2012年8月31日金曜日

安保適用は「一定状況下」?--「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」2012

安保適用は「一定状況下」?--「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」2012

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 米国が日米安保の下で、「尖閣諸島」を自衛隊とともに「防衛」するのは「「一定の状況が重なった場合」に限ると言いだした。 「政府高官」とだけ報道され、人物は特定できないが、米国は次のように主張したとされている。

 「(安保が発動される)一定の状況」が実際に起きるのを避け、対話や外交を促して、武力行使などが想定される事態にならないようにすることが「米国の願い」(??)なのだと。
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安保適用は「一定状況下」 尖閣で米高官、表現微妙に変更 対中配慮か
 米政府高官は30日までに記者団に対し、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島について「一定の状況が重なった場合に(日米安保条約の)日本防衛(義務)が適用される」と述べた。米政府はこれまで特に条件を付けずに条約の「適用対象」と明言してきたが、表現を微妙に変更。9月4~5日に予定されるクリントン国務長官の訪中を控えて中国側に配慮したとみられる。

 安保条約5条は、日本の施政権が及んでいる地域への武力攻撃があった場合の米国の日本防衛義務について、日米両国が「平和および安全を危うくする」と認めた場合にそれぞれの憲法に従って行動するなどと発動要件を規定。高官はこれを単に説明した可能性もある。高官は「(安保が発動される)一定の状況」が実際に起きるのを避け、対話や外交を促して、武力行使などが想定される事態にならないようにすることが「米国の願いだ」と強調した。(共同)
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 問題になっているのは、上の記事が言うような中国への「配慮」云々ではない。安保条約とはいったい誰のために結ばれた、どういう条約なのかという、条約の本質に関わる問題である。
 安保条約は、これまで条約に賛成する者からも、反対するものからも、「日本有事」=外部からの武力攻撃事態において、米軍と自衛隊が、共同して「敵」を撃退し、日本を「防衛」するための条約だと解釈されてきた。だから、安保は双務的な「日米共同防衛」条約=「軍事同盟」であり、日米関係は「同盟」関係なのだと。その根拠とされてきたのが、安保条約第5条(の解釈)である。

 たとえば、外務省は「日米安全保障条約(主要規定の解説)」において、第5条を次のように解釈している。 
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 第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である。
この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。
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 「共通の危険に対処するように行動する」、しかも「憲法上の手続きに従った」それが、「有事」の際の米国=米軍による「日本防衛」と、自衛隊との「共同防衛」⇒米国側からすれば、自国の防衛と直接関係ない「日本防衛」のために、「集団的自衛権」を行使することを規定した文言だと読めるだろうか? 読めるはずがない。
 にもかかわらず、実に信じがたいことに、日本政府・外務省、自民党に民主党、共産党・旧社会党に新左翼、さらにマスメディアまでもが、「読める」と主張してきたのである。
 その欺瞞と虚構を明らかにしたのが、2年前に出版した『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』だった。
 2年後の今、早くも私は改訂版を書き下ろさねばならないようである。

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米国が兵器調達増を提案 ASEANに、共同生産も
 米国が30日、カンボジア・シエムレアプで開催した東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済閣僚会議で、ASEAN側に兵器の一部共同生産を含む米国製兵器の調達拡大を提案したことが31日、分かった。米ASEAN通商筋が明らかにした。
 一部加盟国が南シナ海で中国と領有権争いを抱えるASEANは近年、潜水艦や戦闘機を中心に兵器調達を急増させている。アジア重視を打ち出す米国との兵器取引における連携強化は中国を刺激する可能性もある。(シエムレアプ共同)
 

オスプレイ:司令官、事故の可能性言及(沖縄タイムス)
 「操縦士のミスが原因のクラスA級の重大事故が(実戦配備から)3年の間に6件は起きる」
オスプレイ米審査書分析 25市町村上空飛行、県全域で日常化(琉球新報)
「・・・米軍普天間飛行場周辺などで観測される、民間住宅地への「はみ出し飛行」の実態や、明らかにされていない各基地間の移動経路を勘案すると、さらに多くの市町村に影響が及ぶと予想される。
 防衛省は県内のオスプレイ配備関係市町村を18とし、29日に関係市町村の首長らに配備について説明したが、南部方面で飛行経路に入っている市町村を一部除外しており、飛行の影響を過小評価した形だ・・・」

2012年8月28日火曜日

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである(2)

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである(2)


 中央日報の記事、「尖閣紛争が米国に飛び火」によると、中国人民解放軍の副総参謀長が米国政府に対し、「釣魚島とその付属島嶼は中国の領土という点を明確にした」と述べたという。「最近、日本極右団体の釣魚島上陸などは不法行動という立場を米国側に伝えた」とし、「釣魚島が日米相互防衛条約の適用を受けることにも反対の立場を明らかにした」とのことだ。

 この中国(人民解放軍)の動きを、中央日報はある「軍事専門家」の分析を引きながら、「最近、日本が米国との防衛協力指針を改定するための交渉を行っている中で、米国側に圧力を加える狙いがある」とし、さらに「これを受け、日本と中国の尖閣領土紛争は米中両国間にも葛藤の火種となる可能性がある」という論評を加えている。

 先週、私は「「領土問題」に関する米国の二枚舌外交を許さず、「竹島・尖閣・北方領土」の領有権の所在に関する米国の公式見解を国際的に明らかにさせることが、これらの「領土紛争の平和的解決」の第一歩である」と書いたが、再度このことを強調したい。

 吉田茂が「日本にとても寛大」だと言ったサンフランシスコ「平和」条約は、日本政府・外務省の見解や、私たちの多くの「主観的願望」「思い込み」に反し、戦後日本の「領土問題」を解決しなかった。この客観的かつ冷厳たる事実を事実として、つまり日本は今現在、「解決すべき領有権の問題」を周辺諸国と抱えていることを認識することがすべての「領土問題」を論じる大前提にならねばならないし、ならざるをえないのである。

 8月24日の「香港の活動家らによる沖縄県・尖閣諸島上陸に抗議する衆院決議」は、その冒頭で「尖閣諸島はわが国固有の領土である。これは歴史的にも国際法上も疑いはない。また、現にわが国は尖閣諸島を有効に支配している。従って、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と宣言したが、そうとは言えない、ということだ。


 米国は、「国際の平和と安全」に国連加盟国の中で最も責任を負うべき国連安保理常任理事国として、「尖閣諸島」の領有権問題に関し、もはや「中立」を宣言することは許されない。中国も「固有の領土」論を主張するのであれば、その国際法的根拠を、サンフランシスコ「平和」条約に対する評価と、日中の二国間条約において領有権問題を棚上げにしてきた理由とともに、国際社会と自国の市民に対して明らかにすべきである。

 「尖閣諸島」を含む南西諸島周辺海域の日中間の国境ラインを再確定と再確定できない海域の特定→領土紛争を回避する日中間の合意の再確認さえできるなら、この地域をめぐる米中日の軍事的対立の根拠はなくなってしまう。「離島防衛」に名を借りた日米の「動的防衛協力」も、「主権防衛」に名を借りた中国海軍・人民解放軍のこの海域への台頭の大義名分のいずれもが、その物理的根拠を失うことになる。

 「琉球の海の平和」は、いくらでも実現可能な「尖閣諸島問題の平和的解決」を通じて、いつでも取り戻すことができる。
 それを阻んでいるのは誰か? 答えは誰の目にも明らかではないだろうか。

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⇒「琉球独立と台湾独立に関する国際シンポ
日時:2012年11月24日(土)、25日(日)
会場:沖縄県立美術館・博物館(講堂)
「オキナワ」と「フクシマ」から考える-振興・開発至上主義から​の「自立と自治」
9月1日(土)13:30-15:30 利賀山房(富山県)
 軍事基地や原発建設による振興・開発、一時的経済効果、さらなる​開発、そして、自然環境の破壊と雇用の不安……。負の連鎖がもた​らす構造的・不安定から、「地域」はいかにして脱却・回復するの​か。「オキナワ」と「フクシマ」の<自立と自治>を目指すさまざ​まな試みを参照しながら、「地域」の<自立と自治>への道筋を考​える。
・松島泰勝 (島嶼経済論、龍谷大学教授) 主な著書に 『琉球独立への道-植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』 (法律文化社)
・山下祐介 (都市社会学、首都大学東京准教授) 主な著書に 『限界集落の真実-過疎の村は消えるか?』 (ちくま新書)
・大澤真幸 (社会学) 主な著書に 『夢よりも深い覚醒へ-3.11後の哲学』 (岩波新書)

2012年8月26日日曜日

9・5大阪府880万人防災訓練反対ビラ撒き・監視行動への参加を

9・5大阪府880万人防災訓練反対ビラ撒き・監視行動への参加を

 労働者、市民、学生のみなさん
 大阪府は9月5日午前11時に府内一斉防災訓練として、府民であろうと他府県の人間だろうと、府内のいるすべての人の携帯電話に地震緊急速報を一斉に流します。自分で考え自分で行動しろ、それが災害時の「自助力」だ、というわけです。
 大阪府との交渉で、高速道路を運転中のドライバーがびっくりして事故を起こしたら大阪府は責任をとるのか、との質問に府はまったく答えられません。

 テレビ局もテロップを流すのを拒否していますし、鉄道も協力に消極的です。
 ことほど左様なに無責任極まりないもので、大阪維新の会・橋下大阪市長の思いつきで、災害時の「自助力」を高める訓練が行われるのです。本来行政の責任である災害対策や救援責任を住民に転嫁するものです。
 また、大阪府が電話会社に命令して、個人には無断で強制的に個人の携帯電話を鳴らすというもので、職場・学校・地域の国家葬動員訓練(「国民保護」戦争動員訓練)、個人のプライバシー侵害を「災害訓練」という名を借りておこなうものです。私たちは、こうした大阪府、橋下・維新の会の防災訓練・戦争訓練を見過ごすことができません。

 そこで、私たちは9月5日に実施される大阪府880万人防災訓練に反対してビラまきと監視行動をおこないます。みなさんのご参加を呼びかけます。平日ですので、当日のビラまき・監視行動に参加できない人も多いと思います。その場合は、職場や学校、地域でどんな状況か意識的に観察をお願いしたいと思います。
 また、おかしいと思われたことについて、可能であれば職場責任者や府・市危機管理室に問いただすなり抗議なりをしていただきたいと思います。
 当日見聞きしたこと(写真を含む)について、上記ファックス番号あるいは郵便で寄せていただけましたら、今後の運動に活用したいと思いますのでよろしくお願いいたします。

【行動案内】
※全体でビラまきのあと、分散して監視行動を行います。
※できましたら録音、写真撮影をお願いします。
■ビラまき
 日時 9月5日(木)午前10時~10時30分
場所 JR大阪駅 御堂筋出口・南出口付近のバス・ロータリーのあたり
(旧・広告塔前)
■監視行動 10時30分より行い、終了後は現地解散
①大阪府庁危機管理室
②梅田地下街
③地下鉄御堂筋線車内
④JR大阪駅環状線ホーム、環状線車内
呼びかけ/戦争動員の「国民保護」に反対する連絡会
〒 532-0023 大阪市淀川区十三東3-6-3-302
ファックス/06-6304-8431

2012年8月25日土曜日

ウズベキスタン、国内の外国基地を禁止

ウズベキスタン、国内の外国基地を禁止

【アルマティー(カザフスタン)ロイター】
 2日の地方紙で、ウズベキスタンは同国領内の外国軍事基地の禁止に踏み切る方針であることが伝えられ、隣国アフガニスタンでの作戦行動のための米国の基地再開を同国が許す可能性があるという観測には終止符が打たれた。 しかし一部の軍事アナリストによれば、この禁止措置で米国との軍事協力が妨げられることはないのではないかとも考えられ、米国が引き続きウズベキスタン国内の施設を利用して、アフガニスタンのタリバン等、地域の脅威に対する戦いで特殊部隊作戦を遂行することもあり得る。

 今回の措置はカリモフ大統領が提案した主要外交政策文書の一環で、下院議会で今週承認された。1991年のソビエト連邦からの独立以来、この種の文書は初めてだが、今月中に上院を通過する見込みである。

 中央アジアのウズベキスタンは、国民の多くがイスラム教徒だが、2005年5月にアンディザンで暴動が発生した際に政府がこれを鎮圧したため、米国政府およびヨーロッパ連合との関係が悪化し、米空軍をカルシ・ハナバードから立ち退かせた。人口3000万のこの国で独裁体制を敷くカリモフ大統領は、その後西側との関係を改善しており、米軍の基地再開を大統領が許す可能性があるという観測が国内外で広がっていた。

 しかし2日のウズベキスタンのメディアによれば、下院で採択されたこの文書は「領土内に外国軍の基地その他の施設の配置を許可しない」としている。また同文書によれば、ウズベキスタンはいかなる軍事・政治ブロックにも属さず、外国での平和維持活動にも兵士を参加させないとしている。6月にウズベキスタンは、モスクワが主導する集団安全保障条約機構(ロシア語の略称ODKB)の加盟国であることを一時停止した。ODKBは以前にソ連邦に属していた数カ国を集めたもので、NATOに対するこの地域での均衡勢力と見るアナリストもいる。

 モスクワを拠点とする中央アジア専門家のアルカディ・ドゥブノフは、立法府で反対もなく認められたウズベキスタンの新しい中立的な立場は、同国のODKB脱退計画に焦りをつのらす旧宗主国ロシアを懐柔するためのものだと語った。「カリモフ大統領がロシア側に、『そちらと同じ側でなくなったからといって、敵対しようということではない』というシグナルを送っているようだ」とドゥ > ブノフは言う。「しかも、国内に外国の軍事基地を配置しないという断固とした措置を取った結果としてアメリカとの協調関係が損なわれるわけでもない」。

 米国の特殊部隊は通常、作戦の展開に最小限の後方支援しか必要としないため、「NATO軍が2014年にアフガニスタンから撤退した後、特殊部隊は、テロリストの脅威を取り除くためのアフガニスタン攻撃をウズベキスタン国内の施設から仕掛けることができるだろう」とドゥブノフは語った。ウズベキスタンは、米国政府の言う北部供給ネットワーク(NDN)の一角を占めており、NDNは、ラトヴィア、ロシア、グルジア、アゼルバイジャン、カザフスタン、タジキスタンにも勢力を広げるタリバンに対抗する米国主導部隊への供給網となっている。

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出典:ロイター通信(2012年8月2日)
翻訳協力:さよか(APA‐J翻訳チーム)
翻訳チェック:川井孝子 監修:APA‐Jデスクチーム
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2012年8月23日木曜日

「竹島・尖閣・北方領土問題」における米国の〈戦後責任〉を問う

「竹島・尖閣・北方領土問題」における米国の〈戦後責任〉を問う


 「領土問題」に関する米国の二枚舌外交を許さず、「竹島・尖閣・北方領土」の領有権の所在に関する米国の公式見解を国際的に明らかにさせることが、これらの「領土紛争の平和的解決」の第一歩である。

 たとえば、米国は「尖閣諸島」が「日米安保条約の適用範囲」だという。では、「竹島」はどうなのか? 「北方領土」はどうなのか?

 なぜ、米国は「竹島」/「独島」を韓国領に組み入れた「李承晩ライン」とその後の韓国による「実効支配」を黙認し続けてきたのか?  なぜ、米国は旧ソ連時代から続く、ロシアによる「北方領土」の「実効支配」を黙認し続けてきたのか? そして、なぜ、日本政府・外務省は、日中・日韓の二国間条約において、「竹島」と「尖閣諸島」の領有権問題を棚上げにしてしてきたのか?

 韓国に対し、国際司法裁判所への「共同提訴」を申し入れるのであれば、なぜ中国に対し、またロシアに対し、「領土問題の平和的解決」に向け、国際司法裁判所への「共同提訴」を申し入れないのか? 中国やロシアが「共同提訴」を拒絶するなら、「単独提訴」も辞さない「不退転の決意」(「竹島問題」に関する野田首相の言葉)を示そうとしないのか? これまで半世紀以上にわたり、なぜそうした姿勢を一度たりとも示してこなかったのか?


 日本政府は、「尖閣諸島は安保の適用範囲」という言質を米国から引き出すことで自己満足し、「尖閣諸島」の「実効支配」を強化すれば、それで中国・台湾との「領土紛争」を沈静化できるかのように考えているようだ。しかし、そのような希望的観測は完全に誤っているといわねばならないだろう。「戦略的互恵関係」を維持しながら、同時に「日米動的防衛協力」を推進し、それによって「中国封じ込め」をはかるという矛盾に満ちた対中戦略は、もはや中国の市民(共産党ではない)には通用しなくなっていることを知るべきである。

 市場と安価な労働力目当ての中国への経済進出を続けるために、領土問題や先住・少数民族、労働者、一般市民の人権問題を曖昧にし、棚上げにするような、二枚舌で二重基準の対中外交はもはや許されなくなっている。中国共産党の問題から言えば、日米との経済関係を優先し、「尖閣諸島問題」の公的な解決を棚上げにし続けること、すなわち日本の「実効支配」を黙認するという、長年にわたる「既定方針」が通用しなくなってきている、ということだ。中国の世論は、もはや共産党政府の言論統制や弾圧に屈することがないからである。
 領土問題をめぐる排外的ナショナリズムと軍事的緊張のの高まりを回避するために、従来通りの「棚上げ路線」ではなく、どういう形になるのであれ、公的で最終的な決着をつけざるをえない局面にいたってしまったこと、このことを確認することが最も重要なポイントであるだろう。


 韓国は「竹島」/「独島」を「固有の領土」と主張し「実効支配」を続け、日本もまた「固有の領土」を主張し、韓国の「実効支配」を「不法占拠」と批判する。
 では、韓国の「実効支配」の国際法的根拠と、日本がそれを「不法占拠」と言う場合の国際法的根拠は何か? 日韓基本条約において「竹島」/「独島」の領有権問題は棚上げにされたのであるから、両国の主張の国際法的根拠があるとしたら、サンフランシスコ「平和」条約以外にはない。

 しかし、そのサンフランシスコ「平和」条約は、「竹島」/「独島」の領有権の所在について、明示的には規定していない。あるのはただ、戦後の日本が領有権を放棄すべき領域が「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮」という表現のみである。
 この「鬱陵島」に「独島」が含まれると韓国は主張し、「竹島」は含まれないと主張する。日韓双方が互いに相手の主張を「不当」「国際法違反」だと言いあってきた。いつまでたっても埒があかない膠着した状況、主張合戦と対立が60年間にわたり続いてきたのである。

 ここで、「竹島は日本固有の領土」論を信じて疑わない人に、韓国の「独島」領有の主張を論駁する日本政府・外務省の主張が、おしなべて「米国頼み」になっている事実に注意を向けることを訴えたい。
 たとえば、講和条約の解釈に関し、外務省は次のように書いている。( 「議論が深まらない社会」(3)--「竹島問題」をめぐって」を参照のこと)

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「・・・韓国側の意見書に対し、米国は、同年8月、ラスク極東担当国務次官補から梁大使への書簡をもって以下のとおり回答し、韓国側の主張を明確に否定しました・・・」
「また、ヴァン・フリート大使の帰国報告にも、竹島は日本の領土であり、サンフランシスコ平和条約で放棄した島々には含まれていないというのが米国の結論であると記されています・・・」
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 であるなら、日本政府・外務省が半世紀ぶりの国際司法裁判所に対する「共同提訴」を韓国に申し入れる前にすべきことは、まず上の記述が事実かどうかを米国が国際社会と韓国に向けて明らかにするよう申し入れることではないのか。
 米国は、日本の「戦後処理」に関わるいかなる事案においても「中立」ではありえないし、韓国と日本に対して舌を使い分ける、米国の手前勝手な「中立」宣言を許してはならないのである。

 私はこれとまったく同じことを、韓国の市民に対しても訴えたい。韓国政府は「独島」の領有権をめぐる米国の公式見解をただすべきであり、韓国市民は政府に対してそうするように要求すべきなのだ。そうすれば、「日米同盟」/「韓米同盟」がただの欺瞞であり、「日米安保」/「韓米安保」がただの虚構にすぎないことも、自ずと明らかになるはずである。

 「日米同盟ムラ」と「韓米同盟ムラ」の嘘にだまされないこと。日韓両市民にそのことが問われている。


  「竹島・尖閣・北方領土問題」の本質とは、戦前の「大日本帝国」が海外侵略し、他国の領土を併合する以前の「日本固有の領土」とはどこまでの領域をさすのか、という問題である。サンフランシスコ「平和」条約は、ロシアによる「北方領土」の実効支配の解決を含め、この問題に決着をつけなかった。そして米国は、これらの最終的決着をつける第一義的な〈戦後責任〉を負っており、日本政府は米国にその責任を果たさせる責任を負っている。それを果たさずに「日米同盟」だの「動的防衛協力」などと語れるはずがないではないか。宗教的信仰にも似た「日米同盟」という欺瞞から、いったいいつになったら私たちは解放されるのだろう

 最後に、「尖閣諸島問題」に関し、一言だけ付け加えておきたい。 1972年の「沖縄返還」まで占領統治していた間に、米国は日本政府への通告や「事前協議」もなく、中華民国(台湾)を介して「尖閣諸島」の周辺海域において石油・天然ガスなどの開発に向け、動き始めていた。(米国が「南シナ海」の石油・天然ガスの米中共同開発にも手をつけようとしてきたことを忘れないでおこう)。1972年の日中国交回復以前にこの事実は明らかになっていたが、当時の自民党政府・外務省は何もしなかったのだ。この史実をその経緯とともに明らかにし、米国の公式見解をただす必要がある。

 一方、中国・台湾に対しては、「固有の領土」論を主張する国際法的根拠を、国際的に、つまり中国・台湾市民に対しても、明らかにしてもらう必要がある。中国は国連案安保理常任理事国として、現に存在する日本との「領土紛争」をどのように解決しようとしているのか、またサンフランシスコ「平和」条約の国際法的有効性を認めるのかどうか。

 「中国脅威」論を扇動し、「南西諸島」の軍事化を進める前に、日米両政府が「尖閣諸島問題」の解決に向けやるべきことは山のように存在するのである。

・・・
沖縄に高性能レーダー配備も=オバマ政権、アジアでMD網拡充―米紙(時事)
「・・・米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は22日、オバマ政権がアジア太平洋地域でミサイル防衛(MD)網を拡充させる計画を進めていると報じた。中国や北朝鮮の弾道ミサイルに対応するのが狙い。早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)の沖縄県への配備が検討されているもよう・・・。Xバンドレーダーの新規配備先について「南日本の島」と指摘。
 具体的な地名は不明だが、中国の弾道ミサイルを視野に入れていることから沖縄県内が候補地とみられる。現在、日本政府と協議しており、同意を得てから数カ月以内に設置したい考えという」。

2012年8月21日火曜日

「竹島問題」にみる外交の不在と政治の貧困

「竹島問題」にみる外務省の「外交の不在」と野田政権の「政治の貧困」


 野田政権は今日、韓国に対し、「竹島」/「独島」の領有権に関する国際司法裁判所への「共同提訴」を正式に「提案」した。しかし、当初よりわかりきっていたように、韓国はこれを正式に拒絶する意思をくり返し表明している。これによって「竹島」「独島」をめぐる日韓の「領土紛争」は、「長期戦」の様相をますます深めるようになった。日本が単独提訴に向けた準備を開始するとともに、韓国に対する「対抗措置」を強化する「方針」を打ちだしたからである。驚いたことに、野田政権・外務省は、共同提訴→単独提訴で戦う姿勢を示しながら、一方で日韓基本条約の「交換公文」が規定する「調停」による解決も、同時に申し入れたとのことだ。

 報道によると、野田政権・外務省の「提訴」の狙いは、日本が「公正な裁判」によって領有権問題の「決着」を目指そうとしている「姿勢」を国際的にアピールすることにあるそうだ。だが、外務省・野田政権がやろうとしていることは、日本の「保守」派からの「弱腰外交」批判をかわす「アリバイ外交」とでも定義すべきものであり、「竹島」/「独島」の領有権をめぐる最終的決着をはかるものにはなりえない。以下、その理由をごく簡単に述べておこう。


 もしも、外務省・野田政権が、領有権問題を本当に解決する意思を持つのであれば、「共同提訴」を韓国が非公式に拒絶した段階で(それはすでに半世紀以上前から明らかだったのであるが・・・)、双方が合意しうる「第三国」を調停役とする、「竹島」/「独島」の領有権の所在を審議する国際委員会的な機関の設置に向けた働きかけを行うべきだったのである。その実現のためには、公式・非公式の韓国との長期にわたる粘り強い外交交渉が欠かせない。

 今、外務省・野田政権が検討しているという、国連総会や安保理へのこの問題の持ち込みは、「第三国」による調停案を韓国側が受け入れない場合においてはじめて検討されるべき外交手段の一つになる。(ここでは日本中心に論を進めているが、調停案が日本の領有権を否定する場合もありうることを忘れてはならないだろう)。

 共同提訴を提案しながら、同時に拒否した場合には単独提訴にも踏み切ることを公言し、さらには調停案も提起する・・・。
これがいかに支離滅裂で、韓国側の硬化のみを招き、問題解決を不可能にさせる愚策・愚行であるか、もはや説明は必要ないだろう。外務省・野田政権は、最初の最初からこの問題を解決しようという姿勢を持っていない、としか言いようがない。

 有権者の支持率6~7%の民主党を与党とする、支持率二割を切り、すでに「終わった」野田政権の下で、日韓関係は戦後最悪の「冷たい時代」を、本当に迎えることになるかもしれない。


 外務省・野田政権が言う「対抗措置」の全容は、未だに明らかにはされていない。報道によって明らかにされているものをあげると、それらは、

①「8月25日の日韓財務相対話をはじめ、29~30日の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済閣僚会合での2国間会談など、財務、経済産業、総務3省と内閣府が所管する四つの会議・会談の延期や見送り」(これらの中には、8月30日に予定していた総合科学技術会議の日韓政策対話の延期も含まれる)
②「9月5~6日にロシアのウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の閣僚会談や、東京都内で9月19日に開かれる「LNG(液化天然ガス)産消会議」に合わせた閣僚級の協議も見送り」(以上、読売新聞)、さらに
③「金融市場が混乱した場合に備えた日韓通貨協定の交換枠も、700億ドル(約5兆5千億円)から130億ドル(約1兆円)に戻す方向」での調整、などである(以上、日経新聞)。

 日本政府は、これらの「対抗措置」=制裁的措置に関し、「韓国側の動きをにらみながら実施の是非を慎重に検討する」としている。しかし、言わば制裁をちらつかせながら相手の妥協を引き出そうとすることは、およそ国家間の領土問題の解決において、やってはならない最悪のやり方である。

 「対話と圧力」を語りながら、実際には圧力=制裁のみが強調され、実行されるような貧困なる「政治」が何も問題を解決しないことは、結局、何の進展もみられなかった安倍自公政権以降の「拉致制裁政治」の破産を見れば明らかである。
 通常、二国間で、ある「紛争案件」が存在する場合に、それを外交交渉によって解決しようとするときには、両者とも「折り合い」をつけることができる、つまりは「ソフト・ランディング」ができる「落とし所」を予め設定して臨むものだが、今回の「共同提訴→単独提訴+「調停」提起+「対抗措置」+「対韓国国会非難決議」案」には、そうした努力や思考の片りんさえ見られない。具体的に何を実現したいのかが、さっぱり分からない。
 
 国家の外交の不在と政治の貧困のとばっちりを食い、その代償を払うのは、いつの時代もただの市民である。
 少しは歴史から学ぶこと。こんなあたりまえのことが、事が「朝鮮問題」におよんでしまうと、いつもまるで「無いものねだり」のようになってしまうのはなぜなのか。そこにどのような利害が作用しているのか。
 それを理解するためにも、私たちは歴史から学ぶしかないようである。

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⇒「米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである」を更新

2012年8月20日月曜日

米国政府は「竹島」/「独島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである

米国政府は「竹島」/「独島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである


 韓国政府は、戦後における「独島」/「竹島」に関して韓国が領有権を有する国際法上の根拠として、「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「サンフランシスコ講和条約」の三つをあげている。
 戦後、日韓両政府が互いに「竹島/独島は我が国固有の領土」論を主張するときに持ち出すのが、実はこれら二つの「宣言」とサンフランシスコ「平和」条約なのだ。日韓両政府は、同じ国際条約と「宣言」を引きながら、正反対のことを主張し合ってきた/いるわけである。

だから、「竹島は日本固有の領土」論を主張する人は、以下の韓国の公式見解を国際法的に論駁できなければ、何も主張したことにならないことを、まず知るべきである。また逆に、「独島は韓国固有の領土」を主張する韓国や朝鮮の人びとは、韓国の「政府統一見解」を国際法的に論証することができなければ、同様に何も主張したことにならないことを知るべきだろう。


 しかし、最も重要なことは、一部については徐々に明らかになってきたが、私たちのようなただの市民、納税者は、まだまだ「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「サンフランシスコ講和条約」において、どのような密約と謀議が交わされたのか、知らない/知らされていないことがありすぎる、ということである。
 最初は米国、英国と旧ソ連との間において。後にフランス、中華民国(台湾)との間において。さらに米韓、日米、日韓の間において。

 だから、何度も言うように、この問題をめぐってこれ以上の不毛な日韓の民衆レベルの対立を回避するためには、「領土問題」を含む日本の「戦後処理」に関して、これらの国々の間で、また日韓基本条約において、どのような密約・謀議が交されたのか、全面的に史実を明らかにし、その下で議論を一からやり直すことが不可欠である。

 そのためには、「尖閣諸島」の「領有権」問題と同様に、日本の「戦後処理」に関する最大の責任当事国米国に、自らの見解を、一番最初に明らかにしてもらわなければならない。そしてさらに、日韓両政府が日韓基本条約締結に際し、なぜ双方が領土問題を棚上げにし、双方とも決着をはかろうとしなかったのか、この条約の背後にはどのような密約・謀議が交されたのか、これらを自国の市民に対して明白にするよう迫ること。
 日韓両市民は、「追求すべき対象」を根本的に誤ってきた/いる、と言えるだろう。
・・・
【参考資料】
「独島の領有権に関する韓国政府の統一見解

「・・・ 1943年12月に発表されたカイロ宣言には、「日本は暴力と貪欲によって略取した全ての地域から追い出されるべきだ」と明記されており、1945年7月に発表されたポツダム宣言もカイロ宣言の履行を規定しています。

 また、連合国最高司令官総司令部は、1946年1月の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第677号及び1946年6月の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第1033号を通じ、獨島を日本の統治・行政範囲から除外しました。こうした経緯から、獨島は第2次世界大戦終戦後独立した大韓民国の不可分の領土となり、これは1951年のサンフランシスコ講和条約でも再確認されました。
 大韓民国政府は、獨島に対する確固たる領土主権を行使しています。 大韓民国政府は、我が国の主権に対するいかなる挑発にも断固かつ厳重に対応していき、引き続き獨島に対する我が国の主権を守っていきます・・・。」
・・

Q11 1943年、連合国が第2次世界大戦終戦後の日本領土に関する基本方針を明らかにしたカイロ宣言はどのような内容ですか。

 1943年12月1日、連合国側が第2次世界大戦終戦後の日本の領土に関する連合国の基本方針を明らかにしたカイロ宣言は、「日本は暴力と貪欲によって奪取した全ての地域から追い出されるべきだ」と規定しています。
カイロ宣言はまた、「現在韓国国民が奴隷のような状態に置かれていることに留意し、今後、韓国を自由独立国家にすることを決議する」として、韓国の独立を保障しました。

カイロ宣言の関連部分
Japan will also be expelled from all other territories which she has taken by violence and
greed. The aforesaid Three Great Powers, mindful of the enslavement of the people of Korea, are determined that in due course Korea shall become free and independent.

 日本が降伏の条件として受け入れた1945年のポツダム宣言もカイロ宣言の履行を規定しています。

Q12 1945年、第2次世界大戦終戦後、連合国司令部は獨島をどのように扱いましたか。
 第2次世界大戦終戦後の1946年1月29日、連合国最高司令官総司令部は連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第677号をもって獨島を日本の統治・行政範囲から除外しました。
 同覚書は第3項で、日本が統治権を行使できる地域を「本州、九州、北海道、四国の4つの主要島嶼と約1000の隣接小島嶼」とし、日本
の領域から「鬱陵島、リアンクール島(獨島)、済州島は除外される」と規定しています。
 また、連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第1033号でも、日本の船舶及び国民が獨島又は獨島周辺12海里以内に近づくことを禁じています。

・SCAPIN 677 January 29, 1946
・SCAPIN 1033 June 22, 1946
・日本の漁業及び捕鯨業の許可区域(Area Authorized for Japanese Fishing and Whaling)に関する覚書
・日本からの一定の周辺地域の統治及び行政上の分離 (Governmental and Administrative Separation of Certain Outlying Areas from Japan)に関する覚書
3. (b) Japanese vessels or personnel thereof will not approached closer than twelve (12) miles to Takeshima (37°15’North Latitude, 131°53’East Longitude) nor have any contact with said island
3. For the purpose of this directive, Japan is defined to include…excluding (a) Utsuryo (Ullung) island, Liancourt Rocks and Quelpart (Saishu or Cheju) island...

Q13 1951年のサンフランシスコ講和条約では獨島をどのように規定していますか。
 1951年のサンフランシスコ講和条約は第2条(a)で、「日本は韓国の独立を認めて、済州島、巨文島及び鬱陵島を含む韓国に対する全ての権利・権原及び請求権を放棄する」と規定しています。
 同条項には、3000余りある韓国の島の中で、済州島、巨文島及び鬱陵島だけが例示的に挙げられているのであり、同条項に獨島が直接的に明記されていないからといって、獨島が日本から分離される韓国の領土に含まれないことを意味するものではありません。
 1943年のカイロ宣言や1946年の連合国最高司令官覚書(SCAPIN)第677号などに示された連合国の意思を勘案すると、同条約に基づいて日本から分離される韓国の領土には当然獨島が含まれると見るべきです。

サンフランシスコ講和条約の関連部分
Article 2(a) Japan recognizing the independence of Korea, renounces all right, title and claim to Korea, including the islands of Quelpart,Port Hamilton and Dagelet.

・・・
【補記】
 今日から、米韓合同軍事演習「乙支ウルチフリーダム・ガーディアン」が始まった。
 「朝鮮半島有事」に備えるとされるこの軍事演習・挑発に、朝鮮中央通信によると北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の4団体が、「我々の領土と領海に一つの火花、一発の砲弾でも落ちれば、全民族的な聖戦で侵略者を掃討し勝利を必ず収める」と反発・警戒を強めているという。
 そして、この北朝鮮の反発と警戒に対し、韓米両政府が反発と警戒を強め、恒例化した、大々的な軍事演習の士気を高めようとしている。報道によると、米韓連合軍司令部発表で、演習は「米韓両軍の連携と指揮命令系統の確認」を目的とし、31日までの期間中、3万人以上の米軍兵力と韓国軍からは約5万6000人が動員されるという。まったく税金の無駄、だと思う。

 米韓と北朝鮮が、相互に軍事的緊張を高め、相互に朝鮮半島の核軍事列島化を進めるような、この愚策をいったい三国はいつまで続けるのか。米国は、朝鮮半島の冷戦状態をいつまで引き延ばすつもりなのか? そして韓国は、「グローバルな韓米同盟」の名の下に、「韓国・半島防衛」から、韓国軍の「米軍後方支援軍化」が進む韓米安保をいつまで存続させるつもりなのか?

 経済・財政・通貨危機が深まる韓国においても、日本と同様、「安保を根源から問い直す」ことが問われている。

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである

Ⅰ 日本共産党はどこへゆく?


 戦後における日本政府の「尖閣諸島」をめぐる「領有権」主張の根拠は、とても単純なものだ。
1、「尖閣諸島」は、サンフランシスコ「平和」条約の第3条にいう「日本に主権が残される地域」に含まれる、
2、1972年の「沖縄返還協定」に基づき、「尖閣諸島」は米国から日本に返還された、
3、1945年以降1970年まで、中国は全く領有主張もせず、何ら有効な抗議もしてこなかった。ゆえに、中国は返還された台湾及び澎湖島に「尖閣諸島」が含まれていないことを認めていたと解釈できる。

 この日本政府・外務省の主張を追認する見解を、日本共産党が打ち出した。「尖閣問題 いま必要なことは 日本の領有は歴史的にも国際法上も正当 ――日本共産党の見解」がそれである。

 ほんのちょっとだけだが、驚いた。 他人事ながら、「日本共産党は、ここから、さらに、どこへゆこうとしているのか?」と思ってしまった。
 「マルクス主義」や「左翼」を自認する勢力や個人が、「愛国」や「民族主義」に傾斜するようになると、それでなくても矛盾に満ちた世界に、さらに「きな臭い空気」が漂うようになる。日本共産党の指導部は、そうした血塗られた歴史の教訓を忘れてしまったらしい。


 今から書くことを、日本共産党の支持者、とりわけ民主青年同盟の「会員」になっている学生や若い世代の人びと、党員や同盟員ではないが日本共産党の支持者の人びとにささげたい。

 「尖閣諸島」をめぐる日本共産党の見解は、1971年に中国(共産党)が「尖閣諸島」の「領有権」を主張し始めて以降、私の言う外務省の「外交の不在」を指摘している、という一点のみにおいては正しい。
・・
「・・・問題は、歴代の日本政府の態度に、1972年の日中国交正常化以来、本腰を入れて日本の領有の正当性を中国側に対して主張してこなかった弱点があることです。
 領土画定の好機だった1978年の日中平和友好条約締結の際には、中国の鄧小平副首相が尖閣領有問題の「一時棚上げ」を唱えたのに対し、日本側は領有権を明確な形では主張しませんでした・・・」
・・

 日韓もそうだが、日中においても「領土問題」の二国間条約における「棚上げ」と、その後の両政府による不毛な「固有の領土」論合戦がここまで問題をこじらせてしまったことは、私自身すでに書いてきた通りである。ここではくり返さない。
 問題の一つは、「棚上げ」されてきたことには、それなりの国際法上および外交上の理由があることを日本共産党が理解しようとしない/できないことにある。そして、日本の「国民政党」として日本政府・外務省の立場と同様の、「尖閣諸島は日本固有の領土」論を、また展開していることにある。

 日本共産党にも「戦後史」を総括する時間は十分にあったはずだ。
 けれども「パルタイ(党)」は、今回もまたそれを放棄してしまったのである。

8/22
Ⅱ 「サンフランシスコ-日米安保体制」を再考する視点


 日本共産党は「日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖列島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為であった」という。しかし、中国と台湾は、そうではないと言ってきたし、今後もそう主張続けるだろう。
つまり、日本がどれだけ「尖閣諸島は日本固有の領土」論を展開しようが、客観的事実としてそれと同じ主張する国家が二つ(中国の立場では一つ)存在するということだ。

 この現実を前に、共産党は日本が領有権を持つという立場から、「日中とも冷静な対応」と言う。しかし、これでは何も言っていないに等しい。なぜなら、「固有の領土論」を40年以上にわたって国際的に主張している中国が「冷静な対応」を取れるとしたら、日本が「実効支配」を進めないことにおいてでしかありえないからである。
 

 ここで重要なのは、「尖閣諸島は日本固有の領土論」を確認することではない。3国(2国)間に「領土問題」が存在することをまず認め、それをどのように解決するのか、という具体案、外交政策論の次元に議論を押し上げることにある。「建設的野党」を標榜する日本共産党に求められているのは、抽象的で、誰にでも言える「冷静な対応」ではなく、そうした具体的な政策論、「実効支配の強化」に代わる対案なのだ。共産党の党員、支持者は、党中央に対し、まさにそのような「対案を出せ」と要求すべきだと思うのだが、どうだろうか。

 好むと好まざるとに拘わらず、「尖閣諸島問題」と「竹島問題」は、ともに「冷静な対応」「対話による解決」を一般的・抽象的に語るだけでは、「紛争当事国」のどちらか一方による「実効支配」が進展し、その結果、二国間の緊張関係のみが高まる段階に移行してしまったのである。「日米動的防衛協力」の名の下にで「尖閣諸島」周辺海域のいっそうの軍事化を推し進めることは、日中間の領土問題解決の先延ばしをはかることに他ならない

 こうした認識に立った上で、余命いくばくもない野田政権と外務省による暴走を食い止めること。日本共産党にもそいう「たたかい」を展開してほしいと思うのだが、この声は党員や支持者の人たちに届くだろうか。


⇒「「竹島・尖閣・北方領土問題」における米国の〈戦後責任〉を問う」へ

・・・
「慰霊祭利用された」 遺族会、署名を拒否 尖閣上陸」(琉球新報)
「・・・尖閣列島戦時遭難者遺族会の慶田城用武会長(69)は20日、琉球新報の取材に応じ「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の山谷えり子会長(自民党参院議員)から洋上慰霊祭を目的とした上陸許可申請に署名を求められ、拒否したことを明かした。慶田城会長は「遺族会の気持ちを踏みにじり、慰霊祭を利用して上陸したとしか思えない」と話し、議連の洋上慰霊祭や地方議員らの魚釣島上陸を厳しく批判した・・・」

島嶼防衛で日米初の共同訓練、協力促進アピール(読売)
「・・・陸上自衛隊は21日、島嶼防衛能力を向上させるため、西太平洋にある米領のグアム島や北マリアナ諸島のテニアン島などの離島を使用する、初めての日米共同訓練を開始。・・・・ 訓練は、日本の南西諸島防衛を担う陸自西部方面隊の約40人が、沖縄に駐留する米海兵隊の第3海兵遠征軍(3MEF)と、9月下旬まで・・・。中国の海洋進出などを念頭に、日米間で構築を目指す「動的防衛協力」の促進をアピールし、中国をけん制する狙いもある・・・」
・・・
【参考資料】
「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」(1972年3月8日)
國場幸昌(自民党・福田派、沖縄出身)
 国連におけるところの中国代表、尖閣列島はまさしく中国のものであるというようなことで、あの国際連合の公の場においてこれを主張しておるのは御案内のとおりでございます。私は、こういうような国際連合においても、いまだに中国のほうでは領有権を主張しておるということを考えました場合に、この問題に対しては大陸だなの定義問題もありますし、日本は大陸だな国際条約には加盟してないということも承っておりますが、大陸だなの定義というのもよく存じておるわけでございます。
 あの大陸だなは、二百メートルの深度までにおいては大陸だなの属するところの権利がある。ところが二百メートルの水深以上にしましてでも、資源開発のために可能なる地域に対してはその主権を持つというようなことがあるようでございます。

 参考までに相手の国際連合の場においての主張を読み上げてみますので、御参考にしていただきたいと思います。
 「中国は三日の国連海底平和利用委員会で、日米両国は共謀して釣魚島などの島々(尖閣列島)を日本領にしようとしていると激しい語調で非難した。中国の非難は米国の「台湾占領」にも向けられ、ニクソン訪中がもたらした米中共存ムードも中国の台湾、沖繩問題への態度にはまったく影響を与えていないことを示した。

 三日の海底平和利用委員会は初参加の中国が海洋問題でどういう態度を打ち出すかが注目されていたが、一般演説に立った安致遠代表は「超大国」が領海の幅や海洋法を決める独断的な力を発揮していると攻撃し「中国は、領海二百カイリを主張して、米帝国主義の海洋支配と対決しているラテン・アメリカ諸国の闘争を力強く支持する」と公約した。

 安代表はつぎに台湾、沖繩問題にふれ、米国は今日にいたるまで中国の一省である台湾を力ずくで占領しており、最近では日本の反動派と結んで「沖繩返還」という詐欺行為を行なった。この沖繩返還の詐欺は、台湾に属する釣魚島などの島々(尖閣列島)を日本領にしようというねらいがある。米国はまたこの数年日本や蒋介石一味と協力して、中国の沿海、海底資源を略奪するための大規模な海底資源調査をしばしば行なっているが、台湾と釣魚島は中国の神聖な領土の一部である――と主張した。

 これに対し、日本の小木曽大使は答弁権を行使して反ばくに立ち、沖繩返還という日本国民永年の願望を詐欺行為だというような中国の中傷は、日本国民の怒りを招くだろう。尖閣列島に対しては、日本以外のどの国も領有権は主張できない。東シナ海の大陸ダナ、海底資源の一部には日本も専有権をもっている――と述べ、とくに沖繩返還では机をたたいて激しく反論した。
 中国のこういう出方は米国にとってはやや意外だったようで、米国のスチーブンソン代表は、中国やラテン・アメリカ諸国から向けられた対米非難を「いっさい拒否する」と答えただけで、答弁権行使は次回に持ち越した。」 こういうことが書いてあります。

 そこで、これは中国毛沢東政権のみならず、台湾においても、台湾の宜蘭県に行政区域を定め、三月にはこの尖閣列島に対するいわゆる事務所を設置する、こういうようなこともまた言われておるわけであります。いまさきの立法院議長のお話にもありましたように、固有の日本領土というようなことでございまして、琉球新報の報ずるまた何から見ますと、明治二十八年一月十四日の閣議決定、沖繩に所属するという閣議決定がされまして、明治二十九年三月五日、勅令十三号、国際法上の無主地占領、歴史的にも一貫して日本の領土だったなどの点をあげている。

 明治二十七、八年の日清戦争の時期、その後においての講和条約によってこれがなされたものであるか、あるいはまた、その以前においての尖閣列島に対しての歴史がどういうような流れを踏んできておるものであるか。記録によりますと、明治十八年に石垣登野城の古賀商店の主人公がそこへ行って伐採をしたというようなこともあるようでございますが、このたびの第二次大戦において、平和条約によっていわゆる台湾の帰属の権利を日本は放棄したわけでございますが、問題になるのは、台湾と尖閣列島が一つであって、それで明治の日本の侵略戦争によって取られたものが、第二次大戦においてこれが返還されたのであるから、それをひとつ、これは台湾が切り離されたのであれば、やはり尖閣列島もそれについて戻されるという見解があるのではないかということが考えられるわけでございます・・・。

「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」(1970年12月8日)
愛知揆一(外務大臣)
 私の尖閣列島に対する見解は、前々からいつも述べているとおりでございまして、貴重な時間をこれ以上費やす必要もないかと思いますけれども、私の申しておりますのは、どこかが日本の固有の領土に対して何か言っておりましても、一々それに対して両国間の話し合いとかなんとかに応ずるというような、そういう態度は私は日本国としてとるべきでない。これはあるいは次元が違うかもしれませんけれども、私はこの意見を変えるつもりは毛頭ございません。(中略)

 ・・・明治二十九年には古賀辰四郎という人が日本政府から四つのこの中の島を三十年間無償で供与されたという事実もございます。それから昭和七年には辰四郎の息子古賀善次がこの四つの島の払い下げを受けて今日に至っておることも事実でございます・・・。
 ・・・こういったような事実関係はきわめて明らかであり、政府がこれをあらためて確認をして、日本の国内でも申しておることでございますから、これ以上にあるいは国民政府に対してあるいは中華人民共和国政府に対してこの領有権について相談をしてもらうなどという、そういう態度を私は、日本政府は絶対にとるべきでない。これはお断わりいたしましたように、御見解が違うとすれば申しわけございませんが、政府はこの態度を変えるつもりはございません

2012年8月17日金曜日

米国は「中立」? 「当事国に自制を求める」?

米国は「中立」? 「当事国に自制を求める」?

 連合国の主導国として、戦後日本の領有権を含む「主権」の及ぶ範囲を定めたサンフランシスコ「平和」条約の草案を書いた米国が、日本の領土問題に関して「中立」の立場を取ると、また宣言した。そればかりか、日本・中国・台湾・韓国・ロシアなどの「当事国」に対し、「自制」を求めているという。
 米国は、戦後一貫してこのような傍観者的で優等生ぶった態度を取り続けている。
 こんなことが許されてよいものだろうか。

 戦後の国際秩序を決定した張本人たる米国は、国際法に照らして、「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」の領有権がいったいどの国に存在すると考えているのか。日本政府・野田政権はオバマ政権に対し、「中立宣言」に抗議した上で、米国政府としての公式見解を明らかにさせるべきではないのか。

 きっと米国は、中国・台湾・韓国・ロシアに対し、いや世界に対し、日本に有利な見解を表明してくれるに違いない。
 米国にとって日本はアジアで最も重要な「同盟国」であり、日本にとって米国は世界で最も重要な「同盟国」のはずだから。
・・
尖閣問題 米報道官「日中で解決してほしい。同意で解決すべき」
 日本政府が相次いで直面する重要課題、竹島、尖閣諸島の領土問題について、アメリカ政府は「領土問題に関しては、どの国にも味方しない」との中立の立場を守っていて、当事国に自制を求めている。
 15日、アメリカ国務省のヌランド報道官は、「(尖閣問題は)日中で解決してほしい。アメリカは、どちらの味方もしない。挑発的行為でなく、同意で解決すべきだ」と述べた。
 一方で、日本を知りつくすアーミテージ元国務副長官らの専門家グループが発表した日米同盟に関する新たな報告書の中では、日韓関係について、韓国にも自制を求めつつ、日本に対して、「歴史問題にしっかり向き合わなければいけない」と注文をつけている。
また、別の日本専門家は、竹島問題について、「日本は冷静に対応すべき。日本が過敏に反応することで日本の国益を損い、中国や北朝鮮を利するだけになる」として、日本側に自制を求めている・・・。 (FNN)
・・

 「日米同盟ムラ」の面々も、よもや異論はないと思うのだが、オスプレイやグローバルホークを配備する前に、米国にはまず日本の領土問題の決着をつけてもらってはどうだろう。
 それとも米国は、自国の「国益」と資源開発、「安全保障」のために、中国・韓国・ロシアの「実効支配」を黙認する何か「密約」でも交しているのだろうか?

 「戦後」を生きてきたはずの私たちは、「戦後」について知らない/知らされていないことが、あまりにも多すぎる。


【参考資料】
「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」(1972年3月22日)
川村清一(日本社会党)
 私、何としても納得できないのはアメリカ政府の態度なんです。この点、十二月十五日の参議院本会議において、私が社会党の代表質問で質問した際にも、外務大臣に対して質問したわけでありますが、外務大臣は、意識的にか、私の質問の本旨をはずして御答弁になっておるわけであります。
 すなわち、平和条約第二条で日本は台湾を放棄したわけです。第三条で今度は沖繩をアメリカの施政権下に入れた。そうして、その第三条に基づいてこの尖閣列島もアメリカの施政権下に入っておるわけであります。そうして、その中に、御承知のように、アメリカは軍事施設を持っておるわけです。大正島などですね。

 いわゆる今度の了解覚書A表、黄尾嶼あるいは赤尾嶼というのは、尖閣列島の島ですね、そうして基地を施設してきた。そうして今度沖繩を返還した。施政権を返還したその協定の中の返還区域の中には、はっきりと尖閣列島が入っておる。そういう事実があるにもかかわらず、尖閣列島の領有権というものが国際上の問題になってくるというと、アメリカ政府は施政権は返す、しかしながら、この尖閣列島の領有権についてはアメリカは発言の権限がないんだ、両当事国において話し合って解決してもらいたいと言って手を引いた。
 
いわゆる領土権がどちらかわからないと言うアメリカが、領土権がわからないその地域を施政権下に入れたり、そこに自分の軍事基地をつくるなんということは、はたしてこれが国際法上妥当なものかどうか

 こんなえてかってな理不尽な行為は私はないと思います。だから、かかるアメリカの行為に対して日本政府は厳重なる抗議をしなさいということを私は十二月の本会議で外務大臣に申し上げたわけであります。ところが福田外務大臣は、それだから尖閣列島はわが国固有の領土ということがはっきりしている、立証されたことになるんだと。

 私は、アメリカに抗議すべきである、こういう無責任な話があるかということで抗議すべきである、依頼するとかなんとかということじゃないんです。こんなことが一体認められますか。どこの国の領土だかわからないものを施政権の中に入れて、しかも、今度は自分の軍事基地をそこに設けて、施政権が返ってくるにもかかわらず、A表の中にきちっと黄尾嶼、赤尾嶼として、その島に基地は存在させる。こういうことは一体認められるのかどうか。政府の見解を明確にしていただきたい。

福田赳夫(外務大臣)
 尖閣列島の帰属についてのアメリカの態度、これについて意見を交えての御質問でございますが、川村さんの意見部分、これにつきましては私も全くそのとおりに思います
 私は、この問題はアメリカといたしましてはもう議論の余地はないというふうに腹の中では考えておる、こういうふうに見ておるんです。議論の余地のない問題、御指摘のように基地まで置いておる、返還協定ではA表の中にそれが人っておる、こういうことでございますから、もうアメリカがこの問題につきまして疑いは差しはさむ余地はない、私はアメリカ自身がそういうふうに思っておる、こういうふうに確信して疑いません。
 それにもかかわらず、事が公の問題になりますると、最近になりまして、どうもあいまいな態度をとる、領土の帰属につきまして何かもの言いがつくならば、それは二国間で解決さるべき問題であるというような中立的な言い回しをしておる。私はアメリカ政府のそういう態度が非常に不満です。
 これはなにか逃げ腰な態度であると、こういうふうに思いますが、またその背景があるんだろうと思います。つまり、そういう尖閣列島に対する領有権に対し何かアメリカに働きかけがあると、そういうようなことが裏にあるんじゃないかと、私はそういうふうに想像をしておるんですが、いずれにいたしましても態度をはっきりさせる。 これがアメリカといたしまして当然のことだと、こういうふうに思うのです。しかし、私はまあ川村さんとも私はこの点も意見が一致するんですが、アメリカに頼んでこれはあれを確認してもらう、そういう性質のものじゃないと思うんです。

 そこで、そういうことはいたしませんけれども、これはなおアメリカでもプレス・ガイダンスとかなんとかいろいろ検討をしておるようでありますが、そういうかたまった考え方が出ますれば、厳重にアメリカ政府に対して抗議をするという態度をとろうと思っております。そのとおりに心得ております。
 ↓
 私は佐藤内閣がこの件で米国に抗議した事実を知らない。
 「主体的外交」を標榜する野田政権が何をする/しないか、注目しよう。

「衆議院・外務委員会」(1970年9月10日)
戸叶里子(日本社会党)
 そこで、いまの大陸だなの問題でございますが、聞くところによりますと、もうすでに大陸だなにある鉱区に中国の国民政府が開発することを許して、そして[米国の]ガルフ石油会社というのがその開発に手をつけているというようなことも聞いておりますけれども、この点につきましてもはっきりと日本では交渉をされましたかどうでしょうか、この点も伺っておきたい。それができ上がってからのトラブルというものはたいへんにうるさくなると思いますので、いまのうちにはっきりさせておくべき必要があると思います・・・

・・・
オスプレイ配備:海兵隊司令官「死活的に重要」
 米海兵隊のエイモス司令官は16日、新型輸送機MV22オスプレイに関する声明を出し、安全性を強調した上で、米国にとって日米安保条約の防衛義務を果たすために普天間飛行場にオスプレイを配備することは「死活的に重要だ」と訴えた。
 司令官は「米国は同盟国日本の防衛のために最強の能力を前方展開する必要がある」と指摘。老朽化したCH46中型ヘリコプターに比べ、後継機のオスプレイは行動範囲、積載能力、スピードで上回るとした。 また、長期間の設計、開発過程、プログラムの更新、パイロット訓練強化などを踏まえ「安全性に自信を持っている」との考えを繰り返した。(ワシントン共同)
沖縄タイムス・オスプレイ特集サイト

2012年8月16日木曜日

「「戦後」の未総括」という不都合な真実

「「戦後」の未総括」という不都合な真実


 「戦後教育」の最大の誤りは、「戦後」に関する教育をしてこなかったところにある。「ゆとり教育」によって子どもの学力が低下したとかしないとか、そういう次元の問題ではない。

 私たち、「戦争を知らない子どもたち」やその子ども、またその孫が一番知らないのは、私たち自身が生きてきた「戦後」という時代なのだ。
 たとえば、サンフランシスコ「平和」条約によって日本は「主権」を回復し、占領統治からの「独立」を果たした、と私たちは学校教育で学んできた。が、実はそうではなかったことが「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」等々の「領土問題」を通じて明らかになった。
 日本の「戦後」は、植民地支配とその賠償問題の国家的/「国民」的未決着/未総括を抱え込んだまま、67年が経過し、現在に至っている。その未決着/未総括の「ツケ」を、いったいいつまで私たちは払い続けることになるのか。

 あるいは、私たちは生涯、その「ツケ」を払い続ける以外に選択肢を持たないのかもしれない。それは、認める/認めないの問題ではない。国家/「国民」的に、不都合な真実から目をそむけてきた「報い」として、集団的に私たちが払わざるをえない「ツケ」(=コスト)として。


 「歴史認識の不一致」という言葉で問題をすまそうとする誤り

 ある事柄をめぐり、AとB、二者の間に「認識の不一致がある」と言う場合には、その事柄をめぐる事実関係に関しては両者の間で確認されていることが前提になる。事柄の事実関係が両者の間でどの程度共有できているのか、互いに確認し合うことができなければ、「認識の一致」など、はかれるはずがないからだ。

 そう考えると、「尖閣諸島」「北方領土」「竹島」などの領土問題、日中・日ロ・日韓の二国間条約や、「戦後処理」の枠組み中で、実は棚上げにされてきた問題の根底にあるのは、日本とこれらの国々、それぞれの「国民」との間の「歴史認識の不一致」ではないことがわかる。 連合国による日本の「戦後処理」において、またそれぞれの国々との二国間条約の交渉・締結・批准過程において、さまざまな密約や謀議、裏取引が行われた。私たちはそれらの内容の多くを、まだ知らない。外務省が「外交機密」の名の下に隠ぺいし続けてきた/いるからである。

 つまり、「自虐史観」云々を語ってきた彼/彼女らも、その彼/彼女らを「歴史修正主義」者と批判してきた者たちのいずれの「歴史観」も、実は「史実」に基づいていないものが多々ある、ということだろう。これは「教科書検定」以前的な問題である。
 もちろん、歴史認識とはそれ自体がイデオロギーであるが、双方が史実に基づかない、それこそ不毛な「歴史イデオロギー」論争をいくら繰り返してみたところで、本当の意味での歴史認識は双方とも深まりようがない。

 私たちとこれらの国々の「国民」は、「領土問題」に関して「本当は何があったのか?」、まずその事実関係を確認し合うことから再出発せざるをえないのではないだろうか。そうでなければ、互いが互いの自己主張を相手にぶつけ、互いに相手を「不当」だとののしり合うような、これまで続けてきた不毛な論争を、これからも延々と繰り返すだけになるからである。

 「尖閣諸島」「北方領土」「竹島」問題いずれも、三年後に控えた2015年の「戦後」/「解放」70周年に向け、「領土紛争」の様相をますます深めてゆくことは必至である。
 「固有の領土」「領土問題は存在しない」「実効支配を強化せよ」を互いに叫び合っていたのでは、問題は何も解決しない。
 少なくともこのことだけは、日本、中国、ロシア、韓国、香港、台湾の市民の間で確認し合うことができるだろうか。

 ナショナリズムとショーヴィニズム(排外主義)、そしてジンゴイズム(好戦主義)は、国家にからめとられ、利用されるだけである。 
 そして、「漁夫の利」を得るのは誰か? よ~く、考えてみたいと思うのである。

・・・
「不法入国に当たらない」=尖閣上陸事件で逮捕の9人-海保(時事)
「・・・入管難民法違反(不法入国)容疑で逮捕された9人が、取り調べに対して「不法入国に当たらない」と供述し、いずれも容疑を否認していることが16日、分かった。・・・9人は全員容疑を否認し、「尖閣諸島は中国の領土であり、不法入国には当たらない」と供述・・・」
竹島をジオパークに=年内にも指定へ-韓国(時事)

谷垣総裁:野田政権の外交批判 「上陸問題」相次ぎ(毎日)
「・・・谷垣禎一総裁は16日昼、党本部であった「外交・領土に関する特命委員会合同会議」で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に香港の活動家らが上陸した問題について、「北方領土、尖閣、竹島(島根県)と相次いで問題が起きている。日本外交の立て直しを進めないといけない」と述べ、野田政権の外交を批判・・・」
 ↓
 「外交の立て直し」が自民党にできるとは、とても思えない。
 まず必要なことは、日韓基本条約と日中友好条約などの「交換公文」を含む全外交文書の速やかな開示である。

中国「反日カード」露骨に利用?過激活動の団体(読売)
 ↓
 中国側から見れば、日本が「反中カード」を「露骨に利用」しているという論理が成り立つことを忘れないようにしたい。
・・・
・「特集 二つの被曝地 --チェルノブイリと福島」(河北新報)

沖縄知事「納得いかない」 オスプレイ墜落報告書を批判
 仲井真知事。「『機体に欠陥がなく操縦士のミスだった』との原因分析で何がクリアされるのか。(米軍普天間飛行場という)人口密集地帯に配備するにあたって地域住民はおそらく納得いかないし、私もすとんと胸に落ちない」。
 「要するに落っこちたという事実がある。操作上、運転上も事故が起こりにくいとの結論にならなければおかしい」。
 山口県の二井(にい)知事。「フロリダの事故の原因究明の結果もある。国で判断して具体的な説明があると思うので、説明を聞いてどう対応するかだ」「安全性を国が確認しても、県民のみなさんの安心に結びつけるまでは時間がかかる問題だ」。(朝日)

オスプレイ:男性2人が反対訴えハンスト
【北中城】 垂直離着陸機MV22オスプレイ配備計画に抗議するため、元小学校教諭の小橋川共行さん(69)=うるま市石川=ら年配男性2人が15日午前、キャンプ瑞慶覧の石平ゲート(北中城村)前で無期限のハンガーストライキに入った。小橋川さんは、これまで県内で起きた数々の米軍機墜落に触れ、「家族の命や生活を守りたい。どこまでできるか分からないが、オスプレイは駄目だという思いを多くの人と共有したい」と訴えた。
 もう1人は那覇市出身で、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの元代表世話人、上原成信さん(85)=東京。2人は猛暑の中、「ハンガーストライキ」と書かれたプラカードを掲げ、配備反対や普天間飛行場の閉鎖・返還をアピールした。数十人の支援者も集まり、三線を演奏したり、通行する車に声を掛けたりしていた。(沖縄タイムス)

2012年8月15日水曜日

「竹島問題」と日韓基本条約の「交換公文」について

「竹島問題」と日韓基本条約の「交換公文」について

 今日は、日本の終戦/敗戦記念日であり、韓国/朝鮮の解放記念日である。
 中央日報日本語版が、昨日(8/14)、「東大出身の保坂教授、「日本のICJ提訴は理にかなっていない」なる記事を掲載した。この記事、および保坂氏の主張は、日韓両市民と在日の人びとに対しても、非常に誤解を与える内容なので、問題点を指摘しておこうと思う。


 記事によると、世宗(セジョン)大学の保坂祐二教授(独島総合研究所所長)は13日、日本の外務省から入手したとされる、日韓基本条約の締結時に取り交わした、「紛争解決のための交換公文」を公開したとのことだ。保坂氏は、その中に、
・・
 両国政府は別に規定がある場合を除き、両国間の紛争であり外交上の経路を通じて解決できない問題は、両国政府が合意する第三国による調整によりその解決を図る
・・
 という規定があることをもって、
①日本政府は「竹島」/「独島」の領有権問題を、国際司法裁判所(IJC)に提訴できないこと、なぜなら、
②「独島が紛争地域という日本の主張が交換公文から削除され、韓国は独島を紛争地域と認めなかった。したがって交換公文の紛争解決方式も独島には適用されない」からだ、と記事の中で述べている。
 さらに問題なのは、この保坂氏の主張をもって、中央日報が、
③それでも日本側が提訴することは、[日韓]「基本条約の破棄、すなわち韓日国交破棄を意味するため」と解釈していることである。


 まず、前提的に踏まえておきたいことは、保坂氏が外務省から「入手」したとされる、上の「交換公文」の内容(公文の全文ではなく、「両国政府が合意する第三国による調整によりその解決を図る」ということ)は、1965年の日韓基本条約の締結以前から明らかになっていた内容であり、殊更新しい内容ではない。
 また、1950年代の李承晩政権から、日韓基本条約を自民党佐藤政権と締結した朴軍事政権に至るまで、韓国政府が「独島」を韓国「固有の領土」と主張し、日韓間において「独島」をめぐる「領土問題は存在しない」という立場を一貫して取ってきたこともわかっている。

 問題は、「李承晩ライン」の策定以降、日韓両政府が互いに「竹島」「独島」をめぐって「我が国固有の領土」論を主張しあう中で、現実に領土問題が存在するにもかかわらず、互いが「領土問題は存在しない」の主張合戦をくり返してきたことにある。

 私が言っているのは、60年近くも日韓両市民、在日社会を巻き込みながら続けてきた、こんな不毛な「領土論争」に、もういい加減、国際(法)的に決着をつけてもよいのではないか、ということなのだ。
 どういう形で決着がつくかは誰にもわからない。決着をつけない、互いに領有権を主張しない、軍事化しない、双方の自治体・漁業組合代表が列席した漁業交渉に委ねる、という「決着」の付け方だってあるかもしれないし、どちらかが「国際法的観点」から「勝てない」と判断した場合には、領有権の放棄ということだってあるかもしれない。
 それでも、どういう形になるのであれ、もう公式に決着をつけようではないか、と。


 たしかに、「独島」の領有権を主張する韓国政府は、この問題をめぐって国際司法裁判所に強制管轄権を認めていないので、日本側の提訴を拒否することができる。しかし、受諾することもできる。それは政府の意思次第である。「理にかなっていない」とは言えないのである。まして、[日韓]「基本条約の破棄、すなわち韓日国交破棄を意味するため」などとするのは無茶苦茶な主張である。
 つまり、韓国政府がどのような日韓関係を結ぼうとするのか、その一点に尽きる。もちろん、それとまったく同じことが日本側にも言える。

 要は、「竹島」「独島」の領有権をめぐり、日韓間でいかなる合意ができるのか、そもそも二国間に「領土問題」が存在するという認識を持つのかどうか、それを解決する政府としての意思を持つのか否かであって、仲裁の主体、調停の場は、国際司法裁判所であろうがどこ/どの国々(第三国)であろうが関係ないのである。日韓両政府、日韓の主要メディアが、互いに「固有の領土」論合戦をくり返し、問題を硬直化させ、解決を60年近く先延ばししてきたことが問題なのである。(問題解決が期待された、二年前の日韓歴史共同研究(第二期)の場においても、結局打開策を見いだすことができなかったことは記憶に新しい。)

・・・・・
参考資料
「参議院・日韓条約等特別委員会公聴会」(1965年12月1日)
藤田進(日本社会党)
 今度の日韓条約ないし協定の場合は、御承知のように、非常に韓国政府並びに日本政府の間における解釈というよりも、基本的問題で、たとえば領土竹島については、韓国議事録を見ますと、丁一権総理あるいは李東元外務部長の速記を読んでみますと、あれは椎名[外相]さんも触れたんだ、佐藤[首相]さんに総理官邸で会って、佐藤さんが参議院選挙で国民に、実はまだ解決していない、あれは日本の領土だ、一括解決をするんだということをおれも言ったので、おれの顔を立ててくれと言った

 けれども、内外記者の大ぜいいるところで状況描写されて、韓国国会では詳しく答弁されて、紛争でも何でもない、これはもう解決したのだ、だから交換公文にもこれは触れていないといったような、一々申し上げなくても御研究のようでございますが、いわば本質的な問題についてかなり大きな開きがあるということを、私どもも多年条約等を審議いたしまして初めて遭遇する事態なのであります。

 それだけに、お互いに親善協力をこの条約によってスタートするという提案者側の意図から見ても、非常に遺憾な点である。したがって、これらの点は、国際的にも、あるいはわが国民の前にも明らかにしていかなければ、双方ともに、現在の政権がそう十年も三十年も続くとも考え得られません。あすにも倒れるかもしれないという両国の実態でもあります。

 したがって、相当掘り下げて韓国もやっているが、私ども日本国としてもまあやっていかなければならないと思うのであります。しかし、それは不利益だとおっしゃることは大きな意味を持つわけで、われわれの国会の審議権というか、かた苦しいことはよしましても、かなりやはり突っ込んで審議しろというのが一般の世論であるように私ども心得まして審議を重ねていこう、空白を持たないようにしていこうということですが、この点について、もっと掘り下げた御意見を承りたい。

 結局、自民党佐藤内閣は、「掘り下げた御意見」を述べなかった。
 日米安保も原発も、私たちが伺い知ることができない「闇よりも暗い世界」に支配されてきたが、「戦後」における日韓関係の歴史も同じである。日韓の官・政・財の密約・談合・汚職・腐敗にまみれた、普通の市民、「かたぎ」の人間には、身も凍るような歴史が、そこには横たわっている。
 ここで読者の注意を喚起しておきたいのは、外務省および歴代政権が、1962年の二回目の国際司法裁判所への日本側の提訴を朴政権が受けず拒否して以降、口では第三国の調停・仲裁による「竹島」問題の解決を語りながらも、実際にはその実現にに向けた「外交」を展開してこなかったことである。これが「一貫」した日本政府の姿勢なのだ。

 それにしても。この国が、「参議院選挙で国民に、実はまだ解決していない、あれは日本の領土だ、一括解決をするんだということをおれも言ったので、おれの顔を立ててくれ」と言ったノーベル平和賞を受賞した政治家を、ときの内閣総理大臣としていたことを、しっかり記憶にとどめておこう。 恥じるというより、笑うしかないではないか。

【参考サイト】
⇒「日韓市民でつくる日韓会談文書・全面公開を求める会
⇒「行政文書開示請求書

・・・
・「戦争体験史料館
沖縄戦で負傷の住民ら、国を提訴 賠償・謝罪求める(朝日)
終戦の日で各党が談話 (日経)
民主 日本国民の平和への理念と強固な意志に支えられた外交を柱に国際社会と手を携えて、恒久平和の実現に向けて全力でまい進する。
自民 過去の歴史と真摯に向き合い、先人が守り伝えてきたわが国の歴史・伝統・文化を尊重し戦没者の方々に対する畏敬の念を伝え続ける。
生活 自立と共生の理念のもと国際社会の責任を全うできる日本を目指し、諸外国と協調して世界の平和を創造する。
公明 断固たる決意で核廃絶に取り組む。世界の平和と人類の繁栄に貢献する平和国家・日本の国づくりに全力を尽くす。
みんな 来る総選挙で、戦時体制の下で完成された官僚統制・中央集権体制に風穴を開けるべく大覚悟で臨む。
 憲法の平和・民主の原則にそって、国民本位の政治、世界の平和に貢献する新しい政治を実現するために戦い抜く。
社民 過ちを二度と繰り返さないよう願う人々とともに、多くの犠牲を払い獲得した平和憲法を堅持し世界中に広げていく。
国民新 自らの伝統文化と歴史を継承し、国を守る意志を明確にすることで、国際社会からの尊敬と協調を勝ち取る。
たちあがれ日本 首相は堂々と靖国神社に参拝し、英霊に対して心からの感謝の誠をささげるべきだ。

韓国海兵隊、「仮想敵に占領」竹島に上陸訓練へ(読売)
「・・・竹島周辺で韓国軍と海洋警察庁が9月初めに実施予定の「独島防衛合同訓練」に海兵隊も参加し、竹島が「仮想敵に占領された状況」を想定して竹島に上陸する・・・」
 ↓
 韓国と「軍事同盟」条約を結び、韓国軍がこのような動きをすることを承認/黙認している「第三国」とはどの国か? よ~く、考えてみよう。

スイス人観光客13人が国後入り(北海道新聞)
「・・・日本政府は北方領土への外国人の訪問はロシアの管轄権を前提とする行為であり認められない、との立場をとっており、反発は必至だ・・・。北方領土には近年、中央アジア諸国や北朝鮮などからの労働者が多く入っているが、欧州から団体で訪れるのは異例」
スイスの企業家や官僚、国後島に上陸 投資環境を視察か(朝日)

・・・
福島第1原発4号機建屋に水たまり 配管から汚染水漏れか (日経)
・14日午前11時15分ごろ、4号機のタービン建屋1階にある電源室(広さ約350平方メートル)の床全面に、深さ約1センチの水がたまっているのを巡回中の東電社員が発見。漏洩量は約4.2トン
・3号機タービン建屋から汚染水を移送する近くの配管2系統のうち、1系統にあいた穴から水が噴出。ポンプを止めると室内への流入も止まった。東電は屋外への流出はないとしており、原因調査中。
・水は電源室のほか、配管を通している外の廊下にも約70平方メートルにわたってたまっていた。東電は、4号機タービン建屋地下の滞留水貯蔵エリアに排水する。配管は12日に使い始めたばかりだった
 ↓
 報道によれば、たまっていた水からは、1cc当たりおよそ7万7000ベクレルの放射性セシウムが検出された。このほか、14日午前8時半ごろ、汚染水の処理に使った「吸着塔」と呼ばれる機器を保管する場所で、ポンプから白い煙が上がっているのが見つかり、作業員が消火器で消し止めた(とされている)ことが明らかになっている。現場ではトラブルが相次いでいる。

大飯原発で水漏れ 排水溝の水位上がる(中日新聞)

・・・
オスプレイ:沖縄配備、賛成ゼロ…全国知事調査(毎日)

オスプレイ配備反対県民大会 常任幹事会がカンパの呼び掛け(琉球新報)
「・・・台風の影響による延期で資金が約1000万円不足している。そのため、市長会と町村会を通して広く県民にカンパを呼び掛ける。・・・24日には共同代表や常任幹事、宮古・八重山大会の実行委員を含めた大会参加促進総決起集会を開くことも予定・・・」 玉城義和事務局長。「手づくりの大会だが、県民こぞって参加できる態勢をつくっていきたい」。

2012年8月13日月曜日

サパティスタ連帯企画(おおさか社会フォーラム・ワークショップ参加企画)

サパティスタ連帯企画(おおさか社会フォーラム・ワークショップ参加企画)

メキシコ先住民運動連帯関西グループより。
 9月16日(日)、大阪にて<サパティスタ連帯企画>を行います。おおさか社会フォーラムのワークショップのひとつとして行うものです。
 内容は、3月の京都での上映会に続き「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」上映と解説etc。
サパティスタの共同組合のコーヒーも提供予定です。 みなさま、ぜひお越しください。
(以下転載歓迎)
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サパティスタ連帯企画(おおさか社会フォーラム・ワークショップ参加企画)

○「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」(65分)のDVD上映+解説
○サパティスタグッズ販売
○サパティスタコーヒー(予定)
○グアテマラ民芸品販売(RECOM)

□2012年9月16日(日)
□エルおおさか 本館6F 604会議室
  京阪「天満橋」・地下鉄谷町線「天満橋」徒歩5分
  http://www.l-osaka.or.jp/
□開場13:30 開始14:00 終了予定16:00
□共通協力券1000円(フォーラム全企画に参加できます)
□企画・主催 メキシコ先住民運動連帯関西グループ
□問合せ DQM06014@nifty.com

 「別の世界は可能だ」、今日それは願望やスローガンであるだけではなく、人々が模索のうちに多様に作りだしている<現実>でもある。メキシコ・チアパス、先住民族を主体とするサパティスタ運動もその一つである。
 今回私たちは「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」(65分)の上映を軸に連帯企画を開催します。このDVDはドイツの連帯グループが作成したもので、サパティスタ運動の紹介、自治体制(保健衛生、教育、農業、集団作業)の考察、運動の内外における障壁の考察、という3部で構成されており、サパティスタが日々作り出そうとしている自治の一端を垣間見ることのできる内容かと思います。
 スペイン語。英語字幕。日本語での簡略な説明を適時加える予定です。ぜひご参加を。
(注)上映作品は3月に京都で上映したものと同じです。

 この企画はおおさか社会フォーラムのワークショップのひとつです。おおさか社会フォーラムについてはHPを参照してください
チラシ(活用歓迎) PDF B5サイズ

市民科学研究室からのいくつかの情報

市民科学研究室からのいくつかの情報

①6月16日に開催した「今中哲二さんを囲んで共に考える」勉強会の講演内容を掲載中
大変ボリュームの大きい報告ですが、ご一読いただければと思います。
http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2012/08/3-2.html

②9月12日(水)19:00~21:00 低線量被曝研究会・公開学習会「ウクライナ・ナショナルレポート第4章
すでに一部を翻訳して公開している『ウクライナ・ナショナル・レポート』の第4章「チェルノブイリ大災害の経済的・社会心理的影響:被災地域開発の主
要問題と現状評価」を福島第一原発事故の被災地の現状を念頭におきおながら、読み解きます。
 経済学、災害に関する社会学や心理学にお詳しい方あるいは深い関心をお持ちの方に、ぜひご参加いただければと思っております。

③[予定] 9月17日(祝)14:00~17:00 プレセミナー「薬学部6年化問題を考える」(仮題)
●11月10日+11日 サイエンスアゴラ2012にて
本音で語る"専門職学位"~薬学6年化は成功するか~
「薬学6年化」問題については、
http://archives.shiminkagaku.org/archives/2012/06/post-288.html
現在、日本薬学生連盟 http://apsjapan.org/ に市民科学研究室が協力する形で、薬学生対象のアンケートを実施しようとしています。

④9月22日(土)13:00~16:00 シリーズ「語る+聞く リプロダクションのいま
第2回 「AIDで生まれるということ~加藤英明さんに聞く~」
 先の7月に実施して昼の部、夜の部とも非常に好評であったシリーズの第2回目です。ふるってご参加ください。定員は40名で、現在すでに10名ほどのお申し込みがあります

⑤[予定] 11月17(土)14:00~17:00 市民科学講座「放射線教育の代案を作る!」(仮題)
文科省の放射線教育の副読本問題点を指摘するだけでは、実際にはことはすすみません。そこで、すでに様々な場での実践や研究を重ねて、原子力や放射線の学びに取り組んできた方々を招いて、「代案」の作成を目指した議論を、します。市民研の上田が各地で行ってきた「親子放射能ワークショプ」の総括報告も行います。
●食品放射能汚染に関する市民研・上田の講演の動画が2つ公開されています
6月2日に開催された「大地を守る会」の放射能連続講座の第1回目
6月30日に開催された「世田谷こども守る会・1周年記念イベント

⑥文科省「原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ」の採択課題での共同研究が予定されています
 文科省「原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ」に応募して採択された課題の一つ「原子力施設の地震・津波リスクおよび放射能の健康リスクに関する専門家と市民のための熟議の社会実験的研究」(研究代表者・土屋智子:東京大学政策ビジョン研究センター)での共同研究が予定されています(10月開始)。
http://www.jst.go.jp/nrd2/index.html
 市民科学研究室は放射線健康リスクに関する部門を受け持っています。この問題に関する多くの専門家への詳細なインタビューとその分析などからはじめて、市民科学研究室のこれまでの経験や蓄積を生かして、現状の改善に向けて実効力のある研究を目指します。この問題に関心・造詣が深く、研究員として働いてみたい方は、8月15日くらいまでにこちらにご連絡いただければと思います。
 ↓
 この辺から私の問題意識やスタンスと微妙にズレてゆくが、「現状の改善に向けて実効力のある研究」をめざそうとする、関心のある人はどうぞ。

「百年河清を俟つ」--「戦後」における「竹島問題」をめぐる〈外交の不在〉について

「百年河清を俟つ」--「戦後」における「竹島問題」をめぐる〈外交の不在〉について


 「百年河清を俟(ま)つ」という、三国志の中に出てくる中国のことわざがある。
 黄河のような黄色く濁った河が清くなるのを100年待ち望んでも、虚しい。どれだけ時間をかけても実現しそうももないことを期待するより、今、実行可能な最善の策を尽くし、最悪の事態を回避する努力を重ねる方が賢明という、そういう意味が込められた箴言として使われる中国詩の一節である。

 しかし、戦後官僚政治は、「竹島問題」をめぐっても、「今、実行可能な最善の策を尽くし、最悪の事態を回避する努力を重ね」ようとはしなかった。そして今回もまたそれを繰り返そうとしている。

 今から60年近く前、「竹島問題」に対する外務省の姿勢を、「百年河清を俟つ」のと同じだと言い、痛烈に批判した政治家がいた。自民党の中山福藏(民政党→自民党)である。
 サンフランシスコ「平和」条約と旧安保条約が発効した翌年の1953年3月5日、「国際情勢等に関する調査の件(竹島の領土権に関する件)」を議案とする参議院・外務・法務連合委員会が開かれた。
 当時の外務大臣は岡崎勝男、外務政務次官は中村幸八、外務省条約局長は下田武三。
 委員会における中山(法務委員長)の発言である。 

 「竹島問題は解決すべき問題であると思つておるから私はこう言うのですが、紛糾した場合に適当な措置をとるなどということは、これは私どもはあなたがいつおやりになるか知りませんが、百年河清を待つような政府の答弁を頂きたくない。だからこれは特に私は念を押して政府の覚悟を促さなければならんと思うのです。
 今まで日本の外務省というものはいつもこの手で国民をだまして来た。私どもはもうだまされたくない。だからできるだけ速かに私は何らかの措置を講ぜられんことを切にお願いして私の質問を終つておきます」(「国会議事録検索システム」より)


 この連合委員会が開かれた理由は、委員会直前の同年2月27日、韓国の「国防部」が竹島の韓国領有につき、「米国の確認を得た」旨の声明を発表したからである。前年の1957年1月18日、韓国の李承晩大統領が「海洋主権宣言」を発し、いわゆる韓国の「魚族保護水域」を確定するにあたり、竹島をもその範囲に取りこんだ「李承晩ライン」を打ちだし、「竹島問題」が外交問題として急浮上していた矢先のことだった。

 以下、この連合委員会における主だったやりとりを引用しておこう。
 「歴史に対する無知」を排して「竹島問題」を議論する出発点は、戦後外務官僚の連綿とした過失・失態・不作為、要するに問題解決に向けた「外交の不在」と、それに乗っかってきた歴代自民党→民主党政権の〈失政〉の実態を理解することにある。とりわけても、吉田内閣の岡崎外相と外務官僚の能天気さ加減に注目したい。

 発言の中で特に注目したいのは、「根本はもともとこれは日韓の条約ができておらないことから起つている」「日韓条約の締結に対して政府の施策が今まで遅れておる」という、この問題の核心をついた曾祢益(戦前の外務官僚→旧社会党→民社党)の発言である。

 学習すべきポイントは主に三点ある。
①サンフランシスコ「平和」条約は、「竹島」の日本「領有」を国際法的に保証してはいないこと(⇒米国は日本に対しても韓国に対してもいい加減な態度を取っていたことを知ること⇒日韓両外務省は日韓両市民に対して、「竹島の領有問題」に関する米国政府の文書に基づく公的な見解を引きだす責任を負っていること)、

②「竹島」が歴史的に島根県に登記されていた「岩」であったことをもって韓国市民を納得させることはできないこと、
⇒「国際法から見た竹島問題」(平成20年度「竹島問題を学ぶ」講座第5回 講義録 2008年10月26日 島根県立図書館集会室 (塚本孝))

③日韓両国間の国際条約である「日韓基本条約」において、「竹島問題」が棚上げにされたことが、今日に至る「竹島問題」の根本要因であること、ゆえに日韓両政府は「「竹島」/「独島」問題を日韓の紛争案件にしない覚書」を新たに交す外交交渉を開始する必要があること。
 つまり、日韓両外務省は、両国市民に対し、「竹島」/「独島」問題において、何がどこまで一致し、何がどこから一致しないか、について明確にする責務を負っている、ということである。

・・・・・・・・・
国際情勢等に関する調査の件(竹島の領土権に関する件)」(参議院・外務・法務連合委員会、1953年3月5日)
中山福藏
 そこで一つお伺いしておきたいと思うのですが、これは韓国側の言うことも日本側の言うことも一通り筋を立てて手がけて来ておるものと思う。私どもは日本人として日本の領有であるということを固く信じておるのですが、併し結局両方から水をかけ合つておるというのが実情であります。然らばこの水をかけ合つておることを一つの解決するという姿に持つて行くにはどういう手段方法を講ぜられるつもりか、それを一つ承わりたい。

岡崎勝男
 今政務次官から御説明のように、竹島の帰属というものは、我々は明白なことであつて、疑いを挾む余地は殆んどないと思つております。従つていろいろ声明をしても、これは結局雲散霧消するものであろうと思いますので、徒らに言葉尻を掴えて議論をすることは、半分ぐらい向うに権利があるような印象を与えても却つていかんとも思うので、何もする必要はないという考えでおります。

中村幸八
 その点は先ほども外務大臣が申されましたごとく、別段今ここに取立ててこの問題を協議すべき性質のものではない、明々白々、我が日本の領土である、こういう観点に立つておるのでございます。

 今後なおこの問題が一層紛糾するような虞れがありますれば、何らか適当の方法によりましてはつきりと我が方の主張を声明するなり、或いはアメリカ大使館を通じて、或いは又直接に韓国政府に対して抗議を申込み、適宜そのときに応じた方法をとりたいと思います。

曾祢益 
 最近の日本の領土の変更に関する一番大きな国際条約は、言うまでもなく平和条約です。この平和条約には、日本から主権を放棄する地域には入つておらない、だから日本の領土だという主張が一つある。いま一つは、行政協定です。これに関連する合同委員会の作りましたアメリカ軍の演習区域の中に入つておる。

 従つて、これ又積極的に日本の領土であることが証明される。この二点が積極的な法律的な論拠になつておるのではないかと思うのでありますが、この点については、これはあらかじめお断りしておくべきことだと思うけれども、この島が日本の主権の下にあることについては一点の疑いも持つていないのですが、ただ、今の説明ぶりでいいのかどうかという法律論があるのじやないかと思う。殊に第二に挙げられたいわゆるアメリカの演習地として使用されておる、こういうような理由を挙げることは却つて論拠を弱めるのじやないか。
 例えば何らかの都合で演習地から落してしまうと、逆に韓国側の主張に応援するような論拠をこちらから与えたことになる危険がある。そういう論拠をお使いになることは不適当ではないか、これが第一点として伺いたい点です。

 第二点としては平和条約の解釈として成るほど竹島については、日本の主権から離れる地域、或いは沖縄、小笠原等の特殊な主権、眠つている主権があると言われておる地域とは別でありましようが、併し一方から見るならば、独立する朝鮮という版図にこれが必らず入つていないということが今挙げられた論拠からは積極的な証明はない。

 それから第二には日本と韓国との間の条約ができない間は、平和条約の条項が少くとも韓国側を積極的に拘束するという理由は、韓国側はそういうものを認めないという主張は一応言えるかも知れない。
 そうなつて来ると、今までの御説明、それだけだつたと仮定するならば、それだけでは足りない。もつといわゆる独立する朝鮮側にないのだということと、日本の平和条約から見て日本の領土主権を放棄していない、この両方から証明して行くほうが更に論拠は強いのではないか、かように考えるのですが、根本はもともとこれは日韓の条約ができておらないことから起つていることなんですが、その速かなる日韓条約の締結に対して政府の施策が今まで遅れておる
 いろいろな関係があるにしても、そこが結局根本的な欠陥だと思います。まあその政治論は別としても、今の平和条約の解釈、朝鮮独立問題との関連において、政府のもう少しはつきりした見解をお聞きしたい・・・。 

・・・済州島とか、鬱陵島とか、巨文島、これを含むという規定の仕方だけでは、余り明確じやないように思うのですが、その点は大丈夫なのですか。つまりほかにもいろいろな小島があると思うのですね、実際問題として。これを地図か何かではつきり海域の地図でも作つて緯度や経度から計つて、島の帰属をきめるような取扱をしていない場合には・・・

 私は重ねて申上げますが、竹島の領有に関する何らの疑を持つているわけじやない。だが法律的な説明ぶりがそれで完備しているのかどうか。この問題について伺つているわけなんです。今の程度だけでは必らずしも論議の余地のないほど明確だというふうには、この平和条約に論拠を置いた議論だけでは、私はいけないのではないかという危惧の念を持つたから重ねて伺つているわけなんです。殊に、再びあの行政協定のほうに関連しますが、これは何ら韓国に対する主張すべき積極的な根拠になりません・・・。その点を伺つている。

下田武三
 平和条約の第二条の「含む」というところでありますが、これはそう言いませんと、朝鮮プロパーだけになるといけませんから、それで朝鮮プロパーだけではないのだと言つて、念のためにこの三つの、念のためと申しますか、はつきりこの三つの島をこれは公海の真中に点在しておる島でございますから、諸島とか群島とかいう概念にも含まれないぽつんとある島を三つ拾つて、そうして朝鮮に含めた、そういうように解釈されるのであります。

 併しおおせのように幾多の条約の先例のように条約の附則に地図を付けてちやんと明確にするというやり方は、確に最も明確な規定の仕方だと思います。けれども、これは将来韓国との間に基本条約でもできましたときに、一つの非常に有効な方法だろうと存じます。併しながら平和条約では、ほかの領域の規定の仕方と不均衡に韓国の関係だけを詳細に規定する或いは地図を付けるというわけにはいかないので、全体との調和の見地から簡単ではございますが、私どもの見解によりますと、極めて明確な規定の仕方、韓国との領土の関係についていたしておるように存じます。

 行政協定との関係につきましては、曾祢さんは、それは根拠に援用し得ないとおつしやるのでございますが、アメリカが若し竹島を韓国領土だと見れば、韓国との間の取きめによつて、韓国政府の同意を得て、施設を使用さしてもらうという立場をとるのでありますが、それをしないで日米行政協定の規定に従つて日米合同委員会にかけて貸してもらうという措置をとつたことは、日米間の問題ではありまするが、これ又極めて明白な事実だろうと思います。

平林太一
 只今外務次官から昨日そういうことを米大使館に交渉いたしたいということでありますが、甚だ行動が怠慢であるということをこの際強く述べたいと思います。すでに昨日大使館に行かれて交渉したというようなことは、我が方に対して何か弱味があり、或いは何かそういう韓国側の強い態度に対しまして非常に退嬰的であるということが、こういう問題は更に更に問題を複雑化するということになるのでありまして、今後これは過ぎたことはいたしかたがないのでありますが、外交の機微というものは間髪を入れずして処理しなければ、非常な迷惑をこうむり主客顛倒することが考えられるのでありますから、この点十分今後の問題に対して厳重に外務省に対しまして私はこの際戒告をいたしておきたいと思います。

 非常にこれは怠慢であり失態であるということを申述べたいと思います。それに対しまして何か御答弁ありますか。

中村幸八
 ・・・只今のお話の外交は間髪を入れず機敏に折衝すべきであるということは至極御尤もなお説でありまして、そういう方針で我々はやつておりまするが、ただこの問題につきましては、先ほど大臣が申されましたごとく、余りに明瞭過ぎる問題であつてこれを格別に取立てて論議するということは却つてこちらに弱味があるのじやないかというようにもとられる虞れがありましたので、わざと今日まで黙認し知らん顔をしておつたようなわけでありまして、決して怠慢でもなく、我々は考えるところがあつて別段抗議もせず声明もせず今日に至つたような次第でございます。

・・・
【読んでおきたい一冊】
サンフランシスコ平和条約の盲点―アジア太平洋地域の冷戦と「戦後未解決の諸問題」
(原貴美恵著、渓水社、2005)

2012年8月11日土曜日

「議論が深まらない社会」(3)--「竹島問題」をめぐって

「議論が深まらない社会」(3)--「竹島問題」をめぐって


 日本政府は今日、李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸に対する対抗措置として、国際司法裁判所に提訴する検討を始めた。
 玄葉外相は、「まずは国際司法裁判所への提訴を含む国際法に基づく紛争の平和的解決のための措置を検討したい」「国際司法裁判所で日本側の主張をより明確に行うことで、国際社会に日本側の主張を理解してもらう必要がある」と強調したという。

 しかし、「そんなに遠くない時期」と外務省が言う国際司法裁判所への提訴が、過去二回にわたる失敗を引き継ぐ「三度目の茶番」に終わることは、ほぼ間違いない。領土問題を抱える当事国のいずれか一方が、国際司法裁判所による裁定を拒否した場合に、裁判所は強制管轄権を持たない/与えられていないからである。

 だから、このブログを注意深く読んでいる人はすでに気づいていると思うのだが、私はこれまで国際司法裁判所の名前を出さなかった。野田政権、というより外務省には、国際司法裁判所への提訴だけでは「竹島問題」の解決にはならない、ということを大前提にした「その先の一手」、しかも「外交交渉を駆使した政策」を打ち出すことが問われているのである。
 この間、「竹島問題」に関しても、「歴史に対する無知」を丸出しにした「論説」や「言論」が横行している。ごく率直に言って、読んでいる方が恥ずかしくなってくるような「議論」があふれているので、少しこの問題に触れておこうと思う。

2 
 日韓双方が互いに「我が国固有の領土」を主張し合う「竹島」問題が、ここまでこじれてしまったのにはそれなりの理由がある。
 結論を先に言えば、1965年の日韓基本条約において日韓双方が「竹島の帰属」問題を棚上げにし、以降、二国間交渉・対話によってこの問題の解決をはかる姿勢を、双方が示してこなかったところに根本原因がある。

 その間、韓国側は「実効支配」を進め、一方、日本側は「竹島は我が国固有の領土」「領土問題は存在しない」をただ念仏のように繰り返し、それ以上何もしてこなかったという意味において、韓国による「実効支配」を事実上、黙認してきたわけである。「黙認」を外務省用語に翻訳すると「配慮」になるのだが、「配慮」をさらに私たちの常識用語に翻訳すると「無策」になる。

 日本国籍を持つ私たちが「竹島問題」を論じるときには、まず1960年代後半の自民党佐藤政権期から野田政権に至る日本政府・外務省の「竹島問題」の「棚上げ」「先送り」「無策」振りを、歴史的・批判的にとらえ返すという視点が重要である。私は、これと同じ政府に対する批判的視点を持つことを、韓国国籍を持つ韓国の一般市民に対して提起したい。
 いずれにせよ、私たち「日本人」がこの視点を持たず、韓国政府を「民族主義」と差別意識丸出しでいくら批判したところで、日本政府・外務省の無策が変わるわけではないので、結局、韓国による「実効支配」は続き、「竹島問題」の解決には何もつながらないことになる。

 江戸時代から1905年に至る過程で「竹島」がどちらに「帰属」していたのか、また第二次大戦の終結直前・直後にどうだったのか、さらには「サンフランシスコ平和条約」の中での「竹島」の扱いはどうだったのか、をいくら争っても、この問題は双方の見解のぶつかり合いに終始し、決着を見ることはありえない。
 まずこのことを客観的事実として認めること。そして、日韓基本条約とはどういう条約だったのか、歴史を遡行し、学習し直すこと。
 日本国籍を持つ「日本人」にとって、「竹島問題」の解決に向けた道は、そこから始まるのである。

【速報】
韓国「司法裁審理受け入れず」
 玄葉光一郎外相が李明博大統領の竹島(韓国名・独島)上陸への対抗措置として国際司法裁判所への提訴を検討していると表明したことについて、韓国政府当局者は11日、「独島は韓国領土であり、国際司法裁での審理は受け入れられない」と述べた。
 当局者は、10日に金星煥外交通商相と玄葉外相が電話でやりとりした際もこうした韓国政府の立場は伝えていると強調した。
 同裁判所は紛争の各当事国の合意がなければ審理が始まらない仕組みになっている。日本政府は竹島領有権に絡み、1954年と62年に韓国政府に提訴を提案したが韓国側は拒否している。(共同)
 ↓
 上に述べた通り、こうなることは目に見えていた。韓国側の拒否を前提に、いかに「平和的」に「竹島問題」を解決するのか。それを市民に提起するのが外務省の使命であり責務である。日韓両外務省の「外交の不在」。それこそが〈問題〉なのだ。

【参考資料】
外務省の「竹島問題」のページ
「竹島の領有権に関する我が国の一貫した立場」
1.竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土です。
2.韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であり、韓国がこのような不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではありません。
※韓国側からは、我が国が竹島を実効的に支配し、領有権を確立した以前に、韓国が同島を実効的に支配していたことを示す明確な根拠は提示されていません。
 ↓
 日韓基本条約における「竹島問題の棚上げ」=外務省の失策が、見事に隠ぺいされている事実に注意したい。
 自分に都合の悪いことは、自分に都合の良いように隠ぺいする。日本だけに限らないが、しかし日本に著しい官僚機構の特質である。

国際司法裁判所への提訴の提案
1.我が国は、韓国による「李承晩ライン」の設定以降、韓国側が行う竹島の領有権の主張、漁業従事、巡視船に対する射撃、構築物の設置等につき、累次にわたり抗議を積み重ねました。そして、この問題の平和的手段による解決を図るべく、1954(昭和29)年9月、口上書をもって竹島の領有権問題を国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案しましたが、同年10月、韓国はこの提案を拒否しました。
 また、1962(昭和37)年3月の日韓外相会談の際にも、小坂善太郎外務大臣より崔徳新韓国外務部長官に対し、本件問題を国際司法裁判所に付託することを提案しましたが、韓国はこれを受け入れず、現在に至っています。

2.国際司法裁判所は、紛争の両当事者が同裁判所において解決を求めるという合意があって初めて動き出すという仕組みになっています。したがって、仮に我が国が一方的に提訴を行ったとしても、韓国側がこれに応ずる義務はなく、韓国が自主的に応じない限り国際司法裁判所の管轄権は設定されないこととなります。

3.1954年に韓国を訪問したヴァン・フリート大使の帰国報告(1986年公開)には、米国は、竹島は日本領であると考えているが、本件を国際司法裁判所に付託するのが適当であるとの立場であり、この提案を韓国に非公式に行ったが、韓国は、「独島」は鬱陵島の一部であると反論したとの趣旨が記されています。

サンフランシスコ平和条約における竹島の扱い
1.1951(昭和26)年9月に署名されたサンフランシスコ平和条約は、日本による朝鮮の独立承認を規定するとともに、日本が放棄すべき地域として「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮」と規定しました。

2.この部分に関する米英両国による草案内容を承知した韓国は、同年7月、梁(ヤン)駐米韓国大使からアチソン米国務長官宛の書簡を提出しました。その内容は、「我が政府は、第2条a項の『放棄する』という語を『(日本国が)朝鮮並びに済州島、巨文島、鬱陵島、独島及びパラン島を含む日本による朝鮮の併合前に朝鮮の一部であった島々に対するすべての権利、権原及び請求権を1945年8月9日に放棄したことを確認する。』に置き換えることを要望する。」というものでした。

3.この韓国側の意見書に対し、米国は、同年8月、ラスク極東担当国務次官補から梁大使への書簡をもって以下のとおり回答し、韓国側の主張を明確に否定しました。
 「・・・合衆国政府は、1945年8月9日の日本によるポツダム宣言受諾が同宣言で取り扱われた地域に対する日本の正式ないし最終的な主権放棄を構成するという理論を(サンフランシスコ平和)条約がとるべきだとは思わない。ドク島、または竹島ないしリアンクール岩として知られる島に関しては、この通常無人である岩島は、我々の情報によれば朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく、1905年頃から日本の島根県隠岐島支庁の管轄下にある。この島は、かつて朝鮮によって領有権の主張がなされたとは見られない。・・・・」
 これらのやり取りを踏まえれば、竹島は我が国の領土であるということが肯定されていることは明らかです。

4.また、ヴァン・フリート大使の帰国報告にも、竹島は日本の領土であり、サンフランシスコ平和条約で放棄した島々には含まれていないというのが米国の結論であると記されています。

原発立地自治体にふるさと寄付をしよう(川口洋一)

原発立地自治体にふるさと寄付をしよう(川口洋一)

OCHLOS(オクロス)通信より
 電力会社の原発再稼働計画を阻止するために、地元の人たちと連帯するために、何か自分たちでやれることをしようという川口さんの「ふるさとに寄付をしよう」という提案をご紹介します。 「原発立地自治体にふるさと寄付をしよう(川口洋一)

 中央(都会)中心の政策によって、地方は疲弊し、高齢化し、地場産業は発達せず、政府と地方政府、電力会社が一体となって、結局、「原発体制」 を担うようになったという現実を前にして、都会に住む私たちが実際に何ができるのか、そのような思いから川口さんは「ふるさと寄付」を提案されました。皆さんのご意見、ご協力をお願いします。
12/08/10

崔 勝久 SK Choi
skchoi777@gmail.com
携帯:090-4067-9352
ブログ:http://anti-kyosei.blogspot.com http://www.oklos-che.com


「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を」(2011, 4/28)
⇒「脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を(2)」(2011, 6/19)

やっかいな放射線と向き合う(茨城大学有志の会)

やっかいな放射線と向き合う(茨城大学有志の会)

東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染を皆様に考えていただくため、茨城大学の教員が結成した「茨城大学有志の会」が茨城県水戸市を中心に行なっている「やっかいな放射線と向き合う」講習会のホームページです。
 講習会で使用した資料なども公開しています。
 講習会の開催についての相談は、以下までお願いします。
 Email: yakkai.housyasen〈あっと〉gmail.com  (〈あっと〉を@に変更して下さい)

<主な更新履歴>
2012/2/28 資料編に「米・小麦の放射能汚染と学校給食での使用について」をアップロードしました。
2012/5/17 資料編に「尿中セシウム検査結果の活用法」をアップロードしました。

2012年8月8日水曜日

オスプレイ配備擁護論の耐えられない軽さ

オスプレイ配備擁護論の耐えられない軽さ


 先月来、オスプレイの配備を擁護する「専門家」や研究者の論考のいくつかに目を通してきたが、その議論の耐えられない軽さ、浅はかさに、いささか閉口し、「食傷気味」になっている。後世の世代のために、もう少しマシな議論はできないものか。

 オスプレイ配備擁護論の論点は、おおむね次の3点に集約できる。
①「100%の安全」を求めることは間違っている。→「原発に100%の安全はありえない→原発容認・推進」と同じ論理構造。
②「尖閣諸島」を含む南西諸島の対中防衛のために海兵隊とオスプレイは「不可欠」の存在。
③「日米同盟」(という欺瞞)の「深化」のために、オスプレイ(やグローバルホーク)の配備は「死活的」に重要。

 たとえば、ここに「強まるオスプレイ配備への反発 現実離れした日本の要求」と題された、「スティムソン・センター主任研究員」の肩書を持つ女性の文章がある。まさに、この人は上の①から③を立論の前提にすると同時に結論にもしている人なのだが、私が閉口してしまうのは、次のような浅はかな主張に出くわしてしまったからである。

・・ 
 日本政府は米側の措置を受け入れ、オスプレイの搬入自体には異論を唱えていないが、国政を担う人たちの間で「オスプレイ配備延期・反対」を唱える声が散見される。その声に対してはこう聞きたい。「オスプレイ配備の延期や中止を米国に認めさせるためには、日本政府はそれなりの覚悟を示す必要がある(??)が、あなたたちはそれを認める用意はあるのですか」と。

 日本防衛や日本の周辺で起こる可能性がある有事も念頭においた上で米国が配備を計画したオスプレイを、日本の現実離れした(?)安全感覚を理由に使えないようにするのであれば、日本はその責任を負わなければならない
 すなわち、オスプレイ配備を認めないのであれば、オスプレイが飛行できないことで影響が出る海兵隊の展開能力を日本の自衛隊に肩代わりさせる用意があることを日本政府が示す必要が出てくる(??)が、日本の政治はこれを認めるのか、ということだ。

 もし本当にそこまで覚悟ができているのであれば、米国と「配備延期」「中止」をめぐって交渉するように、政府に堂々と要求すればよいだろう。それをせずにただやみくもに配備延期や反対を求めるのは、「国を守る」意識の欠如を露呈し、米国の日本に対する失望を深めるだけだということを理解するべきだろう
・・

 いったい、この人は何者で、何を書いているのだろう。
 こういう新世代の、米国やイギリスの「有名大学」の大学院でマスターやドクターを取り、「日米同盟ムラ」の住人となった「安全保障」「国際政治」の「専門家」「研究者」が日本の大学、民間シンクタンク、独法系「研究機関」にはたくさんいるようなのだ。目が点になる。

 なぜ、「オスプレイ配備の延期や中止を米国にみとめさせる」ために、日本側が「それなりの覚悟」を示す必要があるのか?
 この人や、日本側の「日米同盟ムラ」の住民、とりわけ民間セクターの連中は、ときどき米国や米軍になり代わって、日本政府や一般市民を恫喝したり、脅したりすることがあるが、このくだりはそういう論調の典型である。Who are you anyway?、と思わず尋ねたくなってくる。

 彼女が言う「覚悟」とは、「オスプレイが飛行できないことで影響が出る海兵隊の展開能力を日本の自衛隊に肩代わりさせる用意があることを日本政府が示す」ことらしい。誰に、また何に洗脳されたのかは知らないが、まったく理解に苦しむ思考回路から飛び出してくる、支離滅裂な主張である。

 まず、日米安保論の基礎知識として確認しておきたいのは、
①沖縄に配備されている海兵隊は、「尖閣諸島」や「南西諸島」の「防衛」のために存在するのではないということ、次に、
②海兵隊は、アフガニスタン、パキスタン、フィリピン、タイ南部、インドネシア・・・等々における、いまも続く「終わりなきグロ-バル対テロゲリラ戦」の「特殊部隊」として沖縄を拠点に、日本を訓練・保養地としているのであって、一部論者が言うように、半永久的にありえない「朝鮮有事」「台湾有事」のために駐兵しているのでさえない、ということだ。

 「朝鮮有事」「台湾有事」⇒「北朝鮮暴発」「中国暴発」の「シナリオ」や実戦訓練は、海兵隊を沖縄に駐兵させんがための、言わば「方便」にすぎない。それを理解するには、沖縄から出撃した海兵隊が、この10年、どこに向かって飛んで行ったかを調べれるだけで十分である。「北朝鮮」は、韓国軍と在韓米軍が「暴発」しない限り、「暴発」しないし、同じように「台湾」が「有事」になることもない。


 安保は日本を守らない。米国本土の「安全」を、日本列島・周辺海域を「楯」にしながら、われわれの血税を使って守る、米国が「安心」を得るための条約であり体制である。日本にとっては--一言で言えば--、米軍基地・施設・便宜を「供与」し、米軍を駐兵させる条約であり体制である。安保のこの基本性格は、1960年の「安保改定」を経ても、実は60年前に発効した旧安保条約から何も変わらない。そして日本政府は、この60年間、米軍基地・施設・便宜を「供与」し、米軍を駐兵させ、米国から兵器を買い続けることそれ自体が日本の「安全保障」になる、と置き換え/言い換えてきただけの話なのである。

 「スティムソン・センター主任研究員」や「日米同盟ムラ」の「専門家」・研究者たちは、毎日新聞の論説委員とともに、安保条約・地位協定の全文をきちんと読み、世界の他の「軍事同盟」条約と安保条約のどこが、どのように違うのか、きちんと学習すべきだろう。

 詳しくは、『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』を読んでいただくしかないが、そうすれば、死文化した憲法九条を持つ出すまでもなく、①安保条約から集団的自衛権の行使は出てきようがなく、よって②安保条約は軍事同盟条約になりえず、③日米関係は「同盟」関係などと定義できないことが明らかになるはずだ。

 たとえば、先月の「外交文書」の公開によって明らかになった、下の歴史的事実は上に述べたことを裏付ける根拠の一つと言うことができる。「日米同盟ムラ」の「専門家」「研究者」は、もっとしっかり研究してもらいたい。
・・
日本防衛に在沖米軍不要 67年米高官が明言 外交文書で判明
【東京】沖縄統治下の最高責任者である高等弁務官の政治顧問、ジェームズ・マーティン米公使が1967年1月に会談した東郷文彦外務省北米局長に対し、在沖米軍基地の在り方をめぐり、「日本の防衛ということなら沖縄は要らない。沖縄の基地を必要とするいわれは極東の安全のためである」と述べていたことが、31日公開された外交文書で明らかになった。

 日本政府は在沖米軍を「日本防衛に必要な抑止力」と説明してきたが、米側は日本防衛より極東戦略の拠点に位置付ける姿勢を明確にしていた。 沖縄返還をめぐる日米交渉で、日本政府が負担した米資産買い取り費用(1億7500億ドル)を秘密合意した覚書の存在を示す文書も見つかった。(琉球新報、7/31)
・・


 2011年以降の「防衛計画の大綱」に、次のような一節がある。
・・
III 我が国を取り巻く安全保障環境
1 グローバルな安全保障環境のすう勢は、相互依存関係の一層の進展により、主要国間の大規模戦争の蓋然性は低下する一方(⇒「低下」と言うより、限りなくゼロに近い)、一国で生じた混乱や安全保障上の問題の影響が直ちに世界に波及するリスクが高まっている。
 また、民族・宗教対立等による地域紛争に加え、領土や主権、経済権益等をめぐり、武力紛争には至らないような対立や紛争、言わばグレーゾーンの紛争は増加する傾向にある。
 このような中、中国・インド・ロシア等の国力の増大ともあいまって、米国の影響力が相対的に変化(⇒「絶対的に低下」と読め)しつつあり、グローバルなパワーバランスに変化が生じているが、米国は引き続き世界の平和と安定に最も大きな役割を果たしている。
(中略)

4 以上を踏まえると、大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低いものの、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定要因は、多様で複雑かつ重層的なものとなっており、我が国としては、これらに起因する様々な事態(以下「各種事態」という。)に的確に対応する必要がある。

 また、地域の安全保障課題とともに、グローバルな安全保障課題に対し、同盟国、友好国その他の関係各国と協力して積極的に取り組むことが重要になっている。
・・

 安保や在日米軍問題を議論する際の〈問題の中心〉は、
①「主要国間の大規模戦争の蓋然性」が限りなくゼロに近く、
②米国経済や市場の日本における影響力や、米国の国際的影響力が絶対的に低下する傾向にあり、
③「大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性」もまた、限りなくゼロに近いときに、
 いったいなぜ日本が、世界最大規模の米軍基地を国内にかかえ、基地周辺住民の生命と生活の「安全・安心」を脅かし続けながら、日米安保条約/体制を「日米同盟」という欺瞞の下で半永久的に維持し続けねばならないのか、という点にある。

 オスプレイ沖縄配備とグローバルホークの「日本周辺海域」への配備問題をめぐる議論を、日米安保を根源的に問い直す議論へと発展させること。少なくとも、「安全保障」の「専門家」「研究者」を自認する若い世代の人びとは、そうした私たちの政治的想像力や知性、未来の国際秩序のビジョンなどを少しでも刺激し、喚起するような〈議論〉を提示してもらいたいものである。
 過剰な要求だろうか?

・・・
軽度事故発生率は平均超 オスプレイのデータ公表 米国防総省
 米国防総省は8日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが、2001年10月から先月までに起こした軽度な事故のデータを公表、海兵隊が運用する9機種の平均よりMV22の事故発生率が高いことが分かった。 米軍は、事故を
(1)死者や200万ドル(約1億5700万円)以上の損害が出た「クラスA」
(2)負傷者に重い後遺症があるか損害額50万~200万ドル未満の「クラスB」
(3)軽傷者が出るか損害額5万~50万ドル未満の「クラスC」に分類。
 事故件数は「クラスB」が9件で、10万飛行時間あたりにすると9機種平均が2・07件に対しMV22は2・85件。「クラスC」は27件で、同4・58件に対しMV22は10・46件だった。「クラスA」は4件で、既に公表されていた事故率は同2・45件に対しMV22は1・93件と下回っていた。(共同)

・[オスプレイ配備反対]県民大会場所決まらず 10日に再提案(琉球新報)
「・・・開催日は9月中の日曜日」
F22配備に抗議 嘉手納町議会、国へ退去要請(琉球新報、8/7)

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「オスプレイ配備と「動的防衛力」」(7/29)

「議論が深まらない社会」(2)--「北方領土」問題をめぐって

「議論が深まらない社会」(2)--「北方領土」問題をめぐって


 中国研究で知られる中嶋嶺雄氏(国際教養大学理事長・学長)が、「対ロシア外交に異なる視点を」という短い文章を書いている。
 「動的防衛力」や、「領土問題の紛争化の回避」を訴える、この間の私の文章とも深く関わる内容なので、少し紹介しておこう。
・・
 ・・・メドベージェフ首相が北方四島の一つ、国後島を大統領時代に続き2度目に訪れたのは、無難な首脳初顔合わせが“演出”された直後である。プーチン氏との連携だったなら、極めてしたたかな対日戦略外交だったといえる。
 日本側が当初、首脳会談で一致したと説明していた北方領土交渉の「再活性化」も、ロシア側がそんな言葉など使ってはいなかったと後に判明した。お粗末な外交である。
(中略)

 私はかつて中ソ対立を研究テーマにしていたこともあり、「覇権条項」入りの日中平和友好条約を批判する立場から北方領土問題でも発言してきた。野田首相の言う「法と正義」に照らせば、最重要な出来事は、ソ連が対独戦争勝利後に日ソ中立条約に違反して敗戦直前の日本に対し参戦し、領土を不法占拠したことである。

 その根拠を与えたのが、米英ソ3国首脳による1945年2月のヤルタ秘密協定であった。私はヤルタ協定については、今も講義の冒頭に、「千島列島はソ連に引き渡される」などの英語の原文全体を示して、その不法と非正義を日本の若者たちに教え続けている。 この協定については、当事国の米国のブッシュ大統領(当時)も、2005年5月にラトビアで催された対独戦勝60周年式典に出席して、「歴史の最悪の誤り」であったと認めているところである。
・・


 外務省の「外交」が、「お粗末」であることは、私もまったく同意見である。 いや、「お粗末」というより、「外交がない」ことを私はずっと問題にしてきた、という方が正確かもしれない。
 また、「ヤルタ秘密協定」が「歴史の最悪の誤り」の一つだという認識においては、何とブッシュ(息子)とさえ意見が一致する。

 この問題に関連し、去年の3・11前、「「抑止力」は「方便」以外の何なのか?---戦後政治と戦後外交の欺瞞と虚構から目覚める時」という文章を書いた。

・・
 敗戦国家としての日本が1945年以前に戦争し、侵略した国家に「戦勝国」として何を要求し、何をしてきたかを、まず想起することが重要である。「米国が沖縄を取るなら、北方領土を取る」と旧ソ連が米国の合意の下で兵を動かしたことを私たちは認識しておく必要がある。
 私たちは侵略し、完敗した。敗戦国が戦勝国に実効支配された領土を、「過去の国際条約違反だ。日本の固有の領土であるから返還せよ」と言ってケリがつくなら、パレスチナ問題など、イスラエルの占領政策など、とっくの昔にケリがついているではないか。

 事の核心は、「四島返還か、それとも二島返還か」にあるのではない
①1960年の「安保改定」が、旧ソ連の四島全域の「実効支配」に口実を与えると同時に、1972年に「返還」されることになるその後の沖縄を切り捨てたこと、
②またそれと抱き合わせとなって、米ソ間の裏取引と日米間の密約の下で「北方領土」問題がはらんでいるリアル・ポリティクスが私たちの目からそらされてきたこと、
③そのことが何十年間にもわたって放置されてきたことにある。

 これまで私たちは、「北方領土」の日ロ共同開発、ロシアへの経済協力を進めるという以外に、何か具体的な全面返還、あるいは二島返還⇒段階的完全返還に向けた政府・外務省、自民党・民主党の「方針」を聞いたことがあっただろうか?
 国境・領土問題をいかなる意味においても「紛争」の火種にしない、そのことを日ロ間の合意として外交文書化した上で、国際法と二国間条約の歴史に基づきながら、返還の正当性を国際的にキャンペーンする日本政府・外務省、政権与党の姿を、これまで私たちは一度でも見たことがあっただろうか?
 こうした政府・外務省、政権与党としての主張を交渉国に公式に突きつけた上で、
①国際法を遵守し、
②自国が交わした国際条約に基づいて二国間関係や領土・基地問題を解決するという国際的責任を果たし、
③しかも「国際の平和と安全」に対しても責任を持つ安保理常任理事国として、米国やロシアが、さらには中国が日本、また世界に対して何をどう答えるか。すべての外交交渉は、そこから[米・露・中の返答を引き出してから]始まるのである。

 日本の戦後政治と戦後外交、それを報じるメディアの言説は、私たちを愚弄する欺瞞と虚構で塗り固められてきたのである。
・・

 確かに、領土問題は、とても「センシティヴ」な問題である。
 大昔、「北方領土が返還され、米軍基地や自衛隊基地が建設され、対ソ戦の前線が北上し緊張感関係が悪化するより、現状(=未解決)が続くほうが、まだマシだ」みたいなことを、ある著名な研究者の口から聞いたことがあるが、こうした見解を含め、「戦後外交」を成り立たせてきた思想の総点検を、若い世代の人びとは、一度きちんと行うべきだろう。

 ところで、野田首相は、子どもたちに対し、「力強い」外交によって日ロ交渉を行い、「北方領土」問題を解決するのだと、ここでも嘘八百を並べ、またしても、だました。こんなことを私たちは、もう60年近くも繰り返しているのである。

 もしも「北方領土」問題に関し、確実に言えることがあるとしたら、外務・防衛官僚や「日米同盟ムラ」の政治家にイデオローグたちは、「北方領土」問題を本気で解決する意思など持っていない、ということくらいではないか。
 こんな連中が「戦後」において犯した連綿とした誤りと過ち。戦争をやって、負けて、反省もせず責任も取らなかった戦中世代を継承した「戦争を知らない子どもたち」がつくってしまった「戦後の禍根」。いったいいつまで私たちは、それをまるで十字架のように背負わされ続けるのだろうか。
 みんな「もう、たくさんだ!」と声を張り上げ、叫んでもよい時期に来ている。
 私は本気でそう考えているのだけれども・・・。

・・・
・8月は「北方領土返還運動全国強調月間」(政府広報)
首相、北方領土問題解決に意欲
 「野田佳彦首相は6日、首相官邸で北方少年交流事業に参加した中学生の表敬訪問を受けた。首相は「政府としてもロシアと力強く問題解決のために交渉を進めていく」と述べ、北方領土交渉を全力で進める考えを表明・・・」(日経)

「返還後は日ロ共生を」 ビザなし終え、高橋知事会見
【根室】 北方領土ビザなし訪問団の一員として色丹島を訪れていた高橋はるみ知事は6日、4日間の日程を終え、根室港に戻った。知事は根室市内で記者会見し「領土返還が進めば、日本人とロシア人島民が共生する地域づくりをやっていかなければならない」と述べ、返還後も現島民が居住し続けられる制度を検討すべきだとの考えを示した。
 道知事の北方領土訪問は戦後4度目。高橋知事は2005年の国後、択捉両島に次いで2度目で、色丹島は初めて。3日に根室港を出港し、同島穴澗(あなま)や斜古丹(しゃこたん)の日本人墓地、製缶工場、消防署建設現場などを視察した。
 5日には一般家庭で昼食を取りながらレフ・セディフ穴澗村長らと懇談。村長が風力発電導入や酪農技術向上に向けて協力を求めたのに対し、知事は「領土問題解決の方向性が見えなければ、本当の意味の協力までいかない」と指摘した。(北海道新聞)
・北方領土:露司令官が国後視察(毎日)

2012年8月7日火曜日

オスプレイもグローバルホークもいらない--「排他的経済水域の脱軍事化」をめざして

オスプレイもグローバルホークもいらない--「排他的経済水域の脱軍事化」をめざして

 私たちがロンドン五輪の競技に興奮し、その結果に一喜一憂している間に、米国、中国、ロシアに日本、国際政治で覇権をふるい、「国際の平和と安全」を乱す国々はやりたい放題だ。 これを「オリンピック便乗型ポリティクス」と呼ぶことにしよう。
 シリア情勢と国連安保理批判--というより、核軍事5大国=安保理常任理事国(+イスラエル)の利害で左右される国連体制の機構的欠陥--については後日、改めて述べることにする。 今日は、「中国脅威論」によって強引に正当化されようとしているオスプレイとグローバルホーク配備に対する政策的オルタナティヴについて考えてみたい。
 ポイントは、①「排他的経済水域の脱軍事化」と、②「国際的合意に基づく国境ラインの確定」の二つである。

Ⅰ 排他的経済水域の脱軍事化


 一昨日の読売新聞の社説は、4日に行われた日米防衛相会談について、次のように報じている。
・・
 「・・・会談では、日米の「動的防衛協力」の具体策でも合意した。無人偵察機による日本周辺海域の警戒監視活動の実施を検討し、グアム周辺での共同訓練を拡大する。
 動的防衛協力は、自衛隊と米軍の部隊運用を通じた協力だ。日米共同の情報収集・偵察活動や訓練、施設使用を重ね、緊急事態への抑止力を高める狙いがある。

 警戒監視活動では、グアムを拠点とし、米軍の無人機「グローバルホーク」を活用する方向だ。様々な事態の発生前の段階から日米が情報を共有し、事態の進展に応じて共同対処する方策を検討・協議することにつながる。
 グアムや北マリアナ諸島のテニアンでは、自衛隊と米軍の共同施設を整備し、上陸訓練などを行う案がある。重要性を増す南西方面の離島防衛の強化に役立とう・・・」
・・

 グローバルホークについては、 「防衛計画の大綱」に基づく中期防衛力整備計画(中期防、2011~15年度)において3機の導入がすでに検討されてきた。
 グローバルホークは、搭載装備を含めて1機約5千万ドル(約40億円)で、合計120億円超に上る。税金をむさぼる、非常に高い「買い物」である。司令部機能を持つ地上施設の整備にはさらに数百億円かかると言われているが、「性能とコスト」両面から国産無人機の開発よりも優位に立つとして、自公政権期に検討が始まり、民主党政権がゴーサインを出した格好である。

 日本には安保廃棄→「自主防衛」論者が多くいるはずなのだが、日本の歴代政権は、なぜいとも簡単に国産開発の断念をくり返すのか、また断念の背後には、いったいどのような「密約」が存在するのだろう。
 主要メディア、ジャーナリズムはもっとそちらに関心を向けた方がよいと思うのだが、そうならないところが原子力ムラの「闇」よりも暗い、「日米同盟ムラの闇」の暗闇の所以なのかもしれない。 


 本題に入ろう。 「オスプレイ配備と「動的防衛力」」の中で、私は次のように書いた。
・・
 米国は、国際的に「法的拘束力」をもつ「行動規範」のひとつ、「海洋法に関する国際連合条約」を批准していない世界でも稀な国家である。周辺諸国への覇権主義的圧力を強める中国は、そういう米国の「二重基準」(ダブルスタンダード)を批判するが、「どちらにも与することはできない」、というのが私の立場である。

 尖閣-南西諸島周辺の排他的経済水域をめぐる中国との角逐について言えば、「日本固有の領土」を念仏のように繰り返し、この地域の軍事化を進めたところで、状況は何も改善しない。日本はこの問題の「平和的解決」に向け、全力を傾注すべきである。
・・

 「戦後」歴代自民党政権や民主党政権が、日露、日韓、日中-日台(中華民国)関係に「領土問題は存在しない」、「「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」は日本固有の領土」と「念仏のようにくり返し」てきた間に、ロシアは北方四島の「実効支配」を進め、韓国は「竹島」の領有権を主張し、「実効支配」の動きを加速し、中国・台湾も「尖閣諸島」や南西諸島周辺の排他的経済水域をめぐって、ロシア・韓国と同様の動きをみせてきた。
 つまり、ロシア、韓国、中国・台湾との二国間関係において、日本がどれだけ「固有の領土」論を主張しようが、相手政府がそれを認めず、日本と同じように「固有の領土」論を主張するに至ったのである。この現実を現実として、まず認識できるかどうか。そこから私たちは出発せざるをえない。 要するに、
①ロシア、韓国、中国・台湾に対して「民族主義反感」を抱き、民族差別丸出しで責めなじり、日本側の「実効支配」を進めるだけでは、事態は何も改善せず悪化するだけだということ、そして、
②「領土問題の紛争化を回避する」という外務省の業務上の責任から言えば、日本政府の側にも重大な非があることを、きとんと認めることができるかどうか、このことが私たち日本の主権者、市民に問われているのである。

 もちろん、これとまったく同じことが、ロシア、韓国、中国・台湾の一般市民にとっても問われている。関係国すべての政府が、「領土問題の紛争化を回避する」ために、やれること/やるべきこと/やらねばならないことをやろうとせず、自国のナショナリズム/民族主義を煽り、相手国のナショナリズム/民族主義を逆なでしながら、「領土問題」を口実とした自国の軍拡を進めているからだ。

 米国および日本の中の「日米同盟ムラ」は、中国との角逐・緊張を、日米安保の永久条約化と在日米軍の永久駐留、米国製兵器の売り込み・導入、米国の軍産学複合体への日本のそれの組み込みなど、まさに自らの「死活的利害」にかけて利用しようとしてきたし、これからもそうするだろう。オスプレイ、グローバルホークの配備・導入問題は、単なるその一例に過ぎない。「日米同盟」主義者にとっては、中国は「脅威」であってもらなければ困るのである。

 これと同様に、中国も人民解放軍の「近代化」と中国版「軍事における革命」を正当化するために、米軍と安保の「脅威」を喧伝し、利用するのは言うまでもない。「仮想敵国」や「外国のテロリスト」による「主権侵犯」キャンペーンは、武力による国家間の紛争を禁じた国連憲章の下で、安保理常任理事国自らが自国の核軍拡のために、くり返し使ってきた常とう手段なのである。


 では、悪無限的軍拡と周辺海域の軍事化に対して、どのようなオルタナティブがあるのか。
 第一に、二国間/多国間での「領土問題を紛争化しない合意」の文書による再確認と、係争領域における国境ラインの再確定に関する国際的な「第三者委員会」の設立である。この国際的「委員会」は、関係諸国の承認と信任を前提として、国連の下で組織されてもよいし、領土問題に関する完全中立が保証できる複数の第三国が仲介・調停するという形式をとってもよいだろう。何よりも重要なのは、日本が「主体的」な「平和外交」を駆使し、そのためのイニシアティブをとることである。

 第二に、水産・天然資源開発をめぐる具体的案件については、前回も述べたように「国際海洋法条約」をツールとして活用することができる。条約の条文・条項を精読してみよう
・・
国連海洋法条約(第5部 排他的経済水域)
第56条【排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務】
2 沿岸国は、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する。

第58 条【排他的経済水域における他の国の権利及び義務】
3 いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従って沿岸国が制定する法令を遵守する。

第59 条【排他的経済水域における権利及び管轄権の帰属に関する紛争の解決のための基礎】
この条約により排他的経済水域における権利又は管轄権が沿岸国又はその他の国に帰せられていない場合において、沿岸国とその他の国との間に利害の対立が生じたときは、その対立は、当事国及び国際社会全体にとっての利益の重要性を考慮して、衡平の原則に基づき、かつ、すべての関連する事情に照らして解決する。

第7部 公海
第88条【平和的目的のための公海の利用】

公海は、平和的目的のために利用されるものとする。

第13部 海洋の科学的調査
第240条【海洋の科学的調査の実施のための一般原則】

海洋の科学的調査の実施に当たっては、次の原則を適用する。
a.海洋の科学的調査は、専ら平和的目的のために実施する。

第16部 一般規定
第301条【海洋の平和的利用

締約国は、この条約に基づく権利を行使し及び義務を履行するに当たり、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合憲章に規定する国際法の諸原則と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない
・・

 ただし、ここで海洋法条約に関する基礎知識として確認しておきたいことがある。それは、「海洋」や排他的経済水域をめぐる国際紛争を解決するにあたり、海洋法条約に限界や問題点がないわけではない、との理解が海洋法や国際法の専門家・研究者の間では一般的であることである。それは、上に引用した海洋法条約の条項をみれば明らかなように、この条約には、公海や排他的経済水域における国家や国家連合の軍事行動に関する、明確な規定が存在しないことに起因するものである。

 わかりやすく言えば、こういうことである。海洋法条約は、国連安保理常任理事国やその「同盟国」が公海や排他的経済水域で行うあらゆる形態の軍事行動を、国連憲章の諸原則と両立するという前提の下で許容するという解釈の余地を残しており、実際に米国、旧ソ連→ロシアを始め安保理常任理事国や日本は、そのようなものとして、複数の国家が領有権を主張する海域における軍事行動・演習などを行ってきた、という経緯がある。

 この問題については、海洋法条約の条文・条項や国連憲章その他の国際条約を引きながら、さらに詳しく論じることができるが、ここではその余裕がない。要は、拒否権を発動し、国連加盟国の多数派の意思を踏みにじってきた常任理事国や日本が、世界の70カ国以上が支持する「公海・海洋の平和=非軍事化」の大きな壁となり、これを実現する障害物になってきた/いまでもそうなっている、というところにある。
 たとえば、「海洋国家」たる米国、イギリス、ロシアなどは、「公海において伝統的に認められた海洋の自由利用原則の一つ」として、「平和的目的」であれば、「軍事行動」も許されると言う。つまり「仮想敵国」や「テロリスト」から自国や「同盟国」の権益や「主権」が侵犯された場合には、「国際の平和と安全/安定」を「維持」するための軍事行動は、「平和のための行動」であり、それは国連憲章の精神と矛盾しない、という解釈が成り立ってしまうのである。

 これに対し、たとえばブラジルなどは、国連海洋法条約への署名に際し、軍事演習は沿岸国の同意なしには認められないと理解するとの解釈宣言を行ったことがあるし、数多くの途上国は、軍事調査を含む全ての海洋調査活動に対して同意申請を義務付ける国内法を設けている。
 (中国に関して言えば、米国が行う「軍事調査」に対しては、沿岸国の領土保全と政治的独立を侵害し、自国の安全保障上の利益を害すると主張しながら、自国は他国に対して米国と同様のことをするという、行動上の二重基準の矛盾を犯している、と言えるだろう)。

 その意味で、この問題は、「国際の平和と安全」をめぐるあらゆる問題がそうであるように、「武器貿易」をめぐる国際論争の構図ととてもよく似ている。武器輸出大国たる米国を筆頭する安保理常任理事国の存在が、核も紛争も武器もない〈平和〉な国際社会の最大の阻害物になっているのだから。

〈結論〉
① 「南シナ海」や「東シナ海」で起こっていることは、海洋法条約の枠組みの中で処理し、解決することができるし、そうすべきである。
② 現行の条約に限界があるなら、国際的な議論を積み上げ、改正すればよいだけの話である。
③ 「平和国家日本」は、そこにおいてこそパワーを発揮すべきである。
④ 「日米同盟ムラ」がまきちらす嘘とペテン、デマゴギーに、くれぐれもこれ以上だまされないようにしよう。

・・・
【オスプレイ配備】
「オスプレイNO」全国で 配備反対(沖縄タイムス)
オスプレイ配備 米方針追認なら無意味(東京新聞)
・オスプレイ、29日討論会=沖縄配備に理解促す-防衛省
 野田政権は、「日米同盟とオスプレイの沖縄配備」と題したシンポジウムを29日に都内で開くと発表。森本大臣。「政府が説明するだけでは十分とは言えない。できるだけ客観的に、専門家の目から見て、広い視点から議論していただく・・・」。

2012年8月1日水曜日

「議論が深まらない社会」(1)--「脱原発依存社会」をめぐって

「議論が深まらない社会」(1)--「脱原発依存社会」をめぐって


 さいたま(7月14日)を皮切りに各地で開催されてきた、政府主催の「将来のエネルギー政策」に関する「意見聴取会」
 そのすべての会場で「議論が深まらない」という批判が噴出した。「原発ゼロ」派の人々だけがそう言ったのではない。電力会社の「回し者」を除き、私には意味がいまだに分からない「15%」や「20~25%」論を支持する一般の人々からも出た批判である。
 しかし、「議論が深まらない」のは原発・エネルギー問題だけではない。東電の「実質国有化」(?)と電気料金値上げ、東北・福島の「復興」計画のビジョン、さらにはオスプレイ配備・米軍再編・「動的防衛力」、「尖閣諸島」の「国有化」と対中政策のあり方から、「社会保障と税の一体改革」(?)さらには「いじめ対策」「地方主権」にいたるまで、およそすべてのことに言えることではないか。

 日本が「議論が深まらない社会」になってしまう最大の理由は、原発依存比率問題と同様に、どの社会問題をめぐっても、議論を「深める」まえに、議論する道筋が官・政・財と「有識者」、さらには主要メディアによって予め決定されているからである。ただの市民の立場から議論を深めようにも、元々議論を深め、議論の結果を政策に反映することなど、とてもできない「仕組み」の下で私たちは「議論」をさせられているのである。

 問題解決・政策決定の先送りと、ただの市民の怒りや不満の「ガス抜き」のために「国政の最重要課題」をめぐる「公の場における議論」を利用するのは、行政官僚機構の「統治のテクノロジー」の常とう手段である。どのような問題、「議論」に関しても、このことは常に肝に銘じておいたほうが良いかもしれない。

 さて、ロンドン五輪のせいで寝不足が続く日々が続いているが、今月は、原発・安保・外交・「いじめ対策」をめぐって「議論の埒外に置かれているもの」を整理しようと思う。 今日、福島で「意見聴取会」なるものが開かれる予定になっているので、原発問題からはじめてみよう。


 「原発のない福島」を宣言した福島で、脱原発を前提としない「エネルギーのベストミックス」論を「議論」するというのは、福島県民、とりわけ「双相地区」と呼ばれる「浜通り」地方の被災、被ばく者を侮辱する行為ではないだろうか。 

8/3
 脱原発や「将来のエネルギー政策」をめぐる議論において、「議論の埒外に置かれているもの」とは何か。
 一つは、福島第一・第二の廃炉→事業所廃止を東電として、また国として決定せずして、2030年における原発依存比率を「議論」することなどできない、ということだ。裏返して言えば、「15%」論はもとより「20~25%」論も、第一・第二の廃炉→事業所廃止を前提しないという仮説のもとに成り立っている「机上の空論」なのである。「15%」「20~25%」論は、東電から「原子力事業」を切り離さない、と言うより東電に「原子力事業」を残す、という前提によって初めて出てくる数字なのである。

 福島第一・第二の廃炉→事業所廃止を前提にすれば--「私たち」はそれを前提しているのだが--、第一5、6号機、第二全4原子炉の廃炉・核燃料処分費用がかかることになり、その結果、東電が希望し民主党政権が認めている東電の企業としての「再生」などありえない話になる。そうなれば、当然、柏崎刈羽の全号機も廃炉→事業所廃止になる(東電以外に事業所を経営する企業体が、新たに登場することはありえないからである)。

 3・11以後、提起されてきた〈問題〉とは東電に「原子力事業」を残すかどうか/東電という企業に「原子力事業」を任すことができるのかどうか、である。東電は、原発事業の継続をさも当然のごとく考え、民主党政権もそれを前提に「実質国有化」→「東電再生」を画策してきたわけだが、この〈問題〉から決着をつけなければ、日本における「原子力行政」の未来も、未来における「エネルギー行政」の在り方を議論することも、到底できないのである。
 なぜなら、東電から原発事業を切り離し、「電力供給の地域独占」を解体すれば、それがドミノ式に関西をはじめ全国各地に広がることになり、市場独占と原発が一体となって初めて成り立ってきた各電力企業の存立そのものが、根底から崩れ去ることになるからだ。
 この「ドミノ的な電力企業の崩壊」を阻止するという「原子力ムラ」の策略、それが原発維持→推進を前提した「ベストミックス」論の本質であろうと私個人は考えている。要するに、すべてがデタラメなのだ。


 二点目は、一点目とも関連するが、「原発のない福島」抜きに、脱原発も将来の「エネルギー政策」も語れるはずもないのに、福島が直面する問題と切り離して「原発・エネルギー問題一般」が語られている傾向が、きわめて強いことである。
 その意味では、全国各地で行われてきた「意見聴取会」なるものは、原発・エネルギー問題を〈福島〉と切り離そうとする舞台装置なのだとは言えないか。 

〈福島〉の現実 
 国や福島県、また市町村レベルの自治体の「復興振興」の大合唱とは裏腹に、原発大惨事が震災被害に追い打ちをかけ、福島の復旧・復興工程は遅々として進まない状況にある。
 「原発事故の収束なくして福島の復興はありえない」と、これまで何度も語られてきた。しかし福島第一1~4号機の「収束」作業は、今後30~40年はかかると言われ、しかもそれで作業が完了する「科学的根拠」は何もない。そもそも「収束」することがありえるのかどうかも定かではない。

 根本的な問題は、原発の「収束」作業と同時進行する形で、一方における自治体の「復興」事業と、他方、国と東電の責任回避・賠償額の軽減のみを目的とした「避難・警戒区域」の再編→被災・避難住民の「帰還運動」が行われてきたところにある。
 その結果、除染は進まず、汚染ガレキの処理、「仮置場」や「中間貯蔵地」問題も解決に向けた進展もみられず、言わば2次・3次の被災/被ばく被害が広がっている。(こうした状況の中で、双葉町と並ぶ福島第一原発の立地自治体である大熊町の住民が、国に対して突きつけたのが、「緊急要望書」だった。)

 〈福島〉が直面する問題は震災と原発惨事ばかりではない。
 「災害後の被災地では、災害前の社会矛盾が剥き出しになる」とは震災後しばしば耳にした言葉であり、東北全域の被災地に共通して言えることだが、すでに災害前の被災地で社会問題化していた諸矛盾が浜通り地域を中心に福島でも「剥き出し」状態になっている。
 全般的な「少子・高齢化」社会の進行、「限界集落」の存在、社会保障・医療‐介護制度の崩壊的危機、さらには「格差・貧困」社会の中の「都市と地方の格差」の拡大等々である。

 このように、福島の再生・復興に向けた課題は、きわめて多岐にわたっている。ざっと思いつくだけでも、
①すべての人々に対する被ばく医療を含む医療保障(現在の居住地を問わない)、
②福島県内外の仮設住宅・「借り上げ」住宅に住む被災者への支援、
③きめの細かい放射線量の実態把握と情報公開(住民への周知)、および汚染された県内各地の除染促進と住・自然環境の回復、
④右の①から③の実現と深く関わる国・東京電力の法的責任の明確化と賠償請求、
⑤農業を始め漁業、牧畜、地元企業などの再興、
⑥「原発に依存しない福島」に向けた福島第一・第二原発(東電)全10原子炉の廃炉、計画中の浪江・小高原発(東北電力)の計画撤回、その他「原子力産業」の撤廃。

 これら以外にも
・相双地区(いわき市を除く「浜通り」地域)の「仮の町」構想の実現、
・3・11事態を踏まえた今後の「原災・防災対策」→机上のシミュレーションの域を超えたことは何もされていない
・福島第一原発の「収束」作業に従事する労働者の被曝防護と権利保障、
・教育現場における脱原発なき「放射線教育」の問題性等々、問題は限りない。

 脱原発派の人びとには、こうした〈福島〉の現実を具体的に改善する支援を訴えたい。
 そして原発維持派人びとには、こうした〈福島〉の現実が自分の自治体で起こったとしたらどうするか、そのことを起点に「原発・エネルギー」問題を考えてほしいと思う。
 
・・・
8/3
「エネルギー政策:「討論型世論調査」」? 「電力会社関係者を排除せず 無作為抽出で」? 私には単なるボイコットの対象にしか思えないが、どうだろう。これまでの「意見聴取会」においても7割以上の人が原発ゼロ派であることが明らかになっており、議論が深まるはずもないこんな「調査」にさらに税金を投入することは犯罪的行為にも思えてくるのだが・・・。
<エネ庁課長>原子力委に脱原発検討しないように要請(毎日)
「・・・経済産業省資源エネルギー庁の吉野恭司原子力政策課長が昨年12月、政府の原子力委員会に対して「脱原発シナリオの分析を行うことは、慎重派を勇気づける材料にはなっても、原子力を維持する材料にはならない」などとする文書を示し、脱原発の検討を当面控えるように要請していたことが3日分かった」
「枝野経産相は文書について「個人的に作成されたメモ」としながらも「政府が原発維持を画策していると受け止められてもやむを得ない」(???)と指摘した。経産省は同課長を厳重注意処分(!!)とした・・・」
核燃サイクル:秘密会議問題 「会議は政策調整の場」 内閣府検証、原子力委の主張覆す(毎日)

8/2
ほぼ全員「原発ゼロ」 福島でエネ・環境意見聴取会(福島民報)
「・・・意見を聴く会は4日に高松市と福岡市で開かれ、全日程が終了するが、本県の意見聴取会を含め発言者の意見がどの程度、新たにまとめられる「エネルギー・環境戦略」に反映されるかは不透明だ。 意見聴取会に出席した細野豪志環境相は、意見の取り扱いについて明言を避けた
福島怒りの聴取会 政府不信一色(東京)
「・・・将来0%どころか「すべての原発の即廃炉」を求める声が相次いだ。政府は事故収束宣言や原発再稼働など県民の心を逆なでしてきたため、政府への不信感や怒りの声に染まった・・・」「政府ではだれも事故の責任を取っていない」「何の根拠があって収束宣言したのか」「あれだけの事故があったのに、もう再稼働させてしまった。失礼だ」「山も森も放射性物質。そんな中で再稼働に踏み切った政府に憤りを感じる」・・・ こうした聴取会が単なるガス抜き、アリバイづくりではないかと、根深い不信感を口にする人も多かった・・・」
国の対応に批判噴出 福島と南相馬で衆院復興特別委(福島民報)
東日本大震災:福島第1原発事故 福島地検、東電幹部らへの告発状を受理(毎日)
8/1
楢葉町、役場帰還目標は14年4月 10日に区域再編(福島民友)
【汚染廃棄物処理】 対立の解消に努めよ (福島民報・社説、7/30)
福島県立医大:今春卒業生、県内勤務は3割余 過去最低(毎日)
「・・・医学部卒業生のうち県内に勤務したのは3割余の26人で過去最低」「原発周辺の自治体では現役医師の流出も問題となっており、避難区域再編で住民の帰還が進もうとする中、県は「医師不足で医療機関が機能しないと安心して戻れない」と頭を悩ませている・・・」
・「福島で足りないもの」(南相馬市立総合病院 神経内科 小鷹 昌明、7/13、MRIC by医療ガバナンス学会)
福島の男性 厳しい婚活 県外お見合い ほぼ門前払い(東京)

・・・
志賀原発直下断層、国が見逃しか 北陸電が80年代に追加調査
 北陸電力志賀原発1号機(石川県)の直下に活断層が存在する可能性を経済産業省原子力安全・保安院が指摘している問題で、旧通商産業省や原子力安全委員会が1号機建設の安全審査をしていた1987~88年、北陸電がこの断層の追加調査を2回実施していたことが29日、分かった。
 活断層を疑う根拠とする図面は、この追加調査のデータ。当時、国の審査が「活断層」の疑いを見逃した可能性が浮上、原発の安全審査のあり方が根本から問われそうだ。 北陸電は追加調査を「断層の活動性を確認するためだった」と説明。保安院は1号機の審査経緯を検証する考えはないとしている。(共同)

静岡県が原発協から脱退意向 再稼働推進の要請書に反発
 静岡県の川勝知事は30日、原発が立地するか立地予定の14道県でつくる原子力発電関係団体協議会を脱退する意向を示した。協議会が8月にも国に提出するエネルギー政策に関する要請書に、原発再稼働を推進するような文言が盛り込まれているため。
 県によると、要請書の文案に「前のめりで原発再稼働を進めようというような表現」や「再稼働ありきの内容」があるといい、静岡県は意見を集約している青森県に内容の修正や提出の撤回を求めている。 川勝知事は県庁内で「原発に依存する割合は地域で違い、静岡は依存度が低い。原発に依存しないといけない電力会社の管内とは事情が違う」と強調した。(共同)