2011年5月31日火曜日

福島第一原発: 「今後10年間で処理費最大20兆円」?

福島第一原発: 「今後10年間で処理費最大20兆円」?

 毎日新聞によると、シンクタンク「日本経済研究センター」(東京)の岩田一政理事長が、福島第1原発の廃炉費用や避難した人の所得補償などの処理費が今後10年間で最大20兆円になるとの「試算」を出したという。31日、内閣府原子力委員会で提示したとのことだ。処理費は、「東電の剰余金のほか、再処理事業凍結など原子力政策の見直しによる財源で捻出可能とし、「増税や電気料金の引き上げの必要はない」という。⇒根拠無し。

 「試算」では、①廃炉費用は7400億~15兆円、②所得補償は6300億円、③20キロ圏内の住民が最終的に帰宅できなくなったと仮定し、国が土地を買い上げた場合は4兆3000億円で、計5兆6700億~19兆9300億円の計算になる。米国のスリーマイル島原発事故と旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の「実績に基づいて推計」したというが、記事を読むと、「試算」は私たちに安心感ではなく不安感だけを与えてしまう。

 その理由は、①「農業・漁業被害のほか、放射性物質で汚染された土壌の浄化費などは含まれていない」ことも指摘できるが、②廃炉費用の「7400億~15兆円」という巨大なコスト幅の根拠が何も分からないからだ。 また、③7400億円という数字が、「試算」と同様詳細が不明ではあるが、東電の廃炉「見積」(1~4号機へ2070億円)とどういう関係にあるのかもわからない。しかし、仮にこの額に根拠があるとして、④それがなぜ「最大」で15兆円にも跳ね上がるのか? 「メルトダウン」→格納容器・圧力容器破損になると一機あたりの廃炉費用が4兆円以上にもなるという「試算」なのだろうか? 記事には書いていないが、「試算」では使用済み核燃料と、溶けた核燃料の「処理費」はいくらなのか?

 岩田理事長は「廃炉の方向性も不透明で、試算を超える可能性がある」とも述べたという。しかし廃炉の「方向性」が何を意味するかも分からない。もっと言えば、10年間で最大20兆なら、20年かかったとしたら額は倍増するのだろうか? この「試算」はただ単に、あまたある試算の一つに過ぎないが、こんな「試算」では「20兆は軽く超える」という「情報」が風聞として一人歩きするのは目に見えている。

 しかし、はっきりしたことが二つある。
 一つは、原発はつくるのは簡単だが、今回のようなメルトダウン→廃炉という事態を引き起こしてしまえば、原発「先進国」たる米仏、そして東芝・日立製作所などの日本の原子力産業のテクノロジーの粋を結集しても手に負えなくなるということだ。とりわけ廃炉過程で浮上する、再処理もできず、「地層」にも「処分」できない使用済み核燃料と溶融した核燃料の「処理」については、その「工程表」を東電と国(原子力委員会および安全委員会)は打ち出し、この問題をめぐる国内外の不安と恐怖を早急に解消すべきである。(この問題は、同委員会の責任問題、また委員会「設置法」の抜本的改正問題を含めた今後の検討の中で、再度触れることにしたい)。

 もう一つは、原子力産業+ゼネコンにとり、メルトダウンした原発は建設時の数十倍も儲かる「金のなる樹」だということである。原発の建設費は一基3000億から5000億程度と言われているが、一市民にとっての原発が建設から廃炉まで半永久的に税金を食いつぶし、国の社会経済基盤を溶融しかねない代物であることが明白になった。

 青天井の「収束」→「廃炉」コストの「試算」に、ただただ私たちは青ざめて絶句し、思考停止に陥りがちになるが、「原子力緊急事態」とその後始末から逃げることができない以上、向き合わざるを得ない。長い、陰鬱な日常が始まろうとしている。

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原子力発電環境整備機構
地層処分事業について」「全国各地で展開された「地層処分」キャンペーン」知らぬ間に、あなたの街/町にも来ていたかもしれない。
⇒「原子力の廃棄物の安全な最終処分のために」日本原子力研究開発機構 
⇒「埋め捨てにしていいの?原発のゴミ」地層処分問題研究グループ
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リトアニア原発建設、日立と東芝の2陣営が応札
 リトアニア政府は1日(6/1)、同国の原子力発電所建設計画に、日立製作所と米GEの合弁会社であるGE日立ニュークリア・エナジー、および東芝傘下のウエスチングハウス(WH)の2社が応札したと発表した。リトアニア政府は応札条件を近隣のラトビア、エストニア、ポーランド、および欧州委員会と共に精査し、夏までに発注業者を選定する。
 計画している原子力発電所の発電能力は2200─3400メガワットとなる見通しで、リトアニア政府は2018─2020年までの建設を目指している。リトアニアは、旧ソビエト時代に建設されたイグナリナ原子力発電所を2009年末に閉鎖。その後2010年に新たな原子力発電所の建設に向け入札を行ったが、唯一応札した韓国電力公社(KEPCO)が応札を取り下げ、建設計画は宙に浮いていた。(ロイター)

首相、浜岡原発以外に停止求めず 知事会議で表明
 菅直人首相は31日、東京都内で開かれた全国知事会議に出席し、中部電力浜岡原発以外の原発について「安全性が確認されているものや今後、確認されるものは稼働して電力供給に当たってもらうという基本的な態度で臨む」と述べ、停止を求めない考えをあらためて示した。 原発が立地する地域の知事から「住民に『なぜここは大丈夫なのか』と聞かれる」(橋本昌茨城県知事)など、原発稼働の判断基準を問いただす声が出たのに答えた。また、菅首相は福島第1原発事故について「完全に収束するところまでいっていない。被災地ばかりでなく全国的にいろいろな影響を与えていることに責任者としておわびしたい」と陳謝した。(東京新聞)

島根原発3号機、運転再延期へ
 中国電力(中電)は31日、2012年3月に延期していた島根原発3号機(松江市鹿島町)の営業運転開始時期について、同4月以降に再延期すると発表した。3号機は津波対策に着手しておらず、制御棒駆動機構の動作不良の原因も未確定なため、地元の不安感を払拭できていないとした。運転開始時期のめどについては「できるだけ早く」との見解を示した。(山陰中央新報

原発立地県 “国任せ”脱却なるか(佐賀新聞) 

原子力施設周辺、断層342か所…保安院
 経済産業省原子力安全・保安院は31日、国内に原子力施設を持つ電力会社など12事業者から、耐震設計上、活断層と評価していなかった敷地周辺の断層342か所の報告を受けたと発表した。 東日本大震災を踏まえた対応で、保安院は今後、これらの断層について耐震設計上の検討が必要かどうか審議する。
 内閣府原子力安全委員会が4月28日、原子力施設周辺の断層の再評価を保安院に指示したのを受けての対応。 国内では、東日本大震災で大きな地殻変動が起きた結果、従来はほとんど地震が観測されていなかった地域で地震活動が活発化。中でも、これまで耐震設計上考慮していなかった「正断層型」と呼ばれる地震の発生が目立っている。(読売)

福島原発「津波の想定、過小評価」 IAEA報告書原案
 東京電力福島第一原子力発電所の事故調査のために来日した国際原子力機関(IAEA)の調査団の報告書の原案が31日、明らかになった。津波と地震による複合災害への対応が不十分だったことを指摘、東電をはじめ事故対応の当事者間で、責任の所在などの共通認識が欠けていると分析した。概要版が1日に公表される見通し。
 調査団は5月24日から6月2日までの予定で来日。各国の原発への教訓を得るため、東日本大震災で被災した福島第一原発や第二原発、東海第二原発を視察したほか、東京電力、経済産業省、文部科学省などの関係者から聞き取り調査をした。 報告書案は、事故を時系列で整理したうえで、得られた教訓を挙げた。
 福島第一原発事故の直接的な原因は地震と津波とし、電源や、炉心冷却に必要な多くの機能を失ったと指摘。東電は2002年以降、同原発の津波の想定高さを見直したが、過小評価だったと認定。過酷事故対策も、準備されていたが、複数基の事故に対処するには不十分だったとした。(朝日)

地下式原発推進で首相経験者ら議連
 民主、自民両党の首相経験者が顧問に名を連ねる「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」(会長・平沼赳夫たちあがれ日本代表)が31日発足し、自民党の森喜朗元首相や民主党の石井一選対委員長ら約20人が出席した。 平沼氏は「菅内閣が風力、太陽光発電を20%にすると言っているが、現在1%弱のものがなぜ二十数%になるのか。主要な電力は原子力でまかなう必要がある」と述べ、原発事故の封じ込めが可能な地下原発の推進を訴えた。(産経)

政府、20年めどに電力改革 発送電分離が焦点
 政府が2020年をめどに電力事業を抜本的に改革するための検討に入ることが、30日分かった。全国の10電力会社が発電から送電、小売りまで一貫して担っている現行の電力事業を見直し、発電と送電を分離することや、地域独占の供給体制の見直しが焦点になる。新成長戦略実現会議の下に「エネルギー環境会議」を設置。議長には玄葉光一郎国家戦略担当相が就く。電力事業を所管する経済産業省ではなく、官邸主導で改革案を練る。6月上旬から協議を開始し、年内にも基本方針をまとめる方針。
 菅直人首相は主要国(G8)首脳会議で20年代の早期に自然エネルギーの発電比率を20%に拡大する方針を表明した。政府内には「20%公約を達成するには電力事業改革の実行時期を20年よりもさらに繰り上げるべきだ」との意見がある。ただ、電力供給の不安定化につながるとの慎重論も根強く、議論は難航が予想される。
 電力供給については、大型発電所から地域全体に電力を送る「集権型」の体制を見直す。風力や太陽光などの中小規模の発電で地域の需要を賄う「分散型」への転換を目指す。 現行体制の問題点を検証し、20年ごろに新たな体制に移行。発電所の分散立地や、IT技術を活用した次世代送電網「スマートグリッド」に対応した仕組みを導入する。
 国内では1990年代後半から部分的に電力自由化が導入されたが、既存の電力会社が送電網を独占し、新規参入はほとんど進んでいない。電力会社を発電会社と送電会社に分離し、発電事業への参入を促すことが重要な検討課題になる。 一方、短期的課題としては、電力各社間を結ぶ送電線の増強や、工場などで自家発電設備を持つ企業の電力市場参入を促す。原発は安全性を向上させた上で今後も一定規模を維持する方向で議論する見込み。エネルギー政策の策定はこれまで経済産業省が担ってきたが、今回は国家戦略室が事務局を務める成長戦略会議が「司令塔」とし、新たな方向を打ち出す考えだ。【共同通信】

「火力や原発の新技術開発が必要」経産省賢人会議
 経済産業省は30日、「エネルギー政策賢人会議」の第3回会合を開いた。委員の薬師寺泰蔵慶応大名誉教授は「(温暖化防止などのため)石炭火力や原子力の新技術開発が必要だ」と指摘。菅直人首相が太陽光パネルを1000万戸に設置すると表明したことには、一部委員が「エネルギー改革を進める意味でもっと踏み込むべきだ」と述べた。(日経)

「発送電分離は唐突」日本電機工業会新会長の三菱電機・下村節宏会長
 日本電機工業会(JEMA)は31日、定時総会を開き、任期満了で退任する北沢通宏会長(富士電機社長)の後任に、下村節宏氏(三菱電機会長)を選出した。任期は1年。 就任会見で、下村新会長は「東日本大震災というかつて経験したことのない現実に直面している。復旧、復興をテーマに掲げ、全力を尽くす」と震災からの早期回復を支援していく姿勢を示した。政府が電力会社の発電部門と送電部門の分離(発送電分離)を議論する方針について「心証として唐突な感じがする。安定供給がされてきた日本の電力網の品質が落ちないように慎重な議論が必要」と述べた。(産経)

ドイツ、2022年までに脱原発 連立与党が合意
 ドイツ・メルケル政権の連立与党は30日未明(日本時間同日午前)、遅くても2022年までに、現在電力供給の約23%を担っている原子力発電から脱却する方針で合意した。DPA通信など、ドイツメディアが伝えた。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、他国に先駆けて「脱原発」へと政策転換したドイツは今後、風力などの再生可能エネルギーを中心にした構造への転換を目指す。
 メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟と姉妹政党のキリスト教社会同盟、連立相手の自由民主党の幹部が29日午後から協議していた。合意によると、現在17基ある原発を段階的に閉鎖し、大部分は10年後の21年までに止める。代替の電力源の確保が間に合わないなどの場合に備え、最後の3基の運転を1年間延長する選択肢を残した。(朝日
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⇒「[オスプレイ配備]これはもう人権問題だ」沖縄タイムス

2011年5月29日日曜日

見積なき「工程表」: 「事故=メルトダウン=廃炉」×3のリアリズム

見積なき「工程表」: 「事故=メルトダウン=廃炉」×3のリアリズム

 31日午後2時半ごろ、福島第一原発4号機建屋付近で爆発音。東電によると、当時、「事故の復旧作業で無人の重機によるがれきの撤去作業中だった。がれきの中のボンベを重機で壊した可能性があるという。けが人はなく、周囲の放射線量にも大きな変化はないという」(朝日) ⇒「大きな変化」の定義は何か? 測定値を正確に公表すべきではないのか? 一事が万事、こういういい加減で曖昧な「情報」が私たちをイラつかせ、疲れさせ、福島の人々を不安にさせるということを、未だに国と東電は理解しない/できないのである。
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5/29
 台風2号が沖縄、九州で猛威をふるい、四国、関西、首都圏へと近づいている。昨夜から首都圏は雨。台風対策が間に合わず、土嚢とビニールシートで防備する福島第一原発。
 これからの台風シーズンは大丈夫だろうか? 原発と土嚢とビニールシート・・・。
 祈るしかない。
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許容限度の100倍、作業困難=2号機建屋、空気中の放射能濃度
 福島第1原発事故で、東京電力は29日、2号機の原子炉建屋1階で26日に空気中の放射性物質を採取し、分析した結果、放射線業務に従事する作業員が吸い込むことが許容される濃度限度の約100倍だったと発表した。
 建屋上部にある使用済み燃料プールの水温が高いため、湿度も99.9%と高く、長時間の作業ができない環境。室温は最高36.7度だった。東電はプールに設置作業中の循環冷却装置で水温を下げた後、1号機と同様に空気中の放射性物質の浄化を経て、原子炉用の循環冷却装置の設置に進む方針。(時事) (⇒「許容」なんてされない。国(経済産業省)が勝手に「省令」を改悪し、そう言っているだけである)
5/30
東電社員2人、250ミリシーベルト超えか
 2人が作業していた福島第1原発3、4号機の中央制御室=2011年3月22日、東京電力提供
 東京電力は30日、福島第1原発で復旧作業にあたっている同社の男性社員2人が、現在の作業員の緊急時の被ばく量の上限である250ミリシーベルトを超える可能性が高いと発表した。医師の診断では健康上の異常は認められていない。今後、内部被ばく量を詳細に調べる。100ミリシーベルトを超えるとがんを発症するリスクが少し高まる恐れがあるとされ、長期的な健康調査が求められそうだ。
 被ばくしたのは30代と40代の男性社員。東日本大震災が起きた3月11日から3、4号機の中央制御室などで作業していた。4月17日と5月3日に測定した際の外部被ばく量は30代社員は73.71ミリシーベルト、40代社員は88.7ミリシーベルトだった。 その後、詳細に調べたところ、40代社員の甲状腺から放射性のヨウ素131が9760ベクレル、30代社員からも7690ベクレルと、他の作業員より10倍以上高い量が検出された。ヨウ素は甲状腺に蓄積されやすいことが知られている。 国際放射線防護委員会(ICRP)は従来、職業上の被ばく限度を、自然被ばくや医療上の被ばくを除いて5年間で100ミリシーベルト、緊急時に年間500ミリシーベルト(!!!)とすることを勧告している。【毎日・岡田英、酒造唯、河内敏康】
⇒「被ばく量は数百ミリシーベルトか 東電社員」(毎日)
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 私は「「原発ジプシー」と被曝---「社員」であれ、「ジプシー」であれ」の中で、次のように書いた。「裏返して言えば、現場作業員の「安全管理」を国と東電が徹底して無視し続けてきたからこそ、事故の被害は「この程度」で済んでいるのである。そうであるからこそ、原発事故は「狂気の沙汰」であり、人間に「常軌を逸したこと」を強いるのだと言える。このことを明確にしない、いっさいの「事故報道」は偽善であり、欺瞞である。今後の修復作業の進展、それを伝える報道に一喜一憂するときにも、このことだけは忘れてはならないだろう」。このままでは「緊急時に年間500ミリシーベルト」に向けた「省令」改悪も、ありえない話ではない。
6/3
東電社員の被ばく、最大で580ミリシーベルト
 東電福島第一原発で、同社の男性社員2人が、250ミリシーベルトを超える被曝(ひばく)をした可能性がある問題で、同社は3日午後、2人の被曝(ひばく)線量を発表した。内部被曝線量は30歳代が最大で580ミリシーベルト、40歳代が570ミリシーベルトだった。厚生労働省は5月30日付で、東電と協力会社の関電工に線量管理に問題があったとして、労働安全衛生法違反で是正勧告をしている。(読売)⇒国際放射線防護委員会の「勧告」基準値よりも高い数値が確認されたというのに、「是正勧告」?
多量の放射性ヨウ素が検出された福島第1原発の作業員2人、被ばく線量
 福島第1原発の作業員2人から、多量の放射性ヨウ素が検出された問題で、東京電力は2人の線量が650ミリシーベルトを上回る可能性があると発表した。この2人は30代と40代の男性社員で、内部被ばく線量の評価はそれぞれ、210~580ミリシーベルト、200~570ミリシーベルトになるという。この結果、外部被ばくを加えた被ばく線量は、上限の250ミリシーベルトを超えたのは確実で、650ミリシーベルトをも上回る可能性があるという。(FNN)

1号機地下に高濃度汚染水、水位も急上昇
 東京電力は30日(5/30)、福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋地下階のたまり水から、通常の原子炉冷却水の約1万倍にあたる高濃度の放射性物質を検出したと発表した。 原子炉格納容器の下部が破損した2号機地下階のたまり水とほぼ同じ濃度で、1号機も格納容器から炉心の水が漏れ出した可能性が高いとみている。 東電が27日に採水して分析したもので、放射性物質の濃度は、セシウム137が1立方センチ・メートルあたり290万ベクレル、セシウム134が同250万ベクレル、ヨウ素131が同3万ベクレルに上った。
 東電は、この汚染水をくみ上げ、浄化して炉心に戻す「循環冷却」を計画しているが、完成は7月以降になる見通し。水面は地下約7メートルだが、29日午後4時から25時間で約37センチ・メートルも急上昇した。雨で増えた地下水が流れ込んだ可能性もあるが、このまま上昇が続くとタービン建屋側へ流れ出す恐れがあるという。(読売)→放射能汚染水が出れば出るほど、アレバが儲かる。
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 原発の「事故」は、ほとんどの場合メルトダウンを起こすものではないし、廃炉につながるわけでもない。私たちは今、「事故」そのものがメルトダウンを起こし、廃炉を決定付けてしまった原発大災害の社会的・経済的コストの甚大さを、少しずつ感じ始めている。いや、日本社会が全体として感じ始めているのであれば、まだ救いはあるかもしれない。

 一昨日(5/27)、東電は放射能汚染水の処理費が531億円になるとの試算を公表した。これを最初に知ったとき、不覚にも私は処理費には汚染水の除染その他を含んだ総費用なのだと思っていた。しかし、この額は汚染水処理にかかる総額ではない。
 毎日新聞はこのように報じている。、「東電によると、約8万4700立方メートル(5月16日現在)の高濃度汚染水があるが、最終的には約25万立方メートルを処理する必要があると見込み、施設や仮設タンクの建設費、汚染水の処理費などを積算した。高濃度汚染水は現在、タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設に移送しているが、移送費や低濃度汚染水の処理費は含まれていない」。
 では、「移送費や低濃度汚染水の処理費」はいくらかかるのか?

 東電から4、5月と二度にわたり工程なき「工程表」を示され、私たちはかなりのストレスがたまっている。今回初めて、汚染水処理にかかる一部の「見積」が東電から出されたわけだが、しかし国・東電・マスコミが口を噤んでいるのは、来年一月中旬を「メド」とする「冷温停止」状態になるまで、いったいいくらかかるのか、その「総額見積表」である。私たちのストレスは今後、東電が次々に「見積」を公表するにつれ、さらに嵩じてゆくだろう。

 財源なき政策がありえぬように、見積なき工程表もありえない。仮に、もう一つ仮に工程表が「科学的合理性」に裏打ちされたものであったとしても、「経済的合理性」に裏打ちされたものでなければ、実現可能性(feasibility)はゼロになる。技術的に可能なものが、現実的には不可能になる。これが社会の常識である。

 毎日新聞はじめマスコミは、汚染水処理費は東電が支払うと書き、それで決着がつくかのような報道をしているが、事はそんなに単純ではない。
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原発賠償条約、加盟を検討 海外から巨額請求の恐れ
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、国際原子力機関(IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた
 このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある。(朝日
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 青天井の賠償・補償コストと、青天井の「原子力非常事態」の「収束」コスト。これまで工程なき工程表を論じてきた私たちは、見積なき工程表に目を向けることを余儀なくされている。日本経済と社会、そして私たちの生活は本当に福島第一原発とともにメルトダウンしてしまうかもしれない。
 チェルノブイリによる1990年代におけるロシアの社会・経済的メルトダウンの実態、またチェルノブイリを抱えながら、それでも原発を放棄できないウクライナの悲劇。放射能汚染と被曝だけではすまない、国の経済と社会に取り返しのつかない災難をもたらす、「事故=メルトダウン=廃炉」の原発災害の恐ろしさを、これから私たちは、じわりじわりと、まざまざと思い知ることになるだろう。

〈東電の債務問題〉
 今週号の『週刊ダイヤモンド』の記事、「東電の最大30兆円の隠れ債務で現実味を帯びる発送電分離」を読んでみよう。
・2011年3月期、経常利益3176億円。だが、事故処理などの特別損失を1兆0776億円計上し、1兆2473億円の最終赤字。「問題は、原発事故の賠償費用や廃炉費用の引当金を負債としてほぼ計上しなかったことだ」。
・廃炉については、福島第1原発1~4号機への2070億円の引き当てのみ。
・政府筋によると廃炉には1.5兆円、一部では10兆円に達する見方さえある。
・「賠償費用に至っては債務としてまったく認識していない」。
・政府内部では20~30キロメートル圏内の約4万世帯に各1億円として4兆円の賠償を想定。企業約2000社にも、年間売上高約5000億円の20年分、総額10兆円の営業補償を検討中。土地収用費用や外国への賠償費用、使用済み核燃料の処理費用も踏まえると約20兆円に上る。

 このまま行けば第一原発の5、6号機、第二原発の「修理」後の再稼働という話に必ずなる。しかしそのことより、廃炉をめぐる「政府筋」情報の1.5兆円と「一部では10兆円」の「見方」のギャップがどこから来るのか、その理由、根拠、詳細を知ることの方が、さしあたって重要である。
①そもそも、東電の「福島第1原発1~4号機への2070億円」と1.5兆円がどういう関係にあるのか、
②廃炉になぜこんなにも金がかかるのか、さらに
③「使用済み核燃料の処理費用」の「見積」額がいくらなのか、私たちには何も分からない。こんなことを放置していて良いはずがないではないか。

 しかし。とりあえず今重要なことは531億円の「明細」を明らかにさせ、次の工程表の発表時に、工程表の見積もりをセットで出させるよう国・東電に圧力をかけることだ。ここからでしか始まらない。


 なぜ、詳細な見積書が必要なのか。理由は二つある。
 一つは、「事態収拾」に金がかかればかかるほど、東電に賠償・補償責任を負う財源がなくなり、それによって被害者・被災者への賠償・補償額と対象が減額・限定され、支払い期日もさらに遅れる可能性が濃厚になるからだ。
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風評被害賠償、対象は出荷制限・自粛地域
 東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償範囲の指針作成を進めている政府の「原子力損害賠償紛争審査会」(会長・能見善久学習院大教授)は、当面の農林水産物の風評被害の賠償対象地域について、政府の出荷制限や自治体の自粛要請で損害を受けた地域の農家や漁業者とする方針を固め、2次指針の最終案に盛り込むことにした。 31日の次回会合で最終案を提示する見込みだ。
 具体的には、〈1〉野菜は、出荷制限を受けた福島、茨城、栃木、群馬4県の全域と、千葉県内3市町。品目は、全県にまたがるホウレンソウのほか、自治体ごとにパセリやチンゲンサイなど〈2〉魚介類は、福島、茨城両県――となっている。審査会では、風評被害の賠償は原則、原発事故との相当な因果関係が認められる損害が対象で、津波や地震などの「自粛ムード」に伴う損害は認めない方針を示している。(読売)
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 現状では東電が公表する「見積」の根拠が何もわからない。「透明性」が何もない。公的資金が投入されず、電気代にも関係しないのであれば、「民・民」同士で勝手にやってもらえばよいが、「賠償・補償+収束」コスト総額は、今後の復興増税・電気料金値上げ・消費税値上げに直結する問題である。
⇒「消費税:「段階的増税を」…財務省、内閣府が報告書」(毎日)

 来年1月中旬が「メド」とされている「冷温停止」が可能かどうか、その科学的・技術的合理性と実現可能性が未だに私は理解できないでいる。だから「新工程表」について、私は何も語る気がしない。しかしそのことを置いたとしても、「冷温停止」以前の未完の汚染水処理の段階で、その一部の作業に531億円もの金が使われることに驚きを禁じえない。メディアも私たちも事の重大さを、もう少し自覚した方がよいだろう。とりわけ20代、30代の人たちは、2、30年後の廃炉完了からさらにその後のメンテまで、福島第一・第二原発の処理問題に一生付き合うことになるのだから。(私の世代は、おそらく廃炉完了をみることなく死んでゆく世代になるだろうが、メルトダウンを起こした原発の「処理費」には、さらに汚染土壌・構築物等の除染、被曝検査・予防の医療費等々が加算されることも忘れてはならない。)

 汚染水処理の「施設や仮設タンクの建設費」はいくらかかるのか。高濃度汚染水処理費としてアレバが提示した額はいくらなのか? 当初アレバによる高濃度汚染水の処理費は数兆円にのぼると噂されていたが、「予想していたより安くなった」と安心している場合ではないだろう。アレバには青森・六ヶ所村で随分稼いで頂いて来た。この上さらに福島で暴利を貪るなど、まさか考えていないとは思うが、はっきりその証拠を示してもらわねばならない。


 そもそも原発のメンテ・廃炉費用はべらぼうに高い。だから電力会社は廃炉・メンテを渋り、問題を起こすのだが、原発をつくるのも廃炉にするのも、同じ原子力産業+ゼネコンである。今回の場合、東芝・日立・日本のゼネコン、米仏の原子力産業が関わっており、どの企業がどの工程・作業を請け負い、いくらで入・落札したか、実態を明らかにしてもらわねばならない。そうでなければ私たちは、将来的な公的資金投入の是非を議論しようがない。これが二点目の理由である。その額に応じて、今はペンディング状態になっている、福島第一の原子炉設計・製造・修理・メンテに関わったGE、東芝、日立などの賠償責任問題も、真剣に議論しなければならない時が来るかもしれない。

 531億円の明細の開示。そして「冷温停止」に至る収束スキームそれぞれにどの企業が関与し、その受注額はいくらなのか。スキームの中には、かの悪名高き米国のべクテル社も一枚噛んでいる。昔、ボリビアの水の民営化問題でベクテル社とフランスの水産業のボッタクリの実態を調査したことがあるが、ベクテル社とフランスの水産業はボリビアのみならず水の民営化と戦った世界各地の〈民衆の敵〉である。意外に知らない人が多いが、ベクテル社は、実はゼネコン型原子力企業なのだ。

 ともあれ、この間何もかもが闇の奥に隠されたまま、事が進んでいるのが「工程表」をめぐる実情である。国と東電には、早急に情報開示をしてもらわねばならない。メディアは情報開示を国と東電に迫るべきだろう。福島原発大災害に乗じた、日米仏原子力複合体の貪欲な利権漁り、やりたい放題のボッタクリにストップをかけなければならない。

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5号機の海水ポンプ故障
 東京電力は29日、冷温停止中の福島第1原発5号機で、原子炉と使用済み核燃料プールの冷却水を冷やしている仮設の海水ポンプが故障したと発表した。一時的に冷却機能が失われており、東電は同日午前8時から予備ポンプへの交換作業を始めた。同日中には再起動できる見込み。 東電によると、28日午後9時ごろ、作業員がパトロール中にポンプが止まっているのを見つけた。冷却水の温度は29日午前8時時点で原子炉が87.4度、使用済み核燃料プールが44.7度で、28日午後9時時点から原子炉は19.4度、プールは3.7度上昇した。【毎日・酒造唯】

1号機地下の汚染水、水深5・5m
 東京電力は28日、福島第一原子力発電所の1号機原子炉建屋地下にたまっている汚染水の水深は28日午前7時現在、約5・5メートルと発表した。 水位計を27日に設置し、明らかになった。ただし、汚染水の表面から1階床面までは6メートルあり、東電は「短時間で地上にあふれ出る恐れは少ない」としている。
 東電によると、13日に初めて作業員が確認したときの汚染水の水深は約4・2メートルだった。東電はその後、水位が上昇しているとしていたが、いずれも目視によるものだった。1号機では現在、原子炉圧力容器に毎時6トンでの注水を続けており、大半が地下に流れ出しているとみられる。 一方、東電は29日から、同原発に医師を24時間態勢で常駐させる。これまでは、東電の産業医や産業医科大学などから交代で派遣されている医師が作業員の健康管理や診療に当たっていたが、早朝や夜間は不在のことが多かった。(読売)

1、4号機 事故後も耐震性「安全」
 東京電力は28日、福島第1原発の1号機と4号機について事故後の耐震安全性の評価結果をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。東電が想定したマグニチュード(M)7級の大地震などの揺れに対しても壁や鉄筋には「余裕があり、十分な安全性がある」(???)とした。保安院も東電の評価を妥当とした。 松本純一・東電原子力・立地本部長代理は「1、4号機の機器類の耐震性や、2、3号機については評価した上で改めて報告したい」と話した。
 台風2号の接近に備え、東電は使用済み燃料プールに放水作業中の大型コンクリートポンプ車について、強風による転倒を避けるため長いアームをたたんで移動させる。強風による原子炉建屋への影響について、保安院は「建屋の壁の一部が(水素爆発などにより)落ちて隙間(すきま)が多くなっていることもあり、建屋が損壊したりする恐れはない」とみている。
 東電は第1原発敷地内で測定し、28日に公開した放射線量の未公表データについて、線量を書いた紙を「外部に保管した際、一部を紛失した」と27日説明していたが、28日、「本店と原発内に保管され紛失していなかった」と説明を変更した。【毎日・河内敏康、平野光芳、比嘉洋】

「脱原発は10年以内に可能」ドイツ政府諮問委が報告書
 ドイツ政府が福島原発事故後、新しいエネルギー政策の検討のために立ち上げた諮問委員会の最終会合が28日に開かれ、「脱原発は10年以内に可能」とする報告書をまとめた。DPA通信が伝えた。 委員会報告に拘束力はなく、メルケル政権は連立与党内で最終的な調整を進めるが、報告を基に2021年前後に原子力から脱却する野心的な目標を掲げる可能性が強い。
 ドイツは福島事故後に原発の運転延長から、脱原発に政策を転換。国内の17基の原発をいつまでにすべて閉鎖するのかなどが焦点になっている。メルケル首相は脱原発の行程や方法を定める法案を6月6日に閣議決定する方針で、委員会報告を受けて5月29日に予定されている連立与党協議で脱原発の目標年を決めるとの観測がある。ただ、与党内の一部には時期確定に慎重な意見もある。(朝日)

周南市議会、上関原発中止求める意見書 30キロ圏内
 中国電力が山口県上関町で計画している上関原発建設の中止を申し入れるよう県に求める意見書案が27日、周南市議会で全会一致で可決された。県によると、少なくとも県が埋め立て免許を出した2008年10月以降、上関原発建設中止を求める意見書は県内の議会で初めてという。
 周南市は一部が予定地から30キロ圏に入っている。意見書は二井関成知事あてで、福島第一原発事故を受け「風向きによっては全市が影響を受けることになる。避難区域となった場合、石油化学コンビナートの工場群が全面停止という事態になる」と指摘。国に対し、既設原発の安全管理や事故が起きたときの対処法の確立▽原発の新増設計画の凍結▽原発に代わる新エネルギービジョンの早急な策定――を求めることも併せて要望している。米沢痴達議長は「直接知事に会い、意見書を提出したい」と話した。 中国電力広報・環境部門は「内容がわからないのでコメントのしようがない」としている。(朝日・福家司)

四国電の原発安全対策、「地震4連動」も想定 日向灘含める
 四国電力の千葉昭社長は27日の記者会見で、同社の伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)の安全対策について「(東海、東南海、南海大地震に加えて)日向灘の4連動まで考える必要がある」と述べ、より大きな震災を想定していることを明らかにした。現時点では設計の見直しなどは必要ない(???)としているが、不十分な部分があれば追加対策をとる考えも示した。
 従来は東海から南海にかけての3連動型の大地震を想定していたが、近年の調査ではさらに西側の日向灘まで震源域が伸びるパターンも考えられるとの指摘もある。日向灘は伊方原発に近いことから、より大規模な震災になった場合のことを考慮に入れる。 3連動型の場合は最大でマグニチュード8.6を想定している。仮に4連動となった場合、「マグニチュード9近いレベルになる可能性もある」(千葉社長)という。ただし、伊方原発はそれでも耐えうる設計になっているとし、直ちに追加の安全対策などが必要なわけではないとした。 津波も従来の想定より若干高くなるが、現段階ではクリアできるとしている。現在、社内の委員会を通じて詳細な検討を進めており、千葉社長は「もう一段の高いレベルで必要な対策はどんどんやる」と強調した。
 夏場の電力供給については、現在定期点検中の「(伊方原発)3号機が7月10日に起動することが大前提」と説明。3号機は四国電の発電設備の中でも最大級の出力を持っている。仮に再開できなければ、最大電力需要に対する供給余力を示す予備率が1%程度に下がるとしている。 気象庁によると、今夏は昨年ほどの猛暑にはならないものの、例年より暑くなるとの予想が出ている。3号機が起動すれば予備率は17%程度を維持できるが、再開が延びた場合は火力発電を最大限活用するほか、自家発電をしている事業会社からの融通などあらゆる手段を講じて電力を安定供給する方針。現時点では目標値を定めた形での節電要請などは考えていないとした。(日経)

2011年5月27日金曜日

「父母たちの要請にYesを!」~20ミリシーベルト撤回

5/28
 この問題については、国は変更を認め、学校・保育園などの「土壌入れ替え」等の費用を持つ、という方向で決着をつけようとしている。下の3点の要求項目で言えば、1は「1ミリ以下を「目指す」」(「努力目標」)と改め、2は「基本的に」受け入れ、3については、具体的な国の財政負担は「ケース・バイ・ケース」という立場をとる、ということだ。要は、「20ミリシーベルト」を撤回していない。最終的にどうなるかは分からないが、少しこの問題を考えてみたい。

〈放射能汚染・被曝に対する一般的恐怖と「放射線科学」〉
 問題の根っこにあるのは、国や「専門家」たちが言う、放射能汚染を「科学的」な眼で「正しく恐れる」ことなんてできない、というところにある。自分の住む場所・地域が、「平常」の放射線量を超えただけで非常なる恐怖を感じる人もいれば、平気な人もいる。「20ミリシーベルト以下なら自分(大人)は平気だが、子どもだけは」と思う人もいる。パニックを起こしてならないと「科学的解説」を試みる「専門家」の説得に気休めを覚える人もいれば、余計に不安になる人もいる。人、それぞれなのだ。「科学的」に誰が「誤っている」、という性格のことではない。これが一つ。

 事の始まりは、放射線量をめぐる国の情報隠蔽・操作にある。しかし本質的な問題は、事態収束に何の展望もないこと、たとえ国が定義する「微量」であれ放射能の放出・汚染が継続していることであり、状況が好転する兆しも確認されない中で、いきなり「20」という数字を国が出したことにある。
 国や自治体は「除染対策」に関する財政上の一義的責任がどちらにあるか、互いに責任転嫁をしようとするが、普通の市民・親は、銭勘定で放射能汚染・被曝問題を考えない。メルトダウンしたこと、放射能が大気・大地・地下・海を汚染し続けていること、そのこと自体が大問題であり、それだけで「アウト」なのだ。

 もう一つの問題は、放射線量値がどうであれ、福島にとどまざるをえない人は、とどまらざるをえない、この現実をどうするかである。仮に福島全域が20ミリシーベルトを越えたとしても、国・自治体・企業が、避難先・生活・仕事・収入を全面的にバックアップするのでなければ、避難したくともしようがない。これが福島および「計画的避難地域」近隣に生活する多くの人々の本音ではないか。放射能汚染と被曝をどれだけ恐れていようが「避難しようがない」「できないものはできない」のである。そこで生き、働き、生活するしかない。

 「帰りたくても、帰れない」「避難したくとも、できない」人々・子どもたち両方への〈支援〉をこれからもっと私たちは考える必要がある。梅雨が来て、台風が来て、暑い夏が来る。県外への避難を考え、それを望み、そうできる人々・子どもたちの受け入れを広げながら、そうできない、とどまらざるを得ない、他の選択肢を持ちようがない人々・子どもたち両方へのサポートである。福島を見捨てず/見殺しにしないとはそういうことではないか。
 やるべきことは山のようにある。

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7月
放射能汚染「ホットスポット」対策 東葛地域 互いの意見かみ合わず
 放射性物質汚染が周辺より比較的強い「ホットスポット」であることが分かってきた東葛地区。放射線量自体は福島市などに比べて低いが、子どもを持つ親たちの危機感は強く、行政への要望活動を進めるほか、避難を考える人まで出ている。一方、線量計測に乗り出した行政だが、その先の具体策は見えない。両者の温度差はなぜ生まれたのか。
 「国の暫定基準値が安全だとは私たちには思えない」。六月二十八日、柏市役所。市内でその月の初め、約一万人の署名を集め提出した親たちのグループが再度、要望に集まり行政側に意見をぶつけた。小さな子どもを抱えた母親、やりとりをビデオで映し、行政側に厳しい視線を送る父親。「なんとかしてほしい」という強い思いが会議室に渦巻いた。 同月、東葛六市で発足させた放射線量対策協議会の調査では、流山市での毎時〇・六五マイクロシーベルトを最高に、柏市でも中十余二第二公園で同〇・五一マイクロシーベルトを計測するなど、市原市にあるモニタリングポストの同〇・〇四四マイクロシーベルト程度と比べ、一桁高い状況だ。この線量の原因は降り注いだ放射性物質とみられ、外部被ばくだけでなく、風に巻き上げられた放射性物質を体内に取り込む内部被ばくの危険性も指摘されている。協議会は、国が福島県の学校向けに示した暫定的な目安の同三・八マイクロシーベルトは下回ると結果を説明する。

 親たちの不安は「将来、影響が出るかもしれない」の一言に尽きる。一度に大量に被ばくして起きる急性症状については線量の目安があるが、低線量では「低ければ低いほどいい」とされているにすぎず、一致した見解がないからだ。 漠然とした不安だが、要望は具体的だ。農産物の汚染調査が全数対象でないことから「給食の食材は使用前に線量測定して」「安全が確認されるまで砂場の利用を規制して」「内部被ばくの状況も調べて」と続く。
 一方、応じた柏市側は「今回の問題は国民全体の問題。国が基準をつくってくれないと」とかみ合わない。ある担当者が「財源にも限りがある。放射線という今までにない災害に対しても、私たちの素人考えで何かをやって少しでも誤れば、後に責任問題になる。気持ちは分かるが行政の限界」と打ち明けるように自己判断を避け、国や県の基準や専門家の意見を待つばかり。 行政も親たちの声に押されて模索はしている。東葛六市の連名で六月二十九日、国に安全基準の早期策定と対策の全額負担を求める要望活動を行った。協議会では得られた計測結果をもとに八日、専門家から意見を聞き、対策を検討する予定だ。 だが、そんな姿勢に親たちは「典型的なお役所仕事だ。今できることがあるのに」と踏み込んだ対策を取らないことにいらだちを隠さない。「そんなことをしてる間にも、子どもたちは毎日毎日被ばくしているのに」 (東京新聞/千葉版・横山大輔)

6月
「1ミリシーベルト」混乱 子供被ばく線量 (毎日)
屋外活動制限の放射線量基準、引き下げ要求 福島の保護者ら
 福島県の学校で屋外活動を制限する際の基準とした放射線量が高すぎるとして、県内の保護者ら約20人が3日、文部科学省を訪れて基準を即時撤回するよう求めた。国や東京電力の負担で子供を集団避難させることや、自主的に避難した家庭への経済支援も要望した。 同省は屋外活動制限の基準を校庭で毎時3.8マイクロシーベルト以上と設定。年換算で20ミリシーベルトを超えないよう設定した数値で、保護者らは「子供には高すぎる」として引き下げを求めた。同省は子供が学校にいる間に受ける放射線量を年1ミリシーベルト以下に抑える目標を示しているが、「通学路や自宅周辺の土の除去なども支援してほしい」との声も上がった。
 2歳の子がいる郡山市の主婦(30)は「夫の仕事の都合で地元を離れられないが、今は公園でも子供はほとんど遊んでいない。一日も早く安全な環境に戻してほしい」と訴えた。(日経)

震災で転園・転校2万人超 福島から他県へ1万人
 東日本大震災の影響で転園・転校した全国の幼稚園児や児童生徒が、5月1日時点で2万1769人に上ったことが文部科学省の集計で分かった。被災地から県境を越えて転出した子どもも1万人を超えており、文科省は受け入れ先などへ教員やスクールカウンセラーを追加で配置、派遣する方針だ。
 集計によると、福島県内の幼小中高などから他の都道府県に移った子どもは9998人に上った。同県内での転出入も5473人に上る。大半が東京電力福島第一原子力発電所周辺から避難したとみられ、計1万5471人が震災前の学校に通えず、避難先の学校などへの通学を余儀なくされている格好だ。津波で沿岸部の学校が被災した岩手、宮城県でも、県内外での転出入はそれぞれ969人、3980人に上った。 被災地からの受け入れは埼玉県が最多で1311人。新潟県1205人、東京都1199人と続く。原発周辺の住民を集団で受け入れているほか、親戚などを頼って引っ越してきたとみられている。(朝日)

5月
放射線監視「ほぼ限界」 測定方法も結果もバラバラ
 原子力安全委員会は30日、福島県内で文部科学省と県が行っている放射線のモニタリング(監視)について、測定方法の統一が難しく、結果にばらつきが出かねないとの調査結果をまとめた。「現在の体制ではほぼ限界」として、改善の必要性を指摘した。 同委員会の事務局は5月17日、文科省の測定チームに同行して、福島第一原子力発電所から半径20キロ圏外で、飯舘村や葛尾村など9地点を選び、空間線量率と土壌調査の測定方法や場所などが妥当か調べた。 この結果、測定結果にばらつきが出る疑いのあることが分かった。地上の放射線量の測定では、測定器を向ける方向で値が変わるため、方向に目印をつける工夫をしている。しかし、測定器を持つ人によって値が異なっていたという。(朝日)

「柏の放射線 大丈夫?」 小学生校外学習 不安募る保護者
 東京都文京区が区内の小学4、5年生を対象に行っている千葉県柏市での校外学習について、保護者から安全性に関する問い合わせが相次いでいる。柏市は福島第1原発から約200キロ離れているが、都内などと比べ高い放射線量が検出されているためだ。ただ、健康を害するような数値ではなく、区教委は保護者あての通知を各校に配布し、不安の解消に努めている。(⇒埼玉県三郷市・千葉県松戸・流山・柏市の「ホットスポット」と呼ばれている地帯である。)
 文京区では例年、4月中旬から2泊3日の日程で、飯盒(はんごう)炊飯や地元農家の見学など屋外活動中心の校外学習を柏市内の施設で実施。今年は原発事故の影響で延期されていたが、区が今月、順次実施する方針を決めた。 その後、保護者から区教委に「放射線は大丈夫か」「現地での食事の産地は」といった問い合わせが続出。原子力の研究者らと独自に全国の放射線量を計測、ホームページで公表している近畿大原子力研究所の若林源一郎講師(放射線安全学)にも、女性から柏市の放射線量データを求める電話があったという。
 若林講師らの計測結果によると、例えば柏市の5月14~20日の最大放射線量は毎時0・344マイクロシーベルトで、0・130マイクロシーベルトの文京区や原発により近い茨城、栃木両県の自治体と比べてもやや高い線量を記録。東京大学の調査でも同様の結果が出ており、インターネットへの書き込みが相次いだことなどから保護者が不安を募らせたようだ。 ただ、国の屋外活動制限基準(3・8マイクロシーベルト)は大きく下回っており、若林講師は「健康に影響が出る数値ではない。ラドン温泉に行った程度」と指摘。「実際の健康被害より、健康被害を心配する心的ストレスの方が体に与える影響がはるかに大きい。正しい情報を把握したうえで冷静に対処して」と呼びかけている。(産経)

「1ミリ以下目指す」文科省、学校に線量計配布始める
 文部科学省は子どもの年間被曝量の目安だった「20ミリシーベルト以下」を、「1ミリ以下を目指す」と変更し、すべての学校など約1800施設に線量計を配り始めた。背景には、不安を隠せない保護者の声がある。
 福島県郡山市では、文科省の校庭使用制限の基準を下回った校庭でも、独自の判断で表土を除去。同様の動きは近隣の自治体にも広がっている。福島市などは「屋外で肌をさらすのは心配だ」といった保護者の声を受け、公立小中学校の屋外プールでの授業の中止を決めている。 県教委学校生活健康課の池田健一郎主幹は「(国の基準は)様々な知見に基づいて示されたもの。尊重はするが、保護者の不安の声に対し、どう安心を確保してゆくのかは常に課題だ」と言う。

災害弱者どう守る 福島の支援団体が独自の避難計画
 東日本大震災を通じ、災害時の障害者や難病患者、高齢者らの避難態勢の在り方に課題が突きつけられた中、東京電力福島第1原子力発電所の事故があった福島県内でも、関係者が、極限状況の中でどうやって「災害弱者」を守るのかという命題に突き当たっている。支援団体などは今後に備え、独自の避難計画の作成や、訪問調査による必要な支援の把握といった取り組みを進めている。(産経・5/30 伐栗恵子)
 原発事故を受け、市域の一部が一時屋内退避区域となった福島県いわき市では、食料やガソリンなどあらゆる物資が入らなくなり、医療や介護の機能が著しく低下して市外へ避難する住民が相次いだ。 「放射能パニックだった」と、NPO法人「いわき自立生活センター」の長谷川秀雄理事長(57)。中には、在宅で暮らす寝たきりの重度障害者が避難する家族に置き去りにされたケースもあったといい、「極限状態の中で判断能力が失われ、自分の身を守るのに必死だったのだろうが、ショックを受けた」と打ち明ける。
 震災6日目の3月16日、「このままでは命を守れなくなる」と、センター利用者やスタッフ、家族ら30人規模での集団県外避難を決めた。意思確認や準備に手間取り、出発できたのは19日。東京の施設で約1カ月の避難生活を送り、4月17日にいわき市に戻ったが、この体験を教訓に、災害弱者のために必要な備えを検証し、避難方法などをまとめることにした。 「障害者や高齢者の避難には時間がかかる。皆が動き出す一歩手前で、行動を起こすことが重要」と長谷川さん。防護服やマスクなどを着用した避難訓練も実施した上で、避難の目安となる放射線量などを明記したハンドブックを約2千部作製。県内の障害者施設などに配布している。
 一方、原発から20~30キロ圏の大半が緊急時避難準備区域に指定された南相馬市では、市とNPOが共同で、障害者が置かれた状況や必要な支援を把握する訪問調査を進めている。 実動部隊は、地元のNPO法人「さぽーとセンターぴあ」のスタッフやボランティアら。一軒一軒訪ね歩き、発達障害の子供2人を抱えて途方にくれる母親や、知的障害の子供と2人で暮らす父親が入院していたケースなどを掘り起こした。不在の家には連絡先を記したチラシを投函(とうかん)。すると、助けを求める電話が頻繁にかかってきた。 支援が必要な人々は、市の災害時要援護者名簿から抜け落ちていた。名簿は65歳以上の重度身体障害者が中心だったからだ。調査結果は市が策定する避難計画に反映されるが、同法人の青田由幸代表理事は「実際の支援につなげる仕組みが重要」と強調。障害者が安心して過ごせる福祉避難所やバリアフリーの仮設住宅の必要性を訴えている。

千葉の浄水場、汚泥からセシウム 水道水は安全と県水道局
 千葉県水道局は27日、ちば野菊の里浄水場と栗山浄水場(いずれも松戸市)の共通の排水処理施設で17日に採取した汚泥から、1キログラム当たり5390ベクレルの放射性セシウムと300ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表した。北総浄水場(印西市)で採取した汚泥からも、2650ベクレルのセシウムと685ベクレルのヨウ素を検出した。 4月16日以降、水道水から放射性物質の検出はなく、県は「安心して飲用できる」としている。汚泥は今月23日から搬出を中止し、処理施設などで保管しているという。 3カ所の浄水場は、市川市や船橋市など千葉県北西部を中心に給水。県が所有、管理し、排水処理は民間資金活用による社会資本整備(PFI)で運営している。【共同通信】

梅の実から放射性物質、基準値超える 福島・伊達
 福島県は28日、同県伊達市で採取された梅の実から、食品衛生法で定められた基準の1.16倍の放射性セシウムを検出したと発表した。果実で基準を超えたのは初めて。県は同市の農家に出荷自粛を要請した。 県によると、26日に伊達市で採取された梅から基準(1キロ当たり500ベクレル)を上回る同580ベクレルが検出された。福島県の梅の収穫量は2009年に1660トンで全国10位だった。(朝日)

終末処理場の汚泥に放射性物質 県内 搬出できず行政困った 県「安全性に影響ない」
 県と甲府市は26日、県内の下水道の終末処理場4カ所と平瀬浄水場(甲府)から出る汚泥や焼却灰から放射性物質が検出されたと発表した。県などは今回検出された物質の数値について「安全性には影響はない」としているが、桂川清流センター(大月)からセメントの原料として汚泥を受け入れている企業が搬出を拒否するなど波紋が広がっている。(山梨日日新聞より

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<緊急拡散希望>
「父母たちの要請にYesを!」~20ミリシーベルト撤回:ここ2~3日が正念場です!
http://blog.canpan.info/foejapan/archive/29#shobu

 23日の文科省への要請行動で、福島の父母たちは下記の3つの要請を行いました。
1.年20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト)という暫定目安を即時撤回すること
2.被ばく量について、1ミリシーベルトをめざしていくという文科省の方針を、ただちに福島県に新たな通知として伝達すること
3.被ばく低減措置について国が責任をもって行うこと。自治体が行う措置についても、国が経済的な支援を行うこと

 文科省の渡辺次長は、この要請について、「三役と相談の上、早急に返事をする」と述べています。「早急に」とは、ここ2~3日と思われます。しかし、まだ回答はかえってきていません。いまが、正念場です! ぜひ、政務三役に、「福島の父母たちの要請にYesを!」と圧力をかけましょう! また、あなたの地元の議員に対して、政務三役に圧力をかけるように呼びかけましょう!

全国議員サイトhttp://gikai.fc2web.com/
自分の選挙区が分からない場合、市町村の選挙管理委員会に電話で聞いてください。

【政務三役のコンタクト】
・高木文科大臣の秘書官:竹本善次・文部科学大臣秘書官
(TEL) 03-6734-2101 (FAX) 03-6734-3580
・鈴木 寛 文部科学副大臣(文科省内)
(TEL) 03-6734-2103 (FAX) 03-6734-3582
・高木 義明 大臣(長崎1区)
長崎事務所 〒850-0035  長崎市元船町7-6元船ビル1F
(TEL) 095-826-0446  (FAX) 095-826-0445
国会事務所
(TEL) 03-3508-7420  (FAX) 03-3503-5757
・笹木 竜三 副大臣(福井県)
地元事務所 (TEL) 0776-23-5280 (FAXはわからず)
国会事務所 (TEL) 03-3508-7341 (FAX) 03-3508-3341
・笠 浩史 政務官(神奈川県9区 )
地元事務所 (TEL)044-900-1800
国会事務所 (TEL) 03-3508-3420 (FAX) 03-3508-7120
・林 久美子 政務官(滋賀県)
滋賀事務所:滋賀県東近江市八日市緑町16-13
(TEL) 0748-20-0935 (FAX) 0748-20-0936
国会事務所 (TEL) 03-6550-1020 (FAX) 03-6551-1020

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「菅さんにも言おう!」
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※菅直人事務所
東京都武蔵野市中町1丁目2-9
電話: 0422-55-7010
<議員会館内事務所>
電話: 03-3508-7323
FAX: 03-3595-0090
※菅直人へのご意見箱
kan-naoto@nifty.com
※首相官邸のご意見募集ページ
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html

2011年5月26日木曜日

脱原発と「対米従属」論、あるいは内田樹のレトリックをめぐって

脱原発と「対米従属」論、あるいは内田樹のレトリックをめぐって


 一昨年のことだったか、あるちっちゃな出版社の編集者から「内田樹批判」を書いてみないか、と勧められたことがある。しかし名前は聞いたことはあったが、そもそも私は内田樹という人の本を一冊も読んだことがなかった。またこの人に何の執着もなかったし、個人的にそれどころではなかったので、どうにも対応の仕様がなかった。
 けれども、お題を頂戴したこともあり、「ふ~ん」とか思いながら、とりあえず図書館から借りたり人に頼んだりして、5、6冊主だったこの人の本を取り寄せ、去年、読んでみた。これが私にとっての内田樹との出会いの始まりである。

 で、その内田樹がブログに書いた「脱原発の理路」という文章がメールで回覧されていたらしく、三日ほど前ある人がそれをわざわざ私に送ってくれた。はからずも、私は他者を通じて内田との「再会」を果たすことになった。

 20年ほど前に死んだ広松渉の「マルクス主義の理路」ならぬ、「脱原発の理路」。かなり「硬派」のタイトルだが、どのような「理路」が示されているか、時節柄、関心のある人は読んでみてはどうだろう。


 内田は文章がうまい。読み易い。小難しい問題を、人に小難しさを感じさせることなくサクサク論じ、サクサク読ませる。小難しい問題を、余計に小難しくしてしまうような、私のような人間は内田の「文章作法」をもっと見習わなければいけない。この人の文章家としての才能は唸らせるものがある。スゴイと思う。

 ちっちゃな出版社の編集者は、こんなことを言っていた。「内田の文章に違和感を感じながら、最後まで読んでしまう」と。つまり、サクサク内田が論じる行間に「違和感」を覚えながら、それを本のアチラコチラに残しながら、「最後まで読まされてしまう」ということだ。全体としてどこか納得できないものが強く残りはする。しかしそれが何かを論理的に特定できぬまま、「ごもっとも」と思わせるポイントとサクサク感に引っ張られ、読破してしまう/させられる。編集者は自分が覚えた違和感にこだわったからこそ、批判本を書いてみないかと私にオファーをくれたのだった。

 読んで違和感を感じる読者も本を手にし、サクサク読んでしまう。だから、違和感を感じない読者にとっては、読書のこの上ない快楽を内田の本が提供することは間違いない。これが出版社にはたまらなくオイシイ、「売れる作家」の必要不可欠な能力であり、資質である。


 「内田ワールド」を生理的に受け付けつけない人はともかく、内田の本が広く読まれているのは、違和感を覚える人でも読めてしまう/読まされてしまうからだ。それは内田が「自我」を隠すレトリックを駆使することによって可能になる。内田はきわめて論争的なテーマを、「yes, but...」の論法ではなく、「I'm with you, by the way...」の「技法」を選択し、論じる。(これが、「yes, and...」の論法ではないことに注意。)
 たとえば、「脱原発の理路」ではこのような意匠が凝らされている。

 「私は主観的には脱原発に賛成である。そして、たぶん日本はこれから脱原発以外に選択肢がないだろうという客観的な見通しを持っている。けれども、その「適切な政治的選択」を私たち日本国民は主体的に決定したわけではない。
 このような決定的な国策の転換でさえも、アメリカの指示がなければ実行できない、私たちはそういう国の国民なのではないかという「疑い」を持ち続けることが重要ではないかと申し上げているのである」。

 「主観的には」「客観的な見通し」という内田の言葉の選択に注意しなければならない。
 つまり、内田は関西の女子大の教員として、あるいは評論家として、「政治的・社会的には」脱原発の立場を表明しないという立場をここでとっている。しかし「脱原発に賛成」なのだと。
 立場をとらないからこそ、内田は「客観的な見通し」という表現を使う。自分の文章を通じて、脱原発を現実のものとするための素材を提供するのではなく、「決定的な国策の転換でさえも、アメリカの指示がなければ実行できない」と言うことによって、脱原発に「「疑い」を持ち続けることが重要」だと言うのである。

 原発支持/脱原発いずれの立場に立つ読者も、何となく、どことなく「違和感」を覚えながらも、サクサク論じる内田の文章を、サクサク読んでしまう・・・。内田ファンとは、こういう「技法」の虜(とりこ)になってしまった人のことを言う。


 「脱原発対米従属」論?
 「脱原発の理路」は「アメリカの指示」論が崩れてしまうと、「路」がグチャグチャになり、「理路整然」のサクサク感がなくなってしまう。果たして、菅政権の方針転換は「アメリカの指示」によって決定されたと言えるのだろうか?
 内田は言う。
・・・
 「日本が脱原発に舵を切り替えることで、アメリカはきわめて大きな利益を得る見通しがある。
(1) 第七艦隊の司令部である、横須賀基地の軍事的安定性が保証される。
(2) 原発から暫定的に火力に戻す過程で、日本列島に巨大な「石油・天然ガス」需要が発生する。石油需要の減少に悩んでいるアメリカの石油資本にとってはビッグなビジネスチャンスである。
(3) 日本が原発から代替エネルギーに切り替える過程で、日本列島に巨大な「代替エネルギー技術」需要が発生する。代替エネルギー開発に巨額を投じたが、まだ経済的リターンが発生していないアメリカの「代替エネルギー産業」にとってはビッグなビジネスチャンスである。
(4) スリーマイル島事件以来30年間原発の新規開設をしていないせいで、原発技術において日本とフランスに大きなビハインドを負ったアメリカの「原発企業」は最大の競争相手をひとりアリーナから退場させることができる。
(5) 54基の原発を順次廃炉にしてゆく過程で、日本列島に巨大な「廃炉ビジネス」需要が発生する。廃炉技術において国際競争力をもつアメリカの「原発企業」にとってビッグなビジネスチャンスである。

 とりあえず思いついたことを並べてみたが、日本列島の「脱原発」化は、軍事的にOKで、石油資本的にOKで、原発企業的にOKで、クリーンエネルギー開発企業的にOKなのである。」
・・・

 内田は、上の5点を「決定的な国策の転換でさえも、アメリカの指示がなければ実行できない」という論点の根拠として示すわけだが、分析は結論を論理的に支えていると言えるだろうか?
 実に小難しい問題で恐縮だけれど、内田ファンの人もそうでない人も、内田樹に「疑い」を持ち続けながら考えてみることが重要ではないか、と私は申し上げているのである。

・・・
3号機地下連絡通路に深さ2メートル汚染水
 東京電力は26日、福島第1原発3号機のタービン建屋から移送した汚染水の受け入れ施設で水位の低下が見つかった問題で、同施設と別の建物をつなぐ地下の連絡通路に汚染水が流れ出し、深さ約2メートルの水がたまっていたと発表した。東電は「地下水への漏えいはないと思っている。水位が釣り合うところまで移動した後、水位低下は収まるのではないか」と説明している。
 汚染水が流出したのは、2号機の汚染水の受け入れ施設にもつながる連絡通路。汚染水の表面付近の放射線量は毎時70ミリシーベルトだった。 また、汚染水の低下は、25日午前11時から26日午前11時までの間に1時間当たり2~3ミリ、計59ミリになった。水量は約70立方メートルに相当するとみられる。 一方東電は26日、2号機の汚染水の受け入れ先施設が満杯近くになったとして、移送作業を停止したことを明らかにした。【毎日・関雄輔、岡田英

福井・原発周辺、文献に大津波の記録も
 福島第一原発の事故を受け、関西電力が進める原発の安全対策の見直しについて、原発がある福井県・若狭湾周辺の住民らから、過去の文献も参考とするよう望む声が上がっている。 同湾では16世紀に大津波が起きたとの記録が文献にあるが、関電は同湾周辺で大津波の記録はないと自治体などに説明している。
 若狭湾岸では14基の原発が稼働し、関電はこのうち11基を運転。関電は、若狭湾の津波想定を0・74メートル~1・86メートルとし、今回、この見直しを含めた安全対策のための調査を計画している。 ただ、福島第一原発事故後の3月18日に、関電美浜原発がある福井県美浜町議会に配った資料では「日本海側には巨大な津波の原因となる海溝型プレート境界はなく、文献では過去に若狭湾周辺で津波による大きな被害記録はない」などとしている。 外岡慎一郎・敦賀短大教授(日本中世史)によると、1586年の天正地震で若狭湾岸で大津波が起きたとされ、京都・吉田神社の神主が著した文献には丹後、若狭、越前の海岸沿いで多数の死者が出たとの記述がある。(読売)

日本で原子力国際会議を開催…首相が表明
 主要8か国(G8)首脳会議(サミット)がドービルで26日午後(日本時間26日夜)に開幕した。菅首相は昼食会の冒頭、東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する日本の対応を約10分間説明し、原子力安全に関する国際会議を来年後半、国際原子力機関(IAEA)とともに日本で開催する考えを明らかにした。原発事故を早期に収束させると同時に、国際社会に情報を公開して各国の原子力発電の安全性向上に寄与する意向も表明した。 首相が提案した国際会議は、事故の教訓を国際社会と共有するのが目的で、各国の閣僚や専門家の参加を想定している。
 首相は日本のエネルギー政策に関し、「最高水準の原子力安全に取り組む」とし、原子力を引き続き利用する考えを示した。一方で、省エネルギーの推進とともに再生可能エネルギーの利用を拡大するとし、〈1〉太陽光発電のコストの大幅削減〈2〉大型の洋上風力発電装置の建設〈3〉1000万戸の屋根に太陽光パネルの設置拡大――などの具体策を説明した。原発事故については「最大限の透明性を持って、すべての情報を国際社会に提供する」と明言した。【読売・ドービル(仏北部)=遠藤剛、小野田徹史】

・「佐賀県に原子力撤退申し入れ テント生活でアピール」(佐賀新聞)

福島第一原発の「廃炉工程表」はどうなったのか?

福島第一原発の「廃炉工程表」はどうなったのか?


 スイスが、2034年までに原発を全廃することを決定した。これに対し、日本はと言えば・・・。
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「2034年までに原発全廃」 スイスが国家目標
 スイス政府は25日、国内に5基ある原子力発電所を、寿命を迎える2034年までに廃炉とし、改修や新規建設はしないとの国家目標を決めた。福島原発事故後、ドイツに続き「脱原発」政策にかじを切った。記者会見したロイトハルト環境エネルギー相によると、全閣僚7人が特別会合を開き、
(1)老朽化する原発の改修を含む現在の原発態勢の維持
(2)改修はせず、今の原発の安全性が保てる間に順次廃炉
(3)原発の即時稼働停止、の三つのシナリオを中心に協議。最終的に(2)を選んだ。
 ロイトハルト氏は朝日新聞の取材に「フクシマが、今後数十年のスイスのエネルギー戦略を変えた」と答えた。
 スイスでは電力使用量の約39%を原発が担っている。今後は、約56%を占める水力発電の割合を高める方針。スイスにはアルプスの水源を活用した水力発電所が500カ所以上あり、まずはこれらの設備を改修するなどして効率を高めるという。さらに、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入も進め、原発分の穴埋めを図る。
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 「改修はせず」が気にはなるが、「順次廃炉」=段階的廃炉路線は現実主義的で、実現可能性がある。
 これに対し菅首相は、25日午後(日本時間同)、パリでのサルコジ仏大統領との会談において、「原子力の安全性向上」に努めながら、「安全を確保した原発は活用する姿勢を表明」(朝日電子版)したという。首相は福島第一原発の「事故収束に向けた工程表に沿って来年1月までに(原子炉を)冷温停止にしていきたい。事故の情報と教訓を国際社会と共有して国際的な議論を先導(???)したい」と語ったという。
 「フクシマ」は、今後数十年の日本のエネルギー戦略を変えはしなかったようだ。スイスと日本、どちらが原子炉三基のメルトダウンを引き起こした国なのか、ワケが分からなくなる。
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「20年代に自然エネルギーを2割」 菅首相が国際公約
 菅直人首相は25日夕(日本時間26日未明)、訪問先のパリで経済協力開発機構(OECD)の設立50周年記念行事に出席し、日本のエネルギー政策について講演した。発電量全体に占める再生可能な自然エネルギーの割合(現在は約9%)を引き上げ、「2020年代のできるだけ早い時期に20%とする」という数値目標を掲げた。
 首相は目標達成に向けて太陽電池の発電コストを「2020年に現在の3分の1、2030年に6分の1まで引き下げることを目指す」と強調した。首相は福島第一原発事故を受けて、太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用を拡大する意向を示していたが、数値目標を示すのは初めて。昨年6月に決めた政府のエネルギー基本計画にある達成時期を10年程度前倒しする目標だ。国際会議で表明することで事実上の「国際公約」となる。(朝日)
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 つまり、原発大災害を引き起こした責任を負うこの国の最高責任者が、この間の「事態」から学んだ「教訓」とは、元々決まっていた「再生可能エネルギーの利用」拡大計画を「10年程度前倒し」する、その程度のことでしかなかった、ということらしい。首相が言っているのは、「2020年代のできるだけ早い時期」(2025年くらいまで?)に、日本のエネルギー消費に占める原発依存率を今より11%程度下げて20%程度にするその程度のことなのである。

 しかし、その程度のことは、目標数値上の微調整が必要になるにせよ、すでにNEDO 再生可能エネルギー技術白書―新たなエネルギー社会の実現に向けて―」が基本ラインとして打ち出していたことである。もっと分かりやすく言えば、「サンライズ計画」とは、経産省の「原発依存率50%」路線から方向転換し、環境省の「2050年に26%」路線へと面舵一杯し、その「工程表」を前倒ししながら、「原子力村」に代わる「再生可能エネルギー村」をつくるぞという、しかし「原子力村」は廃村にしない、日本のエネルギー産業の「構造調整」プログラムなのである。失敗から学ぶことをしない「総括なき乗り移り」とは、まさにこういうことを言うのではないだろうか。

 このような論調に対しては、「それでも原発依存率を低くすることは良いことではないのか?」という意見/批判は根強くあると思うので、また機会を改めて考えることにしたい。言いたいのは、「構造調整」プログラムは新規参入を助長はするが「構造」そのものは変えない、ということだ。今後、「原子力村」から「再生可能エネルギー村」に「本籍」を移す人、「本籍」は移さないが「住民票」だけを移す人、素性を隠して両方に「住民票」を置くという「掟破り」をする人など、いろんな学者・「専門家」が出てくるだろう。重厚長大型の原子力・エネルギー産業と「連携」したり、あるいは「新規参入」・ベンチャー型産業の旗振り・権威として。


 「廃炉工程表」の策定問題
 今、喫緊に日本政府に求められていることは四つある。
①第二の「3・11」を想定した原発の「安全基準」の具体的策定、
②福島第一原発5、6号機、第二原発の廃炉問題に対する方針決定、
③第一原発1~4号機の「廃炉工程表」の策定、
④使用済み核燃料および原子炉・格納容器内で溶けた核燃料の処分方法の公表などである。
 福島の子どもたち、被災者の今後に直結する問題として、ここでは③の「廃炉工程表」について考えてみたい。
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「さらに7万人が避難すべき」、仏IRSNが福島原発事故の評価を更新
 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は23日、東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故に関する評価を更新し、立ち入りが禁止されている原発から半径20キロ以内の警戒区域外にも放射線レベルの高い地域があり、この地域の住民約7万人も避難すべきとの見解を示した。 これによると、福島原発の北西にあたる、住民がすでに避難した警戒区域より原発から離れた地域に、放射能レベルが1平方メートルあたり数百から数千ベクレル、さらに数百万ベクレルに達する場所があったという。
 IRSNによると「警戒区域外では最も汚染が激しい」この地域には14歳以下の子ども9500人を含む約7万人が暮らしている。ここに住み続ければ福島原発事故発生からの1年間で、フランスで原子力事故時の公衆の安全基準となっている年間10ミリシーベルトを超える放射線を浴びることになるという。年間10ミリシーベルトは、フランスで自然放射線源から浴びる放射線量の3倍にあたる。
 IRSN環境部門のトップ、ディディエ・シャンピオン(Didier Champion)氏は、年間10ミリシーベルトというのは予防的な数字で、それだけで危険な量ではないが、食物や飲料水の摂取による内部被曝は含まれていないと説明した。 またIRSNが避難すべきだとした7万人のうち2万6000人以上は、事故後最初の1年間の被曝量が16ミリシーベルトを超える可能性があるという。
 5月15日に計画的避難が始まった福島県飯舘村と同県川俣町には、風によってこれまでに継続して高いレベルの放射能物質が流されてきているという。IRSNは、日本の公式発表および米軍による上空からの測定に基づいて評価を更新した。(c)AFP

「安全宣言で地震被害拡大」学者7人起訴 イタリア地裁
 2009年4月に309人の犠牲者を出したイタリア中部のラクイラ地震で、地震学者が直前に「安全宣言」を出したために被害が広がったとして、ラクイラ地裁の予審判事は25日、学者7人を過失致死罪で起訴した。地震予知失敗の刑事責任が問われる、世界でも異例の裁判となる。 起訴された国立地球物理学火山学研究所(INGV)のエンゾ・ボスキ所長ら7人は、地震発生6日前の同年3月31日、政府の災害対策機関の幹部やラクイラ市長らと災害対策委員会を開いた。ラクイラで半年間にわたって続いていた微震について検討したが、避難勧告は見送られた。
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 「原発安全宣言で原発災害拡大」訴訟をいつか日本でも起こせるかもしれない。 
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 福島第一・第二原発の廃炉問題に関し、1~4号機の廃炉を除いて、東電も国も明言を避けている。それには二つの理由がある。 一つは、「事態の収拾」と「廃炉世論の収拾」後の稼働再開の余地を残すという「姑息な思惑」と、もう一つは廃炉費用調達の展望が見えないという問題である。

 東電の武藤副社長は、今月17日の会見で「廃炉費用の見通しが立たない」と言ったが、実際これは本音のところだろう。「3・11」以降、さまざまな廃炉費用試算情報が飛び交ってきたが、第一・第二原発のすべての廃炉費用は数兆円から10数兆円規模になるというものさえある(私には試算根拠が理解できないのだが)。
 廃炉費用が嵩(かさ)めば嵩むほど、賠償・補償に回せる資金が少なくなり、そうなるとその皺寄せはすべて被災者・被害者が受けることになる。この冷酷な現実を脱原発派はどうするか。何を方針として打ち出し、「提言」するか?〈私たち〉はとてもシビアな問題に直面しているのだ。


「悪魔のシナリオ」
 メルトダウンの仕方、初期段階で放出された放射能の量などにおいて、今回の事態はチェルノブイリとは違うと言えるのかも知れない。しかし、現在進行形で起こっていることは福島における「チェルノブイリの空間的再現」である。

 放射線が全く出ない状態に戻すのに10年以上かかる、と言われている。1~3号機の廃炉が完了するのに30年程度はかかる、と言われている(東芝・日立の当初案「10年程度」は、1~3号機のメルトダウンを前提していなかったはずだ)。けれども、廃炉費用のメドが立たないということは、廃炉計画のメドが立たないということであり、廃炉計画のメドが立たないということは、東電単独では「廃炉工程表」が出せないということだ。そうなれば原発近辺の被災者の帰宅のメドも立たない、ということになる。

 菅内閣は、この「悪魔のシナリオ」をいかにして解決するのか? 「事故収束に向けた工程表に沿って来年1月までに冷温停止にしていきたい」と言うが、廃炉費用の確保を含めた「冷温停止」後の「廃炉工程表」を国が示せなければ「国際公約」も果たせなくなる。いや、「国際公約」なんてどうでもよい。被災者への公約を本当に国は果たせるのか?
 こうした状況の中で、内閣府・原子力委員会は、東電に「廃炉工程表」の提出を指示した。しかし今のままでは仮に東電が提出したとしても、財源に裏打ちされない工程なき「気休め表」しか出てこないだろう。

 菅内閣、そして民主党をはじめすべての政党は、この事態の深刻さをどこまで理解しているだろう。問いは、〈私たち〉自身に対しても向けられている。三基もの原子炉のメルトダウンを起こした国の脱原発派が背負わねばならない、本当の試練が始まろうとしている。

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原発の廃炉費用、想定より3千億円増 電事連が試算
 電気事業連合会は(2007年2月)8日、国内55基の原子力発電所を将来、解体撤去する際にかかる廃炉費用が、想定してきた約2兆6000億円から、約2兆9000億円に膨らむとの試算値を経済産業省の審議会に示した。廃炉に関する制度改正などにより、環境への悪影響を減らす追加費用が必要となるためだ。上積み分は、将来の電気料金引き上げに反映される可能性がある。
 廃炉の際、コンクリートや金属片など放射性廃棄物が大量に発生する。追加費用のうち約1000億円分は、放射性物質と認定する放射能濃度を従来よりも下げ、廃棄物量が増えることに伴うもの。処分方法を埋め立てから再資源化に変えたことでも処理単価が大きく膨らみ、全体では、現在1基あたり約550億円の費用が、更に50億~100億円程度増える見込みとなった。上積み分を、企業会計や料金原価へどう反映させるかは、今後議論する。 廃炉は10~20年ごろから本格化するが、巨額の費用が一時期に集中するため、利益の一部を事前に積み立てる「廃止措置引当金」が設けられている。現在の想定額約2兆6000億円に対し、原発を持つ電力会社は約1兆1000億円分をすでに計上済みだが、追加分は引当額を上積みすることになる。2007年02月08日(朝日)

再生可能エネルギー:首相表明に発言相次ぐ
 菅直人首相が、日本の電力に占める再生可能エネルギーの発電比率を20年代の早い時期に20%とすると表明したことについて、各方面から発言が相次いだ。 枝野幸男官房長官は26日の記者会見で、菅首相が「積み重ね型の議論ではなく、首相の強いリーダーシップの下に方向性を打ち出すやり方も、重要な課題で方向性を変えるに当たっては重要だ」と述べ、首相が主導したと説明。
 しかし、日本経団連の米倉弘昌会長は同日の定時総会後の会見で、経済界に相談や説明もなく、目標が表明されたことに対して「目的だけが独り歩きする政策は危険だ」と批判した。 石油連盟の天坊昭彦会長(出光興産会長)は同日の会見で、「鳩山由紀夫前首相が言った『温室効果ガス25%削減』と比べて、少しは現実的だ」と一定の評価をした。ただ、「最初に数字を決めて独り歩きするより、実現性の高い計画を作っていただきたい」とけん制。温室効果ガスの25%削減を突然表明するなど、エネルギー政策を巡って産業界と対立してきた民主党政権への警戒感をにじませた。【毎日・影山哲也、宮崎泰宏、立山清也】

地震国に原発安全基準、IAEAに要請…G8案
【パリ=小野田徹史】仏北部ドービルで26日開幕する主要8か国(G8)首脳会議(サミット)で採択される共同声明の最大テーマとなる「原子力安全」部分の原案が25日、判明した。
 日本のように地震発生リスクがある国・地域向けに原子力発電所の新たな安全基準を策定するよう、国際原子力機関(IAEA)に求めている。さらに、東京電力福島第一原発の事故を教訓として重視し、原発を今後導入する国を含め、IAEAの現行の安全基準を活用することを促している。 IAEAは、原発の設計や放射性物質の取り扱いなどについて、加盟国が守るべき安全基準を定めている。しかし、津波によって原子炉冷却のための電源が喪失した福島の事故が起きたのは、その基準が十分に機能しなかったためだという見方が根強い。このため、G8は、地震国向けには別途、新たな基準を作る必要があると判断した。(読売)

「原発は安全」と協会が海外向けにPR
 原発関連のメーカーや電力会社、研究機関などでつくる社団法人「日本原子力産業協会」(原産協会、今井敬会長)が、東日本大震災後の4月19日から「日本の原発は安全で高品質」と海外向けにPRする冊子をホームページ(HP)上で公開していることが分かった。東京電力福島第1原発事故で安全性への懸念が高まる中、事故に触れずに原発輸出のPRを続ける姿勢に海外から批判も出ている。
 冊子は「日本原子力購入ガイド2011」。全約100ページで、震災発生前に作製が始まり、4月19日に原産協会の英語版HPに掲載された。会員企業の国内メーカーやゼネコンなどの原子力関連商品や事業の内容を英語で紹介している。 冊子は冒頭で「日本の原子力産業界は、信頼できる最高級の部品を使い、高性能の原発を建てている」とアピール。「日本の原子力の現状と将来」と題したページでは、「日本の原発は7000時間当たりの緊急停止割合が世界一低く、最高水準の安全性を実証している」と日本原発の安全性を強調している。【毎日・林田七恵、日野行介】(⇒批判を受け、協会はHPから削除)

小中高に線量計 福島県教委が配布
 東京電力福島第1原発事故を受け、福島県教育委員会は19日、県内全ての小中高校など約1200カ所に放射線の累積量を測る線量計を来週にも配布する方針を明らかにした。子供が学校などにいる間に受ける放射線量を推計するため。対象は公立、私立を問わない。認可外の保育園への配布も検討する。
 県教委によると、各校に配布する線量計は児童・生徒と行動をともにする教師が身に着ける。県教委が結果を集計し文部科学省に報告する。夏に向かって気温が上がるため、この数値を基準に教室で換気を行う。 県は4月以降、放射線量が高かった福島市や郡山市の小中高校などに線量計を配り同様の調査を行っている。【毎日・種市房子】

原発反対、日独中韓で増 日本は初めて多数に 世論調査
 東京電力福島第一原発の事故を受け、朝日新聞社は今月、日米仏ロ韓独中の7カ国で世論調査を実施、事故への見方や原発に関する意識を探った。原子力発電の利用について、賛成が反対より多いのは米国とフランス。韓国と中国では拮抗(きっこう)し、ドイツ、ロシア、日本では反対が多数を占めた。日本は、事故後3回目の調査で初めて反対が賛成を上回った。 対象国は、世界の主要原発国と、建設中の原発が最も多い中国を選んだ。
 原発の利用で、米国は賛成55%、反対31%、フランスは51%、44%と賛成多数になった。これに対し、ロシアは賛成36%、反対52%、日本は34%、42%。「脱原発」を進めるドイツは、反対81%が賛成19%を大きく引き離している。 日本は、4月16、17日の調査で賛成50%、反対32%だったが、今月14、15日の前回調査で賛成43%、反対36%と差が縮まり、今回初めて逆転した。

連合、原発推進方針を凍結 昨夏決めたばかりですが
 連合(古賀伸明会長)は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて原発推進政策を凍結し、新規立地・増設を「着実に進める」としてきた方針を見直す。26日午後の中央執行委員会で決定する。民主党の有力な支持団体だけに、民主党政権のエネルギー政策に影響するのは必至だ。
 連合は中央執行委に提出する文書で、原子力エネルギー政策について「より高度な安全確保体制の確立、地域住民の理解・合意という前提条件が確保され難い状況に鑑み、凍結する」と明記し、原発政策の総点検・見直しに着手する方針を打ち出す。新増設推進の姿勢を改め、当面は政府のエネルギー政策見直しの行方を見守る姿勢に転じる。 連合は昨年8月、傘下の労組間で意見が割れていた原発政策について、初めて「推進」を明確に打ち出したばかりだった。(朝日)
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 政界も労働界も、これから来年にかけて、「菅降ろし」と相まって「サンライズ計画」をめぐるアレヤコレヤの紛糾、責任の転嫁合戦の嵐が起こるだろう。誰が何を語り、どう動き、どう豹変するか、凝視したい。

2011年5月24日火曜日

東電が福島第一原発2、3号機のメルトダウンを認めた日

東電が福島第一原発2、3号機のメルトダウンを認めた日

 東電が福島第一原発2、3号機のメルトダウンを、初めて認めた。事故時の原子炉データを解析した結果、分かったのだという。2号機は地震発生から約101時間後、3号機については約60時間後だという。
 しかし、注意しなければならないのは、いまだに東電は、「メルトダウンが起きた」とは言っていない。核燃料の大部分が溶けて圧力容器の底に落下するメルトダウンが起きていた「可能性がある」としか言っていないのだ。また、圧力容器については2、3号機両方とも「大きくは壊れていない」という表現を使っている。翻訳すると、「小さく壊れている」ことはメルトダウンとともに正式に認めた、ということだ。

 1号機についても言えることだが、私は原発のメルトダウンの公表は、東電や電力企業任せにするのでなく、報告を受けた上で政府が政府として、つまり「対策本部」本部長たる内閣総理大臣が記者会見を開き、国内外に向けて公表すべき性格のことだと考えている。
 大震災以降、原発事故をめぐる政府・東電の情報隠蔽・操作が問題になり、私もそのことを何度も指摘してきたが、原発のメルトダウンという国家的/国際的重大・非常事態の公表を民間企業に行わせるという日本の「原子力行政」の在りかた、その無責任さ加減を私たちは改めて深刻に受け止める必要があると思うのだ。この間の国・東電の記者会見をみていると、自国の原発がメルトダウンするという事態を、国も東電も何か他人事のように、またそんなに大した事でないかのように捉えている、そう思えてならないのである。「怒り」や「憤激」というより、凍りつくような恐怖を覚えてしまうのだ。

 ともあれ、2011年5月24日は、稼働中原発の原子炉3つのメルトダウンを日本が世界に向けて認めた、原発史上最低最悪の日として歴史に記憶される日になるだろう。

・・・
2、3号機も大半溶融 損傷3月13日から
 東京電力は24日、東日本大震災に伴い原子炉が緊急停止した後の福島第1原発2、3号機の状態を解析した結果を報告書にまとめ、公表した。1号機同様、核燃料の大半が溶けて原子炉圧力容器の底に落下する「メルトダウン(炉心溶融)」の状態になったと分析。一方で「圧力容器の損傷は限定的」とした。
 東電の分析によると、非常時に原子炉を冷却する原子炉隔離時冷却系(RCIC)などが停止し、水位がいったん燃料下部まで低下。2号機では3月14日午後8時ごろ、3号機では13日午前9時ごろからそれぞれ炉心の損傷が始まったと推定した。現在、原子炉圧力容器内の水位計が不正確な可能性があるため
(1)その後の注水で水位が燃料頂部から3メートル程度低い位置で維持された場合
(2)水位が回復せず、燃料が露出し続けた場合--の2通りを想定し、シミュレーションした。
 その結果、2、3号機とも、(1)の場合は燃料が損傷、半分程度が圧力容器の底に落下し、残り半分は本来の位置にとどまった(2)の場合は大部分の燃料が落下した--と結論付けた。一方、現在の圧力容器の温度などから「容器の損傷は限定的で、冷却を続ければ大規模な放射性物質放出につながるような事態の進展はないと考えられる」との見方を示した。
 会見した松本純一・東電原子力・立地本部長代理は「断定的には言えないが、(計測値よりも実際の水位が大幅に低かった)1号機の状況を踏まえると、(現実の状況は(2)のような)計測値より水位が低いケースに近いと思われる」と話した。
 報告書は経済産業省原子力安全・保安院の指示を受け作成、23日夜に提出した。1号機の非常用冷却装置が津波到達前に手動で停止された点については「手順書に従った妥当な操作だった」と報告。地震の揺れによる機器の損傷については「主要な設備では起きなかった」との従来の見解を踏襲した。 各号機で高濃度汚染水が見つかっていることから、格納容器が損傷している可能性もあるが、東電は水漏れの原因を「温度が設計値以上に上昇し、接続部のパッキンが損傷した可能性がある」と説明、大規模な損傷を否定した。
 報告書について保安院は24日「多量の汚染水が残っているため現場確認が難しいが、一定の妥当性がある」とする一方、2、3号機の炉心の大半が溶融したとの分析については「保安院としての解析結果は近い将来示す」と述べ、見解は示さなかった。【毎日・河内敏康、平野光芳、岡田英、中西拓司】

◇東京電力が経済産業省原子力安全・保安院に提出した報告書の骨子
・地震発生初期の設備状況や運転操作の情報を使い、事故解析プログラムで1~3号機の炉心の状態を推定した
・1号機は津波到達の約4時間後に炉心損傷が始まり、原子炉圧力容器の破損に至る
・水位計のデータが正しいとすると、2号機は3月14日午後8時ごろ、3号機は同13日午前9時ごろに炉心損傷が始まり、圧力容器損傷には至らない
・実際の水位がさらに低い場合、2、3号機は圧力容器損傷に至る
・1~3号機では相当量の燃料の溶融が進み、炉心の形状・位置は大幅に変化
・現在の圧力容器底部の実測温度は100~170度で、安定的に冷却されている。注水継続により、今後大規模な放射性物質の放出はないと考えられる
・ほとんどの重要設備は津波の到達までは健全に機能した

容器損傷、分析以上か トリプル溶融
 福島第1原発1号機に続き、2、3号機でも燃料の大半が溶融していることを東京電力が24日認めた。ただし、東電は注水停止後に全燃料が露出した、という最も過酷なケースを想定しても、「大部分の燃料は圧力容器内にとどまっており、圧力容器の損傷は限定的」と説明し、1号機に比べ損傷は軽いとの見方を強調。その原因について松本純一・原子力・立地本部長代理は「2、3号機では津波後に非常用の冷却装置(RCIC)が早期に起動し、原子炉に給水できていたことが大きい」と述べた。
◇炉圧低下、密閉失い 東電は「限定的」強調
 だが、2、3号機では圧力容器や格納容器の圧力がほぼ1気圧になっており、格納容器がある程度健全な1号機より、両容器の密閉性が失われていることが推定される。また、1号機よりも高濃度の放射性物質を含む汚染水がタービン建屋地下に大量に漏れ出すなど、状況は1号機よりも深刻だ。こうした点から、東電の分析とは裏腹に、圧力容器と格納容器は大きく損傷している可能性がある。 今回東電が示した分析は、原子炉の冷却作業や汚染水の処理など事故の収束作業にどのような影響を与えるのだろうか。
 沢田隆・日本原子力学会副会長は「程度の差はあるとしても、1号機と同様に燃料のかなりの部分が溶融していることは予想がついていた。初期に燃料は溶けてはいても、現在は圧力容器底部で燃料が冷やされていると考えられる。炉心を冷却安定させて、放射性物質の放出を抑えるという工程には、特に問題はないだろう」と話す。
 一方、小出裕章・京都大原子炉実験所助教(原子核工学)は「圧力容器の底に穴が開いていれば、注入した水と一緒に燃料も流れ落ちており、格納容器の損傷もありうる。そうなると水をためられず冠水(水棺)だけでなく循環式冷却も難しくなり、工程表どおりには行かないのではないか。水位の維持と低下で2種類のデータを出してきたということは、東電自身も何が起きているのか不明だという状況だ。政府側からも『収束に向かっている』などの見通しが聞こえてくるが、実際はそうではないことを表している」と話す。【毎日・酒造唯、藤野基文、久野華代】

2・3号機の汚染水移送、月内にも中断
 東京電力は23日、東京電力福島第1原子力発電所2、3号機から出る高濃度の放射性物質を含む汚染水の移送を月内にも中断するとの見通しを明らかにした。移送先の施設が数日で満杯になるため、当面はタービン建屋などに残す。汚染水を浄化して再利用する装置の稼働は当初予定よりも約半月遅れて6月中旬になる見通しで、海や地下水の汚染が懸念される。
 高濃度汚染水は2号機のトレンチ(坑道)から毎日288トン、3号機のタービン建屋から同480トンを集中廃棄物処理施設に移送中。計1万4000トンを移す計画だが、現在のペースだと今後3~4日で満杯になり、中断を迫られる。移送量を減らして満杯の時期を遅らせることも検討中だ。
 高濃度汚染水はフランスのアレバ社の除染装置などで浄化し、冷却水として再び原子炉に戻す計画。しかし装置の建設は遅れており、取り除いた汚染物質の最終的な処理法も決着していない。 1~3号機の原子炉には毎日、計約670トンを注水している。蒸発量を引いた約530トンが高濃度汚染水として漏出、タービン建屋地下やトレンチにたまっているとみられる。1万トンの保管容量があるタンクも計画しているが、設置は7月の予定。汚染水対策は綱渡りの状態が続く。(日経電子版)

原発建設/災害における自治体の〈責任〉を考える

原発建設/災害における自治体の〈責任〉を考える

 昨日(5/23)、福島第1原発事故で、学校の屋外活動を制限する放射線量を年間20ミリシーベルトとした文科省の「基準」撤回を求める行動があった。福島県内の父母ら約650人が参加した。
 撤回要請に対し、同省科学技術・学術政策局の渡辺格(いたる)次長は「最終的には1ミリシーベルトを目指して努力する」としたが、撤回の意思はないことを改めて示したという。

 文科省の「基準」は国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力事故の収束段階で適用すべきとして勧告した「年間許容量1~20ミリシーベルト」を根拠にしたものだが、この問題をめぐっては内閣参与だった小佐古敏荘・東大教授(放射線安全学)が「大人と子どもの基準が同じなのは納得できない」と反発し、「涙の記者会見」を行い、辞任したことは記憶に新しい。政治家や官僚はよく「専門家の意見を聞いて・・・」と言うが、自分たちに都合の悪い「専門家」の助言は決して受け入れない。小佐古教授辞任劇はその典型的なケースである。小佐古教授は脱原発派でも何でもなかったのだから。

 しかし問題は、教授が言うように「大人と子どもの基準が同じ」ことにあるのではない。この論理では「大人の基準は問題なし」となりかねないからである。問題の核心にあるのは、国・文科省が、事態収拾の長期化とそれに伴う国の行財政責任・負担の増大化を見越し、少しでも責任と負担を軽減するために人間の被曝「許容量(?)」をご都合主義的に設定・「緩和」する、そういう姿勢、そういう発想そのものの中にあるのである。
 その意味で言えば、「基準」撤回を求めることは、原発推進/脱原発の政治的立場とは、まったく無関係の性格のことである。むしろ原発推進派こそ、地に落ちた原発推進運動の信頼性を回復するためにも、率先して国に「基準」撤回を求めるべきではないか。原発推進論者には、人間が「放射能汚染から自由に生きる権利」と原発が両立することを立証する責任があるのだから。

 以下、考えてみたいのは「基準」撤回とも関係するが、原発建設/災害における自治体の責任問題である。

自治体の〈責任〉
 原発事故が起こったときに、その最大の被害を受ける自治体(道府県・市町村)が地域住民に対して負うべき責任とは何だろう? 例えば、福島県でも静岡県でもよいが、あるいは双葉町や大熊町でも御前崎市でもどこでもよいが、原発誘致が決定して以降、自治体は自治体としての原発建設/「安全・安心」/災害をめぐる地元住民に対する「行政責任」・「説明責任」を果たしてきたと言えるだろうか?

 福島県(庁)も双葉・大熊町その他の自治体も、「国策・民営」の原子力行政の被害者である。これは間違いない。しかし同時に、法的に言えば、福島県と地元市町村(特に福島県)が福島第一・第二原発建設を容認しなければ、福島に東電の原発は作られることはなかった。原発建設は確かに「国策」ではあるが、自治体が受け入れを拒否し、建設認可を出さなければ民間企業としての東電が強制的に建設することはできないのである。その意味で自治体は、実は「国策」としての原発に対する強力かつ最終的な「権力」と「権限」を持っている。このことは「事故」以降、あまり論じられることがなかった点ではないだろうか。

 逆に言えば、だからこそ自治体に対する国と電力企業からの受け入れに向けた「工作」が展開されることになり、ここに「原発利権」が生まれる根拠もある。「組織暴力」=暴力団が地元の買収・恫喝に向け、暗躍するという闇の世界の「事件」の数々も私たちは知っている。
 道県レベル、市町村レベルに、さまざまな名目での国と電力企業からの「交付金」や「地元振興」をうたったカネが流れてきた。原発を通じて雇用も生まれ、地元経済は「活性化」する。いつの間にか地元は「原発漬け」「原発中毒」になり、原発なくしては地元経済が成り立たなくなるまで原発への依存構造を深めてしまう。住民が気づいたときには、もう「手遅れ」になっている・・・。

 なぜこんなことを書くのかというと、理由は二つある。
 一つは、つくづく今回の事故=人災で思ったのだが、どんなに国と原発産業からのカネが自治体に流れ、雇用を生み出したとしても、原発がメルトダウンを起こしてしまえば、すべては「チャラ」、いや巨大なマイナスになってしまう。もう少し突っ込んで言えば、私たちはこれまで福島県や地元市町村の首長が、「国と東電の安全神話を信じて受け入れ、裏切られた」とくり返すのを何度も聞いてきたが、そんな言葉で最終的に建設を認可し、東電が言う「安全対策」を認めてきた自治体の責任は免罪されて良いのか、という問題が残りはしないか。自治体の原発建設/災害における(地元住民、また放射能汚染の被害者に対する)責任とは何なのか?

 停止中原発の再稼働・新規建設・建設作業再開問題が全国各地で浮上する中、この問題は今一度検討され、広く議論されるべきだと思うのだが、どうだろう。 

(つづく)

・・・
原発推進政策に批判相次ぐ 参院委で小出京大助教ら
 東京電力福島第1原発事故を受け、参院行政監視委員会は23日、小出裕章・京都大原子炉実験所助教や、石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)ら4人を参考人として招き、原子力行政について討議した。参考人からは「破局的事故の可能性を無視してきた」(小出氏)など、これまでの原発推進政策を批判する意見が相次いだ。
 小出氏は、今回の事故対応で「政府は一貫して事故を過小評価し、楽観的な見通しで行動した」とし、放射性物質の拡散予測など情報公開の遅れも批判。また、国が「核燃料サイクル」の柱と位置付けてきた高速増殖炉の例を挙げ、当初1980年代とされた実用化のめどが立たないのに、関係機関の間で責任の所在が明確でないとした。
 石橋氏は、地球の全地震の約10%が日本に集中しており、「原発建設に適さない場所である」と強調。原子力安全委員会と経済産業省原子力安全・保安院が「原発擁護機関になっている」とし、安全性の審査が骨抜きになっていると指摘した。
 ソフトバンクの孫正義社長は、太陽光など再生可能エネルギーの活用を提言。元原子力プラント設計技術者の後藤政志・芝浦工大非常勤講師も「完璧な事故対策の模索より、新たな分野へのエネルギーシフトの方が容易」と、脱原発を訴えた。【共同】

浜岡原発、永久廃止を=参院で地震学者の石橋氏
 地震学者の石橋克彦神戸大名誉教授は23日、参院行政監視委員会で参考人として意見陳述し、全面停止した中部電力浜岡原発について「東海地震による大きな揺れ、大きな地震の続発、地盤の隆起変形などすべてが恐ろしく、津波対策をすれば大丈夫というものではない」と述べ、永久に閉鎖すべきだとの考えを表明した。
 かねて地震と原発事故が複合した「原発震災」が起きると警鐘を鳴らしてきた石橋氏は、浜岡以外の原発についても第三者機関を早急に設置してリスクを評価し、危険なものから順次閉鎖するよう求めた。また、地震という観点から浜岡の次に危険な地域として、14の原発が林立する若狭湾一帯を挙げた。 同委員会には、石橋氏や京大原子炉実験所の小出裕章助教ら4人が参考人として出席した。(時事)

風評被害の賠償、福島周辺都県も 文科省審査会
 東京電力福島第1、第2原発事故による損害の賠償範囲を決める文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長、能見善久学習院大教授)は23日、第2次指針で示す風評被害の賠償地域について、福島県か出荷制限区域を含む県、その周辺都県のいずれかに限定する方針を示した。能見会長は、31日に開く次回会合で2次指針を決定する見通しを示した。
 この日の第5回会合では、農林水産業に関しては、風評被害の賠償を認める地域として、福島県か出荷制限区域を含む県、その周辺都県が選択肢に挙げられた。また、観光業や建設業などについても、福島県かその周辺都県が候補とされた。「周辺都県」の範囲は今後検討されるが、「日本全国というのは指針になじまない」(事務局)として対象地域を限定する見通し。
 農林水産業や観光業では、風評被害が広い範囲で報告されている。審査会にも、外国政府が日本への渡航に対する注意喚起をしたため外国人観光客が減り、「休業を余儀なくされたホテルが出ている」(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)などの訴えがあった。【毎日・藤野基文、西川拓】

「地震損傷なし」 手動停止、結論持ち越し
 東京電力は23日、東日本大震災をもたらした地震発生直後の福島第1原発の初期データを調べた結果、「地震による主要機器の損傷はなかった」とする分析結果をまとめた。経済産業省原子力安全・保安院への報告は同日が期限。一方、1号機原子炉の非常用冷却装置が津波到達前に手動で停止され、炉心溶融を早めた可能性が指摘されている問題などについて、東電は「引き続き検証する」とし、結論を持ち越した。
 東電は、16日に公表した初期データを、保安院の指示に基づいて分析した。東電によると、地震発生から津波で浸水し全電源が喪失するまでに記録された原子炉の水位や圧力などを調べたところ、主要機器の損傷はなく、「地震で冷却水喪失という問題は発生していない」と判断した。だが「データに表れない程度の水漏れは全くないとは言い切れない」とし、主要機器以外の細管などが破断した可能性については否定しなかった。
 データについては保安院も独自に分析を進めている。西山英彦審議官は「保安院の分析結果も含め、分かったところから示したい」と話した。 東電は第1原発で原子炉などの冷却機能を失い大量の放射性物質が漏れた事故について、「想定外の津波が原因」と説明している。【毎日・酒造唯、中西拓司、江口一】
 ↓
 東電は事故責任=賠償負担額を抑えるため、耐震設計ミス・不備を排除する「分析結果」をまとめた。東電と保安院以外の第三者機関による徹底的な分析が必要である。
⇒「原発耐震偽装(中越沖地震-柏崎刈羽・浜岡-東海地震)」(福島老朽原発を考える会(ふくろうの会))

国連機関が放射線影響調査実施 今夏から
 国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR、事務局ウィーン)は23日、福島第1原発事故で発生した放射線による影響調査を始めることを決めた。来年5月までに予備調査結果を発表し、13年の国連総会への報告書提出を目指す。 23日始まった同委員会の年次総会には日本からも専門家が出席、事故の概要や政府の対応などを報告した。委員会は今後、具体的な必要データや測定のあり方などを検討し、今夏から調査に入る。
 バイス議長は同日の記者会見で「これまでのところ(現地住民の)健康に影響があるとは思えない(???)」と述べた。 同委員会は21カ国の科学者らで構成。放射線の身体的、遺伝的影響に関する情報を収集、報告している。チェルノブイリ原発事故(86年)の影響調査も行い、これまで3回報告書を出している。

柿沢氏追及「情報隠しの人事」=経産相は否定-溶融認めた担当交代
 みんなの党の柿沢未途氏は23日の衆院復興特別委員会で、震災発生直後の記者会見で福島第1原発1号機でのメルトダウン(全炉心溶融)の可能性を認めた経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官が会見担当から外れたことを取り上げ、「この人事で本当の情報が隠されたのではないか」と、事実を隠蔽(いんぺい)した疑いを追及した。
 中村氏が震災翌日の3月12日の会見で「炉心溶融の可能性が高い」と発言した直後、保安院は会見担当を交代。以降、保安院は燃料棒の部分損傷は認めたが、メルトダウンに否定的な見解を示し続けていた。しかし、東京電力は事故発生から2カ月以上たった今月15日、地震発生から16時間後にメルトダウンしていたと発表。中村氏の説明が正しく、結果的に保安院は、真実をいち早く語った担当者を交代させた。 追及を受けた枝野幸男官房長官は「私の記者会見でも、炉心溶融は十分可能性があると言っている。可能性があるということで更迭されたなら、私が更迭されないとおかしい」と隠蔽を否定。中村氏の上司に当たる海江田万里経済産業相も「正しいことを正しく伝えた人を更迭などと毛頭考えてない」と語った。(時事)

関電と大ガス、5月分値上げ
 関西電力と大阪ガスは30日、5月分の電気料金、ガス料金をそれぞれ値上げすると発表した。

東電CDSが過去最高に上昇、経営不安消えずリスク回避
 23日のクレジット市場で、東京電力のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は850ベーシスポイント(bp)で取引が成立し、3月28日に付けた過去最高(450bp)を上回った。直近の出合いは、枝野幸男官房長官が金融機関に東電向け融資の債権放棄を促す発言をした5月13日の330bp。
 東京電力は20日、2011年3月期連結当期損益が1兆2473億円の赤字になったと発表。金融機関を除く日本企業で史上最大の赤字を出した。決算数値は想定の範囲との見方が出ているが、賠償支払い額に見通しが立たないことに加えて、賠償枠組みの実現性に懐疑的な見方が浮上し、リスクを回避する動きが先行した。 ある国内金融機関のクレジット担当者は「政治の不安定で賠償枠組みに関する法案が今国会で成立するのか不透明。法案が成立しなければ、今後の資金繰りにも重大な支障が出てくる可能性もある」との指摘している。 CDS市場では、東京電力のほか、中部電力3年が70bp、関西電力3年が65bpと、原発問題に揺れる電力セクターにワイド化圧力がかかっている。(ロイター)

2011年5月21日土曜日

福島原発事故は「神の仕業」?---与謝野経財相の妄言

福島原発事故は「神の仕業」?---与謝野経財相の妄言


 福島第一原発事故は「神様の仕業としか説明できない」・・・。いかにも戦後の原子力行政の一翼を担ってきた人物らしい、政治的狙いが透けて見える発言だ。昨日(5/20)の閣議後に与謝野馨経済財政担当相が語った言葉である。与謝野氏は東電の津波対策に関しても「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」と語り、東電に事故の賠償責任を負わせるのは「不当だ」と重ねて強調したという。まさに妄言としか言いようがない。
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5/23
東電、貞観大津波も過小評価か 4メートル未満と推定
 東日本大震災の大津波の前例と指摘される869年の「貞観(じょうがん)の大津波」について、東京電力が福島県内の津波は4メートル未満と推定する調査結果をまとめていた。大津波の可能性を小さく評価する内容。22日から始まった日本地球惑星科学連合大会に発表を申し込んでいた。
 東電は、2009年から10年にかけて、福島県内の5地点で貞観の大津波で運ばれた砂を調べた。この結果、南相馬市で高さ3メートルの地点に砂があったが、4メートルの地点では見つからなかったとして、津波が海岸に駆け上がった高さは「最大で4メートル未満」と結論づけた。 富岡町からいわき市にかけては津波で運ばれた砂は見つからず、「標高4~5メートルを超える津波はなかった可能性が高い」とした。(朝日)

人の善意に期待、無責任…債権放棄で与謝野氏
 与謝野経済財政相は22日のNHKの番組で、社会保障改革について「高齢者が増えるから、年金や医療、介護(の給付)は増える。超過需要を作らず、無駄(???)が発生しないような効率化をしなければいけない」と述べ、過剰サービスにならないよう何らかの手段で給付を抑える必要性を強調した。 また、「厚生労働省の案には、そういう厳しい話は出ていない」として、厚労省が政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅首相)に提出した改革案が不十分だと指摘した。
 東京電力の損害賠償を巡って枝野官房長官が金融機関に東電向け債権の一部放棄を求めていることについては、「金融機関の善意や良識に頼って(???)賠償スキーム(枠組み)を作るということは、甘いのではないか。人の善意に期待して物事を進めるのは、かえって無責任だ」と、改めて否定的な考えを示した。(読売)
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 政府の賠償スキームが、被災者と納税者一般に対し「無責任」極まりないことは事実だが、それは与謝野氏の言う「無責任」の意味とはまったく違う。しかし、自らが閣僚を務める内閣が出した案を「無責任」と断言するのであれば、なぜ与謝野氏は菅内閣の閣僚を続けているのか、またなぜ菅民主党はそんな与謝野氏の辞任を促さないか? ご都合主義と言えばそれまでだが、日本の政治は不可解きわまりない。
・・・

 自らの過去の政治責任を不問にし、原発事故の東電の責任を免罪する。与謝野氏は、菅内閣内部で、①東電株主の「権利」とメガバンクの債権擁護、②「発送電分離」阻止、③電力企業大手による既存の「地域独占」体制護持、これらに向けて「世論」を形成・操作する、その政治的役割を演じている。「汚れ役」を自ら買ってでるという、タチの悪い政治的狂言劇だ。
 これに関連し、全国銀行協会の奥正之会長(三井住友フィナンシャルグループ会長)は一昨日、枝野官房長官の「債権放棄」論に対し、格付け会社が東電の格付けを引き下げるなど「国内外の投資家がナーバス(神経質)になっている」と言い、「原子力発電所の賠償スキームが固まりつつある中、市場に波紋を呼ぶ発言がなぜ出るのか」と「不快感」をあらわにしたという。

 与謝野氏の債権放棄論の否定の根拠は、「電力事業のように堅実な、公益性を持った事業にお金を貸すことに『貸し手責任』が発生することは理論上あり得ない」というものだ。しかしこれが原発事故=「神の仕業」とともに妄言に過ぎないことは明らかだ。「公益性を持った事業」を行う企業に対する投資/融資者は、その企業が滞りなく事業を展開しうるかどうかをも各自の責任において判断して投資/融資するのが資本主義社会の原則であるからだ。
 言葉を換えると、日本の全電力会社に投資/融資している個人・法人は、会社がメルトダウンという最悪の原発事故を起こし、それによって数兆円規模の賠償責任を負いうるという「リスク」を前提にして投資/融資しなければならないのである。債権者が責めるべきは、債権者に債権放棄を迫るような事態を引き起こした東電であり、自らの損失を納税者一般に転嫁し、肩代わりさせようとするのはお門違いもはなはだしい。「投資にはリスクがつきもの」と個人投資をさんざん奨励しておきながら、自分たちはリスクを引き受けないというのは、あまりに虫がよすぎる議論ではないか? 


 問題を複雑にしている要因のひとつは、何度も述べたように、政府が東電の責任を追及するばかりで、いわば東電と「共同責任」を追うべき政府の政治・行政責任を回避しようとしていることである。しかし、たとえば政治責任に関して言えば、
①菅内閣の全閣僚が、東電経営陣と同様に、議員報酬をゼロにする、
②政権交代以前の戦後原子力行政を推進してきた自民党(及び公明党)の執行部の責任問題を明確にする、
③与党経験党の国会議員の報酬を東電社員の減給と同率とする、などの案を菅政権が打ち出すなら、天文学的額に上るであろう賠償総額の一部を補完することも、納税者として議論することはありえるかも知れない。
・・・
5/11
原発事故「自民党にも責任」 石破氏、検証を提言
 自民党の石破茂政調会長は11日、党本部で記者会見し、福島第1原発事故について、政権担当時に原発建設を積極推進した党にも一定の責任があるとの認識を示した。「自民党が与党として原子力政策を担ってきたことは事実だ。間違いを起こさない政党はない。私たちも何か誤りがあったのではないか」と述べた。 同時に「自民党としてどこが誤っており、それはなぜかをきちんと検証しなければ、政府を追及する資格がない」と指摘。谷垣禎一総裁ら党幹部と検証の在り方について協議したい考えを明らかにした。【共同通信】
5/28
小泉元首相 原発事故 自民政権時代の責任に言及
 小泉純一郎元首相は28日、神奈川県横須賀市の県立保健福祉大学で行われた「日本食育学会・学術大会」で講演し、東京電力福島第1原発の事故に関連して「自民党政権時代にも原発の安全性を信用して推進してきたが、過ちがあった」と語り、自民党政権時代の責任に言及した。小泉元首相はさらに、「原発を増やすのは無理。原発依存度を下げ、自然エネルギーの開発に力を入れるべきだ」と述べ、「既存の原発に安全対策をし、住民理解を得たものは維持、そうでない危険なものは廃炉を進めなければならない」と語った。【毎日・田中義宏】
 ↓
 当然の発言だ。自民党に責任があるということは公明党にも責任があるということであり、自民党から分裂した諸派にも責任があるということだ。責任は当然、党と議員の賠償責任として問われるべきであり、元首相として、現政調会長として自身と党に問うべきである。
・・・

 また、原子力推進官僚機構の行政責任で言えば、
①少なくとも内閣府・経産省・文科省の課長補佐以上の、東電社員と同様の20%程度の減給、
②独立行政法人のさらなる廃止・統合・資産整理→国庫への返上、などが考えられるだろうか。
・・・
賠償問題で経産相 「国の積立金 転用も」
 海江田万里経済産業相は17日の会見で、東京電力福島第一原発の被災者に支払う損害賠償に国の基金などを転用することについて、「使えるものがあれば使っていくつもりはある」と述べた。
 政府が13日に公表した賠償枠組みでは支払い主体は東電で、原資は同社のリストラと電気料金の値上げが中心になる。だが、政府には経産省所管の公益法人「原子力環境整備促進・資金管理センター」に3兆円を超える積立金などの“原発埋蔵金”があり、政府内外で転用を求める声が出ている。
 海江田経産相は、転用には法改正が必要で現段階で無理としながらも、「これからさらに検討する」と述べた。実現すれば電気料金値上げが抑えられ、国民負担が軽減することになる。(東京新聞)
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 国にはどしどし「検討」し、必要な「法改正」を行ってもらわねばならない。日本の独法や「公益」法人は、叩けばまだまだ「ほこり」や「膿」が「カネ」と一緒に出てくる、ということだ。増税も電気料金値上げもすることなく、国・東電・電力企業が賠償責任を果たす方法はいくらでもある。だまされては、いけない。
・・・

 もちろん、納税者が何も声を上げず放置するなら、民主党・自民党・官僚が自発的にこんなことをするはずがない。戦後の原子力行政に対する政治・行政責任を自ら問い、国会議員・国家公務員の報酬削減などという案は出てきようがない。私たちに問われているのは、
1、原発大災害の国の政治・行政責任とは何か、
2、その責任はいかなる政府・官僚機構・政党・国会議員の具体的行為・制度改革として表現されるべきか、これらを納税者・有権者・「市民」として、まず真剣に考えてみることだろう。

 国と東電の共同責任免責論に対する対抗言説を、反/脱原発派はもっと練り上げる必要がある。そうでないと、原発災害への賠償総額が減り、補償対象が狭められるだけでなく、その責任の「国民転嫁」がはかられるだけである。今のままの「スキーム」では、間違いなくそうなってしまうだろう。


 "Too Big to Fail"?
 もうひとつの要因は、東電を企業法人として存続させながら、同時に公的資金を導入し、実態としてはすでに経営破たんしている民間企業を国が救済しようとする、国の賠償スキームの内的矛盾である。
 しかし、これにははっきりとした理由がある。東電に自己破産宣言を出させること、つまり東電およびその事業の「国有化」の責任を負うことを菅政権、というより国は回避したいからだ。これが「原発事業は国策・民営」のゆえんであり、原発大災害が起きた場合のその矛盾が、ここに露呈する。

 東電が法的に倒産し、その経営および事業を法的に国の管理下に置く、というより今そうしてしまうと、経営の合理化と電力自由化の煽りを受けて、発送電分離→東電の最後的解体に否応無く議論が発展する。そうなると既存の電力会社による地域独占体制の不合理とその解体論にも、さらに議論は発展するだろう。菅政権というか民主党としては、それは何としても避けたい。そのためには、東電とその事業を現状のまま残さざるをえない。東電は"too big to fail"なのだと。

 しかしそうは言っても、東電が賠償責任を果たせないのは明白であり、国の政治・行政責任を問わぬまま、税の投入によって賠償の枠組みを作らざるをえない。その正当性を担保するためには、東電の「ステークホルダー」を搾(しぼ)りきれるまで搾る、一応その姿勢だけは示しておかねばならない。そうでないとなぜ東電を国が公的資金投入によって救済するのか、国民の不満と怒りは東電から国そのものに向かうようになるからだ。賠償をめぐる政府案、その「スキーム」の前例なき中途半端さの根拠、その意図がここにある。

・・・
原発の地下建設推進、議連発足へ 与野党党首ら超党派
 4人の首相経験者や与野党党首が顧問に名を連ねる「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」が31日に発足する。表向きは勉強会だが、名前を連ねるベテランの顔ぶれから、大連立や政界再編に向けた布石との臆測も呼びそうだ。
 議連の顧問には民主党の鳩山由紀夫氏、羽田孜氏、自民党の森喜朗氏、安倍晋三氏の首相経験者のほか、谷垣禎一総裁、国民新党の亀井静香代表らが名を連ねた。たちあがれ日本の平沼赳夫代表が会長に就いた。 地下式原発は地下に建設される原発。事故の際に容易に地下に封じ込められる利点があるという。三木内閣当時に検討が始まり、1991年に自民党内に勉強会が発足していた。(朝日)

3号機流出は20兆ベクレル 限度100倍
 東京電力福島第1原発3号機の海水取水口近くにある「ピット」と呼ばれるコンクリート製の穴から、11日に高濃度の放射性汚染水が海に流出しているのが見つかった問題で、東電は21日、流出は約41時間続き、年間の海洋放出限度の約100倍に相当する20兆ベクレルの放射性物質が海に漏れていたことを明らかにした。 東電によると、タービン建屋内やケーブルを納めるコンクリート製のトンネル(トレンチ)にたまっている汚染水がピットへ流れてきたとみられる。11日午後に作業員が発見、同日夕にピットをコンクリートで埋めて流出を止めた。
 上流側の水位変化をもとに、流出は10日午前2時ごろから始まり、約250立方メートルに及んだと推定し、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。 東電は流出した放射性物質の海洋への影響について「沿岸15キロ地点での測定で観測されていない」と説明。海への流出につながる恐れのあるピット27カ所を、6月末までにコンクリートなどで封鎖するという。【毎日・平野光芳、比嘉洋】

北海道電、MOX燃料製造開始へ=仏メロックス社で
 北海道電力は20日、泊原発3号機のプルサーマル発電で使用するウラン・プルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料の輸入燃料体検査を経済産業省に申請したと発表した。MOX燃料の製造開始前に必要な手続き。フランスのメロックス社が今年12月末までに製造し、経産省の検査を経て早ければ2012年にも発電が始まる。(時事)

原発事故IAEA報告でかん口令 「ノーコメント」統一
 東京電力福島第1原発の事故に関して政府が作成を進めている国際原子力機関(IAEA)への報告書の内容について、経済産業省など関係省庁が、秘密の確保を徹底し報道機関からの質問に対して「ノーコメントと答える」との“かん口令”を申し合わせていたことが22日、分かった。 報告書は「省庁が分担箇所を作り、まとめ上げる形」(政府筋)で、外部の専門家の検証を経ないという。詳細が判明して「国際的な報告書に東電や政府の一方的な見解が反映される」との批判が高まるのをかわす狙いがあるとみられる。
 政府関係者によると、枝野幸男官房長官が17日に報告書作成チームの設置を公表する前に、共同通信がチーム設置や骨子案を報じたことなどを受け、秘密保持を徹底し、内容は「ノーコメント」と答えることを申し合わせた。 また、チームの責任者である細野豪志首相補佐官が連日行っている会見で一手に質問を引き受けた方が「省庁の作業がしやすくなる」との方針も確認されたという。 その後、関係者は「内容は検討中で、今言えるものではない。(外部の検証は)対策本部のことなので承知していない」(高木義明文部科学相)、「(今後の動きが)どうなっていくのか、はっきりしない」(班目春樹原子力安全委員長)などとし、報告書についての明確なコメントを避けている。
 報告書は6月20日からウィーンで開くIAEA閣僚級会合に向け、今月23日に来日するIAEAの専門家の協力を得て事故の評価や現状、教訓をまとめる。骨子案には、放射性物質拡散のシミュレーションが公表されずに厳しい批判を受けたことが記載されないなど、政府や東電の取り組みを前向きに紹介する(???)内容が目立つことが明らかになっている。(共同)

国連が原発の安全性協議へ 「再考の時期」
 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は20日、福島第1原発事故について国際原子力機関(IAEA)など核問題の国際機関トップとテレビ会議で協議した。席上、原発の安全性や核不拡散に関する首脳級特別会合を、国連総会中の9月22日に開催すると述べた。会合では、各国際機関が福島事故の影響や再発防止策を総括的に分析した報告書が発表される。 事務総長はテレビ会議で「原子力の民生利用の安全性は世界の関心事だ」と指摘。その上で「原子力エネルギーの安全性を世界規模で再考する時期だ」と、9月の首脳会合の重要性を訴えた。
 事務総長は先月19日、チェルノブイリ原発事故25年で訪れたウクライナ・キエフで行った演説で、原発の安全性に関する国際的な枠組みの見直しが急務だと主張。見直しに向けた「戦略5原則」として
(1)原発の安全基準の徹底的な見直し
(2)核の平和利用を促進するIAEAの体制強化
(3)自然災害への原発の対応強化
(4)原発のコスト見直し
(5)原発の安全性と、核の安全保障の連携強化--を挙げていた。【毎日・ニューヨーク山科武司】
 ↓
 事務総長には、まず自分の国・韓国がエネルギー総需要に占める原発依存率が4割以上であることを自覚してもらう必要がある。そして、「原発の安全性に関する国際的な枠組み」と「安全基準の徹底的な見直し」が完了するまで、全世界の稼働中原発の一時停止くらいは「提言」してもらいたいものだ。
 国連事務局は、安保理常任理事国のすべてが核兵器保有・強烈な原発推進国である国連システムそのものが世界的なエネルギー政策の転換・脱原発の阻害物になっていることを認識すべきである。つまり、現在の意思決定システムが続くかぎり、国連は国際平和のみならず、脱原発の推進翼にもなりえないということである。

米国の新核実験、広島・長崎市長が批判 「容認できぬ」
 米国の新たな未臨界核実験について、松井一実・広島市長は22日、報道陣の取材に「実験が後になってわかること自体、不信感を生む話。米国には我々の核廃絶への切なる思いを理解してもらいたい。誤解を生むような対応は厳に慎んで頂きたい」と米国を批判。この日、広島市が断念を表明している2020年夏季五輪構想を考える招致検討委員会の会合に出席していた田上富久・長崎市長は、「実験の意味合いが十分わからないが、新しい核兵器開発につながるのであれば、被爆地として容認できない」と語った。(朝日)

日中韓首脳会談:首脳宣言要旨
<首脳宣言>
 一、東日本大震災により失われた尊い命、甚大な被害に対し、深い哀悼の意を表する。
 一、3国は未来志向で包括的な協力パートナーシップをより一層強化。困難な状況を乗り越えようとする日本の努力を支えていく。
▽防災・原子力安全
 一、日本は原発事故と震災の教訓を中韓両国や国際社会と共有する。
▽経済成長
 一、日中韓自由貿易協定(FTA)の産官学共同研究を11年中に終了させる。
 一、3国間の観光促進で15年までに人的交流を2600万人規模に拡大。
▽北東アジア情勢
 一、北朝鮮のウラン濃縮計画に懸念を表明。
<付属文書>
▽原子力安全協力
 一、多くの国にとって原子力エネルギーが重要な選択肢であると認識
 一、原子力安全の確保は原子力エネルギー発展の必要条件。
 一、日本政府は福島第1原発の状況を解決する決意を表明。最大限の透明性をもって国際社会への情報提供を継続する。
 一、中韓両政府は、原子力事故を最終的に解決するための日本政府の努力を支持する。
 一、自然災害に対する原発の安全性強化に関する専門家協議を推進。
 一、緊急時の早期通報の枠組み、専門家交流について協議を開始。
 一、原子力事故の際は、産品の安全性について科学的証拠に基づき必要な対応を慎重に取ること(???)が重要との見解を共有。(毎日)

ドイツ、反原発・緑の党また躍進 ブレーメン州議会選
 ドイツ北部ブレーメン州議会選挙の投開票が22日行われ、地元テレビの開票予測では、反原発を掲げる90年連合・緑の党が躍進し、メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)を抜き、同州議会で初めて第2党になった。社会民主党(SPD)は第1党の座を維持。
 緑の党は福島第1原発の事故後に実施されたドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州など二つの州議会選でも大勝。今回の選挙結果はドイツ政府が検討している脱原発政策にも影響を与えそうだ。
 地元テレビによると、SPDの得票率は約38%(前回選挙は36・7%)、緑の党は過去最高だった前回の16・5%を上回る約23%。一方、CDUは約20%(前回25・6%)と低迷、自由民主党(FDP)は議席獲得に必要な5%を下回った。【ベルリン共同】
 ↓
 福島原発大災害を経ても尚、原発推進の二大政党の支持者が40~45%前後、無党派50%前後、「脱原発」をスローガンとしては打ち出している共産・社民を合わせた支持者3%程度の日本には、脱原発を段階的にかつ着実に実現する、そのための「政治的受け皿」がないなぜこんな国になってしまったのか? 「無党派」で「市民派」の脱原発勢力は、今だからこそじっくり考える必要があるだろう。

21人もいる東電顧問、6月末で11人退任
 東京電力は21日の記者会見で、現在21人いる顧問のうち、経済産業省出身の白川進元副社長ら11人が6月末で退任することを明らかにした。 福島第一原子力発電所の事故の経営責任を取って退任する清水正孝社長と武藤栄副社長のほか、築舘勝利常任監査役の3人は6月末に無報酬で顧問に就任する。この結果、顧問の人数は13人となり、年間報酬の合計額は2億1900万円から9800万円に減る。(読売)
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 今の東電に「顧問」が必要か? しかも有給? 共同通信によると、「顧問」21人中4人は中央省庁出身で、上の白川副社長の他、国土交通省が川島毅氏と藤川寛之氏の2人、警察庁が栗本英雄氏。ほかは東電OBが16人と国際協力銀行出身の近藤純一氏だという。東電の「顧問」の位置づけは「専門的な深い知識や経験に基づき適宜、アドバイスをする」( 「アドバイス料」に年間1000万以上?)というものだが、いわゆる「原子力むら」=政・官・産・学原子力複合体の「官」とは経産省や文科省だけでなく官僚機構全体であることをしっかり確認しておこう。

浜岡原発東 2.8メートル隆起跡 (東京新聞)

2011年5月18日水曜日

国と東電の〈責任〉をめぐる混乱

国と東電の〈責任〉をめぐる混乱


 国の責任
 福島第一原発大災害をめぐる「国の責任」とは何か? それは1950年代にまで遡る、日本の「原子力行政」に対して国が負う政治責任と行政責任のことである。
 政治責任という意味では、①歴代内閣・閣僚・内閣府直轄の原子力委員会・原子力安全委員会委員、②歴代政権与党、国会議員の責任であり、
 行政責任という意味では、③経済産業省・文部科学省を始めとする原発推進官僚機構、原子力関連独立行政法人の責任がこれに含まれる。

 日本の法体系には、原発がメルトダウンを起こし、国家的非常事態を招くという、そういう事態に対して国が負うべき政治・行政責任を明確に規定した法律がない。「国策」として推進してきた「原子力行政」の破綻に対して国はいかなる責任を負うのか? その「基準」がないのである。だから菅政権は、「事故の一義的責任は東電が負う」という、その意味では責任逃れの言辞を、何度も何度も繰り返すのである。

 中小の外食企業が食中毒事件を起こし、死者を出せば、民事のみならず刑事事件に発展し、たいていその企業は倒産し、経営陣も厳しく社会的・経済的制裁を受ける。しかし、「国策」が破産し、死者・被爆者・被災者を出しても、国は税金=カネでケリをつけようとするだけで、決して個々の政策立案・決定者は責任を取ろうとはしない。菅内閣が言う「国の責任」とは、ただ電気料金値上げや増税によって「国民」に「国の責任」を肩代わりさせようとするものに過ぎない。内閣総理大臣や経産大臣が「大臣手当て」を返上し、国が負うべき政治・行政責任をそれで済ませようとしているのである。

 たとえば、今回の賠償案の枠組みでは、東電の「すべてのステークホルダー」(利害関係者)に「協力」を求めると明記し、役職員・株主、顧客企業や個人、東電OBらにも賠償負担が及ぶ可能性があるスキームになっている。
 私は、これ自体は当然のことと考えている。株主・顧客企業・メガバンク等に関して言えば、東電の原発がメルトダウンの事故を起こし、今想定されているだけでも5兆円規模の損害賠償責任を負いうるという投資「リスク」を承知の上で、東電に投資/融資し、これまで儲けてきたのだから。これまで何度もその超高給ぶりが批判されてきた東電経営陣OBは、毎年1億円近い年収を私たちが払ってきた電気料金から得てきたのだから。

 問題は、東電のステークホルダーの責任を問うのと同様の観点から、上に述べた①から③の「すべてのステークホルダー」の政治・行政責任、賠償負担の責任を問うという姿勢が、国=政府にないことだ。ゼロ、である。議論されているのは、せいぜい経済産業省・原子力・安全保安院の省からの分離程度である。

 国が招いた国家的災害に対して、その政策立案や決定に責任を負うべき政府与党・官僚機構とこれらを人格的に表現する閣僚・国会議員・官僚(国家公務員)、その「OB」が、具体的にその進退や個人的賠償責任(減給)などにおいて責任を負わないというのは、いったいどういうことか? 自分たちには責任はないが、東電のステークホルダーや納税者一般にはあるということか?
 内閣府で言えば、原子力委員会・原子力安全委員会は何の責任も問われることなく、何事もなかったかのように存続することが、果たして許されるのか? それぞれの歴代委員長・各委員の責任問題はどこに消えたのか?
 あるいは、経済産業省と系列独立行政法人・機関であれば、1、資源エネルギー庁、2、原子力安全・保安院と原子力安全基盤機構、3、総合資源エネルギー調査会・原子力部会、原子力安全・保安部会はどうか。
 文部科学省であれば、1、日本原子力研究開発機構、2、日本原子力研究所、3、核燃料サイクル開発機構はどうか・・・。


原子力委員会の責任
 国の責任を考える一例として、国の原子力・原発「施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図る」ことを目的とする原子力委員会(1956年設置)およびその委員の責任を考えてみる。
 ちょうど10年前、東電柏崎刈羽原発へのプルサーマル導入に対する住民投票があった。ここに住民投票をめぐる新潟日報の特集記事がある。そこに、名だたる原発推進論者であり、当時の原子力委員会委員であった「評論家」、木元教子氏の「導入、必然の流れ 原子力は基幹電源」という見解が掲載されている。以下、それからの抜粋。

・「日常の暮らしの中でも リサイクルの発想がある。原子力も同じだ(???)。最終的には高速増殖炉まで進める が、ウランを再処理し、MOX燃料にして軽水炉で燃やすことはウランの有効 利用の点で当然(?)であり、プルサーマル導入の流れは必然だ(?)」
・「製造元がデー タを公開しないのは、安全でないからとは思わない。機密保持は安全性確保の手段とも解釈できる(???)。業者への不信感が、MOX燃料は危険という話につな がっていることは残念だ」
・「原発立地点の住民は被害者、電力の大消費地は加害者との声も耳にする。柏崎刈羽は世界に冠たる原発(???)だ。被害者意識から脱し、国のために原発を引き受 けていると胸を張ってほしい(!!!)」。

 「日常のリサイクル」と「核燃料のリサイクル」を同一次元で語る原子力委員会・・・。「言葉を失う」とは、こういう言説に対して言うのだろうが、これが原子力・原発への基礎的知見さえ持っているとはとても思えない、原子力委員会・委員の「見解」なのである。
 木元氏を含む歴代原子力委員会委員は、自らが国の広告塔となり推進してきた東電の原発事業に対し、いかなる責任を負うつもりなのだろう? 責任問題を棚上げにしたまま原子力委員会は存続が許されてよいのだろうか?

 国の忌々(ゆゆ)しき失政・不作為、原子力産業・電力企業への「監督責任」の不履行。そして「原子力緊急事態」=国家的非常事態を招いたことに対し、政府・与党・官僚機構、国会議員の誰も政治・行政・経済的責任を取ろうとしない。それが許される国家。日本という国は、何ともオメデタイ国であるらしい。それを許している私たちは、何と官僚と政治家に「心優しき国民」であることか。


 メガバンクの責任
 JALの稲盛会長が「東電はまだ健全な会社だ」と言い、「(日航のように)倒産して会社更生法が適用された場合は債権放棄もあるが、何もないままで債権放棄となるのは問題ではないか」と、枝野官房長官が金融機関に東京電力向け融資の一部債権放棄を求める趣旨の発言をしたことに対し、「疑問」を呈したという。
 また、自民党の石破政調会長も、「経済の潤滑油たる金融機関は預金者と株主に支えられており、債権放棄は国民負担に返ってくる。かなり踏み込みすぎ(???)であり、熟慮されて行われた発言とは思えない」と言ったという。今日(5/18)のことだ。

 原発事故と強制停電強行によって、東電の電力企業法人体としての経営破綻と事業遂行能力の破綻は明白になった。にもかかわらず東電の企業体としての存続を大前提に賠償スキームを構築しようとしているところに、政府案の根本矛盾がある。国の責任も不明確だが、「一義的な責任」を負うべき東電自体の責任がどこまでに及ぶかも不明確である。そして両方の責任が不明確であることが政府案に対する政府内外からの批判を招き、法案化が先送りされることによって、被災者への賠償が先送りされる。

 公的資金を東電に投入する場合には(賠償を国が「補助」するとはそういうことだ)、東電の経営者・株主・債権者の責任が追及され、それ相当の「負担」を負うのは当然のことだ。東電の株式価値はすでに大暴落しているが、事故対処・電力確保・賠償問題を通じて東電が債務超過になるなら、株式価値をゼロし、東電を「国有化」することも当然のことである。これに応じて東電の債権者も、当然、債権放棄の運びになる。

 無論、私は東電一時「国有化」が及ぼす経済的影響を考慮していないわけではない。東電は7兆円の有利子負債と79万人の株主を持ち、残高5兆円規模の社債や銀行の融資債権を抱えている、と言われている。これらが「チャラ」になれば「マーケット」の一時的混乱は避けられないだろう。しかしだからと言って、東電の責任問題を曖昧にし、納税者一般に責任転嫁することは許されない
 あらゆる議論は、ここから出発しなければならないし、それ以外の「スキーム」などありえない。政府がこれを曖昧にしようとするなら、私たちは断固として声を上げるべきではないか。すべての被災者・被曝者・被害者、そして私たち自身のために。それが「市民社会」が通すべき〈筋〉というものだと私は思う。

・・・
5/19
福島原発3号機、窒素注入できず 補佐官「一番心配」
 東京電力福島第1原子力発電所では3号機が最も不安定な状況が続いている。5月に入り圧力容器の温度が急上昇。注水量を大幅に増やし、ようやく下降傾向にあるが、1、2号機に比べるとまだ高い。18日には爆発後初めて作業員が原子炉建屋内に入ったが放射線量が高く、再爆発を防ぐ窒素注入がすぐに実施できないこともわかった。政府と東電の統合対策室が19日に開いた記者会見で、細野豪志首相補佐官は「3号機が一番心配な炉である」と強調した。
 3号機は圧力容器への応急的な注水がうまくいかず、15日には容器の一部で275度を記録した。当初毎時6トンだった注水量を段階的に引き上げ17日から毎時18トンにした。1、2号機のほぼ3倍の注入量で19日午前には158度まで下がった。 原子力安全委員会の班目春樹委員長は「3号機も炉心溶融(メルトダウン)は起きているだろう。1号機のようにすべての燃料が容器の底に溶け落ちて水につかっているのではなく、部分的には炉心の支持板に残って水から出ている」との見方を示す。

 容器内の水位が下がれば再び温度上昇する可能性は高い。当面、現在の注水量を維持する見通しだが、放射性物質を含む汚染水の量も増える。17日から汚染水の集中廃棄物処理施設への移送を始めた。3号機の原子炉建屋には18日夕に作業員2人が入った。窒素注入を予定している配管が使えるかどうかを確認しようとしたが、放射線量が毎時160~170ミリシーベルトと高く、約10分で調査を打ち切った。東電はこの事実を19日に初めて公表した。経済産業省原子力安全・保安院にも同日に知らせたという。
 窒素は格納容器内にたまる水素が爆発しないようにするために注入する。1号機ではすでに4月7日に開始、3号機でも早い段階から検討してきた。東電は19日の会見で「遮蔽対策で予定の配管を使えるか、それとも別のところから注入するかを考えたい」とし、再検討する方針を明らかにした。(日経電子版

安全設計審査指針「明らかに間違い」班目氏
 原子力安全委員会の班目春樹委員長は19日、福島第1原発事故を受け、原発の安全設計審査指針など各種指針を見直す方針を示した。安全設計審査指針は「長期間にわたる全電源喪失を考慮する必要はない」と規定しており、班目委員長は「明らかに間違い」と述べた。 電力会社は、原子力安全委が決める各種の指針に基づいて原発を設計、建設しており、安全設計審査指針、耐震設計審査指針などの基準を満たす必要がある。この基準に落ち度があったと安全委が明確に認めたことで、原子力行政の在り方があらためて問われそうだ。
 今回の事故は電源喪失で事態が深刻化した。班目委員長は記者会見で、津波による電源喪失に対して防護が十分でなかったと説明。「(安全対策に)穴があいていたことが分かってしまった」と語り、多重防護を原則として指針を改定するとした。 3月11日の地震では福島第1原発の2、3、5号機で、想定した最大の揺れの強さ(基準地震動)を最大3割超えた。班目委員長は「予想を上回る地震だった」とし、耐震設計審査指針も見直し対象になるとの考えを示した。 改定作業の時期については、なるべく早く始めたいとしながらも「何が起こったか、はっきり分かっていない段階では議論が拡散するだけだ」と明言を避け、事故原因究明を待つ考えを示した。(毎日
⇒「「原子力緊急事態」: 工程のない「工程表」のデタラメ

2011年5月15日日曜日

で、私たちは東電をどうするのか?(2)

で、私たちは東電をどうするのか?(2)

5/19
 報道によると、福島第1原発事故で「極度の不安や恐怖」を感じたとして、東京都内の男性(46)が東京電力を相手に慰謝料10万円を請求する訴訟を東京簡裁に起こしたという。
 今日(5/19)開かれた第1回口頭弁論。東電側は「想像をはるかに超えた地震と津波が原因となった。対応できるような対策を講じる義務があったとまでは言えない」(???)と反論。「原発建設は、法令に基づいて適切に行われてきた」「不安や恐怖を感じたとしても、それは個人の考え方、性格などに基づく特異な事象だ」などと主張しているという。この東電の主張を私たちはどのように受け止めればよいのか?

 「もういい加減にしてくれ」。これが私個人の率直な感想だ。この間、東電の「当事者意識のなさ」が批判されてきたが、この裁判を通じた今後の東電の居直り・「逆切れ」主張にも注目し続ける必要があるだろう。(「慰謝料10万円」とは何とも中途半端な額である。もしも東電に怒りを覚え、事故に対する東電の社会的責任を追及する「シンボル的訴訟」であるなら、額はもっと低額にすべきだったのではないか。「極度の不安や恐怖」を感じてきた者の一人として、そう思うがどうだろう。)

5/17
 昨日、政府・民主党は、東電の賠償支援法案の今国会提出を見送り、提出を8月の臨時国会に先送りすることを打ち出した。法案先送りの被害を受けるのは被災者と納税者だということは下に書いているが、ここでは先送り方針の理屈とされている「東電の負担額に上限を設け国の責任を明確にすべき」論の問題点を整理しておきたい。

 「原発賠償機構」(仮称)設置の前提と目的は、次のようなものだ。
①東電を原発事故の一義的・法的責任主体とし、東電が原発被災者・被害者賠償の責任を負う。
②しかし、額が巨大になるため東電に「支払能力」がないことは歴然としており、そのため東電を「公的管理」下に置く。
③と同時に、官民で資金拠出する「機構」を通じ東電の賠償支払いを「支援」する。
④その際、東電が支払う損害賠償額に上限は設けない
⑤が一方で、「電力の安定供給に支障が生じるなど例外的な場合」には、政府が補助する(→国が補償を肩代わりする→納税者一般が「国の責任」の肩代わりをする)。
⑥以上によって、東電の経営破綻を回避しながら、被害者救済を「確実にする」。
⑦「経営破綻回避」が前提であると同時に目的でもあるので、賠償コストの一部は電気代に上乗せされる可能性が強くなる(→東電の責任の一端を電力「受益者」「消費者」が負う)

 「東電の経営破綻を回避しつつ、公的管理下に置く」とはどういうことか。
 ①東電は上場を維持する。②しかし財務実態やリストラ状況を政府設置の「第三者委員会」が「監視」し、事業計画を国の認可制とする、ということだ。海江田経産相は、これを「東電を救済するためではなく、早急に被害の賠償がしっかりと行われることだ」と強調したが、果たして本当にそう言えるのかどうか。これをどのように考えるかがポンイトの一つである。

 「機構」の枠組みでは、東電を含む原子力事業者10社が毎年計3000億円程度の「負担金」を拠出し(→電気代の値上げによって賄う)、政府も必要に応じ換金できる「交付国債」を交付する。投入額5兆円規模。
 この計算は、東電が毎年の収益から支払う「特別負担金」額が2000億円規模という想定の下でなされている。ポイントの二つ目は、この額が妥当かどうか、それを支払い期限の上限(10年程度?)設定の妥当性如何の問題とともに、私たちがどう考えるかにある。

 一応、東電は不動産や保有する有価証券の売却整理などで5000億~8000億円程度を捻出し、「機構」に一括売却し処分、また資産の証券化も検討中、ということになっている。また、株式配当を10年程度見送るというプランも出された。
 これらを盛り込んだ「法案」に対し、「東電の負担額に上限を設け国の責任を明確にすべき」という論理が民主党内部から出て、「先送り」が決まろうとしている。
 納税者・電力消費者の立場から言えば、「法案」そのものに問題があると私自身は考えているが、さらに東電を救済する観点から「法案」を潰そうとする勢力が民主党内外に存在することが、問題をより深刻かつ複雑にしているのである。

5/15
 「東電をどうするか?」には、二つの側面がある。 一つは、会社法人としての東電の法的地位(いったん東電を「国有化」し、その後「電力自由化」し、東電を解体するか、それとも東電をそのまま存続させるか)の問題である。これには、賠償・補償問題における国・東電・全電力会社の「責任の分有」をどうするか、その具体的な割合・額の設定と、その履行問題が絡んでくる。どのような形(電気料金の値上げ・増税)であれ、一般国民に責任・負担を転嫁することが妥当なのかどうか、と言ったように。(⇒「どうなる東電料金値上げ…Q&A」(毎日新聞)。「賠償で電金料金値上げ「納得」48% 朝日新聞世論調査」→私は「納得」しない。申し訳ないが、それほど私は国・東電・電力会社に心優しくはない)

 これについては、「東電存続、前提とせず」「発送電部門分離」案を玄葉戦略相が今日、公言した。時事通信によると玄葉氏は東電の事業形態について「(福島第1原発事故の賠償支払いの)スキームが固まったからと言って、(存続を)前提としていない。発電・送電部門の分離など自由な議論を妨げてはいけない」と述べ、再編の可能性に言及したという。 また、東電のリストラ策について「不十分だ」と述べ、さらなる合理化の必要性を強調する一方で、金融機関の債権放棄の必要性については「東電が自主的に協力を求めていくことが一番適切」と、枝野官房長官の発言とは矛盾することを述べている。

 要するに、政府・菅内閣として「東電をどうするか?」、株主・債権・社債権者の「権利」(放棄)問題をどうするか、いまだ何も決着をみていないということだ。

政府支援の枠組みの骨子
・損害賠償は東京電力の責任。総額に原則として上限は設けず
・東電を含む電力9社が機構を新設し、負担金を拠出
・国は機構に公的資金を投入し、必要なら(???)東電に資金援助
・東電は電力安定供給を守るための設備投資はできる
・東電の社債、株式は保護(???)。当分無配など応分の負担も求める
・機構からの援助は東電と、電力各社が長期間かけて返済(→期限を予め設定させてはならない)
・電力供給に支障を来すなど「異常な場合」は国が補助

 もう一つは、役員を含む東電社員の「処遇」問題である。執行役員、管理職、一般社員の給与・ボーナスをどうするか・・・。
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東電合理化「甘すぎる」 福島の避難住民ら役員報酬に不満
 東京電力が「最大努力の合理化」の結果として10日、政府に対し、原発事故をめぐる損害賠償で支援要請をした。しかし一部役員が報酬を受け取るとしたことに、福島県の避難住民らから「甘すぎる」「非常識」などと不満の声が上がった。 「計画的避難区域」に指定され、全村避難の準備が進む飯舘村。乳牛を飼い続けるのは困難として処分手続きを進める酪農家の男性は「大変な事故を起こしたという当事者意識が足りない」と言葉を荒らげた。
 東電の合理化策は、代表権を持つ会長、社長、副社長の8人が報酬を返上し、常務ら残る役員の報酬は5月から削減幅を当初の50%から60%に引き上げるという内容。男性は「常務が受け取る40%の報酬がいくらか分からないが、全てを失いかけているおれらのつらさを分かっていない。事態収拾まで無給でやれ」とばっさり。(産経)

東電幹部の年収7200万円 海江田さん暴露
 海江田万里経済産業相が14日、東京電力首脳の年収が7200万円にのぼることを“暴露”した。「私も驚いたが、50%カットしても3600万円残る」と指摘した。福島第1原発事故で巨額の賠償を迫られ、一層のリストラが求められる状況の東電は、役員報酬についていったん半減を表明しながら、批判を受け全額返上に追い込まれた。この期に及んでも退職金や企業年金を“死守”する構えで、東電に残る「高給体質」には、あらためて批判が出そうだ。
 海江田氏はテレビ朝日の番組に出演し、東京電力のリストラ策に言及した。「私も見て驚いたんですが、(代表権を持つ東電首脳の報酬は)50%カットしても、3600万円くらい残る。ちょっとおかしい。もっと努力してくださいと申し上げた」と述べ、常務以上は年収ベースでは約7200万円にのぼることを明らかにした。 海江田氏は、この金額を受けて、菅直人首相や自身も報酬の一部を返上することを説明し、東電側にさらなるリストラを迫ったことを明かした。その上で「電気料金の値上げにならないよう、ぎりぎりまで頑張る」とも述べ、今後も経営の合理化に向け東電に一層の努力を求める考えを示した。
 東電は先月末、福島第1原発事故で生じる巨額の賠償に対応するリストラ策の一環で、いったん常務以上の役員報酬の「半減」を表明した。しかし、世論は「甘い」と判断。今月10日、清水正孝社長が海江田氏らと会談した際、勝俣恒久会長や自身ら8人の代表取締役の報酬を5月から全額返上する考えを示した。海江田氏は、この経緯について説明したとみられる。
 東電首脳の報酬については、これまでも「高すぎる」の指摘がなされてきた。07年以降、役員賞与カットや役員報酬20%減を続けているが、それでも09年度の有価証券報告書によると、取締役の報酬総額は約7億円で、平均では約3700万円。昨年の株主総会では、役員報酬の個別開示を求められたが、清水社長は「個別開示の考えはない」と拒否していた。 東電の賠償をめぐっては政府が13日、支援策の枠組みを決定し、経営破綻を回避するため、公的資金も投入される。それでも清水社長は同日の参院予算委員会で、社員の退職金や企業年金を削減するか問われ、「老後の生活に直結する」として拒否した。リストラへさらなる企業努力が求められる中、役員の高給ぶりが明らかになり、さらなる批判は避けられない。(日刊スポーツ)
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 何度も言わねばならないが、「国と東電には、「全執行役員の無給化・資産凍結→差し押さえ、全管理職以上の大幅減給・一切の賞与無し、全社員の最低でも給与据え置き→減給、ボーナス無し」を同時に決定してもらわねばならないだろう。これを「超法規的措置」で断行する必要がある」。⇒「福島原発大災害の賠償/補償と政府-自治体・東電の責任-- ①で、私たちは東電をどうするのか?
 当面の最重要課題は、「資産凍結」に踏み込むかどうかはともかくとしても、
①全執行役員の無給化、
②「全管理職以上の大幅減給(役員減給案に従って6割以上?)」、
③全社員(派遣を除く)の減給(3割、あるいは4割?)、
④役員を含む全社員の退職金廃止・年金減を確定することにある。各項目をめぐる具体的数字を国が示すことである。

 ①から④を「超法規的措置」、すなわち行政的「裁量」権の行使で断行するためには、選択肢としての東電存続はありえないことになる。 であるなら、国がまずそれを明瞭に打ち出さねば、議論は何も進まない。自衛隊員「手当て」の大増額を決定する前に、やるべき事は山積しているのだ。 
(→枝野官房長官、16日午前、清水正孝社長が退職金や企業年金減額に否定的な考えを示したことについて「東電の置かれている社会的状況をあまり理解されていない、と改めて感じた」と発言。減額実施を促す考えを示唆。 また、「第三者委員会を設けて(東電の)内部の状況について政府として把握し、国民的にも情報は共有する」と語った。さらに、東電の発電・送電部門の分離など事業形態の再編可能性については「選択肢としては十分あり得る」と述べたが、そのすべてに関し、対応が遅すぎはしないか?)

 国の方針決定が遅れれば遅れるほど、その犠牲になるのは、結局は被災者であり、納税者だ。

東電の賠償支援法案も先送り
 政府、民主党は16日、福島第1原発事故で東京電力による被害賠償を支援する法案の今国会提出を見送り、8月にも召集する臨時国会に先送りする方向で調整に入った。政府が決定した賠償支援策に対し民主党内の異論が強く、法案策定に手間取る恐れが出てきたためだ。 菅直人首相は今国会を6月22日の会期末で閉じたい意向で、40日を切った残り会期中に処理する法案を絞り込みたい思惑もある。本格復興のための2011年度第2次補正予算に加え、賠償支援法案の処理も先送りとなれば、野党が反発するのは必至だ。
 法案は、巨額の賠償負担を負う東電の経営破綻回避のために新機構を設立するのが柱。被害住民らへの賠償に対応するもので、賠償仮払いには直接関係しない。先送り方針は岡田克也幹事長ら党幹部の16日の協議や、15日の首相と安住淳国対委員長の会談で確認した。 これに関し枝野幸男官房長官は16日の記者会見で、東電の清水正孝社長が賠償支援法案の今国会成立を求めたことに対し「まず東電が経費節減の努力を示し、責任を果たしているとの理解が得られなければ前に進めない」と不快感を表明。岡田氏も会見で「政府の準備状況がはっきりしない」として、早期提出の状況にないとの認識を示した。 菅政権は国民負担を招くことで政府批判が高まるのをできるだけ避けたい考えだが、民主党の一部には東電の負担額に上限を設け国の責任を明確にすべき(???)だとの意見が残っている。(共同)
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 しかし、まずは第一原発の状態。
5/17
・「3号機の汚染水移送へ なお増加中、容量確保綱渡り」(朝日)
①タービン建屋の放射能汚染水を集中廃棄物処理施設に移す作業開始。しかし、炉心を冷やすために注入した水が壊れた核燃料に汚染されタービン建屋などに漏れている可能性。1~3号機では核燃料が原子炉圧力容器の底に崩れてたまるメルトダウンが起こり、高濃度汚染水が増え続けている「可能性」。
②1~4号機のタービン建屋には現在、総量8万7500トンの汚染水。3号機のタービン建屋地下には、原子炉からの水のほか、津波による海水や建屋周辺の地下水が流入。17日現在で、床から144センチの水位で計2万2千トン
③5月11日に汚染水がタービン建屋から坑道をつたって海に漏れ出ているのを確認。原子炉からとみられる高濃度の汚染水がたまっている2号機でも海へと流出。このままでは、さらに海に流れ出す事態に。
④東電は流出回避に向け17日午後から、3号機タービン建屋のたまり水を2号機同様、集中廃棄物処理施設に移す計画。しかし、集中廃棄物処理施設にためられる量は1万3千トンしかない
⑤高濃度の放射能汚染水をためられるのは今のところ、集中廃棄物処理施設のみ。タンク設置や汚染処理施設建設を計画しているが、敷地内には放射能汚染されたがれきなどが散乱し作業困難。順調にいったとしても完成は6月ごろ。2号機タービン建屋の汚染水も移しており、綱渡り状態が継続

5/16
・「3号機の不安定さ続く 温度上昇・窒素ガス注入できず」(朝日)
①3号機の圧力容器の温度上昇、4月下旬以降、不安定な状況。東電12日に新たな場所からの注水を開始・増量。水素爆発を防ぐ窒素ガス注入遅延。15日、核反応を抑えるホウ酸を混ぜた水を注入する作業開始。
②注水用配管から水が漏れている可能性。圧力容器上部の胴フランジと呼ばれる部分では15日午前8時現在で297.5度まで上昇。16日午前5時は269度。やや下の給水ノズルの部分は15日午前5時に139.8度だったのが、一時157.7度まで上昇、16日午前5時は141.3度。
③窒素注入は、1号機で4月7日から開始、2、3号機はともに注入口が津波で損傷しており、現在も注入方法を検討中。
⇒「「原子力緊急事態」: 工程のない「工程表」のデタラメ

自衛隊の被災地派遣手当大幅増を考える

自衛隊の被災地派遣手当大幅増を考える

2011/6/24
原発敷地で放水は4万円超…自衛隊員の派遣手当
 政府は24日の閣議で、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の対応で派遣した自衛隊員の「災害派遣等手当」(原則として1日1620円)と「死体処理手当」(同1000円)を特例としてそれぞれ原則2倍に引き上げる改正防衛省職員給与法施行令を決定した。 震災が発生した3月11日に遡って適用する。
 原発事故の災害派遣等手当は活動地域に応じてさらに上乗せして、原発敷地内で放水を行うなど特に危険性の高い作業にあたった隊員は、現行(1日3240円)の約13倍となる1日4万2000円とした。対象者は4月末までで延べ約500人に上る。自衛隊の手当としては、イラクの復興支援派遣時の同2万4000円を上回り、過去最高額となった。(読売)
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 NHKニュースによると、自衛隊の被災地派遣手当が大幅に増額されることを防衛省が決定したらしい。
 福島第一原発の放水作業に当たった隊員の手当ては、これまででもっとも高い1日当たり4万2000円ということだ。その根拠は「特に危険性の高い任務に当たった」こととされている。これはイラクの復興支援活動で「派遣」された自衛隊員への支給額2万4000円を上回り、自衛隊の手当としては最高額になるという。
 また、福島第一原発から半径10キロ圏内で活動した隊員には2万1000円、遺体の収容や搬送に当たった隊員にも1日あたり4000円の手当を支給し、活動を開始した日にさかのぼって適用されるのだという。

 読者のみなさんは、これをどのように考えるだろうか?
 「3・11」直後の事態の中で、放水作業の任務についた自衛隊が「決死の覚悟」で作業を行っていたこと、それを否定する者は、一人としていないだろう。
 しかし。しかし、である。自衛隊は、そもそも「決死の覚悟」で「有事」の際に、「国民の生命と財産」を守るために存在するのではないか? 少なくとも、それが国のフレコミなのではないか?
 私たち「国民」が税金を払い、「平時」に全自衛隊員、防衛省官僚・職員、その家族の生活とぜいたくな老後の生活までをも保証しているのは、「いざ」という時に彼/彼女らに「決死の覚悟」で「戦って」もらうため、ということになっているのではないのか?

 にもかからず、「特に危険性の高い任務」(???)に当たったからと言って、戦争地域イラクへの「派遣」手当て(これ自体の立法的・道義的正当性を私は問いたいのだが)の二倍近くもの「手当て」を支給するという、その理屈が私にはどうしても理解できない。読者は理解できるだろうか?
 これは「税金の二重取り」ではないのか?


 原発事故、その補償・賠償の「国の責任」を云々している最中に、その「国の責任」から免責されるかのように考えている防衛省・自衛隊の官僚的体質が問題だ。

 福島原発大災害の被災者・被害者に対する補償・賠償の行方がどうなるのか、その額、保証がどうなるのか、これらが何も確定していない間に、自衛隊員の「手当て」の大幅増を決定する・・・。その感覚、その感性が私には理解できない。これが一つ。
 また、自衛隊員の「手当て」を増額するなら、次に、東京都や各地から派遣された消防隊員の「手当て」はどうなののかという話に、当然、なる。それも結局、税金から支給することになる。
 さらに、「東電とその賠償・補償責任をどうするのか/どうなるのか?」について、政府案は出たが、まだ未確定要素が多く、確たることは何も言えない状況の中で、原発現場に従事している東電社員、「協力会社」社員の給与・待遇はどうなるのか/どうするのか、という問題が次にある。
 そして実は、すでに撤退を決め込んだ自衛隊員よりも、一番「決死の覚悟」を強制され、現場の作業に携わる「派遣」=「原発ジプシー」の人々の「日給」、待遇はどうなるのか/どうするのか、という問題。

 こうした事柄についての政府・東電・「協力会社」・「派遣企業」の責任問題や具体的対応策が何も確定されぬ間に、自衛隊員の「手当て」だけは大幅に増額される。それを決定した防衛省という官僚機構の感覚、感性、体質。私にはそれが理解できないし、認めることができない。
 読者は容認するだろうか? 

2011年5月13日金曜日

「原子力緊急事態」:  工程なき「工程表」のデタラメ

「原子力緊急事態」: 工程なき「工程表」のデタラメ

 連休に、石川県の志賀原発の「視察」に行ってきた。「能登原子力センター」にも行った。 原発周辺は、いかにも原発を受け入れてしまった自治体然とした感じだった。

⇒「ストップ!プルサーマル・北陸ネットワーク
北陸電力・志賀原発

 どこもそうだが、「科学としての脱原発」論が広く地元住民の支持を集めるためには、「公共事業としての脱原発」論や「村おこしとしての脱原発」論を構想し、もっともっと議論しながら、理論的に精緻化する必要がある、と改めて痛感した。私自身の脱原発論を豊富化するために、「視察」報告をも交えながら、追々この問題についても述べてみたい。

 さて、先週の週末をピークに、連休中も全国各地で脱原発の取り組みが盛り上がった。6月11日を次のピークとしながら、今後も各地で連続的にさまざまな企画・イベントが準備されている。浜岡原発の全面停止(⇒静岡新聞・浜岡原発特集サイト。「永久停止求め声明 原発住民運動センター」)や、「エネルギー基本計画」の「見直し」も打ち出された。表面的には、日本の「脱原発」に向けた一歩前進であるかのようにも思えるが、実際には「二歩」目に進むためにはかなりの障害がある。ハードルは想像以上に高い、と私自身は考えている。

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原発、安全性高め継続…サミットで菅首相表明へ
 政府は14日、仏ドービルで26、27日に開かれる主要8か国(G8)首脳会議(サミット)で菅首相が表明する「日本の原子力・エネルギー政策に関する将来構想」の骨格を固めた。 原子力発電について、安全性を高めた上での利用継続方針を打ち出すとともに、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの利用拡大を表明する。世界の関心が日本の原発の安全性とエネルギー政策に集まっていることから、首相はG8サミット冒頭でこの方針を表明したい考えだ。
 「将来構想」は、東京電力福島第一原発の事故を教訓に、「2030年の総発電量のうち50%を原子力とする」と想定した日本のエネルギー基本計画を抜本的に見直し、再生可能エネルギーの最大限の活用を目指すことが柱だ。具体的には、大規模な太陽光発電施設の建設や、国立公園での風力発電などを想定した設置基準緩和などを進める。そのために、コストや供給を安定させるための対策の検討を急ぐ方針を示す。
 ただ、資源小国である日本の厳しいエネルギー事情は変わらないため、原子力発電については、「継続的な使用」を明確に打ち出す。今後、各国による資源獲得競争の激化が予想されるため、G8の中で原発推進の立場の米、仏両国と連携し、過度な“脱原発”の流れ(???)とは一線を画す立場を鮮明に打ち出す考えだ。
・・・
⇒「浜岡原発:首相と、原発推進維持図る経産省の同床異夢」(毎日新聞)→私は「同床異夢」ではなく基本的に「同床同夢」ではないかと考えているが、経産省が原発推進路線の転換をはかる意思をもっていないことは間違いない。

 「3・11」以後、丸2ヶ月が経過した今、私たちはもう一度「足元」をしっかり見つめる必要がある。「足元」とは福島第一原発の現状である。
 思い出して欲しいのだが、日本はまだ「原子力緊急事態宣言」下にある。NHKを含め、TVメディアや一部新聞メディアは、紆余曲折を経ながらも、時間がかかっても、福島第一原発「事故」はいずれは「収束」に向うことを自明視したような「報道」がなされているが、本当にそんな呑気に構えてよいのだろうか。「原子力緊急事態宣言」を解除するメドが立たない、このことの深刻さを私たちは、どこまで自覚しているだろう。

 そんな中、気分をいっそう憂鬱にさせる情報が流れ続けている。
・・・
2、3号機もメルトダウンの可能性…東電認める
 東京電力は14日の記者会見で、2、3号機の原子炉について「最悪の場合、1号機と同様のケースが想定できる」と説明し、核燃料全体の溶融(メルトダウン)の可能性を初めて認めた。 1号機では、11日に水位計を調整した結果、炉内の水位が低く、燃料が冷却水から露出して溶けたことが確実となった。2、3号機の水位計はまだ調整していないが、1号機と同じ仕組みのうえ、もともと1号機より低い水位を示している。 ただ、東電は炉内の温度などから、2、3号機は1号機より燃料の損傷が少ないと推定している。(読売)

1号機で最高の2000ミリシーベルト計測
 東京電力は14日、福島第1原発1号機の原子炉建屋1階で、毎時2000ミリシーベルトの放射線量を計測したと明らかにした。作業員の被ばく線量の上限(250ミリシーベルト)を約8分で超える値で、事故後に計測された空間線量の中で最も高い。溶融した燃料がたまっているとみられる圧力容器底部と直結した配管から放射性物質が漏えいしている可能性もあるという。
◇地下に3000立方メートル汚染水
 建屋1階南東角周辺で、これまで線量が未確認だった場所。複数のポイントで毎時800~2000ミリシーベルトの高い線量が確認された。 東電は高い線量の要因について「圧力容器の底部に燃料が落下している影響で配管が傷み、それを通じて周辺に出ているのではないか」と説明。一方、「周辺は今後の工程作業で使う予定がない」として作業工程への影響については否定した。 また、東電は14日、同1号機の原子炉建屋地下1階で、推計で3000立方メートル程度の汚染されたと思われる水が見つかったと発表した。1号機では冷却水が大量に行方不明になっていたが、所在が分かったのは初めて。

格納容器から漏出か…1号機汚染水
 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋地下1階で14日、行方が分からなくなっていた冷却水が大量に見つかった。1号機では燃料が炉心融解し、圧力容器、格納容器とも穴が開いていると見られており、東電は同日の記者会見で「格納容器やその下部の圧力抑制プールから漏れた水がたまっているのではないか」と推測(???)した。
 東電によると、建屋地下のたまり水は東電社員が13日に1階北西側の階段を下りた際に確認した。水は地下1階部分(高さ11メートル)の半分程度に達していることから、推計で3000立方メートル程度あるとみられる。放射線量などは不明だが、直近の階段上部で毎時72ミリシーベルトあった。地下1階部分には格納容器の下部や、格納容器につながる圧力抑制プールがある。 1号機炉心へはこれまでに1万立方メートルの水を注入したが、このうち5000立方メートル程度の行方が分からなくなっていた。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「水の所在が分かったという意味では前進(???)。高線量ならたまり水の処理を早急に進める必要があるが、現在進めている冷却装置の設置作業を見直す段階ではない」と述べた。

 一方、東電は14日、1号機の原子炉建屋外に設置する冷却装置の搬入作業を公開した。装置は長さ2.3メートル、幅3.6メートル、高さ4メートルで重量は2100キロ。空冷方式で、格納容器内にたまった水を内部で循環させ、その間にファンで水の熱を除去する仕組み。 建屋内にある冷却装置の復旧に時間がかかるため、当面は仮設の冷却装置でしのぐ方針。17日までに計10基導入する予定で、現在は2基の設置作業を進めている。ただ、冷却稼働には、格納容器内の水が配管の位置まで達している必要がある。1号機では格納容器から水が漏れている可能性があるため、東電は水位の確認作業も急いでいる。【毎日・中西拓司、八田浩輔】

福島原発1号機、「冠水」代替案を検討
 東京電力は福島第1原子力発電所1号機で水位の監視を強化する。新たに2台の計器を取り付け、極端に水位が下がった原子炉内の分析を急ぐ。当初は原子炉ごと水で満たす「冠水」を予定したが、水漏れが見つかり計画が成り立たなくなっている。低水位のままで原子炉内を冷やしたり、原子炉建屋に漏れた水を循環させたりするなど代替案の検討に入った。
 1号機は原子炉圧力容器内の燃料棒が溶け落ち、同容器や外の格納容器から大量の水が漏れている疑いが12日に判明した。格納容器に水をためる「冠水」で原子炉を完全に冷やすとした前提が崩れた。 東電は格納容器に新たに圧力計を2台設置し、圧力差から水位を測る方針だ。格納容器の正確な水位を調べ、計画の見直しに役立てる。
 「冠水」の代替案は圧力容器の底にたまった水で燃料を冷やす。注水を毎時8トンから同10トンにして水位を保つ。ただ低い水位から原子炉に冷水を循環させるのは難しい。 また「原子炉建屋に漏れている汚染水を冷却に使うことも考えている」(東京電力)という。原子炉からあふれる水を浄化して戻す案だ。
 従来の「冠水」計画の続行も視野に「セメントを流し込んで止水できないか検討する」(細野豪志首相補佐官)という案もある。1~3号機は来年1月までの安定冷却を目指したが、大幅にずれ込む見通し。17日に工程表を見直す。 一方、3号機では圧力容器の温度が再び上がった。14日午前2時のセ氏120度が同5時に同250.5度になった。午前7時から注水量を毎時15トンに増やして監視を続けている。また東電は14日、2号機の高濃度汚染水を浄化する仏アレバ社の装置を17日に搬入できると発表した。
・・・
圧力容器底に数センチ相当の穴 冷却水、外部に大量漏れ
 福島第1原発1号機の原子炉圧力容器で燃料が溶け落ちたとみられる問題で、東京電力は12日、圧力容器の底に落ちた燃料の熱で配管の溶接部が溶けて複数箇所で小さな穴があき、合計すると直径数センチに相当すると明らかにした。燃料は大半が溶け落ちたとみられる。 これまでの計1万トンに上る注水量に見合う水がたまっていないことから、東電は水が底の穴から外側の格納容器へ漏れ、さらに格納容器やその下部の圧力抑制プールからも原子炉建屋やタービン建屋に大量に漏れているとみており、漏出場所を調べる方針。 溶け落ちた燃料が圧力容器の穴から格納容器に漏れ出た可能性もあるとしている。燃料溶融の時期は不明。経済産業省原子力安全・保安院は、メルトダウン(全炉心溶融)の状態である可能性は「否定できない」とした。
 1号機では格納容器に水を満たして冷却する「冠水」作業を進めていたが、水漏れを受け東電は見直しに着手。17日にこの1カ月の作業実績を踏まえて事故の収束に向けた工程表を再評価して発表する予定で、そのときまでに対策をまとめる。 冠水の見直しは具体的に、毎時約8トンの注水量を増やして水位を上昇させたり、水を循環させる新しい冷却システムのため格納容器から水を取り出す場所を変更したりすることを検討している。(共同)

福島第1原発:1号機圧力容器に穴 工程表の前提崩れる
 東京電力福島第1原発1号機で燃料棒を収めている圧力容器が損傷し、大量の水漏れが起きていることが12日、明らかになった。東電は同日夕、圧力容器の底に合計で数センチ相当の複数の穴が開いている可能性もあるとの見解を示した。17日には同原発事故の収束までの課題を示した新しい工程表を発表するが、現在の工程表で盛り込まれていなかった「圧力容器の破損」という事態に、計画の見直しを迫られることは必至だ。
 先月17日に示された工程表は、6~9カ月以内に原子炉の温度を100度未満の「冷温状態」にすることを目標に、3カ月以内に行う対策の上位に燃料域上部まで格納容器を水で満たす「水棺」の実施を挙げている。燃料のある圧力容器(360立方メートル)に注水し、そこから水をあふれさせて格納容器(7400立方メートル)に冠水させるという手法だ。 ただし、水棺を実現するためには格納容器とその内部にある圧力容器がいずれも健全な状態であることが前提となる。工程表では、1号機の圧力容器破損の可能性については触れられておらず、格納容器についても「微量の蒸気の漏えい」を指摘しているだけだ。

 東電は燃料を冷やすため、毎日150立方メートルの水を圧力容器に注水し、これまで累計1万立方メートルを入れた。しかし、高さ20メートルある圧力容器の水位は高くても4メートルで、格納容器から漏水していることも指摘されている。 圧力容器の底には、燃料の核反応を止める制御棒を駆動させるための装置が貫通しており、溶けた燃料の熱で溶接部に穴が開いた可能性がある。注水量と貯水量との比較などから、東電は穴は複数あり、大きさの合計は数センチ程度と推定した。また、大量の水や水蒸気が圧力容器の損傷部から格納容器側に漏れ出し、さらにその水が格納容器につながっている圧力抑制プールやタービン建屋に漏れ出している恐れがある。
 1号機は2、3号機に比べて冷却に向けた準備が最も進んでいた。「モデル」とされた1号機の新たなトラブルは「6~9カ月」とした日程に影響を与えそうだ。 原子力技術協会の石川迪夫(みちお)・最高顧問は、燃料棒溶融について「冷やされているので(核分裂が連続する)再臨界などの可能性はない」としながら、「燃料棒が溶け落ちたという点では、米国のスリーマイル島原発事故(79年)と同じ状況だ。圧力容器の内部は非常に高温で、溶けた燃料棒は圧力容器の下部でラグビーボールのような形状に変形しているのではないか」とみている。【毎日・中西拓司、足立旬子、岡田英】
・・・

 私は、先月の東電の「工程表」発表に際し、たんなる「気休め表」に過ぎないと書いた。その通りであったことが判明したのである。「工程表」の「前提が崩れた」というよりは、事故収束に向けた「工程」など何も策定できる状態ではなかった、ということだ。

 この事態を受け、17日に東電がどのような「新工程表」を発表するか。
 だまされぬように、厳しい目でチェックする必要がある。

2011年5月6日金曜日

脱原発パレード: 5/7( 土)渋谷・大阪・神戸、 5/8 (日)名古屋・福岡

脱原発パレード: 5/7( 土)渋谷・大阪・神戸、 5/8 (日)名古屋・福岡

5/7(土)渋谷:「5.7 原発やめろデモ!!!!!!!」
■出発前大集会(代々木公園内ケヤキ並木)
14:00 渋谷区役所前交差点集合!
15:00 前代未聞の超巨大デモ!!!!!
コース:渋谷区役所前交差点→原宿駅前→表参道→青山通り→渋谷中心部へ→109前→ハチ公前スクランブル交差点→明治通り→渋谷区役所前
詳細: http://57nonukes.tumblr.com/
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5/7(土)大阪:5.7大阪 脱原発!!サウンドデモ
日時:5.7(sat) 15:00~
集合場所:南堀江公園(大阪市西区南堀江2丁目・堀江公園隣り)
コース:南堀江公園→橘通り→アメ村→心斎橋→御堂筋 →高島屋前→浪速公園
主催:5.7大阪脱原発デモ実行委員会
連絡先:osakanonukes@gmail.com
twitter:http://twitter.com/57osaka
お願い:協力者募集中。なんでもいいんで手伝ってください。
いっしょにやかましくマヌケなデモ作りましょう。
http://osakanonukes.tumblr.com/
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5/7(土)神戸: 05.07 “THINK FUKUSHIMA+WALK” IN KOBE 「原発あかんデモ+被災者支援募金」
・脱原発、原子力発電について考え、声をあげよう!
・被災地の方々に贈る募金活動も行ないます。
・デモ初めてという人こそ気軽に参加してください!
・コスプレ、プラカード、鳴り物歓迎します。
日程:2011年5月7日(土)
時間:14時集合、15時出発~17時
集合場所:東遊園地
予定コース:東遊園地→センター街→元町→メリケンパーク(流れ解散)
主催:“THINK FUKUSHIMA+WALK” IN KOBE 実行委員会
呼びかけ文:http://0507nonukekobe.tumblr.com/post/4743693608/think-fukushima-walk
問い合わせ先: think.fukushima@gmail.com (横山)
詳細: http://0507nonukekobe.tumblr.com/
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名古屋 5/8(日):*Thanks to all Mothers*  Give Mothers A Safe World!
母の日×卒げんぱつ 感謝祭&パレード

・日時 2011年5月8日(日) 12:00集合
・場所 名古屋 若宮大通り公園ミニスポーツ広場
 地下鉄名城線矢場町駅 3番出口を東へ徒歩5分>  成田山萬福寺の南 名古屋高速高架の下。
http://www.plazz.me/~9pR3
・タイムテーブル
12:00 集合~演奏、スローフード出店、子ども体験企画等あり
13:30 パレード整列
14:00~16:30 パレード 矢場町~久屋大通~三越前~中部電力~大津通り~矢場町
※パレードのみ参加される方も、13:30には会場へお越しください。
※プラカード、のぼり、鳴り物、仮装、大歓迎。

“脱原発×STOP浜岡”
http://stop-hamaoka.jugem.jp/
stophamaokayouth@yahoo.co.jp
http://twitter.com/#!/stophamaokaYN
“原発に不安を感じるママの会”
http://www.geocities.jp/mama_huan/
mama_huan@yahoo.co.jp
http://twitter.com/mama_huan

浜岡原発:7日午後中部電力取締役会、運転停止受け入れへ
 中部電力は7日午後に取締役会を開き、浜岡原発(静岡県御前崎市)の全ての原子炉の運転停止を求めた菅直人首相の要請を受け入れることを決める。中部電幹部が明らかにした。
 中部電は定期検査のため運転停止中の3号機に加えて、稼働中の4、5号機の運転を停止することになる。全面停止すると夏場のピーク時の電力供給余力は大幅に低下するため、中部電は停止中の火力発電所の運転再開や、関西電力など他の電力会社から電力の融通を受けて代替する方法を検討する。ただ、原子炉3基分の電力を火力発電所で代替すると燃料費が年間約2500億円増えるなど経営への悪影響は避けられない。中部電は代替電力の調達方法や原発停止による経営への影響などを検討したうえで要請受け入れを最終決定する。
 中部電幹部は7日朝、毎日新聞の取材に対し「国の要請なので基本的には受け入れることになる。ただ、関電から調達できる電力量や火力発電所用の燃料を十分に確保できるかなどを見極める必要がある」と述べた。【毎日・丸山進、工藤昭久、高橋昌紀】

浜岡原発停止、結論持ち越し=中部電力
 中部電力は7日、臨時取締役会を開き、浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止を求めた政府の要請について協議した。午後1時から約1時間半の会議では結論が出ず、8日以降に改めて協議することにした。今後の日程は現時点では決まっていないという。(時事)
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福岡  5/8(日):脱!原発サウンドデモ in 福岡 玄海原発再始動してよかと?

日時:2011年 5月 8日 (日曜日) 13:00集合
場所:福岡県福岡市中央区天神2丁目2 警固公園集合
みんな立ち上がろう!原発はいらない!歌え!叫べ!踊れ!ここから変えていこう!プラカード、鳴りもの、楽器、仮装、コスプレ大歓迎です。快楽と抵抗の路上パーティ 踊って世界を変えるのだ!
http://genkaibai.blog.fc2.com/
http://hantenchi.blog102.fc2.com/
http://carnivals.blog93.fc2.com/
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その他のイベントは、「脱原発系イベントカレンダー」で。
http://datugeninfo.web.fc2.com/

・・・
⇒「福島原発事故情報共同デスク

福島第1原発:3号機の温度上昇 炉心下部147度に
 東京電力福島第1原発の事故で、東電は6日、3号機原子炉圧力容器の温度が上昇を続けていることを明らかにした。東電は4日以降、炉心への注水量を増やしているが低下せず、さらに増やすことも検討している。東電は「原因は不明」としている。 東電によると、5月初めには120度前後だった炉心下部の温度が次第に上昇。4日午前10時以降、毎時7トンだった注水量を同9トンに増やした。しかし6日午後1時時点で147度を測定し、温度は下がっていない
 東電は今後も低下しない場合、注水量を毎時10トンに増やすことも検討している。しかし3号機は格納容器が破損している可能性があり、注水量の増加は汚染水の増加にもつながる。温度上昇の原因について、注水に使っている系統の配管が枝分かれしており、炉内以外に流出している可能性もあると見て、今後調べる方針。 3号機では昨年9月からプルサーマル運転を開始しており、炉心にはMOX燃料32体が入っている。因果関係について、東電は「関係ないと思っている」としている。【毎日・日野行介、奥山智己】

浜岡停止要請「原子力全体をやめることではない」 細野補佐官
 細野豪志首相補佐官は7日午前のTBS番組で、政府が中部電力に浜岡原子力発電所の停止を要請した理由について「最も地震の可能性が高く、津波が来たときの心配を拭いきれない。政治的に判断した」と説明した。同時に「浜岡原発を止めたことで、原子力政策全体をやめようということではない」とも述べた。(日経)

浜岡原発:全面停止へ 東海地震備え、安全対策完成まで
 菅直人首相は6日夜、首相官邸で緊急記者会見し、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、現在定期検査中の3号機に加え、稼働中の4、5号機を含むすべての原子炉の運転停止を中部電に要請したことを明らかにした。浜岡原発は東海地震の想定震源域に立地しており、地震により重大事故が発生する可能性がある。首相は「国民の安全と安心を考えた。浜岡原発で重大な事故が発生した場合に、日本社会全体に及ぶ甚大な影響を考慮した」と述べ、東京電力福島第1原発事故を受け、大地震に伴う重大事故発生を防ぐため停止要請したとの考えを示した。
 首相会見に先立ち、海江田万里経済産業相は同日、中部電の水野明久社長に原子炉の停止を要請。水野社長は「迅速に検討する」とのコメントを発表し、事実上、要請を受け入れる考えを示唆した。浜岡原発は08年度に1、2号機の廃炉が決まっているため、今回の菅首相の要請により、同原発は全面停止されることになる。
 首相は会見で、運転停止要請の具体的な理由について、文部科学省の地震調査研究推進本部が「30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性は87%」と分析していることを紹介。「東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だ。完成までの間、すべての原子炉の運転を停止すべきだと考えた」と説明した。
 東日本大震災の発生を受け、政府は全国の54基の原発の海側に、高さ15メートルの防潮堤を設置する工事に着手したが、完成は13年度末の予定。このほか、被災した場合の予備品の確保なども必要になることから、経産省原子力安全・保安院は6日、対策完了までにはおおむね2年程度かかるとの見通しを示した。浜岡原発は少なくとも、対策完了までは運転を停止するとみられる。
 ただ、今回の首相の停止要請に法的根拠はなく、首相は「指示、命令という形は現在の法律制度では決まっていない」と述べた。保安院によると、原発を規制する法律には原子炉等規制法や電気事業法があるが、浜岡原発はこれらの法律に違反しているわけではないため、今回の要請は「あくまで自主的な対応を求めたもの」(保安院幹部)となる。中部電が要請に応じなかった場合の対応を問われた首相は「十分理解をいただけるよう説得したい」と述べるにとどめた。 中部電は4、5号機の具体的な停止時期について「検討中」としているが、電力需要が高まる7月以前の停止となれば、夏には管内の電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れもある。首相は「電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府としても最大限の対策を講じる」と述べ、理解を求めた。【毎日・田中成之、丸山進】
◇完了へ、おおむね2年
 東日本大震災の発生を受け、政府は全国の原発に緊急安全対策を要請。中部電力は浜岡原発の海側に、高さ15メートルの防潮堤を設置する工事に着手したが、完成は13年度末になる見込み。このほか、被災した場合の予備品の確保なども必要になることから、経済産業省原子力安全・保安院は、対策完了までおおむね2年程度かかるとの見通しを示した。浜岡原発は少なくとも、対策が完了するまで運転を停止するとみられる。
◇浜岡原発
 中部電力(本店・名古屋市)が静岡県御前崎市(旧浜岡町)に建設した、同社唯一の原発。5基の原子炉からなる。5基とも福島第1原発と同じ「沸騰水型」(5号機は改良型)。1号機は76年3月、2号機は78年11月に運転を開始したが、多額の耐震補強費が必要になったことから08年に廃炉を決め、09年1月末に運転を停止、廃炉手続きを進めている。3号機は東日本大震災の発生時、定期検査で停止していたが、中電は7月に運転再開する意向を示していた。4、5号機は運転中。

浜岡原発:運転停止は「おおむね2年」 安全・保安院
 経済産業省原子力安全・保安院は6日、浜岡原発の全号機を当面停止するよう菅直人首相が要請した背景について「(安全対策の)一層の信頼性を高める必要があるため」との見解を示した。抜本的な安全対策には防潮堤などで津波を防ぐ一方、被災した場合の予備品の確保などが必要になるため「運転停止はおおむね2年程度」との見方を示した。【毎日・河内敏康】

浜岡原発:運転停止要請 ドイツでは背景も含め速報
 ドイツのDPA通信は6日、菅直人首相の浜岡原発停止要請を速報。「東京から170キロ南西にある同原発に対しては、地震の危険があるとして長年反対運動が続いていた。施設では事故も頻発していた」と背景を伝えた。
 福島第1原発の事故を受け、ドイツでは国内17基の原発のうち1980年以前から稼働する古い7基を暫定的に停止し、「脱原発」政策を進めている。日本同様に電力不足を懸念する声も相次いでおり、日本の原発関連ニュースへの関心も高い。同通信は大手電力会社EnBWのフィリス最高経営責任者の発言として「夏場には、特に南ドイツ地域で停電が起きる恐れがある」と伝えている。【毎日・ベルリン篠田航一】

浜岡原発:菅首相の緊急会見要旨
 菅直人首相の6日夜の記者会見要旨は次の通り。
 首相として海江田万里経済産業相を通じ、浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した。国民の安全と安心を考えた結果の判断だ。浜岡原発で重大な事故が発生した場合に、日本社会全体に及ぶ甚大な影響も考慮した。
 文部科学省地震調査研究推進本部の評価では、これから30年以内に浜岡原発の所在地域を震源とするマグニチュード(M)8程度の東海地震が発生する可能性は87%と、極めて切迫している。特別な状況を考慮すれば、東海地震に十分耐えられるよう防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だ。対策完成まで、定期検査中で停止中の3号機のみならずすべての原子炉を停止すべきだ

 浜岡原発は活断層の上に立地する危険性が指摘されてきた。先の震災と(東京電力福島第1)原発事故に直面しさまざまな意見を聞き、海江田経産相とともに熟慮を重ねて決定した。
 中部電力管内の電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府として最大限の対策を講じる。電力不足のリスクは地域住民をはじめ全国民が一層、省電力の工夫をすることで必ず乗り越えられる。国民のご理解とご協力をお願いする。(停止は)基本的に要請だ。指示や命令は現在の法制度では決まっていない。(中部電力に)十分に理解いただけるように説得していきたい。(毎日)

静岡知事「英断に敬意」 浜岡原発への全炉停止要請
 菅首相の突然の記者会見を受けて、浜岡原発の地元自治体は対応に追われた。 中部電力の安全対策を疑問視する発言をしてきた静岡県の川勝平太知事は午後8時すぎになって「英断に敬意を表します」とコメントを発表。「県としては、省電力、省エネルギー対策にこれまで以上に取り組む」とした。 原発が立地する静岡県御前崎市の市役所では、会見を受けて職員らが慌てて登庁。だが、石原茂雄市長は外出しており、職員たちは相次ぐ問い合わせに対して「現在、情報確認中です。もうしばらくお待ち下さい」と繰り返した。
 浜岡原発の1~4号機をめぐっては、周辺住民らが運転の差し止めを求める訴訟を起こしている。一審・静岡地裁では原告側が全面敗訴したが、訴訟は現在も東京高裁で続いている。菅首相が全炉の停止を要請したと聞き、原告団長の白鳥良香さん(78)は「本当ですか? この上ない朗報だ。信じられない」と声をうわずらせた。 訴訟の大きな争点は「想定を超す地震が起きるかどうか」。だがこれに対し、07年10月の一審判決は「耐震安全性は確保されており、原告らの生命、身体が侵害される具体的危険は認められない」と判断した。 白鳥さんは、首相の要請について「福島の事故を受け、考えが改められなければ、この国も終わりだと思っていた。この英断を貫いてほしい」と期待を込めた。

 一方、その他の原発を抱える自治体や、電力会社の関係者は、突然の発表に驚きを隠せない。 2007年の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発(全7基)が立地する同県柏崎市の会田洋市長は「相当思い切った決断だ」と戸惑い気味に話した。「柏崎刈羽原発について国がどう考えるのか。浜岡原発だけの話なのか、説明を受けたい」
 同原発は中越沖地震で設計値を大幅に上回る揺れに見舞われた。耐震強化の工事をし、全7基のうち4基が運転を再開している。会田市長は「必要な耐震補強はなされており、ただちに止める必要があるとは考えていない」とする一方、東電側の進める津波対策については「十分かどうかは別。福島第一原発の事故の検証結果も合わせて考える必要がある」と話した。
 日本海側の北海道泊村に泊原発を持つ北海道電力の関係者は「情報は、ニュースの内容だけしかない。なぜ今なのか」と驚いた。「まさか泊原発まで止めろ、とは言わないだろうが……」 北海道庁の危機対策局幹部も「じゃあ他の原発はどうなのか、というところが示されていない」という。
 九州電力の玄海原子力発電所のある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は「唐突な発言だ。玄海原発2、3号機の運転再開問題は、国による安全が確認されたうえで、町議会で議論すべきだと思っている」と話した。(朝日)

関電が中電に電力融通検討 政府の支援要請を受け
 関西電力は6日、政府の要請に基づき、中部電力に対して電力融通などの支援を検討する方針を固めた。しかし、関西電力も定期検査中の原発で運転再開のめどが立たないなど、夏の電力供給に対する懸念があるため、難しい対応を迫られそうだ。 海江田万里経済産業相が、関西電力の八木誠社長に対し直接、中部電力への支援を電話で要請したという。 関西電力、中部電力とも周波数60ヘルツの電流を送電しているため「システム的には電力融通は可能」(関西電力広報)だ。しかし、融通はあくまでも自社管内の電力安定供給を確保した上での予備電力を利用するのが大前提となる。
 関西電力では現在、定検中の原発3基について運転再開のめどが立っていない。同社の供給計画では8月の需要を2956万キロワットと想定し、供給能力を3290万キロワットと見込んでいる。だが、3基が再開できなければ供給能力は約3千万キロワットとなり、適正な予備電力を確保できなくなるという厳しい状況だ。 関西電力は「(首相が)浜岡原発の全面停止を突然、要請したことで驚いている。詳しい内容が分からず、中部電力がどのように対応するかも聞いていないことから、当社としてのコメントはご容赦いただきたい」としている。(産経)

柏崎刈羽原発、非常時冷却系の弁が故障
 東京電力は6日、運転中の柏崎刈羽原子力発電所1号機で、非常時に原子炉を冷却するために注水する配管の弁が閉まらなくなったと発表した。 外部への放射能漏れはないという。3系統ある「低圧注水系」のうちの1系統の故障が定期試験で判明した。他の2系統は正常に作動しており、故障した弁も10日以内に復旧するとしている。(読売)

経産省、原発重視の方針堅持へ 安全宣言で電力確保目指す
 原発の緊急安全対策を進めて「安全宣言」を早期に行うことで既設の原発からの電力供給を確保し、2030~50年には「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を3本柱の一つとするとした、経済産業省の今後のエネルギー政策に関する内部文書が6日、明らかになった。 14基の原発の新増設を盛り込んだエネルギー基本計画を含め、菅直人首相が政策の白紙からの見直しを表明、中部電力浜岡原発の停止を要請するなど、これまでにない政策を進める中、従来の原発重視を堅持する方針を早々に打ち出したことには今後、各方面から批判が出るのは確実だ。

 文書は、東日本大震災を受けた現行のエネルギー政策の課題に関するもの。事故で「原子力の安全確保に大きな疑問符」がついたとの判断から、「原因の徹底究明と安全規制の抜本見直しを進め、将来のエネルギーとしての適格性を判断する」としながらも「今後のエネルギーのベストミックス」の一つとして「安全性を最大限追求した原子力」を掲げた。 その上で、30~50年に向けた長期的なエネルギー政策の3本柱の一つとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大、ライフスタイルや産業構造の改革による省エネルギーの実現とともに「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を据える考え方を示している。また、定期検査で停止した原発が再稼働できない状態が続くと、今後1年間で全国すべての原発が停止して地震直前に比べて3千万キロワット以上の供給力が失われると電力危機を強調。「緊急安全対策の徹底(安全宣言)により、既設炉からの電力供給を担保」するとの方針を示した。
 再生可能エネルギーについては今後拡大する方針を示したものの「太陽光発電のコストは原子力の約7倍」「電力の安定化対策として蓄電池の大量導入など年間数千億円が必要」など、これまでの評価の記述をほぼ踏襲している。【共同通信】

原発6基中3基停止へ 川内1号機が定期検査 九電
 九州電力は6日、川内原子力発電所1号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)が10日から定期検査に入ると発表した。運転再開延期中の玄海原発2、3号機(佐賀県玄海町)と合わせ、九州の原発計6基中3基、出力計約262万キロワットの運転が止まる事態となる見通し。3基が同時に停止するのは、大型改修を行った玄海1、2号機と、通常の検査に入った同4号機の2001年4-6月以来。
 3基の合計出力は、九電が今夏想定していた全体の供給力(1978万キロワット)の約13%に当たる。代替の化石燃料は7月上旬までしか調達のめどがたっていない。九電は計3基の停止が長期化すれば夏の需要期に供給不足になるため、工場などに大幅な節電を求める方向で検討している。
 川内1号機の検査期間は2カ月程度で、7月下旬に原子炉を再起動する発電を再開し、8月中旬にも営業運転に復帰する予定。九電は「再開にあたっては玄海2基と同様、地元の理解が必要と考えている」としている。 玄海原発2、3号機は定期検査中、福島第1原発事故を受けて4月中に予定していた営業運転再開を延期。九電は津波被害を想定した緊急安全対策を国に提出。原子力安全・保安院が近く示す検査結果で妥当性が認められれば、玄海2基の再開について地元の佐賀県や玄海町に理解を求める方針。(西日本新聞)

日米が測定、放射線量マップ発表 百ミリシーベルト超も
 福島第1原発事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部は6日、文部科学省と米エネルギー省が航空機で合同測定した地表付近の放射線量マップを発表した。原発から北西30キロ以上にわたって、年間の積算被ばく放射線量が100ミリシーベルトを超える恐れがある地域が広がっている。
 マップは4月29日現在の放射線量を表示。原発から半径30キロ圏外で、計画的避難区域になった福島県浪江町や飯舘村の一部でも毎時19マイクロシーベルト、年間換算では100ミリシーベルトを超える線量となった。文科省は「風雨などで放射性物質が徐々に減少するので、実際に100ミリシーベルトを超える可能性は低い」としている。 30キロ圏外の南相馬市、川俣町、伊達市の一部でも毎時3・8マイクロシーベルト、年間換算で20ミリシーベルトを超える地域がある。統合本部は4月26日に実測値に基づく放射線量分布マップを公表しており、今回もほぼ同様の値を示している。

 また、土壌表層の放射性物質の量を示したマップも発表。1平方メートル当たり、放射性セシウムが300万~3000万ベクレルの地域が北西に広がった。国内には土壌全般に関する濃度基準はない。 放射線量の測定は、4月6日から29日にかけて実施。小型機とヘリコプター計3機が、原発から約80キロ圏内の上空約150~700メートルを飛行、高感度の放射線検出器を使って測定した。
 一方、文科省と水産庁は、海での放射性物質の調査を従来の2倍強の計105カ所に増やすと発表した。国と東電が実施し、最も遠い調査海域は福島第1原発から約300キロ離れている。宮城県沖から茨城県沖にかけての表層、中層、下層の海水や、陸に近い海底の土を検査。海上の大気中の放射線量なども調べる。 水産庁はまた、水産物の検査指針をまとめ、関係県などに通知した。表層から底層まで生息域を広くカバーして対象魚種を選び検査するよう求めた。カツオやサンマ、イワシなどの回遊魚も、移動に合わせて採取地点を変えて検査する。【共同通信】

海の放射性物質、2年以内にアメリカ西海岸へ IAEA
 国際原子力機関(IAEA)は5日、ウィーンの本部で記者会見し、福島第一原発事故で海に流れ出た放射性物質が、2年以内に北米大陸の西海岸まで到達するとの見通しを示した。 福島第一原発近くの海にたまっている高濃度の放射能汚染水について、東京電力は特殊なフェンスで外洋への流出を抑えようとしている。IAEAの専門家は「一定の効果がある」とした上で、これまでに流出した放射性セシウムなど放射性物質は「黒潮に流されて1~2年のうちにカナダか米カリフォルニアの海岸部で観測される」と予測。ただし「とても低いレベルで問題はない」とした。
 また、フローリー事務次長は、福島第一原発事故の調査団について「日程など詳細は日本側と調整中」としたが、IAEA関係筋は「5月中旬にも派遣される」との見通しを示した。福島第一原発だけでなく、東日本大震災の被害を受けた福島第二原発や女川原発(宮城県)も調査対象となる見通しだ。(朝日・ウィーン=玉川透)

「配慮」求める東電の要望書、鹿野農水相が厳しく批判
 福島第一原発の事故に伴う損害賠償の判定指針をつくる原子力損害賠償紛争審査会に対し、東京電力が要望書を出していた問題で、鹿野道彦農林水産相は6日の記者会見で、東電の対応を厳しく批判した。一方、審査会を所管する文部科学省は、要望書の取り扱いをめぐり、東電に抗議したことを明らかにした。
 東電は4月25日、1次指針決定に先立ち、東電の賠償能力を念頭に置いて指針をつくるよう、審査会に要望した。この対応について鹿野農水相は「考えられない。審査会がどういう意味を持つのか、もう一度考え直してもらいたい」と述べた。 東電は当初、要望書を公表せず、その理由について5日の会見で、文科省の審査会事務局と協議した結果と説明した。ところが、高木義明文科相の6日の会見に同席した文科省の担当者は「そういう事実はない。東電に抗議をした」と、東電の説明を否定した。東電から審査会で要望について公開審議する求めもなかったという。東電は6日夜の会見で一転、被災者からの求めがあったことを理由に要望書を公開した。(朝日)

⇒「原発事故が突きつけたガバナンスの欠如――責任をなすり付け合う東電と政府・政治家たち(1) 」(東洋経済)