2012年2月13日月曜日

惨事と軍隊(Disaster Militarism)

惨事と軍隊(Disaster Militarism)

 ナオミ・クラインの"The Shock Doctrine――The Rise of Disaster Capitalism"の翻訳、『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』にならうなら、「惨事便乗型ミリタリズム」とでも書くべきかも知れない。

 「トモダチ作戦」以降の米軍と国連PKOの動向を見ながら、"Disaster Militarism"の分析をきちんとしなければいけない、と考えてきた。 しかしこのブログのエントリーを見れば明らかなように、それができていない。 とてもじゃないが、できない。福島第一・第二のDisasterのせいで、私の日常もDisasterになってしまった。

 私が言う"Disaster Militarism"は、ナオミ・クラインが言う"Disaster Capitalism"と微妙に違う。後者は現代資本主義批判として書かれたものだが、前者は軍隊そのものを特殊な官僚機構として捉え、現代官僚制批判の中に位置付けようとする。

 Disasterに「便乗」して制度的・機構的「自己革新」を図りながら、制度的・機構的な「自己増殖」を企てようとする〈現代ミリタリズム批判〉
を意図したものである。

 シリア情勢が沈黙を許さない状況になっているので、これから順を追ってポイントを整理しようと思う。


 天災(natural disaster)・「緊急人道支援」・軍隊

 たとえば、「トモダチ作戦」以降、日米の「惨事便乗型ミリタリズム」が、「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」の下で、国際NGOと「市民社会」を取り込み(co-opt)しながら、以下のような動きをみせていることをご存知だろうか。
 自分の不明を恥じるしかないが、わたしは「トモダチ作戦」が開始されるまで、ピース・ウィンズの「アメリカオフィス」がこのような動きをしていることを知らなかった。

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日米民間団体、政府組織、自衛隊・軍隊間の災害支援共同活動向上のためのイニシアチブ・プログラム
「日米 民軍災害支援対策)による「災害支援対策ワークショップ」
ピース ウィンズ ・アメリカ、在日米国大使館共催
2011 年9 月 27 日- 29 日 場所:在日米国大使館(東京)

 ピースウィンズ・アメリカは、在日米国大使館共催のもと、「災害支援対策ワークショップ:政策、手順、協働」を開催する運びとなりました。このワークショップでは、主に民軍間の人道支援/災害救助 (HA/DR)の重要点を中心に、二国間及び多国間との支援活動の調整をどのように向上できるかという点について話し合われる予定です。
 予定参加団体は、日米さらに韓国の政府系機関、自衛隊・軍隊、NGO、及び民間企業からの各団体の災害対応・対策担当者となっています。

 今回は、いくつかの関連フォーラムやワークショップ形式から構成されている、当団体が行っている表記イニシャチブのプログラムの一部として、各組織の上層部の代表者や現場責任者を対象としています。今回のワークショップでは同じ分野で活躍する人々とのネットワーキング、協働支援政策に取り組む機会、及びトレーニングを提供します。

 今回は、HA/DR における主要な問題点である支援対応政策、支援のプロシージャ及び協働支援を中心に取り上げます。被災国(ホストネーション)、二国間、多国間での協働支援における問題点にも触れる予定です。参加者は今回の東日本大震災において、どのような対応がとられたのかを聞く機会があり、さらに環太平洋地域における他の事例についても学ぶことができます。

 また、各団体の協働支援体制の向上を促すため、このワークショップでは小グループに分かれてのディスカッションや事例研究も行われます。各種の事例やこれまでの経験で得られた教訓を共有することにより、災害支援対策関連担当者にとって重要なトレーニングの機会となると考えられます。

 ピースウィンズ・ アメリカの日米民軍災害支援対策イニシャチブとは、18 ヶ月間のプログラムで、民間と自衛隊・軍隊の災害支援における協働活動の向上において、相互の支援対応能力の向上と改善を目指すものです。今回のワークショップはこのイニシャチブの一部として行われます。ワークショップは日本語と英語の両方で行われます・・・。
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 この問題を考える予備的情報として、「国家(戦略)とNGOの「利益相反」--JPFという「プラットフォーム」がいったん解体されねばならない理由」を見て頂きたい。

 ここに東京財団が一昨年、新米国安全保障センター(米国の軍産学複合体のシンクタンク。プロジェクト・メンバーに米軍の司令官が入っていることに注意)と行った「日米同盟の在り方に関する共同研究プロジェクト」の「報告書」、

●「「従来の約束」の刷新と「新しいフロンティア」の開拓:日米同盟と「自由で開かれた国際秩序」」(2010年10月27日)のリンクがある。 この「プロジェクト」には、大西健丞(ジャパン・プラットフォーム理事、ピースウィンズ・ジャパンおよびシヴィック・フォース・ジャパン代表理事)氏その他が参加している。

 「3・11」以前から、自衛隊や国際NGO、「市民社会」を巻き込んだDisaster Militarismは、着々とその「ベース」(基地)を打ち固めていたのである。
 「トモダチ作戦」は、まさに「3・11」に「便乗」した軍事作戦だったのだ。

(つづく)

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多国間共同訓練「コブラ・ゴールド2012」、タイ
 「年次の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド(Cobra Gold)」がタイで7日から行われている。2012年は韓国、インドネシア、タイ、米国、シンガポール、日本、マレーシアの7か国から約1万3000人が参加、17日に終了予定となっている」(2/15,AFP)

シリアへ「共同平和維持軍」、アラブ連盟が要請
 アラブ連盟(22か国・機構)は12日、カイロで閣僚会議を開き、政府軍による住民弾圧が続くシリアで「あらゆる暴力行為の即時停止」を求めた上で、国連とアラブ連盟が「共同平和維持軍」を組織し、シリアに派遣して、戦闘停止を監視するよう、国連安全保障理事会に要請する声明を発表した。
 国際社会が結束して介入することで、昨年3月以来、約6000人が死亡したとみられるシリア・アサド政権の弾圧を食い止めるための新構想だ。安保理で今月4日、対シリア非難決議案に拒否権を行使したロシアと中国の対応が注目される。

 アラブ連盟の声明は「あらゆる種類の政治的・物質的支援を提供する」と踏み込んだ。シリア国民への人道支援だけでなく、政府軍の離反兵らで構成する「自由シリア軍」などへの支援を念頭に置いたものだ。シリア国内外で分裂状態にある反体制勢力に「結束する」ことも求めている。(読売)

欧米有志国が会合へ UN枠外でアサド政権に圧力(2/9,産経)
米東海岸で9か国大規模揚陸演習、対イラン戦を想定?(AFP)
対シリア、米英仏が圧力強化 アラブ連盟と安保理で(1/31, 日経)