2012年2月28日火曜日

壊疽化する社会-- 橋下流?

壊疽化する社会-- 橋下流?

 「大阪はこれから、どうなんねんやろ?」と考えていたら、骨粗鬆症の、「壊疽化する社会」というイメージが浮かんだ。

 「イラチ(苛ち)」「イチビリ」「オッチョコチョイ」が融合した「大阪の人間」だから、とにかく橋下市長は何かと注目を浴びる。パフォーマンスに長(た)けている。そして実は、「大阪の人間」の多くは、そういう彼が好きなのだ。
 「行きすぎちゃうか?」と感じている人々も、「一理ある」と考えている。そこを勘違いすると、何もかもが間違ってしまう。
 今日も、大阪の「教育改革」をめぐり、「反対声明」とかいろいろ出たようだ。
 しかし、「そういうレベルの問題ではない」という思いが強くある。「思想・信条の自由」の問題が「既得権護持」の問題に映ってしまう。
 組織と運動の歴史を総括し、足元をみつめることが大切ではないか。「大きな既得権」に対して「小さな既得権」が抵抗しても、「既得権そのものが大阪をダメにした」と感じている人々には通じない。
 対抗言説は、もっと違うところから発せられないと「大阪の人間」に届かない。

 「骨粗鬆症の、壊疽化する社会」とはどういう意味か?
 大阪だけの話ではない。また日本だけの話でもない。
 〈問題〉はおそらく、「リーマンショック後」の日本、大阪になぜ「橋下イズム」が登場したのか、それをどう考えるかにある。

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県民所得、高知が最下位…全国平均は279万円
 内閣府が29日発表した2009年度の県民経済計算によると、1人あたり県民所得の全国平均は前年度比4・3%減の279万1000円で、2年連続で前年度を下回った。 前年度比でプラスだったのは秋田、島根のみで、横ばいの沖縄も除くと44都道府県がマイナスだった。08年秋のリーマン・ショックの影響が全国に波及した形だ。
 1989年度以降は沖縄が最も低かったが、09年度は高知が初の最下位となった。東京と最下位県の所得格差は1・93倍で、前年度(1・99倍)より縮小した。1人あたり県民所得は、都道府県ごとの雇用者報酬、財産所得、企業所得の合計額を人口で割って算出する。東日本大震災の影響で11年度の順位は大きく変わる可能性がある。(読売)

・「大阪維新の会 市長選マニフェスト」より
 大阪市は、市民の最貧困化が進んでいます。 大阪市における年収200万円以下の世帯は、約4分の1を占め(32万8千世帯:全世帯数126万世帯)、名古屋市:14万5千世帯(全世帯数96万5000世帯)、横浜市:14万4千世帯(全世帯数149万世帯)と比較して、大阪市が突出しています。 生活保護率についても、大阪市:人口千人あたり56.3人、名古屋市:19.6人、横浜市:17.8人であり、その貧困度は突出しています。
 しかも、大阪市の状況の悪化、貧困化は、日に日に進行しています。 すなわち、生活保護者率については、昭和60年時点は、人口千人あたり22.2‰(‰とは千分率です)であるのに対し、平成17年時点では40.2‰であり、約2倍程度も膨れ上がっています。
 大阪市民の一人当たりの平均所得についても、平成5年時点で412万1千円であったにもかかわらず、平成20年時点では322万9千円に急落しています。 また、完全失業率についても、昭和60年時点は、5.8%であるのに対し、平成17年時点では11.7%であり、約2倍程度も膨れ上がっています。
 また、大阪市の市民一人当たりの借金(地方債残高)は、1人あたり168万円にのぼり、東京都のそれに比べ、約3倍にもなっています。 その他の生活指標についても、悪化の一途を辿っています。  このように大阪市は、他の政令指定都市と比較して、最貧困地域となり、しかもそれが日々進行しています。

 その一方で、市民一人当たりが負担する行政経費は、過大を極めています。すなわち、大阪市の市民一人当たりの職員の人件費負担額は、10万1586円であるのに対し、名古屋市:8万5306円、横浜市:5万7354円であって、大阪市民が最も多額の職員人件費を負担させられています。 市民人口1万人あたりの職員数についても、大阪市:150人、名古屋市:118人、横浜市:75人であり、大阪市が突出しています。さらに、大阪市職員の刑法犯罪、薬物事犯等、職員不祥事も後を絶ちません。
 つまり、大阪市民は、多額の借金を抱えさせられ、最貧困生活を強いられ、しかもその状況は日々悪化しているにもかかわらず、他方で、税金と借金で過剰な職員を抱え、職員を養っているのが現状です。
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 で、どうするのか? 「橋下イズム」がソリューション?

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「Posseが面白い
 "Posse"が、なぜ、どのように「面白い」のかについては、追々説明したい。
 釜が崎や、社会空間の文字通りの「壊疽化」が徐々に進行する「環状線の外部」でPosseのようなNGOが、プロジェクトを開始することが期待される。「環状線の外部」には、「絶望の大阪」の「困っている大阪の人間」がいっぱいいる。 協働しうる研究者・学生・「若者たち」も、「大阪の大学」や「大阪の人間」の中に、いっぱいいるはずである。

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大阪市君が代条例が成立 維新・公明・自民の賛成で
 大阪維新の会と公明党、自民党の大阪市議団は28日、教職員に君が代の起立斉唱を義務づける市条例案について、市長提案の原案を修正することで合意した。修正案は同日深夜の市議会本会議で、3会派の賛成多数で可決、成立した。
 維新と公明は27日までに、橋下徹市長が提案した条例原案の目的から、公明側の主張に沿って「学校における服務規律の厳格化を図る」の一文を削除することで一致していた。
 さらに、自民も加えた3会派は28日の協議で、自民側が主張する「市長及び教育委員会は、(中略)国旗の掲揚及び国歌の斉唱について、適切に行われるための必要な措置を講じなければならない」との条文を追加することで合意。約7時間にわたる修正協議で、3会派の賛成多数で条例が成立する流れが固まった。 (朝日)

橋下市長提案の国歌起立条例が可決…自公も賛成
 橋下徹・大阪市長は、28日開会の市議会に国歌起立条例案を提案した。 与党の大阪維新の会に加え、公明党、自民党が同日、一部を修正することで賛成に回り、同条例は可決・成立した。
 国歌起立条例は、国歌斉唱時に教職員の起立を義務づけ、市施設での国旗の常時掲揚を求めている。大阪府では橋下市長が知事時代の昨年6月、同様の府条例が全国で初めて成立した。政令市では初めて
 橋下市長はほかに、在任中の市長給与を42%減の月額82万円、退職金を81%減の751万円に引き下げる条例案なども提案した(⇒見事なパフォーマンス)。会期中には職員基本条例案教育基本2条例案も追加提案する方針だ。(読売)

関電、大学に2.9億円寄付 過去10年間で
 関西電力は28日、大阪市と大阪府が求めていた経費支出などの情報開示請求に対して回答し、内容を公開した。過去10年で計24件、2億9千万円の大学への寄付を明らかにしたが、政治家のパーティー券購入の実績など全体の3分の1にあたる項目では、一部または全体の開示を拒否した。
 大阪市は関西電力の筆頭株主。府市は脱原発依存に向けたエネルギー戦略をまとめ、6月の株主総会で関電に提案する方針だ。どの程度節電すれば原発を再稼働せずに済むかや、関電がどう費用を削減すれば値上げが避けられるかなどを分析するため、関電に関連データの2月末までの開示を求めていた。
 府市側が要求した31項目のうち10項目で、関電は一部または全体の回答を拒んだ。大学への寄付については総額を明らかにしたものの、寄付した先の大学名や、関連団体・企業からの寄付は開示しなかった。電力業界の寄付をめぐっては、過去に内閣府原子力安全委員会の委員を務める大学教授らが受け取っていたことが判明している。 (朝日)(⇒豊中市にある大学は?)

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大田昌秀元沖縄県知事からの便り
 大田さんから「大田平和総合研究所」が移転し、今週末(3月3日)に新しくオープンする、とのお便りをいただいた。 「多年にわたって収集して参りました沖縄戦と、文字通りのゼロから復興に立ち上がった戦後沖縄の人びとの苦闘の写真のほか、「人間が人間でなくなるとき」と題してホロコーストや原爆の写真なども常設展示する」とのこと。
 「ご来沖の際にはぜひお立ち寄り下さって、ご覧頂けたら何よりも幸甚に存じます」。
知事「県外実現を」 首相「辺野古が唯一有効」(琉球新報)

●『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの -「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』(綿貫礼子・編)
 新評論から贈呈していただいた。綿貫さんの最後の仕事となった。
 「科学文明の転換点に立って、「脱」の新しい思想を紡ぐとき」という一節が、重く響く一冊である。
 ぜひ、一読を。

【「大阪の教育」についての補足】
 橋下「教育改革」に対する「大阪教職員組合共同アピール  2011年11月18日」を読んだ。
 私は「教育基本条例案」と「職員基本条例案」、いずれにも反対である。が、その内容が違う。すでに述べた通り、府教組がたとえば、
①「大阪の教育の自治」を掲げ、その障害となる、
②「国と大阪の教育行政における二重の縦割り構造」に反対し、
③「文部科学省・中教審解体」と「阪大・教育大の大阪の教育システムへの統合」を主張するのであれば、私は全面的に支援したいと考えている。

 大阪の「公教育」は、「戦後」一貫して、京大と東大、阪大その他の旧帝大七大学を頂点とする日本の偏差値・学歴偏重教育を「現場」で、能動的・主体的に推進してきた。その生き証人がここにもいる。
 府教組には、そういう組織と運動の総括、そしてその果ての現状をしっかり見る眼を養ってほしい。
 「自分たちをいかに守るか」ではなく。