2013年2月26日火曜日

朝鮮学校「無償化」除外、何が問題か

朝鮮学校「無償化」除外、何が問題か
アジア記者クラブ(APC)より。

2013年3月21日(木)18時45分~21時
明治大学リバティタワー7階(1074教室)
ゲスト 鄭栄桓さん(明治学院大学教員)

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による3回目の核実験実施を受けて、神奈川県と埼玉県で朝鮮学校への補助金の打ち切りが両県の知事から発表された。大阪府、東京都、宮城県、広島県に続く措置だ。補助金を支給している兵庫県と京都府への圧力も強まっている。

打ち切りの理由はいずれも、拉致事件や核実験を行う北朝鮮と関係の深い朝鮮学校に補助金を支給することは「県民の理解が得られない」という内容だ。本当にそうなのか。因果関係がない中で、流言飛語の類の“世論”が作られているのではないか。今回の措置によって存続が危うくなる朝鮮学校も出てくるからだ。

なぜ朝鮮学校が設立されなければならなかったのか。朝鮮学校は、幼稚園(班)から大学校まであるように日本の教育課程にあわせて設立されているにもかかわらず、学校教育法が適用されない各種学校の扱いを受けたままだ。朝鮮学校には、朝鮮、韓国、日本の三つの国籍の生徒が通っている。朝鮮語のカリキュラムがあることが特徴だが、北朝鮮の実情を知らせることと同じように、広島・長崎への原爆投下や平和教育もなされている。

足を運べば普通の学校風景がある。生徒はロボットではないし、日本の生活に馴染んでおり、日常的に多くの情報に接している。生徒の声に耳を傾けたことがあるのだろうか。
3月定例会は、明治学院大学の鄭栄桓(チョン ヨンファン)さんをゲストにお招きします。新進気鋭の朝鮮史の研究者です。朝鮮学校の設立された経緯、在日朝鮮人にとって朝鮮学校がどういった位置づけなのか、政府・自治体の補助金打ち切りが何をもたらすのか、両論併記に終始する報道の問題なども含め、朝鮮学校「無償化」対象外の決定がいかに非人道的措置であるのかを掘り下げて検証します。

■会 場 明治大学リバティタワー7階1074教室(東京都千代田区神田駿河台1-1)
■交 通 JR・地下鉄「御茶ノ水」・都営線「神保町」下車
■費 用 ビジター1500円、会員・学生・年金生活者・ハンディのある方1000円、朝鮮学校の生徒・家族=無料
■主 催 アジア記者クラブ(APC)・社会思想史研究会
■連絡先 アジア記者クラブ(APC)〒101-0061東京都千代田区三崎町2-2-13-502
Tel&Fax:03-6423-2452
http://apc.cup.com
E-mail:apc@cup.com
※最新の情報(変更・中止の場合があります)は、必ずHPでご確認ください。
・・・・・・

「朝鮮学校はずしにNO!すべての子どもたちに学ぶ権利を全国集会&パレード」

2月20日、文部科学省は、朝鮮学校への高校授業料無償化制度を適用しないことを発表しました。これにより、高校無償化制度から朝鮮学校生徒だけが除外されることとなりました。高校無償化制度は、すべての子どもに学ぶ権利を平等に実現していく上で重要な意義を果たすべきものであり、北朝鮮との政治的・外交的問題とは、一切関係のないものです。

全国朝鮮高級学校学生連絡会をはじめとする関係者や、平和フォーラムを含む各種団体の呼びかけによって、3月31日に集会を開催することになりました。多くの参加をよびかけています。

日時:3月31日(日) 開場12時  集会午後1時~
※パレード出発 15時(日比谷野音~新橋~銀座~東京駅~常盤橋解散予定)
会場:日比谷野外音楽堂
主催:朝鮮学校はずしにNO! 3・31全国集会実行委員会
呼びかけ:「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会
内容:実行委員会挨拶/著名人の激励メッセージ/朝鮮高校生の講演(合唱と舞踊)/朝鮮高校生代表の発言/全国朝鮮学校校長会代表の発言/各地での裁判報告/朝鮮学校オモニ会代表の発言/集会決議の提案/パレード出発(発言順未定)

2013年2月22日金曜日

~もう2年もたったのに。~ 原発事故被害者の政策要求を後押ししよう!2/23市民集会

~~もう2年もたったのに。~
原発事故被害者の政策要求を後押ししよう! 2/23市民集会

http://2011shinsai.info/node/3488
====================
◆日時:2月23日(土) 18時開場 18時30分開始
◆場所:文京区民センター2A会議室
http://www.city.bunkyo.lg.jp/gmap/detail.php?id=1754
都営三田線・大江戸線「春日駅A2出口」徒歩2分、
東京メトロ丸ノ内線「後楽園駅4b出口」徒歩5分、
東京メトロ南北線「後楽園駅6番出口」徒歩5分、
JR水道橋駅東口徒歩15分

◆発言
満田夏花さん(国際環境NGO FoE Japan)
中村光男さん(被ばく労働を考えるネットワーク)
佐藤和良さん(いわき市市議)
長谷川博己さん(郡山市→富士宮市に自主避難) ほか
資料費500円
主催=福島原発事故緊急会議

===もう2年もたったのに===
■自民党政権に「国策」の責任を取らせよう
原発は国策として進められてきました。したがって、政府は事故被害者への補償や生存支援策を全力で行う責任があります。しかし、この2年間の補償や支援策はあまりに不十分で、事故被害者の困難な状況は日々深まるばかりです。被害当事者だけではなく、多くの市民がこの課題を共有し、情報を共有し、政策要求を後押ししましょう。

■「子ども・被災者支援法」の有名無実化を許すな
昨年「原発事故被災者・子ども支援法」が国会で制定されましたが、これは具体的支援政策が書かれていない理念法で、実際の政策案は復興庁など省庁が基本計画を作成している段階です。
しかし事故被害者や支援者が参画する場は一度も設けられず、透明性を欠いたプロセスで進められています。そして現時点の進捗では、支援対象・支援内容ともに事故被害者の切実なニーズとは大きな隔たりがあることが、おぼろげながら明らかになりつつあります。

■課題を共有し、情報を共有しよう
この集会では、多くの市民が、事故被害者や被ばく労働者の切実な政策要求について、課題を共有し、現局面についての情報を共有することを目指します。被災者・子ども支援政策の実現に向けて活動している方々、福島現地で活動している方をお招きしてお話を伺う予定です。

【連絡先】
福島原発事故緊急会議
メール contact@2011shinsai.info
〒112-0014東京都文京区関口1-44-3信生堂ビル2F PP研気付
Fax:03-6424-5749
Tel:090-7831-3383(植松)
共同デスクウェブサイト http://2011shinsai.info/

★★★3月の連続アクション★★★
【3月11日(月)】
原発事故から2年。福島を返せ!再稼働反対!
3.11東電本店前アクション

~賠償、被ばく労働、責任をとことん取らせよう~
http://2011shinsai.info/node/3629
◆日時:2013年3月11日(月)19時~
◆場所:東京電力本店前
 《呼びかけ》東電前アクション!、福島原発事故緊急会議
 《協賛》再稼働反対!全国アクション、再稼働阻止全国ネットワーク

【3月12日(火)】
「原発事故被害者の切実な政策要求を後押ししよう!」アクション
◆日時:2013年3月12日(火)18時~20時
◆場所:国会前
《呼びかけ》福島原発事故緊急会議ほか

2013年2月21日木曜日

大阪府警による日本軍「慰安婦」問題解決運動への弾圧に抗議します

【緊急!賛同団体になってください】
大阪府警による日本軍「慰安婦」問題解決運動への弾圧に抗議します
概要)
2月13、14日にかけて、大阪府警が昨年9月の「慰安婦」被害者証言集会と関連して、私たち日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの連絡先を含め、計7箇所に対して家宅捜索を強行しました。

理由は、当日集会妨害を目的にやってきた在特会メンバーによる「被害届」です。大阪府警は在特会の言い分に従って7箇所もの強制捜査を実施したほか、4名の「被疑者」への逮捕、起訴を狙っています。

今回の「慰安婦」問題に対する許しがたい弾圧に怒りを持って以下のように抗議します。賛同団体になってください。この抗議文を持って2月22日(金)、記者会見とあわせて、大阪府警曽根崎署への申し入れを行います。
締め切り:2月21日(木)
賛同送り先メールアドレス:info@ianfu-kansai-net.org
http://www.ianfu-kansai-net.org/kougi_fukei.html
++++++++++++++++++++
大阪府曽根崎警察署長

抗議文

日本軍「慰安婦」問題に対するヘイトスピーチを容認、便乗した大阪府警の弾圧に抗議します

 私たちはかつて日本軍によって戦場で性奴隷とされた被害者の訴えに応えるよう、日本政府の誠実な対応を求めて運動を行ってきました。数年前より「在日特権を許さない市民の会」(在特会)をはじめとする右翼市民団体が出現し、在日朝鮮人への攻撃をはじめ「慰安婦」問題についても歴史を全否定し、被害者を侮蔑するヘイトスピーチを繰り返しており、その手口は暴力や恐喝など犯罪化してきていることはご存知の通りです。

私たちは、「慰安婦」問題と関連して被害者を貶める発言を行った橋下大阪市長の「証拠があるなら(韓国側に)出してもらいたい」との暴言を受けて来日した、日本軍「慰安婦」被害者の金福童さんを迎えて昨年の9月23日、証言集会を開催しました。会場は多くの参加者であふれ、86歳の被害者が橋下市長の発言の撤回と謝罪を求め、歴史の事実を証言しました。この日も、在特会メンバーらが集会妨害のため会場にやってきましたが、多数の仲間が場内整理にあたり、集会は混乱もなく無事に開催されました。

ところが、集会から半年近くたった2月13日早朝、大阪府警(公安三課)は、昨年9月のその集会に参加していた4名の仲間を在特会メンバーからの「被害届」にしたがって「傷害事件」の「被疑者」としてでっちあげ、個人宅及び関係事務所など5ヶ所の家宅捜索を強行しました。一方的に「被疑者」とされた4名のうちには、昨年反原発や放射能がれき受け入れ反対の闘いの中で拘束・起訴され、今も大阪拘置所に勾留中のHさんも含まれています。

警察権力による弾圧はこれにとどまりませんでした。集会の主催者である私たち関西ネットに対しても攻撃の手を伸ばし、連絡先としている「Cafeナビ」に、同時に強制捜査が行われたのです。さらに翌日にもう1箇所の強制捜査がありました。
あろうことか大阪府警は在特会メンバーの「被害届」をもって、7ヶ所もの家宅捜索を行うとともに、
「被疑者」とされた人たちに対して任意出頭を要求したのです。私たち関西ネット関係者に対しても、事情聴取を求めています。これでは、問題が逆展開ではないですか。大阪府警は、在特会メンバーらによる妨害・暴力・暴言によって市民集会が円滑に開催できていない事態をこそ問題にすべきです。「加害者」は在特会であって、彼らの暴力行為こそ罪が問われるべきです。

大阪府警が、物理的・精神的被害を受け続けてきた私たちに刃を向けることは、民主主義社会の破壊以外の何ものでもありません。罪のない人間を犯罪者に仕立てあげる警察の横暴は、決して許されるものではありません。国際社会あげて解決を求めている「慰安婦」問題に対する今回の大阪府警の弾圧がまかり通るなら、日本はヘイトスピーチや暴力の無法地帯となり、大阪府警とこの国は国際社会からの非難と嘲笑を免れないでしょう。
今回「被疑者」とされたメンバーは私たちの仲間でもあり、4名の「被疑者」に対する逮捕・起訴は絶対に容認できません。あわせて、Hさんを直ちに釈放するよう求めるとともに、「慰安婦」問題の解決を求める市民運動への露骨で悪質な弾圧に怒りを持って断固抗議します。

2013年2月22日

日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク
〒544-0033 大阪市生野区勝山北4-9-12 Caféナビ気付
TEL080-6185-9995 FAX06-6741-6032

2013年2月14日木曜日

「3・11」2周年を前に ~健康相談会を通して見えてくる被災者の現実 (橋本俊彦さんインタビュー)

「3・11」2周年を前に ~健康相談会を通して見えてくる被災者の現実
橋本俊彦さんインタビュー

『福島と生きる』メールマガジン特別号No,1
(2013年2月14日発行)


Q1 橋本さんには『福島と生きる』(新評論)に「大災害を生きていくために」を寄稿して頂きました。
 橋本さんが現在の活動を行うにいたった経緯や動機、また橋本さんが実践されている快医学の詳細については本書や橋本さんのウェブサイト(NPO法人ライフケア)、また著書である『自然治癒力を高める快療法 セルフ・ケアと穀物菜食レシピ 』(筑摩書房)『緑のセルフ・ケア 実践快療法と穀物菜食レシピ集 』(博進堂)に譲るとして、最初に橋本さんのご活動の規模についてお聞かせください。
 福島県内と県外に分け、1月末段階で橋本さんたちが開催されてきた健康相談会参加者の延べ人数を教えていただけますか。

橋本  県内ではのべ2千人を超えます。県外では2012年から本格的に始めました。現在は主に米沢に行っています。のべ100人です。震災直後は宮城県の丸森町に行っていましたが、それも合わせると県外では200人です。宮城県はその後フォローできていません。

Q2  県内を浜通り、中通り、会津地方と分けた場合の相談会の延べ回数は何回くらいになるでしょうか。

橋本  健康相談会は中通りでは月に4,5回、計90回ぐらい行っています。相談会という名前でない、小さな集まりなどもあります。会津にはこれまでは行っていません。声は上がっているのですが。
 浜通りは、震災直後は南相馬市、相馬市、飯館に合わせて10回行っています。その後、相馬には足を伸ばせていません。

Q3  これまで福島県外で開催されてきた相談会の場所は?

橋本  3、11直後は宮城県の丸森町、現在は米沢と家族が避難している松本です。相談会というわけではありませんが、昨年12月に京都で茶話会という形で避難者を訪ね、手当てについて話をしました。先月は九州に行ったおり、私の治療室の患者さん数家族か避難しているので生活状況を聞いてきました。


Ⅰ 健康相談会での反応

Q4  『福島と生きる』出版以後の昨秋からの健康相談会を通して、被災者や住民の方々の健康状態や反応に何か特徴的なことはあるでしょうか。まず始めに、県内についてはどうでしょうか。

橋本  身体の変化についてよく質問を受けます。
 相談会には、放射線の影響下で暮らすことがどういうことなのか、ある程度理解している方がほとんどです。こんな症状はもしかしたら放射線の影響か、と感じ取っている人もいます。ただし、それは通常の検査では分からないものだし、訴えていることも不定愁訴なので、気にしているが対処法が分からない。がんや自己免疫系の重い病気を抱えている人は、症状が重くなってきたときに、やはり放射線の影響ではないかと心配しています。

 放射線が今のからだの変調に直接的な因果関係をもっているかどうかは何とも言えません。一連の不定愁訴があり、回を重ねて話を聞いていくと、こんなことがあった、あんなこともあった、という話が出てきて、それらを通じて、放射線の影響があるのかもしれない、ということしか分からない状況です。
 1つだけ言えることは、私たちの快医学健康相談では、ライフ・エネルギー・テスト(筋力テスト)を用いてからだ全体の状態を把握しています。『福島と生きる』のエッセイでも書いたように、3・11後、肝臓,腎臓、脾臓などの主たる内臓に弱っている反応が多くの方に出ていますから、つまり免疫系が弱っていると考えています。なので、からだの手当てを実践してくださいと言っています。

 相談会はほとんどが子ども連れの親子です。私たちも家族単位で来てくださいと呼びかけています。中には中学生もいますが、小学校入学前の子どもがほとんどです。平日の日中に行っていることも関係しています。日曜日開催のときは父親が参加することもあります。とくに白河では父親の参加が多いです。

Q5  橋本さんは県内各地の仮設住宅を回ることにも力を入れてこられてきたわけですが、現在の仮設住宅の状況について、何かお感じになっていることがあればお聞かせください。

橋本  いまは福島市にある浪江町の仮設住宅を訪問しています。仮設入居者の多くは年配の方々です。仮設入居以前に3,4回避難所を移っているのが普通です。もともと血圧や血糖値が高いなどの基礎疾患を持っている人が多い。長期におよぶ仮設生活では運動不足、ストレス等の心理的問題などが症状の悪化にじわじわ影響しています。

 仮設の手当て会には特定の人だけが参加する傾向があります。そこは大きな課題ですね。毎回、お知らせのチラシを仮設の自治会の方に配ってもらっているのですが、それでも来る人は同じことが多い。ほとんどが女性です。仮設の自治会は男性中心なので、そういう人たちを巻き込んで、互いに手当てをやり合う雰囲気を作りだしたいと思っています。3,4回目ぐらいから男性たちも少しずつ参加するようになってきました。積極的になってきましたね。アイロンの手当ては気持ちがいいことを分かってもらえますからね。

 私たちは「手当てをします」ではなく「手当の方法をお伝えします」というスタンスを取りながら,アイロンの温熱療法と操体法を生活の中に取入れてほしいと願っています。また、社会福祉協議会(社協)の人たちに体験してもらったこともあります。体験してもらうと「これ、いいかも」という感想でした。何より、社協の人たち自身も被災者であり、担当する方が亡くなる経験もされるなど様々な心労を抱えています。社協の人たちを通して他の仮設に広めたいと考えています。


Ⅱ 県外避難者の状況

Q6  次に県外に避難された方々の状況についてお聞きします。県外避難者については3・11直後の数日間にどこにいたか、またいつ避難したか、子どもと大人の違いや避難後のセルフ・ケアのあり方など、さまざまな条件によって健康状態には著しく個人差や地域差があることを前提にお伺いします。
 県外避難者が直面している問題とは何か。橋本さんがお感じになっていることを、お聞かせください。

橋本  米沢に行くようになったのは昨年後半からなので、それ以前の状況と比べられませんが、行くたびに状況が変わります。揺れていると感じますね。避難したことは良かったと私は思っていますが、今年になって戻ろうかなと考えている家族が増えていて、びっくりしているというか、状況が変化しているなと感じます。

 最大の理由の一つは子どもの教育です。米沢と福島は近いので、友達とも距離が近い。九州のような遠くに行ってしまったら違うかもしれませんが、心理的にも近いと感じているので、高校は福島に行きたいという子どもたちがいます。米沢から通うのは無理なので、戻ることを考えているのです。
 また経済的な問題もあります。借り上げ住宅制度が終わってしまえば、避難の継続が困難になることもあります。避難せざるを得ない状況がぼやけさせられています。せっかく避難してきたのに戻らざるを得ないというのは、大変厳しい状況です。
 借り上げ住宅その他の問題について、もっと国がきちんとした施策をとっていれば、せっかく避難した人が戻らざるを得ないというケースは減ります。

 松本に避難した人から「避難してよかった」という声を聞いています。もちろん就労の問題や母子避難の困難さなど大変なこともあったと思いますが、それでもよかったという人が多い。一方、まだまだ母子避難で大変だという人もいます。よかったと思う理由は、汚染地帯にいないで済むことでほっとできて、それだけで落ち着くということです。九州でもそういう声を聞きました。

 私の家族に関しては、松本は住みやすいと妻は言っています。もちろん、バタバタとし、身体的・精神的、経済的にも大変なこともありますが、ここにきてすこし落ち着いてきました。娘はちょっと別ですけど・・・。娘は娘でいろいろなことを感じているでしょうから、簡単には代弁できません。

 各地に出向き自分の家族は松本に避難している話をすると「松本はいいですね」とよく言われます。それはたぶん市長などに理解があるからでしょうか。他の地域との違い比較していないので何とも言えませんが、市役所はとてもよく対応してくれますし、避難者は上下水道代が無料なのです。毎月一万円近くですから助かります。市の温水プールや温泉施設の使用料も一年間無料になっています。また、市民サポートセンターが避難者の1つの拠り所になっていて、市は避難者を対象にしたイベントに助成金を出しています。私もその助成金を活用して避難者向けの「自然医学・快医学講座」をやりました。

 避難者同士のつながりがとても重要であると感じています。先日、熊本の水俣に行ったのですが、水俣病の影響でコミュニティがバラバラになってしまった。そこで「もやい直し」と言って、コミュニティのつなぎ直しが行なわれていることを知りました。いま福島でもコミュニティがバラバラになってしまっているところも多くあります。

 一方避難先等で同じ境遇にある人たちが集まると、バラバラにならないでみなで協力し合ってやっていこうという雰囲気が出てくるのです。米沢や京都の避難者を訪ねると、この荒波の中で、行った先々でもバラバラにならないで、協力し合ってなんとか乗り切っていこうという雰囲気をすごく感じます。
 でも、その「もやい」というバラバラにならないロープにたどり着けないで、孤立している方も多いと思います。そういう人たちとつながるにはどうしたらいいか。松本でも話し合いを始めています。


Ⅲ 記録をとることの大切さ

Q7  県外避難者の被爆医療保障に関して基本的なことをお聞きします。
 県内在住の被災者と比べた場合の、県外避難者が県外に避難したが故に受けている医療保障上の差別というものがあるでしょうか。健康手帳の受給、被爆検査、その他について。

橋本  県内・県外の制度上の違いや差別についてですが、県外の人たちが甲状腺検査を受ける場合、私が知る限りでも地域差があります。福岡では地域の医療機関がきちんと対応してくれたと聞きましたが、京都では対応は難しいと言われ、タライ廻しにされたという経験も聞きました。地域というより、医療機関によっても対応は違うのだろうと思います。一概には言えません。

 とにかく大切なのは記録をとることです。日々からだの気になることを書き留めておくことが大事です。水俣では初期から原田正純医師など医療従事者が地域に入って、フィールドワークをして記録を残しました。時間が経てば記録がなしでは判断しようがないということになりかねません。

 福島でも様々な形で調査が行われているわけですが、単に調査研究だけに終わらせることなく、最終的に個人個人に還元されなければ意味がありません。それをつぶさにできるのは地域の開業医など小さな医療機関のはずです。ところが、そうした意識を持つ医療機関があまりにも少ない。鼻血が出ても、関係ないと言うだけです。

 県外避難者の人たちの内部被曝の調査(ホール・ボディ・カウンター、尿検査など)については把握していませんが、尿検査をできる検査機関は限られています。尿検査を広域でやっているところは聞いたことがありません。こうした検査は通常の検査機関ではやっていないので、自己負担になります。1度だけでなく、2度、3度検査するということにもなるでしょう。たとえば子どもが2,3人いたらかなりの負担です。また、検査は甲状腺に特化していいますが、放射線の影響は甲状腺だけではないと考えなければなりません。

 まとめれば、記録をとることが制度として行われていないことと、甲状腺検査に特化している、この二つが制度として問題です。ただ、あまりにも対象者が多く、福島以外でもたとえば茨城や栃木でも内部被曝を問題にしている親たちがいます。

Q8  チェルノブイリの経験が教えているのは、3・11が人体に対するどのような影響を与えたか、その輪郭を私たちが知るためには、やはり最低でも3年から4年程度はかかる、ということだと思います。その意味では、まだ2年も経っておらず、私たちは被曝や健康被害の実態について医学的に確たることは何も言えないし分からない、ということを大前提にして考え、議論する必要があります。

 こうした観点から言った場合に、現在の国と県の医療行政に関し、何かご意見はありますか。「現状はこうだが、ここはこうすべきだ」とか、そうした点があればお聞かせください。

本  今回の過酷事故による災害は、いままでの医療モデルでは到底対応できない問題が山積しています。じゃあどうするか。あまりにも背景が大きすぎてよく分からないところが多くあります。社会的背景や生活、心理的側面、コミュニティの問題などを含めたトータル(と言っては言葉が簡単すぎるけど)な、広範囲なケアという見取り図がまだ描き切れていないと感じます。われわれの活動は現場がすべてなのですが、全体の見取り図を模索しながら、役に立てることがある限り続けていきたいと思っています。

 行政に対しては、水俣と単純に比較することはできませんが、水俣では早期に有機水銀中毒が疑われていたのに具体的な対策を講じることはありませんでした。被害を拡大させた原因は、初期の国や行政の対応があまりにも杜撰であったことは疑いのない事実です。これを福島でけっしてくりかえなさいでいただきたいと強く言いたい。

 いま福島県内は、町を歩けば普通に見えますが、みな揺れています。ちょっとした会話にそれが現れるんです。震災直後から1年ぐらいの間は、避難させようかどうかと悩んでいた人たちのうち、いまでも悩んでいる人もいれば、家族間でその話題を遠ざけている人たちもいます。

 先日、東電から4万円の賠償金が出ましたが(注‐文末参照)、そのときの東電の通知に解釈によっては、請求書に記載された損害額を超える損害について、東京電力に対して請求する権利を放棄するとの意思表示と受け取られかねない文言が記載されていました。私は問題であると考えていましたが、一方では「これ以上請求すると、ひどい汚染地域に住んでいることを自ら証明するようなものだからこれ以上なにも言わない」という声も私は直接聞きました。みなすごく揺れているし、だんだん関心の温度差がどんどん広がっている。

Q9  健康相談会以外に、橋本さんはこれまで全国各地で講演もされてきました。 非常に雑駁な分け方になるのですが、仮に東日本と西日本と分けた場合に、参加者の反応や質問などに何か違いを感じるようなことはありますか。

 事態の深刻さの受け止め方、あるいは原発を止めねばならないことに対する切迫感と言いますか、参加者全員から醸し出される空気のようなもの。その辺で何かお感じになることがあればお願いします。

橋本  その点についての違いはあまり感じません。たとえば熊本での講演会では、背景に水俣の経験があります。「やはり水俣と福島の構造は同じだ」と人々は感じています。
 静岡は焼津でした。焼津は第五福竜丸の母港です。町の真ん中に資料館があっていまも語り継がれています。今回の事故を身近な問題として捉えています。もちろん、浜岡原発を抱えているということもあります。資料館を見学して当時、いかに人々が魚の汚染を心配していたかがよく分かりました。

 鳥取に行ったときには、ウラン鉱山(人形峠)の被曝問題を知りました。そういう背景を抱えた人たちが講演会に来てくれました。今回の福島の問題を自分の事として捉えている人が多くいます。


Ⅳ 自然医学をきっかけに、互いに手当てし合う関係を

Q10  最後に、これも詳しくは橋本さんのサイトや著作を読み、今後の健康相談会や講演会に参加して頂くしかない、ということになるかも知れませんが、被曝に対する自己防御とセルフ・ケアを通じた健康管理に関し、何かメルマガ読者にアドバイスがあればお聞かせください。

橋本  こういう過酷な人災は人の生活のすべてを狂わせます。私は人の健康は呼吸(息)、食べ物(食)、身体を動かすこと(働)、思い悩むこと(想念)、自然環境と人と人との関係(環)、それらのバランスが大事だと考えてきました。

 ところが今回の事故で、いみじくもそれらのバランスがいっぺんに吹き飛んでしまったのです。安心して呼吸ができないし、食べられなくなり、外で身体を動かすのがままならず、震災後のストレスが加わります。そしてコミュニティが分断されました。まるで八方ふさがりですが、健康に暮らすためにはこれらの修復とバランスの回復が必要なのです。

 気持ちよくからだを温め(温熱療法)、気持ちよくからだを動かして歪みを治す(操体法)、という実に単純な方法がからだの免疫力を高めてくれます。日々の生活の中で実践するからだを気持ちよくしてあげることが病気を予防し、健康の自立への第一歩になります。自分の身体が最後の拠り所です。この自然医学をバランスを回復させるための一つのきっかけとして使ってほしいと思います。

 今回の災害以降に自分の身体に目を向け始めた人は多いですね。手当てを予防医学として使ってほしいですね。「手当で予防できますか」「これをやればここにいていいんですね」「避難した方がいいですか」と聞かれます。私は避難する、しないはどうこう言えません。しかし、現実として今、ここにいるんだから、手当てはやってほしいと言っています。やれば絶対とは言えませんが、やらないよりやったほうがいいよ、と言っています。検査だけではけっして病気は予防できないのです。自分と家族の身体を自ら守ってほしいと願っています。

 三つ子の魂じゃないけど、いまのうちに子どもたちに伝えておけば、将来きっと役に立つときがきます。いつの日かそういえば、いつもお母さん、お父さんがやっていたな、と思い出して自ら実践する時期がきます。もちろん、子どもなのでそれを拒否するときも出てくるでしょう。うちもそうです(笑)。でも、お互いに手当をし合う関係が大切だと思います。もやい直しではないですが、分断された中にアイロン一つもっていくと、「あ、そうなんだ」という共通理解ができる。それができたらいいな、と思いますね。

 事故以前には猪苗代湖のきれいな砂に埋まる砂浴(すなよく)を主宰していました。その合宿にはいろんな人が参加していて、中に、バリバリの反原発の活動家がいました。六ヶ所村まで行っている人で、名前は言えないけどその世界では有名な人(笑)。一方、同じ合宿に国際原子力エネルギー機関(IAEA)の職員が参加していたんです。そこで二人が激論を戦わせるわけではないですが、「あ、そういうことをやっているのか」といった反応です。でも砂に埋まって温まると、お互い一人の人間として、対話が始まるんです。やはり身体は正直です。
 私たちのセルフ・ケアの活動は、そういう人と人をつなぐツールの一つかもしれないと思います。

(文責: 『福島と生きる』メルマガ編集部。インタビュー日: 2013年2月2日)
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注 自主避難地域の賠償を延長 東電、今年1~8月分 (朝日新聞 2012年12月5日)
 東京電力は5日、福島第一原発事故の賠償で、事故当時、自主避難地域である福島市やいわき市など福島県内23市町村に住んでいた人のうち、今年1月1日~8月31日に妊娠していた人や、18歳以下だった「子ども」に、精神的損害として1人8万円の賠償金を支払うと発表した。
 また、同じ時期に白河市など福島県南部の9市町村と、宮城県丸森町に住んでいた妊婦と子どもにも、1人4万円を支払う。さらに、避難の交通費や生活費として、これら33市町村に住んでいた人すべてに、1人4万円を支払う。
 自主避難地域の妊婦や子どもにはこれまで、昨年3月11日~昨年末までの賠償金として最大で1人60万円が支払われていたが、今年1月以降の分をどうするかは決まっていなかった。対象は約150万人で、12日から順次、請求書類を送る。問い合わせは東電福島原子力補償相談室(0120・993・724)。

橋本俊彦さんプロフィール
1956年福島県生まれ。鍼灸師。鍼灸学校時代に東京ホビット村で快医学に出会う。
1995年福島県郡山市にはしもと治療室を開設、その後三春町に移転。東北、首都圏を中心に快医学講座を開催してきた。震災以降、福島県内各地で健康相談会をはじめる。2011年11月、自然医学放射線防護情報室を立ち上げる(2012年9月よりNPO法人ライフケアに改称)。
著書に『自然治癒力を高める快療法』(共著、ちくま書房、2011)など。

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『福島と生きる』メールマガジン特別号No,1(2013年2月14日発行)
※『福島と生きる』メールマガジンは、『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』の共同執筆者の団体や活動の関連情報を発信していきます。

発行人=中野憲志・藤岡美恵子
(『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』共編者)

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福島、新たに2人が甲状腺がん 放射線による影響否定
 東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の県民健康管理調査の検討委員会が13日、福島市内で開かれ、18歳以下(震災当時)の2人が新たに甲状腺がんと確定したと報告された。昨年9月に判明の1人と合わせ、3人となった。
 福島県立医大の鈴木真一教授は「甲状腺がんは最短で4~5年で発見というのがチェルノブイリの知見。今の調査はもともとあった甲状腺がんを把握している」(???)と述べ、福島第1原発事故による放射線の影響を否定。一方で「断定はできない。これからきっちり検討していく」とした。鈴木教授によると、3人とも手術を受け、経過は良好という。(共同)
  ↓
 こういういい加減な発言が、福島県民や県内外避難者の県立医大や県の「医療行政」に対する不信をいっそう助長する。ということを鈴木教授は知るべきである。 甲状腺がんの原因が福島第一原発にあるかどうかの判断は、がんが発見された3人が原発爆発直後から現在までどこに居住し、どの程度被曝したと類推できるかに規定されるからである。 この問題は、機会を改めてじっくり論じることにしたい。

「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」その他

●「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」
日時:3月9日(土)11:00開場
会場:東京・明治公園(JR「千駄ヶ谷駅」5分、地下鉄「国立競技場駅」2分)
※地図  http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access086.html

内容:
11:00 開場(出店ブース開始)
12:00 オープニングライブ 日本音楽協議会(日音協)
12:25 リレートーク
13:25 集会オープニングライブ リクルマイ
14:00~15:00 集会
発言者: 内橋克人さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、鎌田慧さん、澤地久枝さん、広瀬隆さん(作家)、福島から
15:15 デモ出発
主催:さようなら原発一千万署名 市民の会
●「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」
日時:3月11日(月)18:30~20:30
会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」(JR京浜東北線、東急線、りんかい線「大井町駅」1分)
※地図 http://www.shinagawa-culture.or.jp/hp/page000000300/hpg000000268.htm
内容:開会のあいさつ 鎌田慧さん
講演:内橋克人さん、大江健三郎さん、坂本龍一さん+後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)※対談
澤地久枝さん、清水修二さん(福島大学教授)、吉岡斉さん(九州大学教授・副学長)
閉会のあいさつ:落合恵子さん
主催:さようなら原発一千万署名 市民の会
■「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」のページはこちら
http://sayonara-nukes.org/2012/12/121220/
■呼びかけ人によるアピール文はこちら
http://sayonara-nukes.org/2013/01/130110ap/
http://sayonara-nukes.org/2013/01/130110ap_e/
■3月9日~11日に全国で開催されるアクションの紹介はこちら
http://sayonara-nukes.org/2013/01/130309_11action/
■つながろうフクシマ!さようなら原発大行動のアピール動画はこちら
http://youtu.be/zqg6tUGA3V0
■呼びかけ人の坂本龍一さん開催音楽イベント「NO NUKES 2013」のホームページ
http://nonukes2013.jp/
●「原発ゼロ☆大行動
日時:3月10日(日)13:00~
場所:日比谷公園野外音楽堂、永田町や霞が関一帯 ※雨天決行
13:00~集会 14:00~デモ出発(集合場所:日比谷公園 ※予定)
17:00~19:00 国会前集会(国会議事堂正門前)
主催:首都圏反原発連合 
問い合わせ:首都圏反原発連合 info▲coalitionagainstnukes.jp (▲を@に変えてください)
■「原発ゼロ☆大行動」のホームページはこちらhttp://coalitionagainstnukes.jp/

●「被災59周年ビキニデー集会」
1954年3月1日のアメリカによる水爆実験によって、静岡県焼津市の漁船「第五福竜丸」が被災した「ビキニ事件」から59年が経過しました。原水禁運動の原点ともなった事件ですが、近年では風化も懸念されています。原水禁では、ビキニ事件を振り返りつつ、今日的課題も見据えて運動をつくっていくため、今年も集会を開催します。また、27日には浜岡原発に関わる自治体要請行動を行います。

日時:2月28日(木)18:00~20:00
会場:静岡市「あざれあ」6F大ホール(JR「静岡駅」10分)
※地図http://www.azarea-navi.jp/shisetsu/access/
内容:講演 「ビキニ事件から見えるもの」(仮題)
加藤一夫さん(元静岡福祉大学学長)
牧之原市長の連帯メッセージ紹介
福島からの報告 五十嵐史郎さん(福島県平和フォーラム代表)
主催:原水禁(平和フォーラム)、東海ブロック原水禁、静岡県原水禁
●「原発のない福島を!県民大集会」 
福島原発事故被災地の福島で3月23日に県実行委員会主催の「原発のない福島を!県民大集会」が福島市で開催されます。どなたも参加できます。

日時:3月23日(土)10:00開場
内容:11:00~ 第1部「被災地をはじめ福島県に伝わる民俗芸能」
    13:00~ 第2部「県民大集会」 ※15:00終了予定
※サブアリーナにて出店、展示あり(10:00~15:30)
会場:福島市・あづま総合体育館
(福島駅より「佐原」「四季の里」行きバス室石付近下車、タクシーで25分)
※当日は福島駅西口より臨時バス運行
主催:「原発のない福島を!県民大集会実行委員会」
問合せ:(tel.024-522-6101 fax.024-522-5580 福島県平和フォーラム)
■県実行委員会のホームページはこちら http://fukushima-kenmin311.jp/

(以上、「平和フォーラム・原水禁メールマガジン 第134号」の原発関連イベント紹介より)

2013年2月11日月曜日

『福島と生きる』メールマガジン第4号――息長く〈福島〉とつながり続けるために――

『福島と生きる』メールマガジン第4号
――息長く〈福島〉とつながり続けるために――

2013年2月10日発行(不定期刊)
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―目次―
◆イベント情報
◆ふくしまとつながるツアー情報
◆ニュースクリップ
◆その他
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◆イベント情報
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(イベント情報は変更されることもあります。必ず主催者サイトでご確認下さい)
1.「PRIME公開セミナー 原発の”兵器性”を考える」
   2月13日(水) 17:00-19:00
   (東京・明治学院大学白金キャンパス本館9階91会議室) 
  ※「原発は潜在的核兵器能力になるから抑止になる」という言説が一部で語られていますが、この論理は成り立つのでしょうか。むしろ、国内に原発があることは、安全保障上の一大脅威ではないか。
   講師:池上雅子(ストックホルム大学政治学部教授)
  ※主催:明治学院大学国際平和研究所  ※詳細→イベントサイト 

2.「健康相談会」
   2月18日(月)13:00-17:00(福島県二本松市・二本松勤労者研修センター)
   3月 5日 (火) (山形県米沢市・おいたまサロン 2F「ふわっと」) 
  ※鍼灸師・NPO法人ライフケアの橋本俊彦さんと小林恒司医師(心療内科)による健康相談。
  ※主催:NPO法人ライフケア  ※詳細→NPO法人ライフケアイベントスケジュール 

3.「放射能対策セルフケア講座」
   3月1日(金)-2日(土)(東京都国分寺市)  
  ※鍼灸師・NPO法人ライフケアの橋本俊彦さんによる放射能対策セルフケア10時間講座
  ※お問い合わせ:自然育児友の会  ※詳細→NPO法人ライフケアイベントスケジュール 

4.「東日本大震災・復興支援活動報告会 現場から伝えるいわきの今」
   3月2日(土)13:30-16:30(東京・ウェスレーファウンデーション・セミナールーム)
  ※いわき市におけるシャプラニールの活動報告に加え、被災者支援、復興への取り組みに尽力する地元の方々による、被災者を取り巻く現状や課題についてのお話。
  ※主催:シャプラニール  ※詳細→イベントサイト  

5.「ライフケアサロン「からだの手当てサロン」」
   3月3日(日)(福島県三春町・はしもと治療室) 
  ※からだの歪みを治す操体法、内部被曝を避ける食事方法、など予防医学を学びたい人はもちろん、ただおしゃべりしたい方、情報が欲しい方、どなたでも参加できるサロン。
  ※主催:はしもと治療室  ※詳細→NPO法人ライフケアイベントスケジュール 

6.「被災地訪問ツアー みんなでいわき!Vol.2」
   3月9日(土)-10(日)(いわき市)  
  ※津波や地震の被害を受けながら、原発事故による避難者を多く受け入れている福島県・いわき市を訪れ、そこに暮らす人々との対話を通して、現状を肌で感じてもらうための一泊二日のツアー。
  ※主催:シャプラニール  ※詳細→イベントサイト 

7.「3・11」2周年関連イベント
①3月9日(土)「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」(東京・明治公園)
 ※12:00 オープニングライブほか、14:00-15:00 集会、 15:15- パレード
 ※主催:さようなら原発一千万署名 市民の会 ※詳細→イベントサイト 
②3月10日(日)「0310原発ゼロ☆大行動
(東京・日比谷野外音楽堂、永田町霞が関一帯)
 ※13:00 集会(日比谷野外音楽堂)、14:00 デモ出発、17:00-19:00 国会前集会
 ※主催:首都圏反原発連合 ※詳細→イベントサイト 
③3月11日(月)18:30-20:30「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」(東京・品川「きゅりあん」)
 ※主催:さようなら原発一千万署名 市民の会 ※詳細→イベントサイト 
④3月11日(月)12:30ー「3・11反原発福島行動 '13」(福島市)
 ※12:30~ プレイベント、13:00~ コンサート、13:30~ 集会
 (福島県教育会館大ホール)、15:30~ 県庁前を通って福島駅前までデモ
 ※主催:3.11反原発福島行動実行委員会 ※詳細→イベントサイト
  (呼びかけ人の一人、黒田節子さんのアピールも読めます)

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◆ふくしまとつながるツアー情報
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1.学生対象ツアー「東和de夢のア~ト」2月19日(火)-21日(木)
  一般向けツアー「とうわへの一歩」2月23日(土)-24日(日)
  ※場所:二本松市東和地域、復興牧場ミネロファーム(福島市松川町)
  ※プログラム:☆ホンモノのミルクの味(福島復興牧場ミネロファーム視察)/
   ☆3・11の東和人の生き様/☆一杯のごはん(焼き物体験)/
   ☆きぼうのたね(種まき)/☆ありがとうもちつき
  ※詳細→ブログ「ふくしまの今。未来に向けて♪ 農家娘の農Life
      
2.「福島の今を知り、私たちの未来を考える2・3日間」ツアー第一弾  (HIS主催)
  ※菅野正寿さんたちの企画によるツアー。二本松市東和地区、南相馬市などを訪問。菅野さんのお話も聞けます。
  ・3月18日(月)出発の3日間
  ・3月23日(土)出発の2日間
  ※詳細→企画サイト http://www.his-j.com/kanto/corp/group/inspection/fukushima/

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◆ニュースクリップ
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1.原発事故 国を提訴へ 東京への避難者ら 東京新聞(電子版)2013年2月8日 
  東京電力福島第一原発事故で避難するなど被害を受けた東京、千葉、福島の被災者が、東日本大震災から二年を迎える三月十一日に、国と東電を相手に損害賠償を求める集団訴訟をそれぞれ各地裁に起こすことが七日、関係する弁護団への取材で分かった。弁護団によると、原発事故で国を相手に集団訴訟を起こすのは初めてとみられる。

 福島原発被害首都圏弁護団や原発被害救済千葉県弁護団によると、福島県から都内に避難してきた住民は東京地裁に、千葉県内に避難してきた住民は千葉地裁に提訴する方針。このほか別の弁護団が担当して、福島地裁と同地裁いわき支部にそれぞれ提訴するという。 福島県から千葉県内に避難して、生活を続ける被災者は約三千人に上る。
 千葉の弁護団が訴訟準備のために一月に開いた説明会には数十人が参加し、少なくとも十数世帯が原告に加わる意思を示しているという。 賠償額は算定中だが、一人当たり一千万円を超える可能性が高い。 都内への避難者は少なくとも五世帯が提訴する見込みで、さらに増える可能
性があるという。
 千葉の弁護団は、国を訴訟相手に含める理由について「国が過去に必要な規制をしていれば、事故はある程度防げた。国の責任を明らかにしたい」と説明。その上で「原発事業は国策民営の関係で、民法上の共同不法行為にあたる」と主張している。 (後略)

2.避難勧奨地点、非指定にも賠償を 伊達市民がADR申し立て  河北新報 2013年2月6日(電子版)
 福島第1原発事故で特定避難勧奨地点に指定されなかった伊達市の323世帯991人が5日、事故が起きた2011年3月からの精神的損害の賠償として、東京電力に1人当たり月10万円の支払いを求める裁判外紛争解決手続き(ADR)を原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた。
 弁護団によると請求総額は20億円規模で、同地点をめぐる集団申し立ては初めて。

 申立人は伊達市の霊山町と月舘町で指定世帯がある4地区の住民。指定世帯は東電から1人月10万円が支払われているのに、生活圏が同じで同様に放射線による健康不安を抱え、従来の生活ができなくなった非指定世帯に支払わないのは不当だと主張している。 非指定世帯は東電から1人8万~60万円が一括支給されただけで、指定世帯が受けた税の減免もなかった。
 申立人で小国地区(霊山町)復興委員会の直江市治副委員長は「指定、非指定で地域に深い溝ができた。申し立てを通じて元の姿に戻したい」と話した。

 特定避難勧奨地点は原発事故後1年間の推定放射線量が20ミリシーベルトを超す場所を政府が指定する。福島県では伊達市の117地点128世帯、川内村の1地点1世帯、南相馬市の142地点153世帯が指定され、伊達、川内の2市村は昨年12月に全て解除された。 東京電力は「申し立ての内容を把握していないが、和解手続きに従って誠実に対応したい」と話している。

◎問われる制度の功罪
 【解説】福島第1原発事故は強制避難や賠償の有無など多くの問題で被災者と地域を線引きしている。とりわけ特定避難勧奨地点は隣人同士でも指定、非指定が分かれ、地域コミュニティーの寸断を招いた。経済的支援の格差で生じた住民らのわだかまりは今も大きい。
 賠償問題は「しょせん金銭の話」と冷めた目が向けられがちだが、生活の場や生業を奪う原発事故の被害は当面、金銭でしかあがなえないのも事実だ。この点は同地点も避難区域も変わらない。

 賠償紛争であると同時に、面での指定を望んだ地元の意向に反して点での指定に踏みきり「非常に禍根を残した」(仁志田昇司伊達市長)制度の功罪も問われる。避難を勧めながら居住の継続を認めた曖昧な制度は避難した非指定世帯と、とどまり続けた指定世帯が現れるいびつな状況を生んだ。国も解決に向け、積極的に関与すべきだ。
 地元ではコミュニティー再生に向け、指定、非指定の住民らが連携を模索する動きも出ている。こうした思いをくみ、再生を後押しする決着が求められる。(福島総局・若林雅人)

3.ふるさと:原発事故22カ月 子どもに「保養」を 福島の市民団体世話人、制度化目指す  毎日新聞 2013年01月28日 東京朝刊(電子版)
 「子どもたちには汚染されていない空気を吸って、思いっきり外で遊べる環境が必要なんです」
 市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の保養班世話人、吉野裕之さん(46)は、アルバムを手に語り始めた。福島市の保育園児たちが、昨年11月に山形県米沢市に招待され、やぶを探検したり、森で木の枝を拾ったりして遊ぶ姿が写っていた。

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質は、福島県中央部を南北に流れる阿武隈川沿いの福島市や郡山市などの「中通り」地域にも広がり、子どもの屋外活動は制限された。学校などの除染は進んだが、通学路の植え込み、周囲の森などは手つかずだ。
 福島市で生まれ育った吉野さんは東京の大学に進み、90年に高級輸入品を扱う都内の会社に就職した。しかし「値段が高いことだけで価値が測れるのか」との疑問が膨らみ、約5年で退職。世界を2年かけて旅し、97年に福島市に戻った。
 その頃、チェルノブイリ原発事故で幼少時に被ばくしたウクライナ人歌手、ナターシャ・グジーさんの演奏会が同県南相馬市であり、被ばくした子らの境遇を知った。以後、支援募金を続けた。それでも、「福島で原発事故が起こるなんて考えなかった」。
 福島市の会社に職を得て、結婚。07年には長女が生まれた。「東京出身の妻も福島の暮らしに慣れてきた」。そんなさなかの原発事故だった。11年3月20日、妻(46)と長女(5)を県外へ避難させた。売り上げが減った会社には解雇されたが福島に残り、京都で母子避難を続ける妻子と離れて暮らす。

 「なぜ避難先で家族一緒に暮らさないのかと諭されたこともあります。でも、家庭の事情などで避難できずに不安を抱えながら生活している子どもたちが残っていた。見過ごすわけにはいかなかった」と振り返る。 「保養」は、そうした子どもや保護者が、週末や長期休みなどに放射線量が低い場所に移動して、被ばくを低減させ気分転換してもらうための取り組みだ。
 全国の個人やNPOなどがプログラムを作って福島の子らを受け入れている。吉野さんらのネットワークを通じた保養の利用者は5000人以上になる。 今も応募は絶えないが、民間中心の取り組みに限界も感じる。「資金面の問題もありますが、もっと多くの子どもが、被ばくを避ける『保養』に公平に参加するには学校の移動教室のような形がいい。そのためには行政の関与は欠かせません」。議員立法で昨年成立した「原発事故子ども・被災者支援法」に基づき保養が制度化されることを願っている。
 「安心して生活できなくなり、本当に悔しい。でも、待っているだけでは何も進まない。何が子どもたちにとって最善か。被災当事者の大人としてできる限りはしたいんです」【蓬田正志】

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◆その他
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1.NGO3団体 「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」設置
  国際環境NGO FoE Japan、福島老朽原発を考える会、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)の3団体が、東京電力福島第一原発事故に伴う住民の健康管理の在り方や、被ばく基準などに関して、独立した検討を行うことを目的とした市民・専門家委員会を設置しました。
  関連資料→http://www.foejapan.org/energy/news/130130.html#02

2.「原発事故子ども・被災者支援法」関連  
  原発事故子ども・被災者支援法市民会議のサイトに、1-3月の全国各地の「支援法」勉強会のスケジュール、「支援法」基本方針に関する国への要望と提言資料が掲載されています。
  サイトはこちら→http://shiminkaigi.jimdo.com/

3.JANICが「ふくしま」を英語で発信するサイトFukushima on the Globeをオープン
  地震と原発事故の基本情報、市民運動、NGOの支援活動、ビデオなどを掲載しています。
  サイトはこちら→http://fukushimaontheglobe.com/

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『福島と生きる』メールマガジン第4号(2013年2月10日発行)
※『福島と生きる』メールマガジンは、『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』の共同執筆者の団体や活動の関連情報を発信していきます。
発行人=中野憲志・藤岡美恵子
(『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』共編者)

2013年2月9日土曜日

東電の虚偽説明が証明する「福島第一原発は止まらなかった」という真実

東電の虚偽説明が証明する「福島第一原発は止まらなかった」という真実

昨年3月、国会事故調査委員会が福島第一原発1号機の非常用復水器(IC)の現地調査をしようとした際、東電が委員会に虚偽の説明をし、調査の断念につながったことが明らかになった。実際には調査できる状況だったにもかかわらず、東電が「照明もなく、パニックを起こしかねないほど真っ暗」などと説明したというのである。事故調の元委員、田中三彦氏が明らかにしたという。

 高知新聞が報じているように、国会事故調は「原発が津波に襲われる前に、地震による揺れでICや関連配管が壊れた可能性があると見ている」。これに対し、東電は、「急激な温度低下のために運転員がマニュアルに従って手動で止めたと説明」。しかし、「事故調は報告書で「地震直後にIC配管のそばにいた複数の作業員が、原因不明の水漏れを目撃している」として東電の主張を退けた」という経緯がある。

 「原因不明の水漏れ」とは何か? 地震によるICの、おそらくは配管接合部などの破損による、「水漏れ」のことだ。 つまり、東電が当初説明した「マニュアルに従って手動で止めた」そのものが虚偽の説明ということになる。
 今必要なことは、先月、衆院に設置された原子力問題調査特別委員会に「原因不明の水漏れ」を「目撃」した「複数の作業員」を召喚し、一から聞き取り調査をやり直し、その内容を全国民に明らかにすることである。 責任逃れと原発維持のために止まらなかったものを「止まった」と、組織的で計画的な嘘をつき続ける東電を放置してはならない。

 問題は、1号機の非常用復水器(IC)はとどまらない。国会事故調に対する東電の虚偽説明がはらんでいる事の重大性を再認識するために、2011年10月31日に書いた「福島第一原発は「止まった」か?」を再掲したい。福島第一原発は止まらなかったのである。

 それにしても、田中氏は、なぜ今頃になって、この事実を明らかにしたのか?
 その真相も含め、明らかにしてもらいたいものだ。

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福島第一原発は「止まった」か?

 「原子力発電の安全性」「核燃料サイクルコスト」「事故リスクコスト」などを議論した原子力委員会の「新大綱策定会議」(第8回)の議事録に目を通していた。
 しかし、これから書くのは第8回会議ではない。第6回会議(9月27日)についてである

 その中でも、最も強い違和感を覚えたのが――原子力委員会や安全委員会の議事録に違和感を覚えるのは、何も今に始まったことではないのだが――相澤東電副社長(原子力立地本部長)による、「東京電力福島原子力発電所事故以降の原子力を取り巻く状況について」なる「報告」である。
 福島第一原発のメルトダウン→メルトスルー過程を、相澤副社長は次のようにまとめている。

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 通常時、原子力発電所では、「止める、冷やす、閉じ込める」の三つの安全機能を確保しておりますが、福島第一原子力発電所においては、全号機で地震発生と同時に全制御棒が自動的に挿入され、原子炉の核反応が止まり、「止める」機能は確保されました
 しかしながら、地震により送電線等が損傷し、非常用発電機が起動しました。

 その後、津波の浸水によりこの非常用電源が使用できない状態となり、全ての交流電源が失われた結果、最終的に原子炉と使用済燃料プールの「冷やす」機能を失うことになりました。
 更に、1から3号で、炉心が損傷し、建屋や圧力容器、圧力抑制室の損傷もあり、タービン建屋内に高レベル汚染水を確認しており、「閉じ込める」機能も失われたということになるわけでございます。
 (中略)
 次の14ページでございます。事故の概要は、以上ご説明のとおりでございますが、これからご説明いたします収束への取組みも含め、その結果として福島第一原子力発電所の最新状況はこの表のようになっております。
 「止める」は止まっておりますが、「冷やす」、これにつきましても原子炉、プールともそれぞれ安定的な冷却はできており、2号機の原子炉以外は安定的な冷却の状態になっており・・・・
・・

 福島第一原発は、東電が言うように、また原子力ムラの面々がそのように言い、ほぼすべてのメディアがそのように報道してきたように、本当に「止まった」のだろうか?
 (たとえば、3月13日の毎日新聞の記事、「東日本大震災:福島第1原発 東電「想定外」に批判の声も」も、「原発の安全対策の至上命令は「止める」(緊急停止)「冷やす」(炉心の過熱を抑える) 「閉じ込める」(放射性物質が漏れ出さないようにする)の三つ。今回、1号機が実行できたのは、最初の「止める」だけだった」と書いている。)

 原発が「事故」を起こした際に、「止まる」とは何を意味するのか?
 それは、具体的に、どのような状態において、何が「止まる」ことなのか?  
 私は、福島第一原発は「止まらなかった」と考えている。このブログでも、そのように書いた。
 福島第一原発大災害を経て、これまで「常識」とされてきた原発の「「止める、冷やす、閉じ込める」の三つの安全機能」の定義そのものを抜本的に再検討する必要がある。このことはストレステスト→再稼働の動きが具体化し始めた今、きわめて重要な課題になっている、と思うのだ。

 原発が自然災害や人為的過失によって「止まる」とはどういうことか。
 とりあえずは冒頭の第6回会議の議事録に目を通し、(再度)考えてみてほしい。


 しかし、その説明に入る前に、なぜ福島第一原発が「止まった」かどうかが重要な問題なのか、裏返して言えば、なぜ東電が「止まった」ことにこだわり、それを強調するのかについて簡単に触れておきたい。
 実は、それを解く鍵も議事録の中に隠されている。たとえば、相澤副社長の次のような発言である。

・・
 総じて申し上げますと、これまで原子力発電所は安全規制をクリアすることはもちろん(!)でございますし、国際的な最新の知見を随時反映する努力、あるいは定期安全レビュー、アクシデントマネージメント等のリスク低減の活動を講じてまいりました(!)。福島第一でも、重要免震棟の設置、あるいは消防車の配置等ということは中越沖地震の経験を踏まえて対応したものでございます。 こういったものがあったからこそベント、あるいは注水作業などを一生懸命継続してやることができた(!)わけでございます。

 しかし、今回、襲来いたしました津波はこうした取組みをはるかに凌駕するものであったため結果としては多重に設置している安全系設備の機能をほぼ喪失する事態に陥り、懸命の復旧努力にもかかわらず連鎖的に被害が拡大いたしました。今回の事故を真摯に返り見ますと、発生頻度が少ないとは言え、巨大津波という自然現象の前では人知の及ばない想定外のことが起こり得るということを謙虚に受け止めるべきと考えております。
 このような事態を再び招かないためにも多重の安全機能を同時喪失した場合でも、炉心の損傷を防止できる柔軟な対応力(?)というものを備えていかなくてはいけないというふうに考えている次第でございます。
・・

 従来の東電の発言との関係で言えば、ここで相澤氏が言っていることに特に何か新しい内容があるわけではない。問題は、なぜ東電がこういう発言を、何度も何度も、くり返すのか、また私たちがこうした発言から何を読み取るのかにある。その上で、話は「3・11」直後のブログの内容に戻るのだが、「で、東電をどうするのか?」ということに。 問題を整理しよう。

「止まった」という言説と東電(原発企業)の賠償・補償責任

  内閣官房原子力経済被害対応室、北川室長。

・・
 まずは、原子力損害、これは事故が起こりまして、大変な被害が発生してございます。この被害額、まだ全容が分かってございませんが、何兆円という規模になると考えてございます。一方で、避難者、被害者が多数出てございますので、迅速かつ適切な賠償を進めていくことが必要だと考えてございますので、早急に対応していくということでやってまいりました。
 これまで、事故前でございますけれども、我が国には原子力損害の賠償に関する法律がございまして、これは昭和36年に制定されているものでございます。後ほど申し上げます様々な施策はこれを基盤にいたしまして組まれてございますので、まずこの説明からいたします。

 この法律におきましては、原子力事故がございますと、原子力事業者、電力会社でございますけれども、無過失・無限の責任を集中して負うということになってございまして、この事故に伴いまして、誰が悪いとか、どれぐらいしか払わないとか、そういうことを考えずに、ともかく迅速に賠償を進めるという発想から、このような組立てになってございます。
 ただし、異常に巨大な天災地変等により原子力事故が生じた場合には、原子力事業者は免責となってございますが、その際は、賠償責任を負う者が不存在になってしまうということになってございます。これは非常に例外的なケースでございまして、今回の場合には、それには当たらないという整理で議論を開始してございます。

 その場合、現在のところでは、原子力事業者と政府との補償契約によりまして、1,200億円を原子力事業者に補償するということになります。しかし、今回の事故のように巨大でございますとそれを超えるのは明らかでございますが、この原子力損害賠償におきましては、それを超える場合には政府は必要な援助を行うこととされてございます。この具体策は特に規定されてございませんので、それを今回考えてきたということでございます。
 一方、この法律の中には、具体的に損害の範囲というのは何かということを考えるために、原子力損害賠償紛争審査会、これは文科省の審議会になりますけれども、これを規定してございます。この審査会において、どの範囲であれば原子力損害であり、賠償となるかどうかということを決めていくと、こういう構造になってございます。
・・

 ここには、政府(内閣官房)と東電(電力業界)との間の、原発災害時における賠償・補償責任をめぐる銭勘定・感情上のある種の緊張関係と同時に、原発災害の共同正犯としての両者の間の、ある種の馴れ合いの構造が見事に表現されている。 その「構造」とは、言うまでもなく、「国民」、納税者に賠償・補償責任を転嫁しようとする、そのような「国策・民営」の原子力行政における政官財"boys'club"の馴れ合い構造を指している。

【参考資料】
●「原子力損害の賠償制度について」(文科省 2003年4月)
1.我が国の原子力損害賠償制度(「原子力損害の賠償に関する法律」及び「原子力損害賠償補償契約に関する法律」)の概要
[法律の目的]
被害者の保護及び原子力事業の健全な発達
[法律の主な内容]
・原子炉の運転等による原子力損害につき、無過失・無限の賠償責任を原子力事業者に集中
*異常に巨大な天災地変及び社会的動乱によるものは免責。)
・原子炉の運転等につき責任が集中されている原子力事業者に、損害賠償をするための措置
(責任保険等)を講じることを義務付け(原子力発電所の場合は600億円)。
・賠償措置額を超えた原子力損害が発生した場合は、国会の議決により政府に属せられた権限の範囲内で政府が必要な援助。
・・・・・
 
 11/2
 前後して申し訳ないが、「「冷温停止」状態にある福島第一1、2、3号機で核分裂、キセノン検出?」の続きとして読んでほしい。

 ここまでの説明によって、次の二つのことが理解できたと思う。

 一つは、東電が「無過失・無限の賠償責任」を回避するために、福島第一原発「事故」は「異常に巨大な天災地変」によるものであり、自社の「安全対策」は機能していた、すなわち地震発生当時において原子炉はすべて「止まった」のだと主張し、政府・経産省・文科省、原子力ムラも、当初的な発言のブレはありつつも、基本的には同じ論理によって東電を、原子力事業を温存させたまま、救済しようとしてきたことである。

 ここで着目すべきは、「この事故に伴いまして、誰が悪いとか、どれぐらいしか払わないとか、そういうことを考えずに、ともかく迅速に賠償を進める」という内閣官房原子力経済被害対応室、北川室長の発言である。要するに、東電も政府も「悪く」はなかったのだ、それは問わないのだ、「迅速」な賠償支払いのために税金を投入する、という発言である。

 もう一つは、福島第一が地震に耐えることができた、という上の解釈が、現在稼働中の原発の、実際には対策になっていない「緊急安全対策」の根拠およびその前提になっていることである。
 では、福島第一原発がもたらした大災害、メルトダウン→メルトスルーと地震はいかなる関係にあるのか?

福島第一原発災害と地震

 第6回会議(9月27日)に出席した、原子力資料情報室の伴氏。
・・
 今回の事故の原因というのは津波という点に集約していいのかどうかということですね。 予想を超える想定外の地震や津波というふうに言われているわけですけれども、よくよく見ていけば、本当に想定外だったのかどうなのか
 また、地震について、岩波の科学の9月号に、第一原子力発電所の1号機について東京電力が発表しているさまざまなデータをもとに分析した結果、そもそも地震が決定的な事故の引き金になっている可能性が高いと、こういうふうな論文が出ていますし、2号機の爆発についても原因は地震以外考えられない。

 先ほど、機器は十分に揺れに耐えたと計算をした結果として言われていますけれども、これについては非常に詳しい結果、あるいはどういう前提のもとにされたのか知りたいところはあります。少なくとも130秒から150秒でもう地震の記録がないわけですから、そういうことを考えていくと、まず耐震バックチェック、今行われているわけなんですけれども、その見直しから始めないといけないというふうに今考えるのです。津波対策さえすればよいで終わってしまっています。

 今日の話ですと、ベントのことも出てきていますが、ではベントにフィルターをつけるということは一言も書いていない。こういうことで本当に進めていって、あるいはその定期検査を終わったやつから順番に運転を再開していっていいんでしょうか。極めて深い疑問がありますし、ひょっとしたらそんなことをやっていたら間に合わないことだってあるわけですよね。
 ちょうど前の策定会議のとき、2004年ですか、関西電力の美浜原発で蒸気管が破断でして11名が死傷した事故がありました。それも一、二週間で定期検査に入る予定だったが、間に合わなかったわけですよね。そうしてこういう事故が起きたわけです。

 そういうことを考えると、いろいろなことをされると思いますけれども、運転を継続したまま耐震のバックチェックをやり直すとか、今、安全委員会は指針の見直しということをやろうとしていますし、そういったことはもちろん、やるべきではあるんですが、運転を継続したままやっていて本当に事故を防げるのか。そこはもっときちっと受けとめて反省をしていただきたいというふうに思います。

 電力が足らないというのも大変なことだとは思いますけれども、今回の事故でも原子力委員会に出されている報告、試算見積もりでは最大20兆円、これはさらに超えるかもしれません。それぐらいの損害が出るということです。それは国民一人当たりにしたら17万円ですよね。1カ月1,000円、電気代が上がるのと比べてははるかに高い金額を―1年で17万円ということではありませんけれども―払わないといけない。これで次の事故が起きたらどうなるのかということはもっと深刻に考えて、まず耐震安全性はどうだったのか、地震はどうだったのかというところの見直しから始めていかなければならない。こういうふうに今思います。
・・

 私も、 「こういうふうに今思います」。
 しかし、「馬耳東風」と言うべきか、伴氏のこうした提言は、原子力ムラの"boys' club"には届かない。その結果が、玄海原発4号機の再稼働強行だったわけである。

 福島第一「事故」と地震との関係について、もう一点、紹介しておきたいものがある。 それは、今では忘れ去られた観のある、新聞メディアが5月に報じた冷却配管の破損問題である。毎日新聞の記事より
・・
 福島第1原発3号機で、緊急停止した原子炉を冷やすのに必要な装置の配管が破損した可能性があることが、東電の解析で(5月)25日分かった。
 配管は津波の影響を受けにくい原子炉建屋内にあり、地震の揺れが原因の可能性が強い全国の原発で耐震設計を見直す事態に発展する恐れもある

 この冷却装置は「高圧注水系(HPCI)」と呼ばれる。原子炉圧力容器から出る高温の蒸気でタービンを回し、それを動力として建屋外の復水貯蔵タンクからポンプで水をくみ上げ、圧力容器内に強制的に注水する仕組み。
 解析によるとHPCIは圧力容器内の水位が低下した3月12日午後0時35分に起動し、13日午前2時42分に停止した。しかしこの間に、圧力容器内の圧力が約75気圧から約10気圧まで急減。HPCIの配管が破損して蒸気が漏れたと仮定して計算した結果と、圧力減少のデータがほぼ一致したことから、破損の可能性があるとした。【河内敏康、岡田英】
・・
 
 高圧注水系(HPCI)とは、原子炉の水位を保つための緊急炉心冷却システム(ECCS)の一つのことだが、記事にもあるように、配管は安全上最も重要な設備に区分され、津波の被害を直接受けない建屋の中にある。
 しかし、東電は7月28日になって、奇妙なことに、そしておそらくはHPCI破損と地震との関係を否定するために(これは私の憶測に過ぎず、実証されたわけではないが)、「破損はなかった」と前言を翻してしまう。私たちが確認しようのない、そして東電が具体的な事実関係を明らかにしていない、「当時、配管付近で作業していた者がいた」ということを根拠に。
 同じく、毎日新聞の記事(毎日新聞電子版からは抹消)。
・・
 東京電力は28日、福島第1原発3号機で、緊急停止した原子炉を冷やすのに必要な「高圧注水系(HPCI)」の配管は破損していなかったとする新たな解析結果を公表した。東電はこれまで、3月11日の地震の揺れなどによってHPCIの蒸気が通る配管が破損した可能性があるとの見方を示していた。
 3号機では3月12日、HPCIが起動後の約6時間で圧力容器内の圧力が約65気圧下がった。HPCIの配管が破損して蒸気が漏れたと仮定すると圧力減少の説明が付く計算結果が得られたことから、東電は5月に破損の可能性を公にした。

 しかし、その後の調査でHPCI停止直後、配管付近に運転員が立ち入ったことや、流量調整をしていたことが判明。蒸気が漏れれば人が入れないほど高温になることなどから「配管が破断し大量の蒸気が漏えいしたとは考えられない」と結論付けた。
 また、東電は28日、東日本大震災の揺れが福島第1原発1、3号機の機器に与えた影響についての解析結果をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。圧力容器や燃料集合体などで設計時に想定した最大の負荷を超えたが、「余裕を持たせた設計の範囲内」(?)とした。【八田浩輔】
・・

 けれども、それではなぜ、格納容器の急激な圧力減少があったのか? 「余裕を持たせた設計の範囲内」は何の解答にもならない。
 私たちは、東電からも政府対策本部からも、未だこのことに関する納得できる説明を受けてはいない。

で、福島第一原発は「止まった」か?

 止まらなかった。
 「止まった」(「自動停止」した)、と政府・東電、原子力ムラの面々は言うが、止まらなかったのである。
 たとえば、ここに日本原子力学会が3月18日に発表した「国民の皆様へ 東北地方太平洋沖地震における原子力災害について」と題された声明がある。
 これが「3・11」から1週間も経た後の声明であることを念頭に置きつつ、太字強調部に注意しながら読んでみよう。

・・
 この激甚災害の中で、福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所ではマグニチュード9.0という巨大なエネルギーの地震による揺れと津波の被害を受けました。
 これらの発電所では運転中の原子炉は設計どおり自動停止したものの、福島第一発電所では、非常用ディーゼル発電機が起動したにもかかわらず、すぐに停止し、外部電源を含めた全電源が喪失する事態に陥りました。その後の炉心冷却過程に於いて必死の機能回復操作にもかかわらず多量の放射性物質が環境に放出され、一般住民や関係者の放射線被ばくを招く結果となっています。 (中略)

 今回の地震の規模は当初の想定を超えており、また津波についても、近隣の相馬市で観測された津波の高さは7.3mを超えていることから、福島第一発電所においても想定をはるかに上回る津波が押し寄せたと考えられます。
 この結果、非常用ディーゼル発電機が機能せず、冷却用海水系統も使用不能となりました。すなわち「止める」「冷やす」「閉じ込める」の安全機能の一部が破綻し特に「冷やす」機能の喪失が燃料の破損を伴う深刻な事態を招いています。さらに炉心にある燃料はもちろんのこと、燃料保管プールに取り出されていた燃料も、冷却機能が失われた結果、燃料が破損する事態を招いています。
 また、格納容器内の圧力低減操作も行われていますが、放射性物質や放射線を「閉じ込める」機能についても懸念される事態となっています・・・・
・・

 「3・11」以後1週間の間に生起したすべての事態を直視した上で書かれた上の一文、日本原子力ムラの中枢たる日本原子力学会のこの「声明」は、「結果は結果としてそれなりに受け止めざるをえないが、ぼくたちは間違っていなかった。正しかったし、今でも正しい。反省なんかするもんか」という全国民に向けた、殊勝な開き直り宣言である。
 運転中の原子炉は「設計どおり自動停止した」し、非常用ディーゼル発電機も、計画どおり「起動した」。「にもかかわらず」、今回の地震と津波の規模が「当初の想定を超えて」いたから、放射性物質や放射線を「閉じ込める」機能について、「懸念される事態」となっている・・・。
 あくまでも、学会にも東電にも責任はない、すべては「マグニチュード9.0という巨大なエネルギーの地震による揺れと津波」のせい、と言っているのである。
 そして悲しいかな、「日本の原子力研究の最高権威、日本原子力学会が会長名でそう言うのだから」と、疑うことを知らない一般人やマスコミの記者たちは、学会の見解や声明を鵜呑みにし、垂れ流してしまう・・・。

「成就された結果は前提を廃棄する」
 では、このような「止まった」=「自動停止」論のどこに問題があり、何が間違っているのか?
 それは、①「止める」、②「冷やす」、③「閉じ込める」を、それぞれが独立した、あるいは時系列的に段階化された、別々の「安全対策」装置であるかのように論じているところにある。
 たとえば、「三重の安全対策」といった表現、また「②「冷やす」、③「閉じ込める」は失敗したが、①は成功した」という「事故分析」をめぐる言説も、そうした把握に基づいている(そうした把握を助長する)と言ってよい。(ここで安全・保安院が、津波に襲撃されるまでは①、②、③すべてが機能していた、と言っていることに注意しよう}。

 しかし、少し考えて見れば誰にでも理解できるように、メルトダウン→メルトスルーを起こした原子炉が、「②「冷やす」、③「閉じ込める」は失敗したが、①は成功した」と言うこと自体、まったくのナンセンスであるばかりでなく、自己欺瞞と他者欺瞞もはなはだしい。
 「冷温停止」をめぐる私の議論を知る読者は、すでに理解されたと思うが、それはこういうことである。

1、相澤東電副社長は、このように言った。「福島第一原子力発電所においては、全号機で地震発生と同時に全制御棒が自動的に挿入され、原子炉の核反応が止まり、「止める」機能は確保されました」。

 まず、この説明からしてがデタラメである。なぜなら、仮に「地震発生と同時に全制御棒が自動的に挿入され」たとしても、そのこと=制御棒の挿入は「原子炉の核反応」の停止を意味するのではないからだ。
 原子炉(=「核分裂→核爆発炉」)の「停止」を、何かパソコンや冷蔵庫の電源を切る→作動停止と同様のものであるかのように表現することは、単にそれが事実と違うということばかりでなく、原発の基本的メカニズムの誤った知識を流布するという意味において犯罪的である。

2、原発とは、核兵器とは違う意味において、制御された核分裂→核爆発が生み出す「エネルギー」を「電気エネルギー」に置換する、きわめて特殊な「発電装置」である。原発が稼働中=操業中であるということは、原子炉内が臨界状態にあるということであり、原子炉を停止するということはこの臨界状態を停止することである。
 緊急事態時における制御棒の強制挿入は、その最初の動作に過ぎず、原子炉の安定的停止(=「止まる」)に向けたプロセスはその瞬間から始まると言ってよい。 

3、ここで 稼働中(=原子炉が臨界状態にある)原発を緊急停止するということは、核燃料そのものは「使用中」状態にあることに注意する必要がる。つまり、臨界状態で核爆発を繰り返していた使用中核燃料に、制御棒を挿入することによって放出中性子を吸収・コントロールし、再臨界状態を起こさないようにするわけである。
 このプロセスにおいて絶対不可欠なのが、「冷やす」という作業である。つまり、①「止める」、②「冷やす」は、互いを分離できるような作動ではなく、一体化したもの、この二つが同時的に進行しなければ原子炉は「止まらない」のである。
 当然、「閉じ込める」にも失敗する。核爆発の破壊エネルギーを吸収し、それにも耐えられるような格納容器が設置されているのでなければ。たいていは、「最後の最後の手段」としてのベントによって格納容器、と言うよりも原発施設の破壊を防ごうとする。東電は、そのベントにも失敗したのだけれども・・・・・。

 おそらく、政府の「事故調査」の「最終報告」も、福島第一原発は「止まった」ものとして、「安全対策のさらなる強化」を「提言」するものなるだろう。
 私は、今回の原発大災害において福島第一が止まらなかったのは、「想定外」の地震と津波に原因があったのではなく、それ以前的な、遵守すべき様々な「安全対策」を東電が怠り、それを安全・保安院と原子力安全委員会が黙過し、放置してきたことにあると考えている。

 この問題は、いずれまた機会があれば整理したいと思うが、それを考えるためにも、稼働中原発の「安全対策」なるものが、実態においてはもちろん、考え方においても方東日本大震災を前提したものには、まったくなっていないことを理解しておかねばならない、と思うのだ。

 どれを取り上げてもよいのだが、ここでは福井県が発行したものを紹介しておこう。「3・11」を経た今日、「安全対策」の理念と現実との乖離に気絶しそうになるが、それがリアリティであるということも含めて私たちは現実を受け止めざるをえないだろう。 廃棄されるべきは、
第一に、以下に書かれているような「安全対策」論であり、
第二に、「合理的に達成可能な」「安全対策」でやむなしとする原発建設のあり方であり、そして
第三に、ポスト「3・11」状況において「安全対策」なき原発が稼働している現実なのである。 

【参考文献】
●「原子力発電所の安全確保対策」(「福井県の原子力」別冊「第四章」)
1.安全確保対策
(1)安全確保の基本的考え方
(2)原子炉の自己制御性
(3)原子力発電所の地震対策
(4)高経年化対策
(5)安全性確保の高度化に向けた取り組み
2.原子力発電所の事故・故障と対策
(1)事故・故障件数の推移
(2)事業者における事故・故障防止対策

「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「で、私たちは原発をどうするのか?--原発の「合理的に達成可能な安全水準」は安全を保証しない 」(3/30)

・・・
原発安全対策の妥当性議論 保安院、専門家の意見聴取会
 枝野幸男経済産業相は17日、福島第一原発の事故で得た技術的な課題を取りまとめて、全国の原発に反映させるため、専門家から聞く意見聴取会を原子力安全・保安院に設置すると発表した。(10月)24日に初会合を開き、来年1月にも中間報告をまとめる。
 意見聴取会は田中知・東京大教授ら専門家8人で構成。これまでに判明した原発事故の経過を整理し、技術課題を体系的に取りまとめ、政府の原発事故調査・検証委員会が年内にまとめる中間報告を踏まえ、来年3月までに最終報告を出す。(朝日)
 ↓
 こんな「意見聴取会」を新たに設置するのは、「科学的」には何の意味もないし、経済的にはただの税金の無駄使いに過ぎず、政治的には経産省の巻き返しと政策決定の遅延化をもたらすだけである。
 また田中氏も「止まった」論者の一人で、原子力ムラの総本山、東大の原発推進論者の一人
・・
 今回の原子力災害は、冷却機能の喪失によって被害が拡大いたしました。原子力エネルギーの安全利用の前提条件となる「止める」「冷やす」「閉じ込める」のうち、「冷やす」能力が欠如したことにより「閉じ込める」機能までもが不完全な状況に陥ってしまったことは、安全システムの基本にかかわる大きな一石を投じることになったと考えます。
 (中略)
 地震による津波被害は甚大なものでありました。しかしながら、そもそもの安全確保の考え方が適切ではなかった可能性があることを真摯に受け止めなくてはなりません。原子力エネルギーが人類のために役立つためには今後はあらゆる事態に直面してもなお対応が可能な、頑健なシステムを持つことこそが求められております。
・・

 「あらゆる事態に直面してもなお対応が可能な、頑健なシステムを持つこと」は不可能だということを前提に、私たちは東電をどうするかとともに、原発をどうするかを考えざるをえない。
 しかし、 田中氏が「拠点リーダー」を務める、グローバルCEOプログラム、「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」は、そういう前提には立たず、プロメテウス的意思をもって、世界の原子力産業を「先導」しようとする。

日本の原子力産業と研究開発は海外進出・国際化という歴史的転回点にあります
 社会の中の原子力問題の解決をはかり、原子力新世紀に対応できる人材を育成する必要があります。原子力社会学を含む体系的原子力教育の基礎の上に原子力社会学、原子力エネルギー、放射線応用3つのイニシアチブを一体的に推進し、豊かで安心な社会の実現に貢献します。
・原子力社会学教育研究イニシアチブでは学内外との連携により原子力法工学、核不拡散、(核)技術と社会の調和(?)を教育研究します。
・原子力エネルギーイニシアチブは未来型エネルギー・放射性廃棄物と核燃料リサイクル・原子力プラント保全工学を分野複合・統合の教育研究により展開します。
・放射線応用は医学・生物のみならず原子力エネルギーへ放射線技術の応用を展開します。
・本プログラムは日本原子力界の中核を担う人材を供給し、基礎研究において優れた成果を挙げてきた東京大学原子力グループの教員を中心に、文理の学際複合領域である原子力の特徴を世界に先駆けて教育研究に取り入れ、世界第1級の教育研究拠点形成を図るとともに、未来の原子力の展開を担う人材の育成を目指します・・・。

 結構な話だが、少なくとも私が生きる社会は「東大原子力グループ」に「先導」されることは御免蒙りたい。 
 果たして、どのような中間報告と最終報告が出てくるか。楽しみにしていよう。 

セシウム放出量「政府推計の3倍」 欧米の研究者ら
 東京電力福島第一原発の事故で大気中に放出された放射性セシウムは、内閣府の原子力安全委員会が公表した推定値の3倍になるとの試算を、ノルウェーなど欧米の研究チームが発表した。チェルノブイリ原発事故の放出量の4割にあたるという。大気物理化学の専門誌に掲載された。
 研究チームは国内の測定データのほか、核実験探知のために設置された北米や欧州などの測定器のデータを使い、事故が起きた3月11日から4月20日までのセシウムやキセノンの放出量を分析した。  セシウムの放出量は約3万5800テラベクレル(テラは1兆)で、原子力安全委の試算値1万1千テラベクレルの約3倍。降下物は大部分が海に落ちたが、19%は日本列島に、2%は日本以外の土地に落ちた。

 キセノンの放出は地震で原子炉が緊急停止した直後に始まったとみられ、原発が地震で損傷した可能性があるという。  

 4号機の使用済み核燃料プールへ注水を開始した直後から放出量が激減したといい、プール内の核燃料が損傷して放出された可能性を挙げた。ただ、燃料の外観が保たれていることは東電の調査で確認されている。
 研究チームは、これらの分析結果は、測定データが不足し、放射能汚染で信頼性の高いデータが得られないことなどから、不確かさを伴うとしている。
 今年5月にも、核実験の監視システムなどのデータをもとに、福島第一原発で原子炉の停止後に連鎖的な核反応が再び起きた「再臨界」の可能性が指摘されたが、その後、データが訂正されたことがある。 (朝日)
・・

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?
⇒「「揺れは想定内、津波は想定外」?? --東電の「中間報告書」と「検証委員会」の無責任

2013年2月6日水曜日

進化する琉球独立論

進化する琉球独立論

 私は琉球独立論の支持者の一人であるが、昨日、共同通信が気鋭の琉球独立論者であり、友人の一人でもある松島泰勝氏の非常に興味深いインタビュー記事を配信した。

 民主党政権でも、自民党政権でも「普天間問題」や「オスプレイ問題」のみならず、「琉球の一揆」を解決できる見込みはない。
 
 では、どうするのか? 独立しかない!
 今日、琉球独立論は、とりわけ若い世代の琉球人に徐々に、しかし確実に広がっているように見受けられる。松島氏も記事の中でそのように語っている。

 「パレスチナ問題」と呼ばれるものが、実は「イスラエル問題」であるように、「琉球問題」も実は「ヤマト問題」だと言うべきかもしれない。
 「本土による琉球差別」がしきりに語られる今、問われているのはむしろ「私たち」の側なのではないか。

 琉球独立論者の主張、その理論を「私たち」は真剣かつクリティカルに分析し、「琉球独立の道」をともに議論すべき時を迎えているようである。
 以下、松島氏主宰のブログ、「ゆいまーる琉球の自治」より転載する。

・・・・・・・

 昨日全国各地の「地方紙」に掲載された私のインタビュー記事をご紹介します。琉球独立に関する議論がさらに盛んになればと思います。

 琉球の植民地支配に対する様々な問い、抵抗の一つに琉球独立運動があり、現在の琉球の日米に対する抵抗、異議申し立てはだれも止めることはできません。
 また「学者が琉球独立を語らない」というタブーを破り、学問的にも成立する議論にすべく、琉球民族の仲間と話し合っています。インタビュー記事にしてくれた石山さんに感謝します。

―昨年出版の著書「琉球独立への道」で沖縄の独立を学術的に論じた。これまでの独立論は「居酒屋談義」にすぎない印象だったが。

「米軍基地負担の軽減がいっこうに進まない中、具体的な研究は進んでいて、一般の琉球人も参加する『琉球独立総合研究学会』が5月発足の準備を進めている。基地をなくすだけでなく、経済、文化にわたる植民地的状況から脱する方法を考えるとこの道に至る」

―興味深いが、現実的な選択肢だろうか。

「国連憲章や国際人権規約は人民の政治的自己決定権を認めており、琉球が決めれば独立に進むんです。住民投票で過半数の賛成を得て独立宣言を出し、国連に加盟申請する。パレスチナのように時間をかけて国家として承認してくれる国を増やせばいい。
 その過程で日本の承認はいらない。イスラエルはパレスチナを承認していないけれど、国連は昨年11月、パレスチナを『オブザーバー組織』から『オブザーバー国家』に格上げした。太平洋のパラオは人口わずか2万人だが、1994年に独立した。スコットランドは英国からの独立を問う住民投票実施を決めている」

▽「非自治地域」
―独立が沖縄の多数派意見になり得るのか。

 「琉球大の2007年の県民世論調査で独立支持は21%だったが、今はもっと高いはず。国連の脱植民地化特別委員会の『非自治地域』リストにはグアムなど16地域が載っている。県議会がリストへの登録要請決議を採択することも必要になるでしょう。フランス領ポリネシアの議会は、11年にそういう決議を出している」

―自立は可能か。
「沖縄県が徴収している国税と地方税の総額は約3900億円。本社が県内ない企業への課税権は今はないが、独立すれば課税対象にできる。現在の財政規模よりいったん少なくなったとしても使途は自由になり、本当に有効な経済政策を打ち出せる。
 復帰後、沖縄県には振興開発で総額約10兆円が注がれたが、IT特区などの政策はほとんど失敗した。基地を押しつけるためだけで、中央官庁が中途半端な政策を採用してきたからだ」

「既に返還された米軍基地跡地では税収、雇用とも飛躍的に伸びている。那覇の新都心おもろまちなどがいい例。基地労働者の給与など基地関連収入は県民総所得の約5%まで低下、基地労働者は県就労者の約1・5%にすぎない。
 一方、基地は県面積の1割を占め、交通の要所に陣取っている。なくなった方が経済効果は大きいんです

▽ASEANに加盟
―独立後、「琉球国」の外交・安保政策は?
「太平洋島しょ国フォーラム(PIF)、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟し、安保は非同盟、非武装で行く。日本とは友好関係を築き、両国民が互いに自由に往来、就労できるようにする。今は琉球の位置が基地を置く理由にされているが、この『地理上の不幸』を幸福に変えたい。かつて交易で栄えた琉球王国のように」

「たとえば、与那国島と台湾との距離はわずか約110㌔だが、定期船もない。国際港開設を何度か日本政府に申請したが、港の大きさなどから税関や入管を置くことはできないと却下されてきた。戦後の一時期、与那国は台湾との交易で人口が2万人近くに達したが、今は2千人未満で自衛隊誘致の話が出ている。そういう状況に追い込んだかのよう。地政学的有利さは中央集権では活かせないんです」

―非武装では中国の軍事的野心を刺激するとの指摘がある。

「国際法が整備された現代において、そのような想定をすること自体がおかしい。チベットなど既に国内に多くの民族問題、独立運動を抱える中国が琉球に手を出すはずもない。ただ、あまり経済的に中国に依存しない外交姿勢は必要です」

―尖閣諸島の領有権問題については?

「尖閣はかつて琉球人が中国に通うときの航路標識代わりに使い、中国以上に琉球との歴史的関係が深い。日本はその琉球を併合して尖閣を領有しているわけだが、国有化で危険な状況を作り出した。武力衝突が起きたら戦場になるのは琉球の島々。
 尖閣を戦争の起点とせず、平和を創造する起点にする方向で解決を探るべきです」
×   ×    
まつしま・やすかつ 64年、沖縄県・石垣島生まれ。気象台勤務の父の転勤で同県・南大東島、与那国島などで育つ。97~2000年に在グアム総領事館、在パラオ大使館で専門調査員。著書に「沖縄島嶼経済史」「ミクロネシア」など。

共同通信編集委員室・石山永一郎

【参考サイト】
安倍内閣に対する沖縄の「建白書」全文 (「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」事務局)

4/1
「琉球独立」を議論 研究学会、5月15日設立
 琉球の島々に民族的ルーツを持つ人が、琉球独立を前提とした研究や討論、国際機関への訴えなどの取り組みを進める「琉球民族独立総合研究学会」が5月15日、設立される。設立準備委員会は、研究者だけでなく広く一般から、設立発起人や会員としての参加を呼び掛けている。独立を前提に、琉球にルーツを持つ人を参加対象とした議論の場ができるのは初めて。

  宜野湾市内で3月31日に開かれた準備会の会合にネットで参加した共同代表の松島泰勝・龍谷大学経済学部教授(49)は「オール沖縄でオスプレイに反対する状況で日本政府による配備押し付けというやりたい放題の中、琉球人が島で平和に生きるため、独立の選択肢を具体的に議論しないといけない」と語った。

  学会設立後は、年に2回程度の学会を開催し、世界各国の独立経過や事例を研究、独立前後の政治経済やアイデンティティーなどを議論する。実践として国連脱植民地化特別委員会への琉球登録などを目指す。独立国となった太平洋諸国の人々との研究交流や連携も進める。

  友知政樹・沖縄国際大学准教授(39)は「会員を琉球民族に限定するのは、自分たちで考えることが真の解放の一つのプロセスになると考えるからだ。琉球の主権回復、自己決定権獲得のため、一つの方法として独立が必要だと考えた」と経緯を振り返った。(琉球新報)

・・・
社説[安倍首相初来県]何のための沖縄訪問? (沖縄タイムス 2/3)
「・・・全首長らの東京要請行動や安倍首相の来県を経て可視化されたのは「安保の負担」に対する本土側の当事者意識のなさだ。オスプレイ配備について知事は首相に「県民の不安感の払拭(ふっしょく)に力を入れてほしい」と要請した。
 が、県民の反発は「危険な欠陥機」の配備という側面が全てではない。戦後60年余を経てもなお、最新鋭機を沖縄に配備し軍事要塞(ようさい)と位置づける。負担軽減を求め続ける県民の声を無視して機能強化を図る姿勢への異議申し立てだろう。
 沖縄を再び「本土防衛の砦(とりで)」とするわけにはいかない。」
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「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「基地と原発、振興開発と住民の〈自己決定権〉
⇒「パレスチナと沖縄を結ぶ――民族自決権と開発

規制庁の原子力ムラ体質は許せない!【名雪事件】署名提出・交渉報告&傍聴・パブコメワークショップへ

杉原浩司(福島原発事故緊急会議/緑の党 Greens Japan)氏より

 5日(火)午前に行われた「名雪事件」の緊急署名提出と交渉についての阪上武さん(フクロウの会)による報告と呼びかけメールを併せてご紹介します。提出と交渉には私も参加しましたが、出てきた規制庁官僚の態度は横柄そのもの。重大スキャンダルを引き起こしたことへの反省のかけらもありませんでした。自浄能力まったくなし。第三者機関による調査とそれが終わるまでの新安全基準骨子策定の中止を、がんがん要求していきましょう。

【IWJによるUstream中継アーカイブ】 この態度!ぜひご覧ください。http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56394
★なお、8日(金)13:30~16:30には原子力規制委員会の新安全基準検討チームの「有識者ヒアリング」が行われます。本来なら基準骨子案のとりまとめの前に開くべきものでした。国会・政府事故調、航空機安全、福島の各専門家から意見を聞くとのこと。こちらもぜひ傍聴しましょう。(事前申し込みは前日7日(木)の正午までとなっています)http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_anzenkijyun/data/0014_00.pdf
---------------------以下、転送-------------------------
みなさまへ
 本日、名雪事件で署名提出と交渉を行いましたが、規制庁は一個人の軽率な行動で済ませ、真相解明すら行う姿勢はありません。基準策定も立ち止まるつもりはなく、暴走状態が続きます。明日(6日)の原子力規制委員会で、地震・津波の新安全設計基準、シビアアクシデント基準を含む新安全基準について、骨子案を確定し、パブコメを始めようとしています。

◆原子力規制委員会の傍聴に行きましょう!
 明日(6日)の原子力規制委員会は10時半~12時です。登録の受付は今日12時で終わっていますが、当日行って身分証を提示すれば入れます。傍聴に行ってプレッシャーをかけましょう。
◆パブコメワークショップに参加を!
 明日(6日)の夜18時~20時、参議院議員会館でパブコメワークショップを開催します。パブコメなんかやってる場合じゃないだろう!というものも含めて、バンバン意見、疑問を出しましょう。よろしくお願いします!
http://kiseikanshishimin.jimdo.com/%E5%B8%82%E6%B0%91%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/#002
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みなさまへ
 本日10時より、名雪審議官が日本原電に敦賀原発活断層調査をめぐる公表前の文書を渡していた問題について、緊急署名提出と政府交渉が> ありました。
 福島みずほ議員(社民党)、平山誠議員(みどりの風)が参加されました。市民側は、美浜の会、グリーン・アクション、原子力規制を監視する市民の会のメンバーが参加。政府側は、原子力規制庁総務課課長補佐(総括担当)の金指壽氏が対応しました。 署名は36時間の超緊急署名でしたが、3602筆が集まり、冒頭提出しました。その後、名雪事件について、やりとりがありました。

◆原電は、名雪審議官と8回会ったということが新聞でも報じられています、その内容について質しました。規制庁は、8回会っていたということを含めて把握いていないし、 把握するつもりもない。内規ではもっとも重い訓告の処分をくだしているのでその必要はないと回答しました。
◆問題の資料は原電が要求したのか、それとも名雪氏が渡したのかについては、渡した事実を確認すれば十分だ、アポをとって審議官室で会った、資料は審議官室にあったとの回答、もし原電側が要求し、それに対する見返りがあれば大問題なので調べる必要があると、再三詰め寄ったのですが、回答は変わらず、再発防止対策の検討を行っていると繰り返していました。

◆儀礼的挨拶の実態について調査したのかについては、過去について把握するすべがないと。しかし、来客リストなど記録があるはずで、これについては資料開示を行うことにしました。
◆名雪氏が原電と会った翌日に、不自然にも告白をしている件については、翌日になって、儀礼的挨拶の範囲を超えたため記録が必要だと思い、記録をつくっているうちに資料を渡したことが問題だと認識し、告白したとの説明でした。なぜ渡した時にそう思わなかったのでしょうか。
◆また、原電に会ったのが1月22日、23日に告白していたのに公表が2月1日と遅くなった件については、調査と処分の決定に時間がかかった、規制委員長には適宜報告しているとの回答、しかし一人の聞き取りに1週間もかかるはずはなく、再稼働の新安全基準の骨子案の目処が立つのを待った疑いが残ります。

◆最後に、大飯原発の破砕帯で、規制委員会の検討が行われる直前に、地域安全統括管理官と大飯原発規制事務所所長が関電の大飯原発所長と会っていた件について、公表されている記録では、意見交換としかなく、内容が不明である点を質しました。これについては、検査官事務所に電話して確認することを約束しました。

 規制庁は、再発防止や信頼回復と繰り返し言いながら、それに不可欠なはずの今回の名雪事件の真相解明、さらには規制庁幹部と電力幹部との秘密裏の情報交換の実態について、解明する姿勢がまったくみられません。規制庁に対する不信をますます高める結果となりました。交渉後、追加の質問を出すことと、超党派の議員で、再度の交渉を含め、継続してこの問題を取り組むことにしました。

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追加質問事項

・今日提出した緊急署名にある要請項目4項目について回答すること
・原電と8回会った会合について調べて公開すること
・なぜ破砕帯の未公開資料を渡したのかその理由を明らかにすること
・原電が自ら要求した語っているが真相はどうか
・儀礼的挨拶等面会の記録(来客リスト)を公開すること
・儀礼的挨拶の位置づけを明らかにすること
・大飯の意見交換について、検査官事務所に電話して確認するということだがその結果について明らかにすること

規制庁の原子力ムラ体質は許せない!緊急署名

2013年2月4日月曜日

対話カフェ: 福島「健康に対する権利」人権理事会報告

対話カフェ: 福島「健康に対する権利」人権理事会報告

  ソーシャルジャスティス基金(事務局:まちぽっと)では、2月26日(火)に、「福島『健康に対する権利』に関する国連調査を政策転換につなげるために~ふくしま・市民社会・国連をつなぐ~」をテーマに対話型のアドボカシーカフェを行います。国連人権理事会 特別報告者のプレスステートメント(2012.11.26)はこちらをご覧ください。http://unic.or.jp/unic/press_release/2869/
 重要な議論の場になると思いますので、みなさまのご参加をお待ちしています。

ソーシャルジャスティス基金(SJF)
副運営委員長 黒田(CSOネットワーク)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
昨年11月、「達成可能な最高水準の心身の健康を享受する権利」に関する国連人権理事会特別報告者アナンド・グローバー氏が日本を訪れ、主に福島第一原発事故後の人々の健康に関する権利の実施状況を調査しま し た。 そして、離日を前に発表された同氏のステートメントは、公的な立場から発せられたものとしては初めての、原発事故被災者の状況に関する包括的な評価でした。

国連人権理事会が任命した「特別報告者」は、どのような国連機関・政府・私的機関からも独立して、公平かつ自由な調査・勧告の権限を持っており、この調査結果が、今年6月の国連人権理事会に最終報告書として提出され、日本政府への勧告が出されます。

放射能の影響評価や被曝者の健康、そしてそれらの対策に関して、様々な都合や思惑を背景に、 分断や対立を伴い、混乱状況が続いています。そしてその議論が、人権の観点から国連の場で議論されていきます。

そこで、我々日本の市民が、そのプロセスにどのように関与できるのか、また政府に対する勧告を生かすために何ができるのか、今回の報告者の調査をサポートした「ヒューマン・ライツ・ナウ」の伊藤和子事務局長のお話を伺い、人権問題に取組み、国連でも活動してきた当基金運営委員長の上村を先導役に考えます。

ゲスト: 伊藤 和子さん(NPO ヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)
       上村 英明 (SJF 運営委員長、恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)
進行:  大河内 秀人 (SJF運営委員、江戸川子どもおんぶず代表、原子力行政を問い直す宗教者の会ほか)

日時:  2月26日(火)18:30~21:00 (18:00 開場)
場所: 東京麻布台セミナーハウス 港区麻布台1-11-5(日比谷線 神谷町駅 徒歩3分)     
 http://kenshu.e-joho.com/azabudai/map.html
資料代: 800円

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*SJFが行った福島関連の最近のカフェ
2013/1/21 :原発事故子ども・被災者支援に必要な施策を考える
http://socialjustice.jp/p/20130121/
2012/11/21 : 有機農業の力と市民の力で新しい共生を考える 
 http://socialjustice.jp/p/20121121/

2・24 愛(かな)す宮古(みやーく)市民ピースアクション

2・24 愛(かな)す宮古(みやーく)市民ピースアクションに全国からご参加を!

実行委員会 清水早子

 40年前、宮古圏内の下地島空港建設当時の危惧が、まさに現実のものになろうとしています。
 下地島空港にF15戦闘機や、無人偵察機トマホークや、やがては自衛隊が導入すると言っている オスプレイが置かれることになろうとしています。
 平穏に暮らしている宮古の市民の頭上に、いきなり戦争の恐怖が近づいて来ています。
 沖縄の本土復帰後、最大の島の平和の危機が近づいています。

 新政権の安倍総理大臣は、はっきりと「自衛隊は国際的には軍隊なのだから、『国防軍』と名乗る」のだと言っています。憲法を変えると言っています。そして、変えなくても解釈を変えて、とにかく「集団的自衛権」の行使で、アメリカが戦争すると一緒に戦争できるようにするのだと言っています。

 尖閣問題だ、北朝鮮の脅威だ、と騒ぎますが、戦争の歴史を振り返ればわかるように、国家は、この沖縄の離島の島々の人々の生命と生活を守るために、この島を基地にするのではありません。かつて、沖縄島が太平洋戦争時に、日本本土を守るために犠牲になったように、今度は南西諸島が次の戦争の犠牲になるのだ、と状況は示しています。

 鹿児島の馬毛島から沖縄の与那国島までの南西諸島全域を軍事基地化し、とりわけ宮古・八重山・与那国には、レーダーを強化し、戦闘機とともに空自部隊を置き、海兵隊化させた陸自部隊を配備し、軍事衝突が起こった場合は、宮古~与那国での小規模な戦闘にとどめようという布陣を敷こうとしています。日本本土の多くの国民の無関心を背景に、南方の小さな島々は打ち棄てられようとしています

 今こそ、私たちは島の平和な暮らしと子どもたちの命を守るために、声をあげて、行動しなくてはなりません。「宮古を、与那国を、南西諸島を自衛隊基地にしないで!」と。

 2月24日(日)に、集まって声を上げましょう!
 歌ってもいい、踊ってもいい、叫んでもいい、静かに歩いてもいい、全身で、平和な暮らしを壊さないで!と表現しましょう!
 親にも子にも、兄弟にも、親戚にも、友達にも、声をかけましょう!
 沖縄や石垣や与那国や、大阪や東京や、島外や県外の知人にも、来て欲しいと、連帯して行動してほしいと、呼びかけましょう!
 今、ここで声を上げ、止めないと、私たちの島は軍事基地になってしまいます。

と き 2013年2月24日(日)午後1時半~4時半
ところ 宮古島市立中央公民館にてメインイベント (1時半~3時半)
行 進 公民館→市役所まで           (3時半~4時)
市役所前にて集会            (4時~4時半)

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●愛(かな)す宮古(みやーく)す市民ピースアクション
 実 施 要 領

◇目的:
・平和な宮古の日常を守るため、自衛隊増強配備の動きを市民に伝え、どうすればいいのか、考え行動してもらう機会にすること。
・政府・防衛省に、宮古の市民は島の軍事基地化を望んでいないことを伝える機会にすること。
・より多くの市民(子どもからお年寄りまで・とりわけ若い市民)に家族ぐるみの参加を求めること。

◇日時: 2013年2月24日(日)午後1時半~4時半
◇場所: 宮古島市立中央公民館 野外広場(晴天のとき)/大ホール(雨天のとき)
◇プログラム:
(1) 手作り物品販売         1時半~3時半
(放射能汚染を”華麗にかわした”お菓子などあります!)
(2) コンサート&フラ        2時~2時半
(地元ミュージシャン・アーティストによる)
(3) リレートーク          2時半~3時半
(4) 併設パネル展「辺野古・普天間・下地島」
(5) 平和アピール行進     3時半~4時
(音楽や各人思い思いのパフォーマンスで)
(6) 市役所前でミニ集会       4時~4時半
 
2・24愛(かな)す宮古(みやーく)市民ピースアクション実行委員会
事務局 清水 090-9784-1545                   

2013年2月3日日曜日

規制庁の原子力ムラ体質は許せない!緊急署名

規制庁の原子力ムラ体質は許せない!緊急署名
 敦賀原発の断層調査情報提供は、 原子力事業者への利益供与名雪事件の真相と、規制委員会としての責任を明らかにするよう求めます
 名雪氏が関与した、再稼働のための新安全基準策定作業を全て中止するよう求めます

原子力規制委員会委員長 田中俊一 様

要 請 事 項
1,名雪元審議官が関与した敦賀原発の断層調査情報提供事件に関して/原子力規制委員会として責任を明確にすること。そのために第三者機関を設置して、調査し公表すること。

2,規制委員会・規制庁と原子力事業者との「あいさつ」「面談」について
・これまでの「あいさつ」「面談」の詳細資料を公開すること。
・「あいさつ」も含めて、原子力事業者との面談については詳細な議事録や録音・録画を公開し可視化すること。

3.名雪元審議官が関与した、「地震・津波の新安全設計基準」、「再稼働の新安全基準」骨子の策定作業を全て中止すること。
・新安全基準策定等の各種検討チームの委員について、利益相反が明確な委員を解任すること。
・批判的専門家等を採用して議論をやり直すこと。
・電中研の職員・OB等の意見を参考意見として採用することをやめること。

署名フォームは以下にあります!
http://goo.gl/dnHG0 (2月4日(月)正午締切り)

原子力規制を監視する市民の会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)

連絡先:原子力規制を監視する市民の会
東京都新宿区神楽坂2-19-405
090-8116-7155阪上

[署名の趣旨]
 今回発覚した、名雪元審議官による日本原電への敦賀原発断層調査の情報提供は、原子力事業者への利益供与に他なりません。中立性と独立性を謳う原子力規制委員会の事務局でこのような事件が発覚したことは、いまだ、原子力ムラの体質がなんら変わっていないことを端的に示すものです。

 2月1日の原子力規制庁の森本次長の緊急記者会見では、今回の事件の真相は全く明らかになっていません。規制庁は、名雪元審議官がなぜこのようなことを行ったのかも調べず、日本原電への調査さえ行わず、名雪氏個人の「内規違反」にとどめようとしています。
 他方、日本原電は同日の記者会見で、昨年12月から名雪氏と5回「面会」したと発表していますが、その内容も闇の中です。

 このような中で、原子力事業者への利益供与は本当に今回だけだったのかとの不審が大きくなっています。事件の真相を明らかにし、規制委員会としての責任を明確にすべきです。今回の事件を含め、原子力事業者への利益供与等の実態を解明するために、第三者機関を設置し、調査内容・結果を公表すべきです。

 今回の事件は「儀礼的あいさつ」という名目で、しかし実態は電力会社に未公表の資料を提供するという密室から始まりました。まず、これまでの「あいさつ」「面談」の詳細な資料を公開するべきです。さらに、今後このような不正をなくすためには、少なくとも、「あいさつ」も含めた原子力事業者との面談については詳細な議事録や録音・録画の公開等で可視化し、社会的監視が実行できるようにするべきです。

 規制委員会ホームページに掲載されている「面談」資料では、内容が全く分かりません。例えば、1月16日14時から行われた大飯原発断層調査の第3回評価会合直前の、13時20分から、大飯原発内で大飯発電所長との面談を行い、「各電所で行われている破砕帯等調査について意見交換を行った」とだけ記載されています(※1)。これでは面談の内容が確認できません。

 さらに、名雪氏は、大飯・敦賀・東通の活断層調査、地震・津波の新安全基準策定に直接関与し、審議官という重責にありました。1月22日に情報提供を行い、そのことを翌日23日には規制庁が把握していながら、事件の公表は10日後の2月1日です。

 これは、再稼働のための新安全基準骨子案の議論を済ませてしまうまで、意図的に事件の公表を遅らせたとしか考えられません。名雪氏が基準骨子案の策定に関与し、規制庁としてそのことを隠蔽してきたことからして、新安全基準の策定作業は全て中止すべきです。 6日の原子力規制委員会本会議で、「地震・津波の新安全設計基準」と「再稼働の新安全基準」の骨子案を確定し、わずか2週間のパブコメを実施しようとしています。骨子の策定作業を全て中止すべきです。

 また、新安全基準策定等の各種検討チーム等の委員について、利益相反が明確な委員を解任し、批判的専門家等を採用して議論をやり直すべきです。電中研(電力中央研究所)の職員・OB等の意見を参考意見として採用することもやめるべきです。

(※1)
http://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/data/20130116_01giji.pdf

経緯
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130201-OYT1T01329.htm
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1521

・・・
福島第1原発事故直後の写真2145枚公開 (東電)

東日本大震災:福島第1原発事故 詳細な健診、対象絞る 「4カ月20ミリシーベルト」案−−県秘密会 
「・・・福島県が実施している県民健康管理調査の検討委員会が昨春、住民の健康診査の対象とする被ばく線量の基準値案として「事故後4カ月間で20ミリシーベルト以上」を非公開の秘密会(準備会)で検討していたことが分かった。国が定めた一般人の被ばく限度「年間1ミリシーベルト」と大きくかけ離れており、専門家は「住民の健康を重視した姿勢とは思えない」と批判している。・・・」(毎日 1/30 日野行介)