児童は、「福島県から来た」とクラスの子供から避けられたり、陰口を言われたりして不登校になった。 千葉県船橋市教委は、南相馬市から来た小学生の兄弟が嫌がらせを受けたとする連絡があり、「子供たちに避難者の気持ちを考えるよう指導するように」と小中学校に通知を出した。
 福島県いわき市の運送会社は、「放射能の問題があるので、いわきナンバーで来ないでほしい」という取引先の依頼を断れず、東京都や埼玉県でトラックを借り、荷物を積み替えている。社長(61)は「取引先から『いわき』ナンバーで来るなと言われたら従わざるを得ない。何とも理不尽だ」とため息をつく。 福島県田村市に工場を持つ埼玉県の会社は、福島ナンバーの車に乗った社員が首都圏のガソリンスタンドなどで利用を拒否され、埼玉県内ナンバーを使うよう指示した。 (読売 4/21)

つくば市、福島からの転入者に放射能検査要求
 茨城県つくば市が、東京電力福島第一原発の事故で福島県から避難して転入する人たちに、放射能汚染の有無を確認する検査を受けた証明書の提示を求めていたことが18日、わかった。 市側は「市民に無用な不安を与えない目的だった」としているが、転入者からの抗議を受け、検査を求めないことにした。 つくば市によると、市民課長名で3月17日、福島からの転入者にスクリーニング検査を求めることに決め、担当する窓口へ通知した。窓口の担当職員が、転入者に消防本部や保健所で検査を受け、証明書をもらうように指示するなどしていたという。原発事故が起きてから、つくば市には福島県いわき市などからの住民が避難している。
 今月11日、つくば市内の研究機関に就職するため仙台市から転居してきた男性(33)が証明書の提示を求められ、このことを茨城県に訴えたことから問題が発覚した。つくば市の岡田久司副市長は、「放射能汚染について、誤解があったと認めざるを得ない」と釈明した。(読売)

「福島県民お断り」入店・宿泊、風評被害相次ぐ
 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故で多くの避難者が出ている福島県の災害対策本部会議で8日、風評被害の事例が報告された。 放射線に関する県の相談窓口に寄せられたもので、ある運送業者から「他県のガソリンスタンドに『福島県民お断り』との貼り紙があった」という相談があった。ほかにも、福島県民であることを理由に、「レストランで入店を断られた」「ホテルに宿泊できなかった」「車に落書きされた」などの被害があったという。 県によると、3月17日の窓口開設から8日朝までに計6967件の相談があり、うち162件が風評被害に関するもの。県は風評被害払拭のため、これまで国に対して正確な情報発信に努めるよう要請している。(読売)
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 「風評被害払拭」のための「正確な情報発信」とは、どのような「情報」だろう。これも私たちに突きつけられた〈問題〉の一つである。 また、県が「放射能差別払拭」のためにどのような「情報」を発信してきたか、今後このことも同時に調査される必要があるだろう。

「放射能怖い」福島からの避難児童に偏見
 原発事故で被ばくを恐れ福島県から避難してきた子供が「放射能怖い」と偏見を持たれるケースがあるとして、千葉県船橋市教委が全市立小中学校長らに配慮するよう異例の指導を行っていたことが分かった。福島県南相馬市から船橋市へ避難した小学生の兄弟の事例では、公園で遊んでいると地元の子供から露骨に避けられたという。兄弟は深く傷つき、両親らは別の場所へ再び避難した。大震災から1カ月たつが、福島第1原発の深刻な事態が収まる見通しは立っていない。知識の欠如に基づく差別や偏見が広がることを専門家は懸念している。【毎日・味澤由妃】

 南相馬市の小学生の兄弟のケースは、避難者の受け入れ活動に熱心な船橋市議の一人が把握し、市教委に指摘した。市議によると兄弟は小5と小1で、両親と祖父母の6人で震災直後船橋市内の親類宅に身を寄せ、4月に市内の小学校に転校、入学する予定だった。 兄弟は3月中旬、市内の公園で遊んでいると、方言を耳にした地元の子供たちから「どこから来たの?」と聞かれた。兄弟が「福島から」と答えると、みな「放射線がうつる」「わー」と叫び、逃げていった。兄弟は泣きながら親類宅に戻り、両親らは相談。「嫌がる子供を我慢させてまで千葉にいる必要はない」と考え、福島市へ再び避難した。
 福島県から県内に避難し、この家族をよく知る男性は「タクシーの乗車や病院での診察を拒否された知人もいるようだ。大人たちでもこうなのだから、子供たちの反応も仕方がない。でも、当事者の子供はつらいだろう」と話す。 市議の指摘を受け、船橋市教委は3月28日「(放射能への)大人の不安が子どもたちにも影響を与え、冷静な対応がとれなくなることが危惧される」として、避難児童に「思いやりをもって接し、温かく迎える」「避難者の不安な気持ちを考え言動に注意する」よう市立小中学校長らに通知した。
 市教委によると今月から市内の学校へ通う被災者・避難者の子供は43人で、うち38人は福島県出身という。
 避難児童を多数受け入れる市立行田西小学校の中村俊一校長は、「温かく迎えるのは言われなくても当たり前のこと」と強調。「放射能を巡る偏見や方言で児童を傷つけることがないよう注意深く見守ろうと、教職員に何度も話している。始業式や入学式で『いつか古里に帰れる日が来るでしょう。その時に船橋に来て良かった、友達ができて良かったと思ってもらえるよう仲良くしてください』と呼びかけた」と話す。
 市教委に指摘した市議は「話を聞き、心がさみしくなった。船橋の子供たちにはいつも『思いやりのある人になってほしい』と言っている」と話す。

 千葉市稲毛区の放射線医学総合研究所(放医研)は福島第1原発事故直後の3月14日、放射線や被ばくを巡る電話相談窓口を開設。研究員や退職者6人が朝から深夜まで応対している。相談は主に首都圏から寄せられ、すでに6000件を超えている。 震災直後は「原発近くに住む親類を家で受け入れたいが、自分の子に影響はないか」という内容が多かった。その後、避難者の数が増えると「アパートの入居で難色を示された」「福祉施設や病院で被ばく線量を調べるスクリーニング検査の証明書の提出を求められた」などの相談が急増した。 今回の船橋のケースも踏まえ、放医研の柿沼志津子博士は「大人をまず教育したい。受け入れる側が心配すべきことは何もありません。むしろ心配しすぎる方が体に悪い」と指摘。「放射線について正確な知識に基づき、『正しく怖がる』ことが大切です。もっと勉強してほしいし、私たちも理解を深めてもらえるよう努力しなければならない」と話す。放医研は相談窓口(電話043・290・4003)を当面続けるという。

原発避難の福島県民「国は、逃げろと言うだけ」
 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故で避難した福島県の住民が、全国各地で先の見えない生活を続けている。 元の自治体の支援を十分受けられず、帰郷や生活再建の道筋が描けず、将来への不安と行政などへの不信が募る。 「国は『とにかく逃げろ』と言うだけ。その後のフォローがない」。
 避難指示区域(第一原発から20キロ圏内)の南相馬市小高区から、水戸市に避難した会社員(37)は憤る。3月12日、原発事故と避難指示を告げる防災無線を聞き、車で家を出たが、大渋滞で引き返した。 2日後、南相馬市原町区の中学校に避難したが、そこも30キロ圏内。 15日未明に、家族8人が車1台で姉が住む水戸市に向かった。ずっと姉の世話になるわけにもいかない。22日、被災者は家賃無料という茨城県営住宅への入居を申し込みに行った。 しかし、窓口の返事は「県民優先なんです」。同県でも、民家3000棟以上が全半壊するなどの被害が出た。県が用意できた空き住宅は3944戸。担当者は「茨城県民の分も足りない。県外の人には避難所の提供しかできない」と申し訳なさそうに話した。 やむなく借りた家の大家さんが親切で、水戸市の小学校に転校した娘3人のランドセルや文房具をそろえてくれた。 娘は11日、小学校から避難する際、ランドセルや教科書を置いたままになっていた。南相馬市に送ってくれないかと頼んでみたが、だめだった。
 家電や家具はリサイクルショップの善意で安く買った。会社員は「親切な人に巡り合い、幸運だった。ただ、政府は今後、我々の生活を守ってくれるのか」と不信感をぬぐえずにいる。(読売)

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「都内で反原発デモ、浜岡原発の廃止など求める」(4/10)
「東海地震が起きれば想定される震源地域の真上にある浜岡原発では、福島第1原発の二の舞いかそれ以上の事態になる。即刻運転停止するべきだ」。集会には約2500人が参加。浜岡原発は現在、4、5号機が運転中。中部電力は定検中の3号機について、4月上旬に予定していた運転再開を見合わせている。
東京・高円寺で反原発デモ ネット通じ1万5千人 (4/10 共同)「2歳と6歳の子どもと参加した介護ヘルパー神山孝史さん(43)「ツイッターで知りました。原発を止めるのは今しかない。この子たちのためにできることをやりたい」。

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「原発ジプシー」と被曝