2012年2月27日月曜日

国立大学改革と地方分権--で、阪大をどうするのか?

国立大学改革と地方分権--で、阪大をどうするのか?

 国立大学の入試(前期日程)が始まった。私にも「現場」で「てんやわんや」になっている友人・知人がいる。
 国立大学と言えば、ずっと昔から、疑問に思っていたことがある。
 それは、仮に国から地方へ「分権」が進んだとして、「で、国立大学はどうなるのか/国立大学をどうするのか?」という問いである。 この問いは、必然的に、今後数十年にわたって続くであろう少子高齢化・人口減少時代の、分権が進んだ「地方」において、「最もふさわしい教育の在り方とはいかなるものか?」という、より本質的で根本的な問いを投げかける。

 しかし、大学(研究者)はもちろんのこと、国(文科省-中教審、民主党)も自治体も、そうした問題意識をまったく持っていない。「廃墟となった大学」と「廃墟となった大阪」?を、できるだけつなげる形で、少しこの問題を考えてみたい。

 現行の国立大学制度が、実は「地方分権」を阻んでいる、と考えたことはないだろうか。
 たとえば、大阪である。「大阪の再生」を「大阪の自治/住民主権の再生」と位置づけ、その中心テーマを、仮に「大阪の教育の再生」に据えるとしたら(私はそのような立場には立たないが)、「国立大学法人としての大阪大学と大阪教育大学をどうするのか?」、という問いは避けられないはずだ。

 しかし、「橋本イズム」は、現業の「民営化」と教育委員会・日教組・自治労の解体には熱心だが(「市民感情」から言えば、それにはそれなりの根拠が十分すぎるほどある)、この問いに正面から取り組まない。市大と府大の「統合」こそマニフェストに掲げてはいるが、「教育改革」に関して言えば、「橋下イズム」は「維新」を語りながら、実はきわめて保守的であり、知識エリート主義丸出しなのだ。

 (独立行政)法人化した国立大学というのは、いわば文部科学省を始めとする国の官僚機構の延長組織である。地方分権との関係で言えば、国の「出先機関」みたいなもの、ということになる。
 ところが。「橋下イズム」は国と地方の「行政の二重構造」=ムダを問題にするが、国と地方の大学行政の二重構造=ムダを問題にしない。 それはなぜか? そこにどのような「利権」が動いているのか? 一度よく考えてみるべきである。

 橋下市長は、自分が保守・府立の進学校出身・子だくさんだから「公立の(進学率)復権」をかけ、「現場」への統制と競争を持ち込もうとしているのかも知れない。しかし、「大阪の子どもたち」に必要なのは「愛国心」ではない。「大阪を思う、「愛する」精神」の涵養である。どこの地域でも同じではないか。
 それは「愛国心」とはまったくまったく違うものである。「初等教育」における中教審お墨付きの「公民」教育、この国の官・政・財の下請けカリキュラムでしかない「高等教育」における「公共政策」学、さらには意味のわからない「国際公共政策」学などの抜本的見直しが必要だ。

 「大阪の人間」は、ここまで大阪をダメにしたのが、たとえば府立北野高校から京大や東大、阪大や早稲田に進学し、その後、意識的にであれ無意識であれ、生まれ、育った「大阪を捨てた/売った(sell out)大阪の人間」だということに気づかない。 そういう「連中」が、霞が関や丸の内、中之島や北浜界隈に、いっぱいいる。「維新の会」内部にも、「外人・傭兵部隊」にも。「大阪のアジェンダ」ではなく、「自分のアジェンダ」を持ち込んでいる「連中」がいっぱいいる。
 ともあれ、そういう「故郷を捨てた/売った連中」「現場を知らない連中」が、実は札幌、仙台、金沢、名古屋、広島、高松、博多、那覇、その他「地方」の県庁所在地にもいっぱいいる。
 そう、福島にも。「精神/アイデンティティの根こぎになった連中」が、持続可能な循環型「天下りシステム」と「異動システム」によって、全国を「渡り」歩いているのである。
 日本の国立大学制度は、「そういう連中」の養成機関としても位置付けられてきた。これをいかに「改革」するのか? 向こう2年や3年で、どうなる/どうするの話ではない。10年先、20年先を見据えた、とても〈アクチュアルな問題〉であるはずだ。

 大阪における国立・公立・私立の「教育の社会的資本過剰」と、「貧困化と格差拡大」が同時進行する「大阪の人間」の「マクロレベルの教育投資過剰」に引きつけ、考えることが重要である。
 生身の、あるがままの人間とその社会が奪われてしまう前に、国立大学法人を〈地域〉に還すために。

【参考サイト】
●「「国出先機関の事務・権限移譲に関するメリット等の事例」について」(関西広域連合)
 「政府は平成22年12月に、「アクション・プラン~出先機関の原則廃止に向けて~」を閣議決定し、先の第13回地域主権戦略会議においては野田内閣のもとでも改めて広域連合制度の活用を前提に、国出先機関改革を推進することが確認され、今後、政治主導による取組の加速化が大いに期待されているところです・・・。」
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 「政治主導による取組の加速化が大いに期待されている」と言うのは、「官僚主導」に固執する官僚機構の頑強な抵抗が続いているからである。「関西」などというlocalは、実際には「想像の共同体」に過ぎないが、広域連合に対しては、京大と阪大を始めとする「関西の国立大学をどうするか?」の議論を開始すべきだと提言したい。
 もう一点。「大阪の人間」は大阪のことしか考えない。自分は変わらず人を変え、利用しようとする、強烈な「天の邪鬼」である。「転んでも、タダでは起きない人間」である。 広域連合の自治体で生活する人々も自分のところの「自治」を中心に思考し、「大阪の人間」に振り回されないようにすべきかも知れない。

●「大阪維新の会」の「市長選マニフェスト
2. 公務員制度を変える 職員基本条例
 明治時代から 続いてきた公務員制度を大転換 。特権的な身分制度を排し、府民・ 市民の感覚が反映する公務員制度を構築します。
3. 教育の仕組みを変える教育基本条例
 文部科学省を頂点とするピラミッド型の教育委員会制度を一から見直し、委員会が独占している権限を住民に取り戻します。教育行政に住民の意思が反映できる仕組みを構築します」
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 大阪の「統治機構の改革」という点に限定して言えば、上の2と3に私は賛成である。
 が、これだけは「大阪の教育」は何も変わらない。子どもたちが今よりももっと肉体的・精神的に疲弊し、「保護者」の負担が増加するだけである。 阪大・教育大を「大阪に還す」ことが核心的アジェンダである。

大阪大学「地域社会との連携」
 阪大は国と関西・大阪の「産官学連携」ではなく、「大阪の大学システム」の中に埋め込み直される(re-embed)べきである。「なにわの商人」の末裔の一人として言わせてもらえば、今の阪大は懐徳堂はもとより「建学の精神」からもかけ離れた、「大阪の人間」を「上から目線」で睥睨(へいげい)する、「象牙の塔」ならぬ「バベル(混乱)の塔」のように見える。
 今、地方の国立大学では首都圏や関西圏の私立大学への「転職」を決断した人や考慮中の人が増えている。将来に対する不安や「やってられない」という意識が蔓延する全国立大学法人の教員・職員の未来のためにも、今から「国立大学を地域に還す議論」を興すことが重要だ。

●「「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ(案))」について」(文部科学省)
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 法人化後の「現状と課題」を「熟議」するその視座が、国立大学が立地する地域ではなく、どこか宇宙の彼方にブッ飛んでしまっている。機会のある折に検討を加えたい。

京都大、大阪府立の進学特色10高校と連携へ
 京都大学(京都市)は[2月]16日、大阪府立の進学指導特色校10高校と教育連携すると発表した。高校生が大学の研究室を訪ねたり、大学の教員が高校へ出向いて助言したりする関係を築きたいという。
 大阪の進学指導特色校は、橋下徹知事(当時)が優秀な生徒を特定の府立高に集めようと発案(⇒まったくの政策ミス)し、昨春からスタート。天王寺、北野、豊中、茨木、大手前、四條畷、高津、生野、三国丘、岸和田の10校で、約1.5億円の追加予算をつけて少人数授業などを行っている(⇒税金のミスユーズ)。昨秋には特色校の生徒約600人が京都大を訪れ、特別講義を受けたり研究発表をしたりした。昨春、10校から京都大に入学した生徒は241人。 (⇒なんで「大阪の子ども」が京大に行かなアカンねん?「大阪の人間」はこれが「大阪の頭脳流出」であることに、いつ気づくのか?)
 記者会見で、松本紘・京都大総長は「大勢の優秀な学生大阪から入ってきている(!)。より深い関係を築けることは意義深い」。中西正人・大阪府教委教育長は「生徒が刺激を受け、知的好奇心や学ぶ意欲が触発されれば」と話した(⇒そういう問題?)。(朝日、筒井次郎)

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東大、インド人留学生獲得に本腰…学食も工夫
 東京大学は27日、当地でインド事務所の開所式を行った。 バンガロールは情報技術(IT)などインドの先端産業の中心地で大学も多く、優秀なインド人留学生を獲得するのが狙いだ。
 式典後、記者会見した田中明彦副学長は、東大では中国人留学生約1000人が学んでいるのに対しインド人留学生は35人だけだなどと明らかにした上で、「これを契機にインドからの学生を大幅に増やしたい」とアピールした。東大では、英語だけで授業を受けられるコースを拡充、学生食堂にもインドに多いベジタリアン(菜食主義者)やイスラム教徒向けのメニューを増やすなど受け入れ態勢を整えているという。
 東大の海外事務所としては2005年に開設した北京に次いで2か所目となる。【読売、バンガロール(インド南部)=新居益】

論文盗用した元助教の指導教授、停職1カ月 東大
 東京大大学院工学系研究科のトルコ人元助教が博士号取得論文で他人の著作物を盗用した問題で、東大は29日、指導教員で学位審査の主査を務めた松村秀一教授について、対応が不適切だったとして24日付で停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。元助教は既に退職し、東大は「懲戒解雇相当」として退職手当を支給していない。
 元助教による研究費の不正使用の調査結果も公表し、約105万円がパソコン購入代などに私的に流用された疑いがあるとした。東大は同額分を国などに返還する。(日経)

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国のやり方恐ろしい…意見交換会欠席の双葉町長
 東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉郡の8町村長と、細野環境相、平野復興相が復興について話し合う意見交換会は26日、双葉町の井戸川克隆町長ら3町長が急きょ欠席し中止されるという異例の事態となった。  国との意見交換会を欠席した井戸川克隆・双葉町長は26日、住民らが避難する埼玉県加須市で記者会見し、「信頼関係に問題が生じた」などと国への不信を語った。
 「話し合いの場を設けたのに、一方的に決めて説明するということは、あってはならない。やり方が非常に恐ろしい」。井戸川町長は、中間貯蔵施設の用地を国が原発事故前の実勢価格で買い取ることを検討しているとの一部報道を引き合いに、国を批判した。  双葉郡内への同施設建設は「先祖伝来の古里に住めなくなるような決断をする、大変重い話だ」とし、今後の国との意見交換については「もう一度、冷静な判断の下で内容を検討し、会議を設けたい」と話した。(読売)

野田首相:「来る意味わからない」…県民の不信感根深く
 野田佳彦首相の26日の沖縄初訪問は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設への沖縄の理解を得るのが目的だ。27日の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事との会談などを通じて沖縄振興や沖縄の基地負担軽減に努力する姿勢をアピールする構えだが、普天間の県外移設を断念した民主党政権への沖縄の不信感は根深い。沖縄初訪問も県民には「基地押し付け」としか映らず、反発と不信の声が上がった。
 県外移設を断念した鳩山由紀夫元首相、辺野古移設を踏襲した菅直人前首相に続き、野田首相は民主党政権の3人目の首相として沖縄入り。26日は沖縄戦犠牲者らの名を刻んだ平和の礎(いしじ)がある平和祈念公園(同県糸満市)などを回り、沖縄県幹部らから説明を受けた。27日の知事との会談では、辺野古回帰の経緯について謝罪すると共に、辺野古移設に理解を求めるとみられる。
 しかし、辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協の安次富浩(あしとみ・ひろし)共同代表は、首相の沖縄初訪問に対し「『辺野古はダメ』と言い続けている沖縄に来る意味が全く分からない」と首をひねった。
 在沖縄海兵隊の一部を米軍岩国基地(山口県岩国市)へ移転する米側の打診を、政府は拒否。山口側からの反発を受けたためだった。安次富さんは政府の沖縄と山口との対応の違いについて「この根底には、政府の沖縄差別の感情がある。このことを、本土の人ももっと関心を持ってもらいたい」と語気を強めた。【毎日、井本義親、吉永康朗、佐藤敬一】